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2019年05月30日

【経理の未来?】『会社のお金を増やす攻める経理』町田孝治


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会社のお金を増やす 攻める経理


【本の概要】

◆今日ご紹介するのも、先日の「未読本・気になる本」の記事の中で、人気だった1冊。

著者の町田孝治さんは、IT化、クラウド化、RPA化を推進する、理系の会計士・税理士さんだけあって、これからの「経理」を考える上で、勉強になりました!

アマゾンの内容紹介から。
“仕訳を完全自動化”“経理のブラックボックス化を卒業”“経理はルーティンではなくクリエイティブ”“「AI経理」で全体から詳細まで一気につかむ”社長、経理マン、必読。

中古価格が定価を大幅に上回っていますから、「20%OFF」のKindle版がオススメです!





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【ポイント】

■1.入力作業は外注で
 今や、仕訳入力のようなルーティンワークを正社員が行う意味はほとんどなくなりつつあります。
 入力のルールが統一されていることが大前提ですが、アルバイトにも任せられますし、アウトソースするという方法もあります。
 ベトナムや 上海 などで日本語ができるスタッフが入力作業を代行するサービスを使えば、1仕訳20〜30円しかかかりません。
 資料をスキャンしてネットで送り、3日から1週間後、戻ってきたデータをチェックするだけです。1つ1つの資料を見て手で入力していたことと比べると、アウトソース先からのメモの確認及び、出来上がった会計資料の確認で済むために大きな業務削減になります。
 経理で時間や労力をとられる業務と言えば、なんといっても入力作業です。低コストでアウトソースできる時代、正社員を「入力のプロ」にしておくのはもったいなさすぎます。


■2.これからはRPAが普及する
 2018年の時点で大企業の3割がすでにRPAを利用しており、導入を検討している企業と合わせると7割を超えるという調査もあります。
 さらに、今後、RPAの市場は急成長し、2022年には、RPAの国内市場規模は約400億円になるといわれています。弊社でもRPA専任の社員を採用し、ロボットを作ってもらっています。
 ということは、これから3年ほどの間に、RPAが一気に普及するということです。
 経理の仕事においては、これまでアウトソーシングしていたような入力や書類の処理などの膨大なルーティンワークをRPAで行うことが一般的になっていくでしょう。
 たとえば、これまで3時間かけていた入力が、すでに出来上がったものをチェックするだけで済むので15分で終わってしまうというイメージです。
 そのうえ、人為的なミスも防ぐことができるなど、RPAによって業務が自動化されていけば、経理の生産性は飛躍的に向上します。


■3.クラウド会計ソフトの実践力
 クラウド会計ソフトとは、クラウド上で動く会計ソフトのことです。
 クラウド会計ソフトは、ネット経由なので動きの速さに難がありますが、API( Application Programming Interface)連携設定を行うことにより、ネット上から様々な情報を収集する「自動取込」という強みがあります。
 たとえば、ネットバンキングに会計ソフトからアクセスし、必要な情報を自動で取り込んでくれます。
 ネットバンキングであれば、口座の入出金明細や摘要欄の記載、Amazonであれば買い物をした商品名、金額、日付など、クレジットカードでも利用店舗、金額、日付など、仕訳に必要な情報のほとんどを自動的にネットから吸い上げてきてくれます。
 API連携が可能な、銀行通帳やAmazon、クレジットカードなどの入力に多大な労力を費やしているなら、クラウド会計ソフトを通して取り込むことで、効率化するばかりでなく、人力による入力ミスも軽減できます。


■4.国も後押しする自動化・効率化の流れ
 エストニアほどではありませんが、実はお隣の韓国でも経理回りの電子化は急速に進んでいます。
 日本ではキャッシュレス化が2〜3割しか普及していないのに対し、韓国ではすでに9割、電子マネーではなくクレジットカードでのキャッシュレスとして中国以上にキャッシュレスが一般的になっているのです。
 また、韓国では2011年から法人事業者は電子税金決算書の発行が義務付けられており、韓国の国税庁のデータベースにオンラインですべて登録されます。
 それにより、徴税コスト(国が国民から税金を徴収するのにかかるコスト) がそれまでの半分になったといわれています。
 さらには、会計ソフトを使えば申告書の作成は誰でもできてしまうために、税理士・会計士の専門性がほとんどなくなってしまったそうです。
 韓国の人にとって会計事務所は「面倒くさい仕事を丸投げする所」という認識のようです。


■5.経理のひと言で社長は安心して突き進める
 攻めるのであれば、「これ以上行ったら危ない」という「撤退地点」を必ず決めてからでなければなりません。
 さもないと、「気がついたら、もう引き返せないほど赤字が膨らんでいた」という事態に陥るなど、ギャンブルのような経営になってしまいます。
 新たな挑戦のために倒産してしまったら、今まで培ってきた本丸のビジネスやついてきてくれている社員、取引先、金融機関などにも多大な迷惑をかけてしまいます。
 数字に強くない社長は「だいたい3000万円までなら使えるだろう」などと、どんぶり勘定で攻め始めてしまうことも多いのです。
 実際に使えるのは1500万円だったとわかったときには、すでに遅く、引きどころを間違えて、大変な損失を 被ってしまったりします。
 攻めに入る前に、経理からこんなひと言があったら、どうでしょうか。
「今、使えるキャッシュが5000万円ありますから、必要経費を除くと、1500万円までなら大丈夫です」
 会社の数字をすべて把握している経理が太鼓判を押した数字なら、間違いありません。
 社長も安心して、攻めることができるはずです。


【感想】

◆本書をすでに読了済みの方なら(新刊なので、まだ多くはないと思いますが)お気づきのように、上記ポイントはかなり偏った抜き出し方となっています。

具体的には、上記ポイントの1番目から4番目が、下記目次の第3章「これからのテクノロジーが経理にもたらすもの 数字という『ものづくり』」からのもの。

正直、こういう偏り方は、あまりしたくはないのですが、こと本書においては、この第3章こそがもっとも重要だと思いますし、実は上記以外にもハイライトを引きまくっています。

たとえば、上記ポイントの4番目では韓国のお話が出ていますが、著者の町田さんは、政府レベルでIT化が推進されている、エストニアに視察にまで行かれたのだそう。

そこでの体験談もなかなか興味深かったので、気になる方は本書にてご確認ください。


◆ちなみに私自身、業務内容から考えても、経理・会計業務こそ、こうした先端技術を取り入れるべきだと日頃から思っています。

ところが当の経理の人に限って、新しいことに対して尻込みしがちなのも事実。

これに関して町田さんの会社では、社員さんに皆、「ビジネス適正診断テスト」を受けてもらっているのですが、経理担当者は一般的に「均質採択」という行動特性が高い(一般的なビジネスパーソンの約2倍)のだそうです。

ちなみにこの「均質採択」は、「同じことを実直に繰り返す能力が高い」反面、「今のやり方を変えるということに、強い抵抗を持つ」特性とのこと。

特に経理部門の責任者だったりすると、こうした特性に加えて、中高年以上の特性でさらに「物事の変化」に抵抗があるでしょう。

なるほど、この業界でIT化が進まないのも、ある意味当然かもしれません。


◆一方、上記ポイントの5番目は、本書の第5章からのもの。

この章では、それまで述べてきた「IT化」によって経理業務が効率化され、必要な数字がタイムリーに手に入ることよって、会社がどのように変われるか、の具体例がいくつか登場しています。

確かに、中小企業にありがちなワンマン社長の説得には、「数字」の力は大きいかと。

さらには、町田さんの会社自体も、社員数と売上高を追求する「大量生産・大量消費モデル」から、「時間あたり付加価値」を目標とするようにしたのだそうです。

そしてその際に用いられているのが、「経営戦略シート」なる、KPIを管理するもの。

本書には実物の画像もありますので、こちらも本書にてご確認ください。


◆ところで本書をお読みになる方は、おそらく会社の経理部門の方か、会社の経営層もしくは税務会計事務所の方だと思います。

経理部門の方にとっては、自分がどれだけ抵抗しようにも、これからの経理がどう変わっていくかが、良く理解できるのではないか、と。

一方、会社の経営層の方にしてみれば、経理部門の抵抗にあうかもしれませんが、本書で紹介されているような技術を積極的に取り入れるよう、社内を調整していくべきでしょう。

さらには税務会計事務所の方にとっては、それこそこういう町田さんのような会計業務を行う会社に置いていかれないよう、知識と意欲を備えていくべきかと。


業界関係者、必読の1冊!

4866800372
会社のお金を増やす 攻める経理
はじめに 経理が変われば、会社が変わる
第1章「攻める経理」をイメージ
第3章 これからのテクノロジーが経理にもたらすもの 数字という「ものづくり」
第4章 新時代、会社の変革はまず経理のマインドから
第5章「攻める経理」が会社を幸せにする
おわりに 熱い思いを数字に込めて


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【KPI?】『最高の結果を出すKPIマネジメント』中尾隆一郎(2019年01月06日)

【生産性向上?】『チームの生産性をあげる。―――業務改善士が教える68の具体策』沢渡あまね(2017年07月20日)

【働き方】『完全残業ゼロのIT企業になったら何が起きたか』米村 歩,上原 梓(2017年05月12日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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