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2019年05月15日

【結婚?】『結婚不要社会』山田昌弘


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結婚不要社会 (朝日新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは昨日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、個人的に読んでみたかった作品。

結婚や少子化問題をテーマにした作品で知られる山田昌弘さんが、過去や諸外国との比較によって、現在の日本における「結婚」に関する問題点を明らかにされている1冊です。

アマゾンの内容紹介から。
なんのための結婚か?決定的な社会の矛盾がこの問いで明らかに―。好きな相手が経済的にふさわしいとは限らない、経済的にふさわしい相手を好きになるとも限らない、しかも結婚は個人の自由とされながら、社会は人々の結婚・出産を必要としている…。これらの矛盾が別々に追求されるとき、結婚は困難になると同時に、不要になるのである。平成を総括し、令和を予見する、結婚社会学の決定版!

なお、私は「20%OFF」とお得なKindle版で読みました!





The Teddy Wedding / Ambedo


【ポイント】

■1.結婚できない人はなぜ増えたのか
 経済が高度成長から低成長になった1975年以降に晩婚化、すなわち未婚化が始まります。
 そのとき結婚をめぐって生まれた現象は、収入の高い男性と結婚できる確率が低下する、という経済条件の変化でした。それでも、収入の低い男性と結婚するのを女性が厭わなければ、未婚化は起こりません。けれどもそうはならず、女性は収入が低い男性とあえて結婚することはしない──。
 つまり未婚化は、結婚をめぐる意識は変わらないけれども「経済・社会環境」が変わったがために生じた現象であり、経済の低成長という構造的要因なので将来的にも結婚できない人が増え続ける、というのが私の主張だったのです。
 けれども、研究者やマスコミも含めて当時のほとんどの中高年の人たちは「結婚なんて簡単にできるもの」と思っていたようです。そして当事者である若者たちも、「結婚なんて、本人がしたければすぐにでも相手が見つかる」と誰もが感じていた。つまり、未婚化を単なる「結婚の先延ばし」だとほとんどの人が思っていたのです。だからこそ、結婚問題が国の少子化を生み出す社会問題にまで発展してしまったのではないでしょうか。


■2.誰でも結婚できた社会
 戦後は、他の自営業でも農業と同じように上昇移動が期待できました。消費者が豊かになり、都市人口が増えることで商売も右肩上がりに売り上げが増えていきます。一方、都会に出たサラリーマン男性は、日本的雇用慣行(終身雇用や年功序列賃金)によって収入が安定して上昇移動が可能でした。
 つまり、女性にとっては誰と結婚しても経済的条件を満たしたのが、戦後の結婚の特徴なのです。(中略)
 それは高度成長期が終わるまで続きます。貧しさを経験している昭和ひとけた生まれから戦中生まれ、団塊の世代までは 95%以上の人が結婚しました。つまりこの世代のほとんどの人は、誰と結婚しても豊かな家族生活をつくれるという経済的条件を満たしていたと言うことができます。
 要するに、上昇移動への期待があり、それが実現されていたからこそ、戦後から高度成長期までは、ほとんどの人が結婚する「皆婚社会」が成り立っていたわけです。


■3.結婚の「困難性」と「不要性」
 日本でも欧米でも、経済の変動によって近代的結婚の要であった「妻子を養って豊かな生活を送れる」くらいの収入がある男性の割合が減少してきます。
 その結果、従来のかたちでは、経済生活の単位として結婚をスタートすることが難しくなる人々が徐々に増えます。
 一方で、性革命によって結婚と親密性が切り離されるようになり、好きな人と一緒にいるために結婚する必要は特になくなるわけです。(中略)
 近代社会における結婚というものは、結婚すれば豊かな生活と自分を認めてくれる親密な相手、その両方が手に入るものとして追求されてきました。
 しかし、それを両方同時に追求することが徐々に困難になってきます。その結果、豊かな生活と親密な相手が別々に追求されることによって、結婚が難しいものになり、同時に結婚自体を不要とする社会が徐々に構築されてきました。
 そして大きく分ければ、結婚の困難性が顕著になっているのが日本や東アジア諸国の状況であり、結婚の不要性が顕著になっているのが欧米諸国の状況です。


■4.日本が「欧米型結婚不要社会」にならない理由
 日本が欧米のような結婚不要社会にならない最大の理由は、日本社会が従来型の近代的結婚に固執しているということです。
 つまり日本は、結婚したら経済生活と親密性を同時に満たすことが譲れない社会なのです。だから、結婚できた人および結婚できそうな人と、結婚できない人との分裂が、1990年以降、日本では徐々に進行するわけです。
 そして、結婚しようと思っている若者のほとんどは、結婚は一生続くものだと考えています。現実には「3分の1の確率で離婚する」ということがわかっていても、しょせん3分の1なのです。
 逆だったら話は別でしょう。3分の2が離婚するというのであれば、もう結婚に頼れない、経済的に相手に頼れないと考えるでしょうが、3分の1だと、自分がその3の1に入るとは、なかなか想定できない。というよりも想定したくない。だから、自分は真面目で誠実な離婚しない人と結婚できると自然に考えるわけです。


■5.世間体社会の弊害
 ただ繰り返しになりますが、昔はみんな正社員が当たり前だったので、周りの人はせいぜい会社の名前や役職で、同じ社会的地位での上下を判断しました。いまはフリーター男性とつき合ったり、フリーターと結婚したりするケースも少なくないのですが、社会的地位として正社員よりも明らかに下に見られるので、そういう人と結婚したとはなかなか言い出せません。だから結婚自体を隠すしかなくなったりするわけです。
 つまり、せっかくの結婚を隠したくないし、社会的地位の低い人と結婚して自分が下に見られるのは、もっと嫌だというのが日本女性の特徴なのです。
 ただ、たとえば合計特殊出生率(ひとりの女性が生涯に産む子どもの数の推定)が全国トップの沖縄県では、非正規雇用の男性の割合があまりにも多いので、そういう人と結婚しても友人や親戚から何か言われることは少ないのでしょう。それが沖縄の当たり前、いわば見栄を張る必要がないのであって、だから非正規雇用の男性の結婚も多く、そのおかげで結婚して子どもが生まれる割合が全国でも特に高いというわけです。


【感想】

◆なかなかに「重い」内容の作品でした。

日本がいかに、「結婚しない」というより、「結婚できない」社会になっていったか、ということが良く分かると言いますか。

その「いかに結婚できなくなったか」に関して、本書の「はじめに」には、こんな一節があります。
2015年の国勢調査によれば、30代前半の未婚率は男性47.1%、女性34.6%。1975年のそれは男性14.3%、女性7.7%だったのです。
男性で3倍、女性で4倍超の男女が、結婚できなくなっている次第。

実際、その傾向が顕著になり始めてからも、上記ポイントの1番目にもあるように、研究者はおろか、中高年はもちろんのこと、当事者である若者たちも「未婚を単なる『結婚の先延ばし』」だと思っていたワケです。


◆そこで本書は、まず過去にさかのぼって「誰でも結婚できた時代」を分析。

上記ポイントの2番目にもあるように、戦後は団塊の世代までの95%以上の人が結婚しています。

それはひとえに、経済成長にともなって「誰と結婚しても、親と暮らすよりも良い生活」が望めたから。

それが今では、結婚するより、親と暮らしてた方が良い生活ができるがゆえの「パラサイト・シングル」を、男女とも選択しているケースが多いという。

パラサイト・シングル - Wikipedia

……知らなかったんですが、この「パラサイト・シングル」という言葉自体、著者の山田さんがお考えになったものだったんですね。


◆一方欧米は、というと、結婚が「困難」というよりも「不要」という選択をしています。

要は、「親密な関係性」と「経済目的」を果たすには、結婚にこだわらなくてもいい、ということ。
結婚が不要になっている欧米社会では、同棲や事実婚が増えています。ただ今日でも、欧米における結婚には、宗教的な意味が強くあります。つまりギデンズやベックが言ったように、欧米の結婚は制度・宗教的側面の意味しかなくなっているというわけです。
ところが、日本の場合は、女性が経済的に独立できないケースが多いため、「経済生活」を満たす相手をまず選ばざるを得ません。

実際、朝日新聞が2018年12月に行ったネット調査「未婚の若者の結婚観」(25〜34歳の男女、約1000人)では、「結婚相手に譲れぬ条件」として、 72%の女性が「収入」を挙げたのだそう(男性は29%)。

ちなみに女性月刊誌『JJ』2019年2月号が行った調査では
結婚相手の男性の年収は700万円以上(1千万円以上含む)と答えた女性が60%近くいて、年収を気にしない女性は約8%にしか過ぎません。
という圧巻(?)な結果が出ています。

もっとも男性は結婚相手に「若さ」を求める傾向が強いので、『JJ』読者あたりが「高値」で求められるのも分からなくはないのですが。

何せこの本でも書かれていましたけど、2020年には、女性の2人に1人が50歳以上になってしまいますからねぇ。

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未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

参考記事:【少子高齢化】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』河合雅司(2017年06月27日)


◆また、女性が収入にこだわらない、という選択をしたくても、なかなかしずらい原因が、上記ポイントの5番目にある「世間体」です。

そこにある沖縄のケースは知りませんでしたけど、女性本人やその親が、結婚相手の肩書を気にしてしまうのが、日本の特性のよう。

確かに、交際相手ならまだしも、「結婚」となると両親が世間体にこだわる、というのも分からなくはありません。

何せ上記でも触れたように、自分たちの世代は、望めば誰でも結婚できた時代だったワケですし。

ところが、そうやって結婚を躊躇、ないしは「もっといい相手がいる」と先送りしてしまうと、女性の大きな価値である「若さ」も失われてしまいます。

……こうなったら結局のところ、男女ともそれぞれ相手の「若さ」「収入」に譲歩してもらうしかないのかもしれませんね。


今の日本で結婚することが、いかに難しいかが分かる1冊!

402295020X
結婚不要社会 (朝日新書)
第1章 結婚困難社会―結婚をめぐる日本の現状
第2章 結婚再考―なぜ結婚が「必要」なのか
第3章 近代社会と結婚―結婚不可欠社会
第4章 戦後日本の結婚状況―皆婚社会の到来
第5章 「結婚不要社会」へ―近代的結婚の危機
第6章 結婚困難社会―日本の対応


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【少子高齢化】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』河合雅司(2017年06月27日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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