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2019年06月18日

【超文章術?】『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』田中泰延


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読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて人気だった文章術本。

特にライターやWebライターを志す方なら、必読の1冊です。

アマゾンの内容紹介から。
電通コピーライターとして24年、自分が読みたいものを書くために退職して「青年失業家」へ。
Web記事500万PV超、Twitterフォロワー46000人超。
多くの支持を得るwebライター初の著書。

中古が定価よりも高くて、かつ、版元がダイヤモンド社さんですから、ここは1割引きのKindle版がオススメです!






diary writing / freddie boy


【ポイント】

■1.ターゲットなど想定しなくていい
 そもそも特定のだれかに言いたいことが「届く」ということが、そんなにあるだろうか。わたしは24年間、広告業界で「コピーライティング」を仕事にしてきた。それはまさに「30代女性にこの洋服の良さを伝える文章を書け」「中学生がこのスナック菓子に興味を持つ言葉を考えろ」というターゲット論の世界だった。だが、莫大な宣伝費を使うそれらも、結局、テレビや新聞など不特定多数が目にするところに「置かれる」のであり、「届けられる」のではない。
 広告業界人で結成された「満員劇場御礼座」という劇団に『会議』(作・宮崎仁誠) という演劇がある。あるビール会社の宣伝担当が、特定のターゲットに売れそうなビールとして『女の夜の風呂上がりの生ビール』という商品名を考える。すると上司に「君な、『女』で人口の半分、『夜』で一日の半分、『風呂上がり』で夜のそのまた数十分間に顧客が限定されるやないか。商品名は『みんなのビール』にしろ」と叱責される話である。
 読み手など想定して書かなくていい。その文章を最初に読むのは、間違いなく自分だ。自分で読んでおもしろくなければ、書くこと自体が無駄になる。


■2.面接における「プノンペンのジョー」理論
 たとえば、ESにあなたはキャッチコピー的に「わたしはアジア貧困問題のエキスパートです。」と書いたとする。狙い通り訊ねられたときにどう答えるか?
「はい、わたしは交換留学生としてカンボジアに行き、その土地の問題と貧困について研究し、国際的な支援の方法について総合的に学びました」。せっかく訊いてもらえたのに、この答は0点なのである。
 なぜか。それは、具体性がゼロだからだ。キーワードとしては「交換留学生」も「国際的」も「総合的」も、全部不要だ。
 人にせっかく訊かれたことは、情景が浮かぶように答えないと、決して覚えてもらえない。
「2017年の4月4日でした。ひどい豪雨の夜で、大きな雷が落ちてプノンペンの街は大規模な停電になったんです。わたしがいたレストランも真っ暗になって、暗闇の中でひと晩過ごしました。そのときにレストランのオーナー、ジョーさんという方が、停電を謝罪しながらも、こう言ったんです。この国にはまだまだ支援が必要なんです、と。そしてわたし、気づいたんです」という風に話す。
 まるで目に浮かぶように話をすれば、「ほうほう、それで君がカンボジアで気がついたことは具体的に?」とさらに訊いてもらえる。


■3.一次資料に当たる
 わたしは以前、ライターゼミの講師を務めたとき、「明智光秀について最低4000字書いてください」という課題を生徒に出した。大半の人は、ググってみる、Wikipediaで調べる、YouTubeを見る。この辺で止まっている。(中略)
 これでは調べたことにはならない。調べるというところまで至っていない。 ネットの情報は、また聞きのまた聞きが文字になっている と思って間違いない。ムックや新書の類も、たとえ専門家が監修していても、「俗にいう明智光秀のエピソード」を強化するためのもので、ほとんど新事実は載ってない。新発見があれば新聞記事になっている。
 ならば、どうすればよいか。一次資料に当たらなければ話にならないのである。「ここがその話の出所で、行き止まりである」という資料は意外や意外、簡単に見つかる。そして、一次資料まで当たったときに感じることが多いのは、「だいたいの話は、出所からあやしい」ということだ。


■4.愛した部分を全力で伝える
 対象に対して愛がないまま書く。これは辛い。だが、一次資料には「愛するチャンス」が隠れている。お題を与えられたら、調べる過程で「どこかを愛する」という作業をしないといけない。それができないと辛いままだ。
 対象を「愛する」方法には2つある。
A:資料を当たっていくうちに「ここは愛せる」というポイントが見つかる
B:ざっと見て「ここが愛せそうだ」と思ったポイントの資料を掘る。自論を強化するために良い材料をそろえる(中略)
  映画は、何百人、何千人が心を1つにして作る。最低の評価を受ける映画でも、良いところはある。また、その映画自体は最後までおもしろく感じられなくても、関わった人間のだれかのパーソナリティは愛せるかもしれない。
「わたしが愛した部分を、全力で伝える」という気持ちで書く必要があるのだ。愛するポイントさえ見つけられれば、お題は映画でも牛乳でもチクワでも良く、それをそのまま伝えれば記事になる。


■5.書くことはたった一人のベンチャー起業
 ライターになりたい人は、もっと起業家の話を聞いたほうがいい。彼らのように成功した人でも、10個目の商売でやっと成功したとか、成功するまで5つ会社をつぶしたとか、勝負をかけたはずの商品が全然売れなかったとかを経て、いまの商売が当たったという人が多い。ライターも同じように、書いてみても、ほぼ駄目なことだらけだ。
 自分がまずおもしろがれるものであること。これは、ビジネスアイデアでも文章を書くことでも全く同じだ。それが世の中に公開された時点で、あくまで結果として、社会の役に立つか、いままでになかったものかがジャッジされる。自分の正しさが証明されるかどうかだ。
 そして、経営者となった彼らも、日々、新たなビジネスアイデアを模索している。ライターを目指す人も、なにかを書いて、1個ウケたから、そのシリーズを永久に続ければ、60歳まで毎月書けば月収30万あるとか、そんなことは絶対にない。そもそも、ネット時代は、書きたい人が多くて、読みたい人が少ないので、文章でお金を取れる人はごく一部になってしまう。
 だが、文章を書いて人に見せるたびに、「それは誰かの役に立つか? いままでになかったものか?」と考え抜けば、価値のある意見には、必ず値段がつく。


【感想】

◆色々な意味で「面白い」作品でした!

そもそも私は、著者である田中さんの書かれた文章を、以前からTwitterでは何度か目にしておりまして。

田中泰延(@hironobutnk)さん | Twitter

今回のご本が出る前は、プロフ欄にも本のことは書かれていませんでしたから、まさかかつては電通に24年もいて、コピーライターをなさっていたとは、まったく存じませんでした。

一方、当ブログでは今までも、広告代理店の方のコピーライティング本を何冊かご紹介してきましたが、それらとは完全に一線を画しています。

まず、「問題解決」や「目的達成」を目指していません。

サブタイトルに「文章術」とありますが、俗世間一般で見かける「文章術本」を予想していると、盛大にずっこけること必至!?

何たって、上記ポイントの1番目にあるように「ターゲットなど想定しない」で書くのですから、正直ビジネスユースとしては、リスキーでしょう。


◆その代り、上記ポイントでは一応自重しましたが、エッセイ等で見かける「おもろい文章」が連発。

たとえば冒頭の「はじめに」は、こんな一節から始まります。
 自分ひとりのために、料理を作って食べたことがあるだろうか。
 ここで、「ないです」と言われたら、この本は出だしで転んでしまう。そういう人は寝転がって読んでいただければ幸いである。いずれにせよ購入することが大切だ。
なお、同じ「はじめに」で、もう1度「いずれにせよ購入することが大切だ」登場するというw

もっとも、田中さんの書かれる文章をより理解していただくには、こちらの映画評を読んでいただく方が分かりやすいかも。

マッドマックス 怒りのデス・ロード【連載】田中泰延のエンタメ新党 | 田中泰延 | 街角のクリエイティブ

その他、滋賀県から依頼されて書き、公的なWebサイトに未だ掲載されているのがこちら。

三成コラム『秒速で1億円稼ぐ武将 石田三成』 | 石田三成×滋賀県 ポータルサイト

どちらも出だしから飛ばしまくっていて、おふざけの文章のように感じるかもしれません。


◆しかし、読んでいくにつれて分かるのが、テーマに対する深い知識です。

そこで必要となるのが、上記ポイントの3番目にある「一次資料に当たる」こと。

たとえば上記の石田光成のエントリーを書くため、田中さんはアマゾンで買える本だけではなく、国会図書館まで行って、大量の文献に当たってらっしゃいます(上記エントリーの最後に19冊掲載)。

また、常日頃書籍をガッツリ読まれてらっしゃるので、選書をなさってもこんな感じになる次第。

元電通の青年失業家を暴走させた「人生を変える10冊」(田中 泰延) | 現代ビジネス | 講談社(1/2)

……すいません、ワタクシ1冊も読んでおりません(恥)。

なお、この10冊と一部かぶりますが、本書内でも「書くために読むといい本」と題したブックガイドが収録されていますので、そちらもお見逃しなく。


◆ただし、あまりに従前の「文章術本」と異なっているためか、あとがきによると、ウソかホントか編集者の方からこんなメールが届いたのだそう。
 内容は、「この本は当初、ビジネス書として企画したので、文章術と題している以上、もっと文章を簡単に上手に書く方法が述べられていないといけないのではないか」というものだった。
それに対する田中さんのお答えは、本書をお読みいただくとして。

確かにこれが普通の文芸も出す版元の作品なら全然アリだとは思うのですが、そこは天下のダイヤモンド社さんですから、編集者さんの気持ちも分かります。

そのせいなのか、各章の終わりに「コラム」として、実際に役立つお話が収録されているのも、本書の特徴でしょう。

たとえば上記ポイントの2番目の「プノンペンのジョー」理論は、ネタは違いますが(田中さんはトラックの運転手)、田中さんが電通に入社した際に使ったモノ。

実際、田中さんの同僚が面接を担当した際、まったく同じ「プノンペンのジョー」の話をした学生が2人ほどいたのだとかw

……この辺、普通は本文が役に立って、コラムが息抜きなのに、本書はまったく逆(?)なわけですね。


バズる文章を書ける「体質」になりたい方は読むべし!

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読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術
はじめに 自分のために書くということ
序章 なんのために書いたか 書いても読んでもらえないあなたへ
第1章 なにを書くのか ブログやSNSで書いているあなたへ
第2章 だれに書くのか 「読者を想定」しているあなたへ
第3章 どう書くのか 「つまらない人間」のあなたへ
第4章 なぜ書くのか 生き方を変えたいあなたへ
おわりに いつ書くのか、どこで書くのか


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【バイブル!?】『調べる技術・書く技術』野村 進(2011年07月28日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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図解 宇宙のかたち〜「大規模構造」を読む〜 (光文社新書)

宇宙に興味のある方なら、要チェックな1冊。

中古は値崩れしていますが、送料を加算するとKindle版に軍配が上がります。


【編集後記2】

◆昨日の「新書フェア」で人気だったのは、この辺の作品でした。

B00KYK3A44
知性を磨く〜「スーパージェネラリスト」の時代〜 (光文社新書)

B07K71FM55
即使える「病院英語」ハンドブック〜「診察して」って英語で言えますか? GOTCHA!新書 (アルク ソクデジBOOKS)

B01FVJBXWI
闇経済の怪物たち〜グレービジネスでボロ儲けする人々〜 (光文社新書)

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土 地球最後のナゾ〜100億人を養う土壌を求めて〜 (光文社新書)

よろしければ、ご参考まで!


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