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2019年07月17日

【経営】『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?〜経営における「アート」と「サイエンス」〜』山口 周


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世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?〜経営における「アート」と「サイエンス」〜 (光文社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのも、現在開催中の「光文社50%ポイント還元フェア」の中でも人気を集めている1冊。

表紙によると、本書は「HRアワード」書籍部門の最優秀賞を受賞しており、既に10万部を突破しているようです。

アマゾンの内容紹介から。
これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない――「直感」と「感性」の時代――組織開発・リーダー育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループのパートナーによる、複雑化・不安定化したビジネス社会で勝つための画期的論考!

中古に送料を加えると定価を上回りますから、Kindle版が400円以上お買い得です!





ART / gamillos


【ポイント】

■1.真の差別化が求められる日本企業
 つまりこれまでの日本企業の多くは、「人と同じ答え」を「より早く、より安く」市場に提供することで勝ち残ってきたわけです。ところがすでにご存知の通り、グローバル企業の多くはプロセスベンチマーキング等の手法により、日本企業のスピードに追いつき、また言うまでもなく、コスト競争力を支える強力な要因の1つであった為替面での有利も失われました。
 以上をまとめればこういうことになります。まず「論理と理性」に軸足をおいて経営をすれば、必ず他者と同じ結論に至ることになり、必然的にレッドオーシャンで戦うことにならざるを得ない。かつての日本企業は、このレッドオーシャンを、「スピード」と「コスト」の2つを武器にすることで勝者となった。しかし、昨今では、この2つの強みは失われつつあり、日本企業は、歴史上はじめて、本当の意味での差別化を求められる時期に来ているということです。


■2.デザインとテクノロジーはコピーできる
 優れたイノベーションは、それが優れていれば優れているほど、即座にコピーされることになります。イノベーションについては、とかくデザインとテクノロジーが主題となって議論される傾向がありますが、デザインとテクノロジーだけを拠り所にして実現された製品には、悲惨な末路しか待っていません。なぜならデザインとテクノロジーというのは、サイエンスの力によって容易、かつ徹底的にコピーすることが可能だからです。(中略)
 一方で、 ストーリーや世界観はコピーできません。ストーリーや世界観というのは、その企業の美意識がもろに反映するわけですから、これはサイエンスではどうしようもない。そして繰り返せば、アップルの本質的な強みはテクノロジーでもデザインでもなく、アップルという抽象的なイメージに付随する世界観とストーリーなのだということです。


■3.新興ネットベンチャーはなぜ繰り返し問題を起こすのか?
 ここで、DeNAをはじめとしたネットベンチャーが、コンプガチャやキュレーションメディアといった社会問題を発生させる経緯について、簡単におさらいしてみましょう。多くの方が感じられたことだと思いますが、この2つの事件は、事業内容が全く異なるにもかかわらず、事件に至る経緯は基本的に同じで、整理すれば次のようになります。
1.まず、シロ=合法とクロ=違法のあいだに横たわるグレーゾーンで荒稼ぎするビジネスモデルを考案する。
2.そのうち、最初は限りなくシロに近い領域だったのが、利益を追求するうちに限りなくクロに近い領域へドリフトしていく。
3.やがて、モラル上の問題をマスコミや社会から指摘されると、「叱られたので止めます」と謝罪して事業の修正・更生を図る。
 ここでポイントになるのが、ともに「 開始の判断=経済性、廃止の判断=外部からの圧力」という構造になっているという点です。つまり、美意識に代表されるような内部的な規範が、全く機能していないんですね。


■4.システムを相対化する
 重要なのは、システムの要求に適合しながら、システムを批判的に見る、ということです。なぜこれが重要かというと、システムを修正できるのはシステムに適応している人だけだからです。かつてシステムを全否定し、これをリプレースしようとした人たちは、おしなべて「システムから否定された人」たちでした。システムから否定された人たちが、自分たちを否定したシステムをリプレースしようとしていたわけですから、当然ながら「システムの修正」など、できるわけがありません。
 ここまでくればもうわかりますね、そう、システムに適応している人たちというのはつまり、いわゆるエリートです。最適化していることで、様々な便益を与えてくれるシステムを、その便益に 拐かされずに、批判的に相対化する。これがまさに、21世紀を生きるエリートに求められている知的態度なのだ、ということです。


■5.詩を読む
 多くのビジネスパーソンにとって、「詩」はアート以上に縁遠い存在でしょう。私自身もそのように認識していたので、今回のリサーチで複数以上の企業が「詩」を用いたエクササイズを実施していることを知って大変おどろいたのですが、「なぜ、詩なのか」という筆者の質問に対する回答に接して、ああなるほどね、と思いました。
 確かに、リーダーシップと「詩」には非常に強力な結節点がある。それは何かというと、両者ともに「レトリック(修辞)が命である」という点です。レトリックというのは、平たく言えば「文章やスピーチなどに豊かな表現を与えるための一連の技法のこと」です。(中略)
 さて、では「詩」を読むことによって、どのようにしてレトリックを学べるかということなんですが、それは、ずばり「メタファー(比喩)の引き出し」を増やすという、この一点に尽きると思います。というのも、多くの優れた詩は「メタファーの力」を活用することで、言葉以上のイメージを読み手に伝えているからです。


【感想】

◆従来の経営方法や、いわゆる「効率性」「生産性」を信奉する方から見たら、「目からウロコ」となりそうな作品でした。

丁度私は、比較的最近、本書の著者である山口周さんの最新作を読んだばかりだったのですが。

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ニュータイプの時代

参考記事:【オススメ】『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』山口 周(2019年07月05日)

……昨日土井英司さんが、メルマガで推奨したこともあって、中古がバカ高くなってますねw

順番から言うと、むしろ本書を先に読んで、昨今の経営トレンドを理解し、それを受けた上で「個人としてどうすべきか」を学ぶのが上記の作品、といったところでしょうか。

もちろん、既に上記作品を読んだ方なら、本書を読むと、より一層理解が深まると思います。


◆さて、本書の第1章では、従来の日本企業の経営法の限界と、「アート」の必要性について言及。

上記ポイントの1番目にあるように、「スピード」も「コスト」も、今や日本の武器とはならなくなってしまいました。

一方、過去の優れた意思決定の多くは、「感性」や「直観」に基づいてなされていることが多いとのこと。

典型的なのがスティーブ・ジョブズで、アップルに復帰した直後に販売したiMacで、発売直後に5色のカラーを追加していますが、この意思決定の際に、「ジョブズは製造コストや在庫のシミュレーションを行うことなく、デザイナーからの提案を受けた『その場』で即断していた」のだそうです。

また、アップルつながりで言うなら、第2章から抜き出した上記ポイントの2番目で指摘されているように、デザインとテクノロジーはコピーできますが、ストーリーや世界観はコピーできません。

そしてこの「ストーリーや世界観」には、「高い水準の美意識」が求められるワケです。


◆続く本書の第3章では、「美意識」が欠落した昨今の事件が登場。

上記ポイントの3番目にあるDeNAの問題は、私たちの記憶にもまだ新しいところではないでしょうか?

結局「法スレスレ」を狙うという考え方は、合理性の面からは正解でも、そこに美意識はありません。

さらに言うと、その時点では「違法でない」場合でも、「グレーゾーン金利」のように、法が変わって遡及されるケースもあります。

それゆえ、「『法律的にはギリギリOK』という一線とは別の、より普遍的なルールでもって自らの能力を制御しなければならない」と、山口さんは指摘。

そのためにもエリートこそ、「理性」よりも「感性」を意識する必要があるようです。


◆なお、本書の第5章では、あの「オウム真理教」が、極めて「サイエンス」に支配されており、「アート」が欠落していたかについて言及。

たとえば小説家の宮内勝典さんは、著書『善悪の彼岸へ』の中で、「出家者たちの集う僧院であるはずのサティアンが、美意識などかけらもない工場のような建物であったことを思いだして欲しい」と言われているそうです。

逆に続く第6章では、「『美意識』を全面に出して成功したマツダの戦略」について触れられていました。

なお、このマツダの件に関しては、当ブログでご紹介済みの、この本が非常に詳しいかと。

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デザインが日本を変える〜日本人の美意識を取り戻す〜 (光文社新書)

参考記事:【オススメ!】『デザインが日本を変える〜日本人の美意識を取り戻す〜』前田育男(2018年07月18日)

……この本も、同じ「光文社フェア」の対象作品ですから、併せてお読みいただきたく(アサマシ)。


◆そして最終章である第7章では、いかに「美意識」を鍛えるかを指南。

昨今、多くのグローバル企業やアートスクールで実践されているのが、VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)と呼ばれるものなのだそうです。

VTS(ブイティーエス)とは - コトバンク

他には、「哲学」「文学」「詩」等々、当ブログで扱っていないモノばかり……。

ただ、上記ポイントの5番目にあるように、レトリックのスキルだけは、高めておきたいと私自身も思っている次第です。


これからの経営を考える上で、必読の1冊!

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世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?〜経営における「アート」と「サイエンス」〜 (光文社新書)
第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる世界
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意響
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか?


【関連記事】

【オススメ】『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』山口 周(2019年07月05日)

「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」ダニエル・ピンク (著), 大前 研一 (翻訳)(2006年05月25日)

【メディアの未来】グーグルに勝つ広告モデル(2008年05月18日)

【オススメ!】『デザインが日本を変える〜日本人の美意識を取り戻す〜』前田育男(2018年07月18日)


【編集後記】

◆その「光文社50%ポイント還元フェア」の記事で、現時点までで人気なのはこの辺でした(順不同)。

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ザ・フォーミュラ〜科学が解き明かした「成功の普遍的法則」〜

参考記事:【科学的成功本】『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』アルバート=ラズロ・バラバシ(2019年07月01日)

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データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

参考記事:【因果関係?】『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』伊藤公一朗(2017年07月16日)

B073S1RJX2
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?〜経営における「アート」と「サイエンス」〜 (光文社新書)

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ビジネス・フレームワークの落とし穴 (光文社新書)

参考記事:【フレームワーク】『ビジネス・フレームワークの落とし穴』山田英夫(2019年07月16日)

宜しければご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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