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2019年04月29日

【考えるということ】『問い続ける力』石川善樹


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問い続ける力 (ちくま新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、ベスト3に入る人気ぶりだった思考術本。

著者の石川善樹さんは、以前当ブログで、吉田尚記さんとの共著をご紹介したことのある予防医学者さんです。

アマゾンの内容紹介から。
「自分で考えなさい」―誰もが一度は言われたことがある言葉だろう。でも、何をどう考えたらいいのか?そこで、様々な分野で突出している達人、9人のもとをたずねて聞いてみた。「どんなことを考えてますか?」時代、社会、文化、アート、性、経済、人間とAI…、問い続け、考える達人たちとの縦横無尽の対話は深く、広く、「Think Different」のヒントにあふれている。

なお、中古が定価を上回っていますから、若干お得なKindle版がオススメです!






Le Penseur / Juanedc


【ポイント】

■1.例外にこそ本質が現われる
 帰納法とは、「個別の事例から一般的な法則を導くこと」をいう。日本では高校数学で習うので、なんとなく言葉だけは聞いたことがある方も多いかもしれない。この手法が考案されたことで、科学は大きな飛躍を遂げることになるのだが、この帰納法の面白い使い方を紹介しよう。
 前にも登場した北川拓也氏(理論物理学者、楽天常務) は、よく次のようなことを言っている。
「物事の本質を捉えるためには、単純で極端なケースを考えるとよい」  
 たとえば、血液型と性格の関係について何か本質的なパターンを導こうと思ったら、「大ざっぱなO型」という誰もが想定しそうな事例に注目するよりも、たとえば「神経質なO型」という外れ値に思える事例に着目した方が、本質に迫る可能性がある。
 この「例外を例外として切り捨てるのでなく、そこに本質が現れているかも!?」という姿勢は、科学だけでなく、ビジネスや社会変革など、あらゆる分野で応用可能だ。


■2.「考えるとは何か?」を分解する
 では「考えるとは何か?」という問いはどのように分解できるのか? 数カ月ほど試行錯誤してみたのだが、まあこれでいいかなと思えたのが、プロセスで分解するというものである。
(1) いかにして考え始めるのか?
(2) いかにして考えを進めるのか?
(3) いかにして考えをまとめるのか?
 このように分解してみると、「あーなるほどな」という気づきがあった。というのも、科学者という人間は、あまり「Why(なぜ)」という形式で考え始めないのだ。それよりは「How(いかにして)」で始まる問いを立ててから思考を進めることが多い。実際、これら3つの問いを眺めると、すべて「How」から始まっている。
 その理由はおそらく、「Why」という問いかけは宗教に特有な形式で、科学はそれに反発することで生まれたという歴史的背景があるからだろう。


■3.間接的アプローチで考える
 たとえば、城があったら、とにかくそれを力攻めにするのが直接的アプローチです。一方、間接的アプローチは、この城を攻めても落ちないことがわかったとき、この城があることで相手はどういうメリットを得ているのかと考える。それで、城はふもとの街を守るために作られたんだということがわかれば、街を先に落としちゃえば、この城は存在意義がなくなっちゃうわけじゃないですか。だから、ふもとの街を落とすことで、間接的に城の存在価値を失わせて勝つのが間接的アプローチという方法です。
 リデル=ハートは、昔の戦争を何百も分析して、直接的アプローチで勝ったものと、間接的アプローチで勝ったものを数え上げたんですね。そうしたら、直接的アプローチだと、ほとんど引き分けに近いものしかなかった。本当に勝ったと言える事例のほとんどは、間接的アプローチによるものだったということが明らかになっているんです。
 科学でも実は同じことが言えますよね。ある方程式が解けないと言っているときは、みんな直接的アプローチなんですね。

(物理学者 長沼伸一郎)


■4.整合性をとるにはどうするか
 孟子の性善説と荀子の性悪説がその典型ですよね。その内容だけを読むと、人間の思考って単純なので、矛盾したものと捉えてしまいますよね。
 でも中国の議論を見ると、孟子はインテリを相手に善だと言ったのに対して、荀子は庶民を相手に、性は悪だから教育しないとあかんでと言っているんです。これだったら、矛盾はしません。(中略)
 善い人か悪い人か、好きか嫌いかという二項対立はわかりやすいから、人々の心にもアピールしやすいんです。でもそのままでは、統合はできないですよね。
 だとしたら、丁寧に状況や関係性を考えて、AとBを腑分けするか、新しいCという上位概念をつくって、AとBの対立を包摂するしかないんです。弁証法ですね。
 AかBかという対立軸は、これ以外に解決策はないと思うんですよね。違う変数を入れることによって、AもBも取れるように状況を変えてしまうか。あるいは、AとBを包摂する新しい概念をつくるか、そのどちらかでしょう。

(立命館アジア太平洋大学学長 出口治明)


■5.大局観をどう磨くか
 大局観を別の言葉で言いかえると「メタ認知」ということですよね。メタ認知ができないと間違うんですよ。コンサルタントというのは、自分がドライバーシートに座ることはなく、ナビ役を務める。そこでは俯瞰したうえで方向性が違うことを指摘したり、あるいは「それは仮説じゃなくて、一応可能な範囲で、データで証明できて蓋然性が高い」とアドバイスしたりする。そのときに大事なのは、鳥の目と虫の目を行ったり来たりできることなんですね。
 どんな人でも、自分の得意とする視座の高さがあります。1メートルだったら誰にも負けない人もいれば、上空1000メートルという超ヴィジョナリーなために、周りの人が付いていけない人もいる。その両方を行ったり来たりしながら、その人が120パーセントの力を出せるようにどう手伝うかを考える。シニアなコンサルタントというのは、そういう商売なんです。

(ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー 御立尚資)


【感想】

◆冒頭の内容紹介でも触れているように、「考える」という行為に対して、多方面からアプローチしている作品でした。

まず前半の第1部「『問い』を問う」において展開されているのが、著者の石川さんご自身の考察等。

上記ポイントの1番目の帰納法に「例外」関しては、1990年にベトナムで行われた、低栄養の子どもたちの調査の例が紹介されています。

調査を行ったのは、国連組織「セーブ・ザ・チルドレン」から派遣されたジェリー・スターニンなる人物。

なんでも2000人以上の子どもたちを調べると、64%もの子どもたちが低栄養だったのだそうです。

ここで普通にデータだけを見ても、低栄養を引き起こすのは「貧困」である、としか言いようがなく。

そこでスターニンが着目したのが、「例外的」である「非常に貧しい家庭で育っているにも関わらず、栄養状態がいい子ども」の共通点です。

それを基に、母親向けの2週間プログラムを作成したところ、その後の2年間でベトナムの子どもの低栄養は、85%も減少したのだとか(詳細は本書を)。


◆続く上記ポイントの2番目もこの第1部からのもの。

最初石川さんは「考えるとは何か?」について考え始めたものの、問いが抽象的で難しすぎて断念したのだそう。

そこでこの問いを、上記のように取り組みやすい形に小さく分解。

結果、次のような結論に達したとのことです。
ここで一度整理をすると、「Why」という問いかけを突き詰めると「Who(神様)」に行きつきやすい。それゆえ科学は「What」から問いはじめ、それを「How」という形式に変えて考えを進めまとめていく。どうもそのような構造があるらしいと最近思っている。
つまり、何かしらのテーマに対しては、「○○とは何か?(What)」、「いかにして……(How)」という順番で考えを進めていけば良いということ。

この方法を石川さんも推奨されていますので、読者の皆さまもぜひお試しアレ。


◆さて、第2部からは、石川さんと各界の「達人」たちとの対談集。

実際、後半の8割くらいがこの対談集であり、登場する9名のメンツは、下記目次にあるとおりです。

当ブログで著作をご紹介したことのある出口さんや二村ヒトシさん、それに有名なBCGの御立さんあたりは私も存じていましたが、それ以外の方々は正直お名前を見たことがある、程度の知識しかなく(恥)。

中でも最初に登場した長沼伸一郎さんは、若干26歳でこの本を書き上げ、理系世界に一躍名を知られたのだとか。

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物理数学の直観的方法―難解な数学的諸概念はどう簡略化できるか

そちらは見たことがありませんでしたが、こちらのブルーバックス版は、Kindleセールで何度かご紹介したことがあったかと。

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物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉 (ブルーバックス)

上記ポイントの3番目では、その長沼さんの推奨する「間接的アプローチ」について引用していますが、たとえばフェルマーの最終定理も、直接解こうとして解けなかったのが、回り道したら解けたものなのだそうです。

他にもこの長沼さんのパートは、興味深いお話が多々あったのですが、一番驚いたのが「高2のときに微分方程式の概念まで自力でたどり着いた」ことだったり……。


◆逆に上記ポイントの4番目の出口さんは、当ブログでもかなり著作をご紹介していますし、なじみ深い方も多いと思います。

ちなみに、石川さんが最初に読んだ出口さんの著作は、当ブログ未紹介のこちらというw

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仕事に効く 教養としての「世界史」

この本がとっかかりだけあって、このパートではお話も全世界におよび、かつ歴史もたどるという、出口さんお得意の「タテヨコ」メソッドが全開。

また、それとは違うんですが、「人間は見える化に弱い」という指摘は、なるほど納得です。

そして読書に関しても「役に立つとかあまり考えないほうがいい」と、バッサリ。
本を2冊、3冊読んで、仕事に役に立つとか、人生に役立つとか、そんな簡単なもんやったら人生楽ですよね、と。そんな都合のいい本はありません。だから好きなものを読めばいい。好きなものを読んで読みまくって、一生の間に1回か2回役に立ったらラッキーと思うぐらいでちょうどいいんです。
私自身、耳イタイですが、ご参考までw


◆一方、上記ポイントの5番目の御立尚資さんは、当ブログではあまりご紹介してきませんでしたが、いわゆる「外資系コンサル」の先駆けとして、波頭亮さんらと並んで名の知られている方。

ここで触れられている「視座」については、別の部分で「視点」「視野」との関係についてこう言われています。
視点は1つで「これは面白い切り口だな」というもの。視野はもうちょっとブロードに全体を眺めるもの。それをもっと上から俯瞰すると視座になる。  物事を大局的に見るためには、この3つを行き来しないといけない。
またこれは、時間軸についても同様で、1000年、100年、30年、5年、今年と、往復させる必要があるとのこと。

……と9人中、最初の3人で一杯になってしまいましたが、その他の6人の方についても、興味深いお話が満載なので、ぜひご確認を。

特に、外国人としては史上最年少でミシュランを獲得した松嶋啓介さんのお話は、非常に面白かったのでお見逃しなく!

いずれにせよ本書は、ただ読み流すだけでなく、色々と考えを巡らせながら、読み解くと良いと思います。


思考停止せず、問い続けるたいなら読むべし!

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問い続ける力 (ちくま新書)
第1部 「問い」を問う
ぼくらのグランド・チャレンジ
問いの本質―演繹と帰納
イノベーションを生み出す問い
「信じる」ことの効用
偉大な研究者の共通点
どこから考え始めるか
考えるとは何か?
戦争と平和

第2部 問い続ける達人たち
長沼伸一郎―考えるとは何か?
出口治明―時代とは何か?
御立尚資―大局観とは何か?
寺西重郎―日本的資本主義とは何か?
岩佐文夫―直観とは何か?
若林恵―文化とは何か?
二村ヒトシ―性とは何か?
松嶋啓介―アートとは何か?
松王政浩―証拠とは何か?


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B009IK4LY4
英文法のトリセツ 中学レベル完結編

サブタイトルが「中学レベル完結編」となっていますが、中学レベルをはるかに上回る内容のようなのでご留意を。

絶版となった中古に高値が付いているため、送料を踏まえるとKindle版が1800円以上お得となります。


【編集後記2】

◆昨日の「小学館 GWセール」の記事で人気だったのは、この辺でした。

B07JY5DQVR
0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書

B07N74P6NT
僕たちはもう働かなくていい(小学館新書)

B07KXFBYQT
発想力 〜「0から1」を生み出す15の方法〜(小学館新書)

参考記事:【ケース・スタディ】『「0から1」の発想術』大前研一(2016年04月23日)

B07KM2DSY5
「非認知能力」の育て方〜心の強い幸せな子になる0〜10歳の家庭教育〜

宜しければご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 10:30
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