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2019年03月29日

【経済】『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』ヤニス・バルファキス


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父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月初めの「未読本・気になる本の記事」でご紹介して、人気だった1冊。

土井英司さんもメルマガで「必読」と断言されていたので迷わず買ったのですが、その後のセール記事等に埋もれて、今まで積読状態になっていました(すいません)。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「資本」や「資本主義」という言葉を使わずに経済を語ったら、とんでもなく本質がわかるようになった!
経済の本なのに「一気に読める」
「ページをめくる手が止まらない」と話題沸騰!
読み終えた瞬間、世界が180度変わって見える!

版元が単独セールをしないダイヤモンド社さんなので、1割引きのKindle版で私は読みました!





Dagmar Enkelmann, Yanis Varoufakis, Florian Weis / rosalux-stiftung


【ポイント】

■1.なぜアフリカから強国が出てこなかったのか
 ユーラシア大陸を太平洋岸から大西洋岸まで旅しても気候はあまり変わらない。しかし、アフリカ大陸で南のヨハネスブルクから北のアレキサンドリアまで旅すると、いろいろな気候帯を通過する。熱帯のジャングルやサハラ砂漠といった極端な気候もある。
 アフリカの一部で農耕経済を発展させた社会があっても(たとえばいまのジンバブエがそうだ)、その仕組みは広がらなかった。赤道を隔てて南北に長いアフリカ大陸では、北部では栽培できる作物も南部では育たない。もちろん、サハラ砂漠ではどんな作物も育たなかった。
 一方、ユーラシア大陸では誰かが農耕技術を発明したとたん、それが西と東にあっという間に広がった。穀物(とくに小麦) はどこでも育ったので、リスボンから上海まで同じような小麦畑が広がっていった。侵略も盛んだった。ひとつの農耕民族がほかの民族の余剰を略奪し、自分たちの技術を別の場所でも生かすことができた。そうやってユーラシア大陸では巨大な帝国が築かれた。


■2.国債が銀行に好かれるわけ
 金持ちたちは政府が借り入れなしでやっていけるほど十分な税金を払いたがらないので、国は債券を発行して銀行や金持ちに「販売」し、国家運営に必要な費用を 賄うことになる。そして政府は道路、病院、学校、警察といったさまざまなものにそのおカネを使う。政府が備品を買ったり、給料を支払ったりすることで、直接に経済を循環させ、銀行も含めてすべての人がその恩恵にあずかることができる。
 しかし、公的債務が銀行の得になる理由はこれだけではない。
 銀行が何より嫌うのは現金だ。金庫の中やスプレッドシート上に眠っている、利子を生まないおカネを、銀行は何よりも嫌がる。しかし、預金者が一度に預金を返してくれとやってきたら、銀行は 脆くも崩壊することもわかっている。
 だから、預金者が預金を引き出しにきたときのために、すぐに現金に換えられる何かを手元に置いておく必要がある。国債はそれにぴったりなのだ。
 人々が政府を信じている限り、国債にはかならず買い手がつく。その意味で、国債は特別だ。これほど安全で換金しやすい債権はほかにない。だから銀行は国債が大好きなのだ。


■3.一律に賃金を下げても雇用は増えない
 一律に賃金が下がれば劇的な変化が起きる。中でもいちばん変わるのは、消費者の購買力だ。
 マリアが賢い経営者なら、こう考えるだろう。
「大変! 労働組合が賃金を2割も下げていいと言ったら、労働者の暮らしはますます厳しくなるはず。もちろん、私の払う給料が2割も少なくなるのはありがたいけれど、そんなに低賃金だと冷蔵庫を買うおカネもなくなるんじゃない?」
もしマリアが特別に優れた経営者なら、さらにここまで考えるだろう。
「いまは冷蔵庫を買ってくれる消費者がいると私は思うけれど、このニュースを見たほかの経営者は先行きに確信を持てなくなるに違いない。ほかの経営者が採用を止めたら、冷蔵庫を買う人は減る。それなら私も採用を止めたほうがいい」
 そして、おそらくマリアはワシリーを雇わない。(中略)
 だから、失業否定派は間違っている。労働市場は労働力の交換価値だけで動くものではない。経済全体の先行きに対する楽観と悲観に左右されるのだ。だから一律に賃金を下げても雇用は増えないし、逆に失業が増える可能性もある。


■4.事業が成り立たないほど価格が下がる3つのわけ
先端の自動車工場、スマートフォンやラップトップの工場では、大量のロボットがほとんどの仕事をしている。人間の手が入る余地はほとんどない。しかし、自動化を支えるのは利益であり、価格がコストを上回らなければ利益は蓄積されない。問題は、3つの力が価格をコスト以下に押し下げてしまうことだ。
 まず、「自動化」でコストが下がる。
 次に、コストは下がっても、製造企業同士の過酷な「競争」によって価格はそのコストをそれほど上回らなくなる。すると利益は最低限にとどまる。
 最後に、工場で働くロボットは製造には役立っても、製品を買ってはくれない。すると「需要」が下がる。
 マルクスによると、これら3つの力によって、価格はやがて、製造コストやその他すべての費用を賄えない水準にまで押し下げられる。すると、イカロスと同じように市場社会の翼も溶けはじめる。
 自動化が猛スピードで進んでいる現代は、事業が成り立たないほどに価格が下がる可能性が、これまでになく高まっている。


■5.仮想通貨の上限問題
 国家の保護がないことは、たしかに仮想通貨の深刻な欠陥だ。良くも悪くも、われわれを組織犯罪から最終的に守ってくれるのが国家であることは間違いない。
 しかし、国家に紐づかないビットコインのような仮想通貨の最大の弱点は、そこではない。最大の弱点は、危機が起きたときにマネーの流通量を調整できないことにある。
 仮想通貨の仕組みはそもそも、誰もマネーサプライに介入できないことが前提になっている。危機が起きたときにマネーサプライを調整できなければ、危機はますます深刻になる。それはこれまでに見てきた通りだ。
 ビットコインの総量はアルゴリズムによって決まっている(正確に言うと、その総量は少しずつ増えていき、やがて発行上限である2100万ビットコインに達する。さらに正確に言うと、その上限に達するのは2032年のどこかの時点となる)。だが、これには大きな問題がある。理由はふたつ。まず、総量が決まっていることで、危機が起きやすくなる。次に、危機が起きたらそれを和らげるのが難しくなる。

(詳細は本書を)


【感想】

◆本書はタイトルにもあるように、著者であるヤニス・バルファキス教授が、十代半ばの娘さんに向けた書いたもの。

従って、必然的に本書は、ある程度理解しやすい形に仕上げられていることは間違いなく、私も最後まで読了することができました。

ただ、内容の難しさとは別の次元で、当ブログの読者さんもやや戸惑うかな、と思われるのが、その文体というか表現方法です。

実際、アマゾンのページの「出版社より」という部分に、推薦文が載せられているのですが、そこでブレディみかこさんいわく、「経済をこれほど詩的に語れる書き手が、いまほかにいるだろうか」とのこと。

その「詩的」に関連して、たとえば上記ポイントの4番目にも「イカロス」というギリシャ神話の登場人物が出てきますし、他にもちょいちょい神話絡みの比喩表現が、本署には登場しています。

とはいえ巻末の「訳者あとがき」によると、単なる堅物な教授ではなく、「革ジャンにスキンヘッドでバイクを乗り回す」人物(上記サムネイルの真ん中がバルファキス教授)らしく、あの映画『マトリックス』になぞらえた表現もありましたから、この手のたとえがお好きな方には結構ツボかもしれません。

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マトリックス 特別版 [DVD]


◆さて、具体的な内容について触れていくと、まず上記ポイントの1番目に関しては、第1章の「なぜ、こんなに『格差』があるのか?」からのもの。

この件については、ジャレド・ダイアモンドのこの本でも有名ですから、ご存知の方も多いと思います。

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銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎 文庫 (上)(下)巻セット

また、アフリカ大陸だけでなく、かつてオーストラリアがイギリスに侵略されたことにも触れて、なぜ逆ではなかったのかについて考察。

教授いわく、「ユーラシア大陸の土地と気候が農耕と余剰を生み出し、余剰がその他のさまざまなものを生み出し、国家の支配者が軍隊を持ち、武器を装備できるようになった」のに対して、「オーストラリアでは自然の食べ物に事欠くことがなかった」ため「余剰が生まれなかった」のだそうです。

そしてこの「余剰」こそが、現代の「格差」へとつながっているという(詳細は本書を)。


◆一方、上記ポイントの3番目は「賃金」と「労働」の関係についてのお話です。

ちなみに唐突に冷蔵庫が出てくるのは、この話の前提として、登場人物の「マリア」が冷蔵庫メーカーの経営者だから。

そして「ワシリー」とは、現在失業中の男性。

一般的に、1人当たりの賃金を下げれば、その分雇用される人が増えて、失業率も下がりそうなものです。

確かに「他の要素すべてが今のままなら」そうなのですが、実際にはここで述べられているように、「消費者の購買力」が下がるため、経営者が採用を増やすとは限らないのでした。


◆さらにこれは、上記ポイントの4番目に出てくる「機械」にも言えること。

確かに機械化、自動化が進めばコストは下がります。

ただし、ここで言われているように「ロボットは製造には役立っても、製品を買ってはくれない」のですから、需要自体は下がる次第。

また、ここでは触れられていませんが、ロボットは税金も払いませんから、税収も落ちる……というワケで、ゲイツ氏の主張も現実性を帯びてきます。

ビル・ゲイツが賛同するロボット税とは何か | グローバルアイ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

今でもGAFAによって、潰れたりなくなった雇用と比べて、はるかに少ない人数しかGAFAは雇っていないのですから、たとえ魅力的な製品やサービスを作り出したとしても、それを享受できる人自体は減っているかと。


◆また本書の第7章の「誰にも管理されない『新しいお金』」では、上記ポイントの5番目にあるように「仮想通貨」にまで言及しています。

上記引用部分の最後にある「大きな問題」について簡単に触れておくと、まず発行量に上限がある以上「デフレ効果が起きる」とのこと。

つまり、ビットコインの総量が変わらないのにモノは増えるため、相対的にモノの値段も下がり、ひいては労働者の賃金も下がって、需要が落ち込むワケです。

加えて、経済危機が起きた際には、通貨供給量が変えられないため、まさに「何の手も打てない」という。

そもそも「当局の管理が及ばない」のが仮想通貨なのですから、経済政策としては使いようがないのも当然ですか……。

なかなか、こういう指摘は読んだことがなかったので、個人的には新鮮でした。


経済の「本質」を俯瞰できる1冊!

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父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本
第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか?――答えは1万年以上前にさかのぼる
第2章 市場社会の誕生――いくらで売れるか、それがすべて
第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ――すべての富が借金から生まれる世界
第4章 「金融」の黒魔術――こうしてお金は生まれては消える
第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界――悪魔が潜むふたつの市場
第6章 恐るべき「機械」の呪い――自動化するほど苦しくなる矛盾
第7章 誰にも管理されない「新しいお金」――収容所のタバコとビットコインのファンタジー
第8章 人は地球の「ウイルス」か?――宿主を破壊する市場のシステム
エピローグ 進む方向を見つける「思考実験」


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【オススメ】『評価と贈与の経済学』内田 樹,岡田斗司夫 FREEex(2013年02月28日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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お金を稼ぐ人は、なぜ、筋トレをしているのか?

おなじみ千田琢哉さんが、筋トレ本を出していたとは存じませんでした。

送料を足しても中古の方が数十円お得ではありますが、千田さんのファンや、筋トレ好きな方なら要チェックで!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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