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2019年02月15日

【生活】『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』熊谷 徹


ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか (青春新書インテリジェンス)
ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか (青春新書インテリジェンス)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも、個人的に気になっていた1冊。

著者の熊谷 徹さんは、1990年以来、29年もドイツで生活されてきただけあって、日独の比較に関しても説得力がありました。

アマゾンの内容紹介から。
ドイツ人の平均可処分所得(手取り)は年290万円と意外に低い。しかも、消費税(付加価値税)は19%と高い。にもかかわらず、多くのドイツ人が「生活に満足している」のはなぜか?
いっぽう、サービスが行き届いた世界一便利な国・日本で、日本人の多くが生活に「ゆとり」を感じられないのはなぜか?
ドイツ在住29年のジャーナリストが肌で感じた「ドイツ流・お金に振り回されない」生き方を明らかにした一冊。

なお、中古価格が高騰していますから、定価よりお得なKindle版がオススメです!





Flag of Germany / Tobi NDH


【ポイント】

■1.他人のサービスに期待しすぎない
 私もドイツへ来た1990年頃には、サービスの悪さについてしばしば腹を立てていた。だがこの国に長らく住んでいるうちに、「ドイツだけでなく、日本から一歩外へ出るとサービスは基本的に悪い」という考え方が身についてしまった。いくらじたばたしても、他人の行動や考え方を変えることはできないので、自分の感受性を変えたのだ。サービスに対する期待度を下げると、スーッと気持ちが楽になる。私の態度について、「悪いサービスの前に降伏したのか」と呆れる人もいるかもしれないが、この方が精神衛生上、メリットが大きい。
 レストランで店員がなかなか注文を取りに来ず、待ちぼうけを食わされても「経営者が人件費を節約しようとしているので、従業員の数が足りないからすぐに注文を取りに来られないのだろうなあ。かわいそうだなあ」と思うくらいだ。


■2.ドイツの新しい通貨は自由時間
 実際、この国の企業関係者の間では、「ドイツの新しい通貨は自由時間だ」という見方が強まっている。お金よりもプライベートな時間の方が重要だと考える人が増えているという意味だ。若い労働者の間では賃上げよりも休暇日数の増加や時短を求める人の方が多くなっている。「月給が増えなくても、家族と過ごす時間が増えればいい」と考える人が主流になりつつあるのだ。
 このメンタリティーは、ドイツ人がお金に振り回されていないことをはっきりと示すものである。この国では多くの人が、「時間とカネ」をクールに天秤にかけているのだ。お金以外の価値の比重が高まっているために、金銭の持つ意味が、相対的に低くなりつつある。その点で日本に比べると余裕がある社会なのだ。
 現在、ドイツの景気は、1990年の東西統一以来、最も良い状態にある。企業では人手不足が深刻化しているので、企業も若者たちのこうした希望に合わせて対応しなくては、優秀な人材を採用することが難しくなっている。


■3.ドイツの労働生産性の高さの秘密
 ドイツの労働生産性が高い最大の理由は、労働時間の短さにある。GDPでは世界第3位の日本の労働生産性が低いのは、長い労働時間のせいだ。
 もちろん労働生産性は、業種ごとに異なる。たとえば日本の機械製造業界、特に自動車産業の労働生産性は、ドイツよりもはるかに高いといわれている。しかし、日本のサービス業の労働生産性はドイツよりも大幅に低い。OECDの統計には製造業からサービス業まであらゆる業種が含まれている。日本では、自動車など一部の業種で労働生産性が高いのに、サービス業の労働生産性が低いので、全体としてはドイツに水をあけられているのだ。
 ドイツ人よりも長く働いているのに、一人ひとりが1時間働くことで生む価値は低い。これは我々日本人の働き方に、ドイツよりも非効率な部分があることを物語っている。


■4.消費税(付加価値税)19%でも生活していける理由
 前述のように、ドイツでは商品には日本の消費税に相当する付加価値税がかけられている。その税率は19%であり、日本をはるかに上回る。ただしドイツ政府は、牛乳やバター、パンなどの生活必需品については、付加価値税を7%と大幅に低くしている。贅沢品ほど付加価値税が高くなる傾向がある。たとえば小海老の付加価値税は7%だが、贅沢品とみられている伊勢海老の付加価値税は19%である。
 その理由は、所得が低い人ほど付加価値税の負担が重くのしかかるからだ。日本でも消費税率を10%にするにあたって、軽減税率の導入をはかろうとしているが、ドイツ政府は、以前から低所得者に対して配慮しているのだ。


■5.法律で義務付けられているリサイクル
 ドイツで売られているミネラルウォーターなどの清涼飲料水、ガラスの瓶詰ヨーグルト、ビールなどの価格には、ガラス瓶やペットボトルの貸出料金が含まれている。スーパーなどの値札には、貸出料金が表示されている。
 市民が瓶をスーパーマーケットの回収機に入れると、返した瓶の料金を書いたレシートが出てくる。このレシートをレジで提出すれば、買った物の金額から、返却した瓶の料金が差し引かれる。つまり、瓶を返せばその分、買い物にかかるコストが低くなるのだ。これは「瓶をゴミ箱に捨てずに返そう」という強力なインセンティブになる。
 たとえば、あるミネラルウォーターの値段は94セント(122円)だが、この中には15セント(19.5円)のペットボトルの貸出料金が含まれている。このペットボトルをスーパーで返せば、15セントが戻って来るのだ。


【感想】

◆本書はドイツ人の生活がなぜ、日本人と比べて「豊か」なのかを、多方面から分析した作品でした。

中でも著者である熊谷さんがフォーカスしているのが、ドイツの微妙な「サービス」について。

本書の第1章では、これでもかとばかりに、ドイツにおけるサービスの不毛さの実例が登場するのですが、これがもう日本と比べると、あきらかに貧弱というかヒドイというか。

たとえば売り場面積が大きいお店でも店員が少なく、商品を探す以前に、まず店員を探すことなど日常茶飯事のようです。

他にも飲食店で細かいお金がなくて、高額紙幣(100ユーロ≒13000円)を出したら、すごい剣幕で怒られたり、居酒屋で店員がコースターを投げてよこす等々。

しかもこんなサービスに対しても、チップを払わねばならないというのが泣かせます。


◆とはいえ、「逆に日本のサービスは過剰すぎるのでは?」という考察から、本書の第2章では「みんなが不便を『ちょっとだけ我慢する』社会」と題して、ほどほどのサービスで満足することを推奨。

確かに上記ポイントの1番目にあるように、初めから行き届いたサービスを期待していなければ、それほど腹が立つこともありません。

ただしこれは、私たち自身が今、当たり前のように受けているサービスに対して、「過剰」だと意識しなければならないということ。

たとえば上記で触れたような店員が少ない状況で、満足な接客が受けられなくても「そんなものだ」と思う必要があります。

とはいえ、ちょっとの不手際でもSNSに投稿される昨今の風潮だと、なかなか難しいのかも。

それでもドイツでは炎上していない(多分)ということは、ドイツではそれが「当たり前」なんでしょうね。


◆一方第3章では、ドイツ人の「お金」と「時間」についての言及が。

上記ポイントの2番目にもあるように、ドイツでは「若い労働者の間では賃上げよりも休暇日数の増加や時短を求める人の方が多くなっている」というのには、少々驚きました。

……これ、残業代目当てでダラダラ残業している人もいる日本では、考えられない気が。

と言いますか、そもそもドイツは労働時間が短いがゆえ、生産性が高いのが特徴です。

その辺については、以前ご紹介したこの本にも詳しいのですが。

仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える
仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える

参考記事:【生産性】『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える』隅田 貫(2017年12月08日)

何せドイツの労働時間は、法律によって厳しく定められており、1日当たり8時間を超えられない(最大10時間だが、その分他の日を減らす必要アリ)のだとか。

また、有休の最低日数も高く、かつ、有休の消化率も高いのだそうです。


◆加えてドイツ人が、お金をかけずに生活できることを紹介しているのが本書の第4章の「ドイツ人はお金をかけずに生活を楽しむ達人」。

何でもドイツ人が余暇に最も重視しているのは「都会でのショッピングではなく、海辺や山で自然を満喫すること、そして家族と一緒の時間を楽しむこと」なのだとか。
ドイツの公的健康保険運営組織DAKが2018年に行ったアンケートによると、「休暇の最大の魅力は、太陽の光と自然」と答えた人が最も多かった。
具体的にはサイクリングや散歩、ジョギング等々。

そして旅行では、2〜3週間のまとまった休暇を取るのが常識となっていることから、海外旅行も長期の安いパック旅行を活用します。

……そもそも「安い海外旅行」と言っても、欧州内であれば車で移動できるのも大きいようですが。

なお、上記ポイントの4番目にあるように、消費税(付加価値税)に軽減税率があることは知っていましたが、「19%対7%」というのは、倍以上違うワケで、これは確かに大きいかも。

少なくとも、家の周りを散歩して、森の中でお弁当を食べたりしている分には、安上がりに生活できるようです。


◆また、直接的に「豊か」になることとは異なりますが、ドイツという国自体が、熱心にリサイクルに取り組んでいることを示したのが本書の第5章。

上記ポイントの5番目にある、瓶の回収機のお話は初めて知りましたけど、「94セント中15セント」が貸出料金というのは、かなりの割合です。

なるほどこれなら、積極的にリサイクルに取り組むのも当然かと。

もちろんこれに限らず、古い物を大事に使ったり、中古品を買って使うのにも慣れているようで、日本人のようにどんどん新しい物に買い替えるのではないのだとか。

その点、日本でもメルカリの普及もあってか、以前ほど中古品に対するアレルギーはないのでしょうが、「今あるものを大切に使う」という意識の点では、まだまだドイツには及ばない感じです。

結局ドイツの場合、労働時間の規制や税率のような「国」としての政策と、国民の意識や暮らしぶりが相まって、「豊かさ」を実現しているのですから、そう簡単には真似できないのではないか、と。


自分の暮らしぶりを考えるヒントとなる1冊!

ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか (青春新書インテリジェンス)
ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか (青春新書インテリジェンス)
序章 ドイツ人の平均可処分所得は290万円!
第1章 サービス砂漠のドイツ、おもてなし大国の日本
第2章 みんなが不便を「ちょっとだけ我慢する」社会
第3章 お金の奴隷にならない働き方
第4章 ドイツ人はお金をかけずに生活を楽しむ達人
第5章 世界最大のリサイクル国家・ドイツ
第6章 過剰な消費をしなくても経済成長は可能だ
終章 「求めすぎない」ことから始めよう


【関連記事】

【生産性】『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える』隅田 貫(2017年12月08日)

【生産性?】『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』熊野英生(2019年01月21日)

【生産性向上?】『チームの生産性をあげる。―――業務改善士が教える68の具体策』沢渡あまね(2017年07月20日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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