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2019年02月14日

【アイデア】『デザイン思考の先を行くもの』各務太郎


デザイン思考の先を行くもの
デザイン思考の先を行くもの


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも、注目を集めていた作品。

著者の各務太郎さんは、「電通のコピーライターとして活躍してきた一方、ハーバード大学デザイン大学院にて都市デザイン学修士を修めた建築家でもある」という、尖った経歴の方です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
ハーバード・デザインスクールの授業で著者は、創造力に必要な二つの力の存在を学んできました。ひとつはあらゆるアイデアの源泉であり、個性と専門性が求められる【個人の見立てる力】。そしてもうひとつは、自ら創造した未来から逆に現在のあるべき姿を描く【未来からの逆算力(バックキャスティング)】。
このふたつを原動力として生み出された5つのビジネスやデザインの実例を元に、誰もが革新的な発想を生み出せる4種類のメソッドをご紹介します。

なお、現時点で中古価格が定価とほとんど変わらないため、Kindle版が700円以上、お買い得です!





Pencil design / patchtok


【ポイント】

■1.「デザイン力」とは「問題解決力」のこと
 例えば傘について考えてみよう。傘というプロダクトは、「雨が上空から降ってくる」という問題に対して、「手で持てる軸の先に膜をつけて水滴をさえぎる」という解決の糸口を見出したものだ。ここまでがデザイン。膜の模様や、柄の形状のことはデザインとは呼ばない。
 靴というプロダクトは、「地面がゴツゴツとして歩きにくい」という問題に対して生み出された「分厚い靴底と足を布のバンドで固定して脱げないようにする」という解決策である。傘と同様、表面の生地の柄や素材は、デザインとは呼ばない。
 つまりデザイン力とは問題解決力のこと。あくまで「問題を発見し、解決の糸口を示す」能力なのである。私たちが普段「デザイン」と聞いて想像する「オシャレなグラフィック」等は、厳密にはデザインの範疇ではない。絵心、造形力、センス、クリエイティビティは一切関係ないのである。


■2.「デザイン思考」とは「改善のため」のツール
 例えばiPhoneのケースを見てみよう。2007年に最初のiPhoneが登場して以来、新しいモデルが出るたびに機能性の向上が顕著に見られる。この進化のプロセスにおいて、アップル社はカスタマーから日々膨大な量のフィードバックを受け、分析し、次の新モデルに活かすべく開発を進めているのだ。(中略)
 これを見るとデザイン思考とは「改善のためのツール」であることがわかる。現状のプロダクトより、さらに良いものを生み出すための「仮説検証」のための道具。1を10に磨いていくための手法なのである。
 ところが現在、日本の多くの企業が「イノベーションを起こしたい」「0→1を強化したい」という目的でデザイン思考を導入しようとしている例を数え切れないほど目にするが、これは言葉上、矛盾であることがわかる。 「1」とは「仮説」のことである。仮説があってはじめて、検証することができる。ところが多くのワークショップは仮説なきままに検証をはじめている。何もない「0」から質の高い仮説を創造するにはデザイン思考と根本的に思想を異にする別のアプローチが必要となる。


■3.枯れた技術の水平思考
 例えば昔ながらの白黒の電卓を考えてみよう。1980年代後半、電卓に使われていた液晶は、すでにコスト的に十分安価になるまで開発が進んでおり、電卓以外の主だった用途もなく、成熟しきっていた技術であった。一方ゲーム業界では、ゲームギアやATARI Lynxなどの他社の携帯機が、カラー液晶を採用することで圧倒的な表現力で差別化を図ろうとしていた。
 そこで、横井軍平の枯れた技術の水平思考である。燃費効率のいい電卓用の白黒液晶を、あえて携帯ゲーム機の画面に転用することで、持ち歩いて、どこでも遊び続けられるゲーム機が生まれた。それがゲームボーイである。累計販売台数1億台のメガヒットとなった。「ゲーム機」を【革新したいこと】として掲げていた横井軍平氏に、電卓の液晶画面の【異分野の専門知識】を見せることで、彼の中に「見立て」を誘発することができたのだ。


■4.ロールプレイング法
 例えば自分がアンパンのCMをつくることになったとしよう。まずは商品の売りをリサーチするところからはじめ、結果、餡子の甘味と生地のふっくら感、が特徴であることがわかったとする。その特徴がいちばん誇張できるようなCMアイデアを考えていくのだが、この方向性でいくと、大体誰が考えても同じような凡庸なアイデアが出てきてしまう。伝えたいメッセージが同じなので当然である。そこでインパクトある動画をつくるために、一旦アンパンから離れる。そして、仮に「もしユニクロがアンパンのCMをつくったとしたら?」という具合にロールプレイングをしてみるのだ。するとどうだろう。色んな国籍を持った若者が、それぞれ異なる色の鮮やかなカラーパンツをはき、軽快なBGMとともにアンパン片手に白い階段を降りてくる画が想像できないだろうか? これはアンパンを中心に考えては出なかった発想である。


■5.アイデアの再因数分解
 まず自分が考えたビジネスアイデアを、自分で因数分解してみる。次に、その構造にいちばん近い既存のビジネスモデルを探してくる(できれば成功しているビジネスが望ましい)。そのふたつのモデルを見比べて、互いにひとつの要素をズラしただけの関係性に見えるように調整する。そして投資家や上司やクライアントには、はじめに成功している既存のビジネスからプレゼンをはじめるのだ。相手が安心して十分に納得したところで、その既存ビジネスの因数のうち、たったひとつだけを変えるだけで生まれた(ように見える)あなたのアイデアを見せる。すると、事前に見せられた既存ビジネスの成功が頭に残っているため、不思議と新しく見た一見突飛なアイデアも真っ当なものに見えてくるのだ。


【感想】

◆本書を読んでまず驚いたのが、日本と欧米における「デザイン」という言葉の意味するところの違いです。

本書は第1章「デザインの誤解」にて、この問題について言及。

ちなみに、辞書で「デザイン」という言葉の意味を調べると、次のように出てきます。
1 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市をデザインする」「制服をデザインする」「インテリアデザイン」
2 図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具にデザインを施す」「商標をデザインする」
3 目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活をデザインする」
日本ではどれも「デザイン」ですが、欧米では「デザイン(design)」とは3のことなのだとか。

そして1と2を意味する単語として「スタイリング(styling)」という独立した言葉が与えられているのだそうです。

つまり、一般的に私たちがイメージする「オシャレなグラフィック」とは、欧米では「スタイリング」であり、逆に彼らにとっての「デザイン」とは、むしろ「問題解決」であることは上記ポイントの1番目にあるとおり。

そういう意味でも、「デザイン思考」で問題を解決する、という考え方は、理にかなっているワケです。


◆さて、続く第2章のテーマは、その「デザイン思考」について。

章題にもあるように、「デザイン思考」についても誤解されているというのが本書の主張です。

具体的には上記ポイントの2番目にあるように、「デザイン思考」とは「0→1」のためのものではなく、「1→10」のものであるということ。

ではそのポイントの2番目でいうところの、「別のアプローチ」とは何か?

それについて明かされているのが、本書の第3章と第4章です。

特に第3章では、冒頭の内容紹介にもあった「5つのビジネス」の具体例が紹介されているのですが、どれもカッ飛んでいて、なるほどこれは「0→1」だな、と。

たとえば初っ端に登場するのが、「体内で水分が循環し、喉が渇かなくなるように設計された人工臓器の一群"Shenu"」です。



解説が英文テキストで良く分からないと思いますので、背景や思想等を含め、詳しくは本書にてご確認を。


◆そこでこうした「0→1」の発想を指南してくれるのが、本書の第4章。

その中でも当ブログでもなじみがあったのが、上記ポイントの3番目にある「枯れた技術の水平思考」です。

このテーマでは、任天堂関係の作品を含め関連書籍を何冊かレビューしてきましたが、本書で紹介されていたのが、この横井軍平さんの作品でした。

決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば (P-Vine Books)
決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば (P-Vine Books)

参考記事:【アイデア】『ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か?』横井軍平(2012年10月09日)

……絶版となって7000円以上の高値が付いてしまいましたから、Kindle化が待たれるところ。

さらには、上記ポイントの4番目も含め、冒頭の内容紹介にもあった「4つのメソッド」も紹介されていますから、この第4章は見逃せないところでしょう。

ちなみに、この「ロールプレイング法」の別の具体例が、MacBook AirのCMパロディであるこちらです。



アップルファンの方ならお楽しみいただけるかとw


◆ただし、せっかく「0→1」のアイデアが生まれたとしても、それを「1→10」にできなかったら意味がありません。

本書の第5章では、「社会実装」と題して、この問題を検討。

特に突拍子もないアイデアで資金調達をするのであれば、他人を説得する必要があります。

そこで登場するのが上記ポイントの5番目にある「アイデアの再因数分解」という考え方。

これは資金調達のみならず、自分のアイデアを他人(特に上司)に理解してもらう上でも役立ちそうです。


「0→1」のアイデアを生み、それを育てるために!

デザイン思考の先を行くもの
デザイン思考の先を行くもの
第0章 見立てる力
第1章 デザインの誤解
第2章 デザイン思考の誤解
第3章 0→1
第4章 0→1の実践
第5章 社会実装


【関連記事】

【デザイン思考】『0→1の発想を生み出す「問いかけ」の力』野々村健一(2019年02月04日)

【デザイン思考】『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』デイヴィッド・ケリー,トム・ケリー(2017年01月25日)

【問題解決】「デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方」ティム・ブラウン(2010年04月29日)

【デザイン思考】『問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法』村田智明(2017年07月29日)

【アイデア】『ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か?』横井軍平(2012年10月09日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす
学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす

子育て中のご家族の方なら興味がありそうな作品。

オンデマンド版ということで、定価(2052円)はマユツバですが、「599円」というKindle価格はお買い得だと思います!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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