スポンサーリンク

2019年06月13日

【マーケティング】『稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである』葦原一正


B07KMB25PX
稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「ビジネス・実用書フェア」の対象作品。

昨日の前日ランキングで思いのほか高順位に付けていたため、慌てて読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
収集したデータに基づき統計分析から戦略を策定していくクールな頭脳。
スポーツビジネスのあり方を変えたい、そしてプロスポーツを通じて社会貢献したいという熱い想い。
Bリーグビジネス現場の若き最高責任者が「何を」「どのように」「どう考え」「どうしたか」について、ビジネスアプローチで、その躍進の秘密を明らかにする。

中古に送料を加えると定価を上回りますから、本日中であればこのKindle版の方が800円弱、お買い得です!





basketball hoop / Steve A Johnson


【ポイント】

■1.デジタルマーケティングを徹底的に推進させる
 具体的に言うと、野球やサッカーでは、観戦者やファンクラブの情報はすべて個別のチームに集約されている。チームによってはさらにチケット購入情報やファンクラブ入会情報など顧客行動ごとにバラバラになっているケースもある。
 そのため、Aチームのファンクラブに加入して、1F指定席を買って、アリーナに行く前にタオルマフラーを買って、来場してからスタジアムグルメとビールを買う、といった顧客の一連の行動がわからない。その方が他のチームのチケットを買っているのか? ということもわからない。つまりCRMの活用ができていない。(中略)
 B.LEAGUEでは、その先を考えたときに、そのデータの持ち方では意味をなさないと考え、 リーグ統合データベース=B.LEAGUEファンプラットフォームとして一元化した。
 つまり、顧客データは各クラブではなく、リーグが管理する方式である。その結果、お客様にとっては、1つのログインIDで、B.LEAGUE B1・B2全36クラブのあらゆるサービスが利用できるようになる。


■2.来場のきっかけは「誘われたから」
 さらに、今まで1回も来ないで、はじめて来たお客様に「なぜ来場したのか?」というデプス調査(調査専門会社によるグループインタビュー) を実施したところ、全員が最終的に「誘われたから」との回答だった。
 皆さんからすると、一見、当たり前の答えかもしれないが、私にとっては衝撃だった。(中略)
 ライトなファン層を取り込むためのマーケティングを行うことで、新たなファンの拡大を図るのが一般的だが、私たちはライトファンの属性分析を続けていくうちに、コアファンが「誰を誘いたくなるか」「どういう情報を伝えれば誘おうと思うのか」というメカニズムを解釈することのほうが大切だと気づかされたのだ。


■3.セカンダリーマーケットを充実させる
 NBAヒアリングの際、最も深く聞いたのがセカンダリーマーケットである。セカンダリーマーケットとは、たとえば、チケットを購入していた人が何らかの理由で行けなくなったとき、他者に売れる仕組みのことである。日本でイメージしやすいのが、Yahoo!オークションなどのオークションサイトである。NBAの場合、第三者でなく、彼らの公式プラットフォームで展開しているのだ。(中略)
 そして、彼らが言っていたのは、「セカンダリーでビット(入札) している人の個人情報を得られるのが何よりも大きい」
 ということ。
 たとえば、どこかの試合のシーズンシートチケットが売り出されていたとする。この試合がとても価値の高い試合で、10人ほど入札したとする。最終的に購買できた人は1人だが、この他の9人の情報を得ることができ、とても有益。なぜならば、彼らは貴重なチケット購入見込リストになるのだ。


■4.アウェー戦も収益化する
 この着目で、実験的に展開したのが、2018年1月14日に東京・恵比寿で実施した「次世代型ライブビューイング B.LIVE in TOKYO」である。
 2年目のオールスターは熊本県立総合体育館で開催されたのだが、そのパブリックビューイングのことである。(中略)
 改めて、なぜB.LEAGUEはこのようなイベントを開催したか??
 今はまだコストが高く実用化は困難だが、いつかは、アウェイの試合時にホームアリーナでチケット収入、そして物販収入を稼ぐモデルを構築したいからである。
 たとえば、船橋アリーナでの千葉ジェッツ対琉球ゴールデンキングス戦。
 従来での形であれば、船橋アリーナでのチケット収入はすべて千葉ジェッツ側で、キングス側には収入は入らない。
 しかし、このライブビューイングのスタイルが確立すると、船橋アリーナでの試合を、キングスファンの本拠地である沖縄市体育館で観戦するチケットを買って集結、応援する。そしてキングスはチケット収入などを得ることができる。
 B.LEAGUEではこれを「第3の観戦スタイル」と呼んでいる。


■5.「体育館」ではなく「アリーナ」を造る
 今の日本は、国体が開催されるとその地域に、いわゆる「体育館」が建てられていく。土足厳禁であったり、控え室やVIPルームは限定的で、コートとスタンドから決して観やすいと言えないものが建てられていく。いわば「競技者目線」の建物であり、爛供β琉藉朖瓩任△襦
 これから日本に必要になってくるのは、「アリーナ」である。控え室やVIPルームも充実、コート上も観やすいスタンドになっており、コンコースも外周一周くるりと回れる、いわば「観戦者目線」のアリーナが必要になってくるであろう。(中略)   
 屋外のスタジアムは天候リスクや演出の幅の制限、キャパの大きさを考えるとコンサートなどの需要は少なく、とくに天然芝のサッカースタジアムは稼働に苦しんでいる。アリーナの場合は、大小さまざまなコンサートや集会で高い稼働率を維持できる。たとえば、収容人数1万人強のコンサートアリーナである横浜アリーナの稼働率は90%を超えている。
 つまり、アリーナは、スタジアムと比べ、イニシャルコストを抑えられ、安定的な収益化を図れる可能性があるので、ビジネスとして十分回るのではないのかと捉えている。


【感想】

◆スポーツ・マーケティング本は、それほど読んできたワケではありませんが、かなり興味深い内容でした。

ちなみに当ブログでレビューした作品の中で、野球に関するマーケティングについて書かれていたのがこちら。

B01LALXVSA
空気のつくり方 (幻冬舎単行本)

参考記事:【実践的マーケティング】『空気のつくり方』池田 純(2016年09月05日)

この本で描かれたベイスターズも、かなり革新的なことを色々なさってはいましたが、それはあくまで過去の「プロ野球」の延長線上のお話に過ぎません。

それに比べてBリーグは、その出発からして波乱万丈。

そもそもかつての日本のバスケ界は、企業チーム主体のNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ) と、プロチームだけで構成されるbjリーグという、2つの男子トップリーグが存在しており、そのことを普及・強化の観点から問題視したFIBA(国際バスケットボール連盟) が、統合をうながしていたのだそう。

ところが互いに主張を譲らず、5年経ってもらちが明かないことから、FIBAが「すべての国際試合の出場を無期限で禁じる」という制裁を課すことに!?

そこでかつてJリーグを立ち上げた、あの川淵三郎氏主導の下、統合ではなく「Bリーグ」という新リーグをわずか9ヵ月で新設し、現在に至るわけです。


◆さて、「新リーグ創設」というカタチを取り、かつてのしがらみに縛られないことから、Bリーグは過去のプロスポーツを参考にしながらも、採る施策は極めてユニーク。

上記ポイントの1番目にあるように、データベースも、リーグ全体で統合しています。

さらに、今だからできるとも言えるのが、「スマホファースト」のスタンス。

「興味喚起から体験共有まで一連の流れがすべてスマホでできるような世界」を目指しているため、情報の出し方もSNSで拡散しやすかったり、チケットもスマホで購入&来場できるようになっています。

また、上記ポイントの2番目にあるように、「誘われたから」初めて観に来る、というのも、こうした流れに沿うものかと。

食べ物が「SNS映え」するとウケるように、まだ行った事がない人を誘いやすくするような、情報の出し方、広まり方を意識しているようです。


◆さらに、上記ポイントの3番目の「セカンダリーマーケット」による、顧客情報の収集、というのも目からウロコでした。

まだダフ屋は問題にはなっていないのかもしれませんが、リーグとしてデータを得られるという意味でも「セカンダリーマーケット」をリーグが統括することは大事でしょう。

加えて、上記ポイントの4番目の「アウェー戦の収益化」というのは、他のスポーツでも行われていないのでは?

ただし、このオールスター戦、上記リンク先をご覧いただければお分かりのように、サッカーのパブリックビューイングでよくある「広場に人集めて、スクリーンに映すだけ」のものとは、一線を画しています。

実際、チケット平均単価は、実際に試合が行われた熊本会場よりも高い5000円だったのだそう。

とはいえ、費用もかなりかかったようなので、今後技術革新によるコストダウンも必須でしょうが。


◆もちろん、Bリーグのこれまでの成功は、こうしたマーケティング要素だけでなく、「人」の要素も大きかったのは事実です。

本書では著者の葦原さんほか、主要メンバーの紹介もなされていますが、やはり大きかったのは川淵さんの存在。

たとえばスポンサー獲得の面でも、現在ソフトバンクが名を連ねているのは、川淵さんがあってこそ。

なんでも川淵さんは、Jリーグ創設の頃にソフトバンクの孫さんと関わりがあって、当時孫さんは川淵さんに「Jリーグの放送権を買わせてほしい」と白紙の小切手を差し出したことがあったのだそうです(既にNHKとの契約があって成立せず)。

正直、サッカークラスタに属する人たち(含む私w)にしてみたら、川淵さんには言いたいことも多々あるのですが、ことBリーグにおける貢献度は、かなりものもだと言わざるを得ず。


スポーツビジネスやマーケティングに携わる方なら、必読の1冊!

B07KMB25PX
稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである
第1章 「人材」でなく「人財」が成否を握る 【人材採用 論】
第2章 DNAとなった川淵流リーダーシップ論 【リーダー 論】
第3章 野球・サッカーを超える 【事業戦略 論】
第4章 ターゲットは「若者」と「女性」 【マーケティング戦略 論】
第5章 B.LEAGUE流! お金の稼ぎ方の本質 【営業 論】
第6章 すべてをかけた歴史的開幕戦の裏側 【コンテンツ 論】
第7章 B.LEAGUEの現在地、そして課題 【ビジョン 論】
あとがき
参考資料 2018―2019 B.LEAGUE各クラブ紹介マップ


【関連記事】

【実践的マーケティング】『空気のつくり方』池田 純(2016年09月05日)

【野球】『ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法』トラヴィス・ソーチック(2016年04月07日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B00MGS8LHI
洗脳 地獄の12年からの生還

レビューが240を超えているのに、星の平均が「4.8」という人気作。

絶版ゆえか中古価格が高騰しており、Kindle版が実質1700円超、お求めやすくなっています。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「マーケティング」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
Posted by smoothfoxxx at 08:00
マーケティングこのエントリーを含むはてなブックマークYahoo!ブックマークに登録

スポンサーリンク