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2019年07月16日

【フレームワーク】『ビジネス・フレームワークの落とし穴』山田英夫


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ビジネス・フレームワークの落とし穴 (光文社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「光文社50%ポイント還元フェア」の中でも、当ブログ向きな1冊。

5月の未読本記事でも取り上げており、注目されていた方も多いのではないでしょうか?

アマゾンの内容紹介から。
企業で使われる経営手法やフレームワークは、使い方によって両刃の剣であり、誤った使われ方によって意思決定が歪むこともある。また、作成者の主観や意志が入り込んでいることを知らずに意思決定していると、大きなミスをしてしまう。経営手法・フレームワークには、「正しさ」と「危うさ」が共存している。そのことを理解して正しく使うには?

中古に送料を加えるとほぼ定価並みとなりますから、このKindle版が400円弱、お得な計算です!





SWOT-Analyse / Grune Bundestagsfraktion


【ポイント】

■1.SWOT分析の「強み」は「弱み」にもなりうる
 NTTがIoT通信事業に参入しようと思えば、すでに持っているハードウエアがそのまま利用できる。しかしIoTを利用したいベンチャー企業が、NTTのような大手通信キャリアのシステムを利用するには、初期費用もかかり、料金も定額制が多く、停止や変更の手間も多い。
 こうした中、アマゾンのクラウドと似たサービスをIoT分野で提供しようと、ソラコムが創業された。NTTがハードウエアで実現する機能を、ソラコムはすべてソフトウエアで実装し、低コストとシステムの柔軟性を実現した。ユーザーが初期費用として払うのは、SIMカードが1枚954円だけで、基本料金は1日10円、データ通信料は従量制で驚異的に安い。さらに、ユーザーが自分のコンピュータでサービスの利用開始・変更・休止を操作でき、拡張も縮小も自由自在である。
 このように、ベンチャー企業向けのIoTシステムを展開するには、NTTが持っているハードウエアは、「強み」ではなく「弱み」になってしまう可能性もある。


■2.最近は通用しなくなってきた「経験曲線」
 経験効果の理論から言えば、後発企業のコストが先発企業のコストより低くなるのは、累積生産量が逆転しない限り、ありえないはずである。
 しかし現実は、先行した シャープの液晶が、後発であった台湾、韓国等の企業に累積生産量では負けていないにもかかわらず、コストで負けてしまうことが起きた。シャープは海外メーカーにシェアを奪われ、外資の傘下に入る状況に追い込まれた。
 経験曲線の理論で言えば、先発で最大の累積生産量を誇っていたシャープが逆転されるはずはなかったが、インフラのコスト(人件費、土地代、エネルギーコストなど)の全く異なる国の企業が、シャープを上回る低コストを実現し、事態は一変した。
 1960年代にBCGがコストを研究していた時代は、同じようなインフラの中で競争している企業同士のコスト構造を調べており、今日のように競争がグローバル化する中で、インフラのコストが全く違う国の企業の研究は、行われていなかったのである。


■3.どの段階にいるかわからない「製品ライフサイクル」
「今、この商品はライフサイクルの上でどの段階にいるのか」という問いは、マーケティング戦略を考える上で、とても知りたいことである。しかし残念なことに、この問いに対する正解はない。
 例えば、1919年に発売された カルピスは、かつては「初恋の味」と言われ、人気を誇ったが、1980年頃には売上の伸びもなく、誰もが狎熟期の商品瓩任△襪隼廚辰討い拭(中略)
 しかし1991年に缶入りの「カルピス・ウォーター」が発売され、カルピスの理想的な濃さが分かると同時に、缶入りのため、屋外でも気軽に飲めるようになり、カルピスは再び成長期を迎えた。はたして1990年の時点で、カルピスは製品ライフサイクルのどの時期にいたと言えるのだろうか?


■4.サービスを餌にグッズが釣れる「サービス・ドミナント・ロジック」
 ちなみに、ヤマハ音楽教室では、ピアノやエレクトーンでグレード試験を実施している。生徒の努力を、「級」の取得でモチベートしようとするものである。生徒は腕を上げるにつれて、上の級に挑戦していく。
 中でも特徴的なのがエレクトーンのグレード試験であり、10級から始まり、級と共に課題曲も難しくなっていく。そして、ある級以上になると、高級機を使わないと弾けない譜面が出てくる。エレクトーンは、左足でベースを弾くが、通常のエレクトーンのベースは、1オクターブ分の鍵盤が配置されている。ところが上級の課題曲は、2オクターブ分のベース音を使うものがある。これを練習するためには、2オクターブ分を備えた高級機に買い換えなくてはならないのである。


■5.思い込みの経営からエビデンス・ベースへ
賃借人が住んだまま住宅の持ち主が変わる取引を「オーナーチェンジ」と呼ぶが、不動産業界ではこの取引は儲からないので、避ける傾向があった。賃借人がいる住宅は、日本では借家権が強いこともあり、空の住宅と比べて約25%成約価格が安くなってしまうからであった。
 しかしこの事実を見て、ある金融マンは全く別の考え方をした。すなわち75で買った物件は、賃借人が退居すれば空になって売値は100になり、金融で言う「裁定取引」がはたらく。
 住宅を1軒だけ購入しても、賃借人が退居しない限りビジネスにはならないが、100軒保有すれば、平均して3年半ほどで退居していくことが分かった。1000軒持てば、これが3年半に収斂していく。
 このように同じ事実を見ながらも、金融出身の経営者には、「オーナーチェンジにビジネスチャンスあり」と映ったのである。


【感想】

◆各種フレームワークの実態を俯瞰できる、と言う意味で、なかなか興味深い作品でした。

と言っても、著者の山田さんはフレームワークを真っ向から否定しているわけではありません。

たとえば本書の「はじめに」では、このような発言が。
 手づかみで食べるより、ナイフとフォークがある方が食事はしやすい。しかしナイフとフォークの使い方を知らないと、食べ物を床に落としてしまうこともある。さらに、ナイフとフォークで刺身を食べてもおいしくない。
 経営手法・フレームワークも、これと同じである。本書では、その「正しさ」と「危うさ」を見ていこう。
具体的なフレームワークは、下記目次にもあるように「経営戦略」や「マーケティング」等、5つのセクションに分類されてます。

そしてそれぞれにおいて、フレームワーク自体の簡単な説明に続き、その「危うさ」が解説されている次第。

なお、各章のフレームワーク数を見ていくと、第1章が18個、第2章と第3章が8個、第4章が3個、第5章が6個と、第1章にかなり偏っているという。


◆その第1章からは、まず上記ポイントの1番目のSWOT分析が登場。

なるほど、NTTのような大企業にとっては、ハードウエアという「資産」は「強み」だったものが、環境変化に対しては「弱み」になってしまいかねないワケですね。

これと同じことが言えるのが、セブン銀行のATM網。

今後のキャッシュレス化いかんによっては、「弱み」になりかねません(ただしセブン銀行ではATMが「負債」にならないよう、次の戦略を考えているのだそう)。

実はSWOT分析には、もう1つ「主語のないSWOT分析は作れない」という問題点があるのですが、こちらは本書にてご確認ください。


◆上記ポイントの2番目の「経験曲線」も、同じく第1章からのもの。

もっともこちらは、提唱当時は正しかったのが、時代の変化に伴い、通用しなくなってきたようです。

なお、この第1章には他にも「3C分析」「ブルー・オーシャン」「PPM」等々のおなじみのフレームワークが登場。

特に「ブルー・オーシャン」については、「既存業界と次元の異なる価値を提供するから生まれるものであり、それを既存業界の企業と比較するのは、そもそも意味が薄い」と言われています。

結局「ブルー・オーシャンを開拓した企業の成功を見て、後づけ的に戦略キャンバスを描くことはできる」ものの、事前に「ブルー・オーシャン戦略」を立てるのは難しい、ということ。

確かに『ブルー・オーシャン戦略』に登場するシルク・ドゥ・ソレイユを、サーカスと天秤にかけて観に行く人がどれだけいるのか、という……。


◆一方、上記ポイントの3番目の「製品ライフサイクル」は、第2章の「マーケティング」から抜き出したもの。

むしろ我が家では、カルピスの原液というものを買ったことがないくらいです(私やヨメが子どもの頃は、もちろんお互いの実家にありましたが)。

同じくウィスキーも、ずーっと右肩下がりの市場だったものが、2009年に缶入りハイボールが発売されると同時に、売れ行きが伸びて、原液が足りなくなったとのこと。

結局、製品ライフサイクルとは、「その商品がなくなって初めて、ある時点でどこにいたかが事後的に分かるもの」なんですね。

また、上記ポイントの4番目の「サービス・ドミナント・ロジック(SDL)」というのは、お恥ずかしながら、私は本書で初めて知りました。

【解説】サービス・ドミナント・ロジック(SDL) - Insight for D

私自身、幼い頃エレクトーンを習っていましたが、当時はここまでえげつなくなかったというか、足の鍵盤は2オクターブもなかったハズ。

もともとは、ヤマハも楽器を製造販売するだけでなく、古くは「ポプコン」のようなイベントを開催したり、今でもおなじみの音楽教室を普及させてきたワケですから、「SDL」を地で行く会社といっていいでしょうね。


◆最初の2章で、ほとんどボリューム一杯になってしまったのですが、上記ポイントの5番目のエビデンスは、第5章の「その他」から。

ちなみにここで言及されている、「オーナーチェンジ」のマンションばかりを集めた会社というのが、一部上場にまで登りつめた不動産会社「スター・マイカ」です(現在は持株会社体制への移行に伴い、上場廃止だそう)。

ただ、創業者の水永さんの経歴を見ると、「東大〜三井物産〜UCLAのMBA〜BCG〜ゴールドマン・サックス」とガチガチのロジカルエリート。

思いつきで起業したのではなく、勝算あってこういうビジネスモデルにされたのは、ほぼ間違いないと思います。

なお、本書は冒頭の「プロローグ」で、おなじみのポジショニングマップが3つ登場している(いずれも公表ないしは書籍に掲載されたもの)のですが、これらがいずれも誤ったモノである、とのこと。

図表なので引用できないのですが、正直、この間違い(=ポジショニングの3つの原則のうちの1つ「軸は連続量」)を知っただけでも、本書を読んだ甲斐がありました。

……セール期間中にぜひ本書にてご確認をw


フレームワークを使いこなしたい方なら読むべし!

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ビジネス・フレームワークの落とし穴 (光文社新書)
1 経営戦略
2 マーケティング
3 組織・人事
4 財務・M&A
5 その他


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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AI時代に輝く子ども

去年の暮れに出ていたらしいのですが、私はノーチェックだった子育て本。

送料を足した中古よりも、Kindle版が1000円弱もお買い得です!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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