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2019年06月16日

【デザイン思考?】『HELLO,DESIGN 日本人とデザイン』石川俊祐


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HELLO,DESIGN 日本人とデザイン (NewsPicks Book)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「幻冬舎フェア」の中でも、当ブログ向きと思われる1冊。

タイトルや装丁を見る限りだと、アート系のデザイン本のようですが、しっかり「デザイン思考」について掘り下げられた作品でした。

アマゾンの内容紹介から。
「デザイン」はみんなのものだ。「デザイン」は絵が上手いこと、センスがいいことではない。「デザイン」はおもてなし。「デザイン」は暑い日に配達に来た郵便屋さんに、氷水を差しだすこと。人間の欲求に寄り添い、解決する、誰にでもできる考え方。日本でデザイン思考を広めたIDEO Tokyo元デザイン・ディレクター初の単著。

中古に送料を加算すると定価を超えますから、Kindle版が800円弱、お得となります!





Ideo thing / jeanine&preston


【ポイント】

■1.道具をデザインすることで、問題解決する
 ジョブズの有名なエピソードに、「生き物の運動効率リスト」の話があります。
 彼はあるとき、人間を含めた地上のさまざまな動物の運動効率に関する研究の文献を読みました。同じ距離を移動するのにどれくらいのエネルギーが必要かリストであらわされていて、もっとも「省エネ」なのはコンドルだったそうです。
 では我らが人間はどうかというと、リストの下から3分の1ほどに位置していて、ぱっとしない。しかし別の人が「自転車に乗った人間」の移動効率を計算してみたところ、なんと「コンドルの2倍」という結果が出たのです。
 この事実が、なにを意味するか? 自転車という道具をデザインしたことによって、人間は移動能力を大きく拡張できたということです。
 その結果を前に、ジョブズはこう考えました。
「自分にとってのコンピュータこそ、自転車だ。この道具によって知性を拡大することができるのだから」
 自分がデザインするものによって、そしてテクノロジーによって、人間の知性を拡大する──これがApple製品のスタート地点です。


■2.無意識を意識的に観察する
 ただ、観察がむずかしいのは、「ふつう」の中にヒントがあるから。その光景を目にしても、サラリと流してしまいがちなことですね。
 たとえば路上駐車をするとき、ドライバーは通行するほかの車の邪魔にならないよう縁石ギリギリに駐めるでしょう。これ、すごく「ふつう」の光景です。
 でも、立ち止まってよく「観て」みると、「助手席の人が降りにくい」という「不便」が見つかる。そこで、「スライドドアにしたらどうだろう」「助手席の人が乗り降りできる幅を残した自動駐車システムをつくれないか」といったアイデアを考えることができるわけです。
「観察スイッチ」をオンにしておかないと、「ふつう」の光景はどんどん流れていってしまいます。意識し続け、考え続けることで、脳みその筋肉は鍛えられていくのです。


■3.IDEO流「ブレストの7つのルール」
1.トピックに忠実であれ  (お題に沿っていないと、ただムダ話が盛り上がるだけになってしまいます)
2.ぶっ飛んでよし  (かっこつけたアイデアや常識的なアイデア、「賢く見せたい」という下心のあるアイデアは、ブレストには必要ありません)
3.すぐに判断/否定するなかれ  (そのバカげたように思えるアイデア、思わぬインスピレーションにつながるかも!)
4.会話は一人ずつ  (発言は、前の人が言いたいことをすべて言い切ってから)
5.質より量を  (なるべくスピーディに、ひとつでも多くのアイデアを)
6.描け、視覚的であれ  (みんなでイメージを共有しよう)
7.他者のアイデアを広げよ  (自分のアイデアに固執せず、メンバーのアイデアに乗っかったり盗んだりしてみよう)


■4.「なぜこれをやるのか?」を問い、パッションを共有する
 パッションがある人は未来志向だし、「自分がやってやる」という強烈な当事者意識を持っています。これは「やらされ仕事」と反対の概念と言えるでしょう。そしてこの「やらされ仕事」とデザイン思考は、とても相性が悪い。小さなチームの中にパッションがない人、同じ未来を同じ解像度で見つめられていない人が一人でもいると、驚くほど熱量が落ちてしまうのです。(中略)
 最近の研究でも、人間が適切な意思決定をするためには「目的」や「動機づけ」、つまり「なぜこれをやるのか=WHY」が必要だという結論が導き出されています。意思決定をする際に使われているのは、「なにをする=WHAT」をつかさどる大脳新皮質ではなく、「WHY」をつかさどる大脳辺縁系である、と。
 つまり、パッションがない仕事に関して、ぼくたちは適切な意思決定ができない可能性が高い、とも言えるわけです。みなさんも心当たりがありますよね?
 自分の、そしてチームのパフォーマンスを上げるためにも、「なぜこれをやるのか?」を問い、パッションを共有することが欠かせないのです。


■5.「三成の三献茶」に見る「デザイン思考」
 説明するまでもありませんが、この話では「喉が渇いているときにはごくごく飲める温度のお茶をたっぷり出し、喉の渇きが癒えてきたら味わうためのアツアツのお茶を差し出した小姓の心遣い」を語っています。観察から導き出した自らの主観やアイデアを信じ、心憎いサービスをデザインしたこの小姓こそ、後の石田三成であった……という逸話ですね。(中略)
 注目すべきは、これはおよそ450年前の話だということ。一方のデザイン思考の歴史は、せいぜい30年程度。先ほどの「日本あるある」の例とあわせて、なぜ日本でデザイン思考という概念が生まれなかったのかとぼくが悔しがる気持ち、わかりますよね?
 海外の人たちが努力して身につける能力を、自分たちはごく自然に身につけている。もっと言えばDNAレベルで組み込まれている。
 日本人は、「最強のデザイン思考家」になるポテンシャルを秘めているんです。


【感想】

◆「デザイン思考本」というのは、そもそもそのほとんどがデザイン思考にあまりなじみがない方に向けて書かれており、本書もその例にもれません。

逆に、デザイン思考に詳しい前提でさらに先に展開されてしまうと、ついていける人が少なく、商業出版として難しいからかもしれませんが(専門書を除く)。

そこで本書もまず第1章にて、「デザイン思考」の「デザイン」について言及。

対照的な概念である「アート」が「自己表現」であるのに対して、こう述べています。
 じつは、デザインの本質は「課題の発見とその解決」にあります。「人が持っている課題の本質を見つけ、その上でそれを解決するための新しいモノ、体験、システムなどをつくり出すこと」がデザインのもっともベースとなる概念なのです。
 ですから、もしなにか欠けているものがあり、よりよくする余地があるならば、誰にだってデザインできるのです。
そこで例として挙げられているのが、上記ポイントの1番目のジョブズのお話。

実際、ジョブズが「デザイン」したiPhoneによって、私たちの能力は「拡張」されたと言えるでしょう。


◆一方、デザイン思考を実践する手順が解説されているのが、本書の第3章です。

まず、デザイン思考は、以下の4つのプロセスを経て行われるのだそう。
(1)デザインリサーチ(観察/インタビュー)
(2)シンセシス/問いの設定
(3)ブレスト&コンセプトづくり
(4)プロトタイピング&ストーリーテリング用
たとえば上記ポイントの2番目は、この中の(1)のデザインリサーチに該当します。

他にも、私も事例と知っていたもので、「キープ・ザ・チェンジ」というバンク・オブ・アメリカのデビットカードが紹介されていたのですが。

【エスノグラフィーの事例】バンク・オブ・アメリカのキープ・ザ・チェンジとは? | SEEDATA

これも、IDEOのメンバーが、ユーザーの行動を「観察」した上で、考え出したものなのだそうです(詳細は本書を)。


◆また、(3)のブレストの部分から引用してきたのが、上記ポイントの3番目の「7つのルール」。

もっともこれは、結構有名なようで、ググっても普通に出てきますね……。

ただし、これに加えて、「リーダーのみに課せられたルール」がさらにあって、それが「最初にクレイジーなアイデアを出すべし」というもの。

確かに
「社員の健康を促進するために階段利用者を増やすにはどうすればいい?」
「エレベーターを爆破しちゃう!」
くらいの突拍子もないアイデアを出せば、その後の発言のハードルも下がることでしょうねw


◆なお本書が、他の「デザイン思考本」と少々趣きを変えているのが、「日本人にデザイン思考がマッチしている」という主張でした。

これは本書の序章でサワリが、終章の「デザイン思考日本人最強説」でその詳細が述べられているのですが、要は上記ポイントの5番目にあるような、いわゆる「おもてなしの心」を私たちが持っているから、ということが大きな理由です。

結局これは、私たちが相手を「観察」しているから、できることである、と。

皆が皆、そうできるとは限りませんけど、確かに日本はハイコンテクスト文化ですから、諸外国に比べて有利なのかもしれません。

ただし、このような文化を持ちながら、デザイン思考が日本発とならなかった要因として、本書では「パッケージ化する力」が欠けていると指摘しています。

そこで、こうした状況を巻き返すためのアイデアも、同じく本書の終章では述べられていますから、気になる方はそちらでご確認ください。


デザイン思考を身につけるために、読むべし!

B07P45QNMN
HELLO,DESIGN 日本人とデザイン (NewsPicks Book)
序章 誤解だらけのデザイン思考
第1章 すべての人は「デザイナー」である
第2章 デザイン思考のマインドセット
第3章 デザイン思考4つのプロセス
第4章 デザイン思考を実行する組織と、「個」のあり方
終章 デザイン思考日本人最強説
おわりに:日本再興は教育からはじまる


【関連記事】

【デザイン思考】『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』デイヴィッド・ケリー,トム・ケリー(2017年01月25日)

【アイデア】『デザイン思考の先を行くもの』各務太郎(2019年02月14日)

【デザイン思考】『0→1の発想を生み出す「問いかけ」の力』野々村健一(2019年02月04日)

【問題解決】「デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方」ティム・ブラウン(2010年04月29日)

【デザイン思考】『問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法』村田智明(2017年07月29日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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【編集後記2】

◆昨日の「幻冬舎フェア」で人気だったのは、この辺りでした(順不同)。

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THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

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記憶力日本一を5度獲った私の奇跡のメモ術 (幻冬舎単行本)

参考記事:【メモ術?】『記憶力日本一を5度獲った私の奇跡のメモ術』池田義博(2018年06月08日)

男の不作法 (幻冬舎新書)
男の不作法 (幻冬舎新書)

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メモの魔力 -The Magic of Memos- (NewsPicks Book)

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HELLO,DESIGN 日本人とデザイン (NewsPicks Book)

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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