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2019年01月02日

【思い込み?】『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロンランド


FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった翻訳本。

単行本は1月11日発売なのですが、このKindle版は昨日から配信が開始されたということで、さっそく読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
ファクトフルネスとは――データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。
世界を正しく見る、誰もが身につけておくべき習慣でありスキル、「ファクトフルネス」を解説しよう。

世界で100万部のベストセラーで、「ビル・ゲイツ、バラク・オバマ元アメリカ大統領も大絶賛」したという作品ですから、お見逃しなく!





Hans Roling TEDTalk / NMC Second Life


【ポイント】

■1.何事も2つに分けたがる「分断本能」
 いったいなぜ、金持ちと貧しい者のあいだに分断が存在するという考え方が、ここまで根強く残っているのだろうか。
 わたしが思うに、人はドラマチックな本能のせいで、何事も2つのグループに分けて考えたがるからだろう。いわゆる「二項対立」を求めるのだ。良いか悪いか、正義か悪か、自国か他国か。世界を2つに分けるのは、シンプルだし直感的かもしれない。しかも双方が対立していればなおドラマチックだ。わたしたちはいつも気づかないうちに、世界を2つに分けている。
 ジャーナリストは人間の分断本能に訴えたがる。だから話を組み立てる際、対立する2人、2つの考え方、2つのグループを強調する。「世界には極度の貧困層もいれば、億万長者もいる」という話は伝わりやすく、「世界の大半は、少しずつだが良い暮らしをし始めている」という話は伝わりにくい。ドキュメンタリー制作者や映画監督も同じだ。弱い個人が悪徳大企業に立ち向かうさまは、ドキュメンタリー番組でよく描かれる。正義と悪との闘いは、大ヒット映画でお決まりの構図だ。


■2.「世界は怖い」という印象を植え付ける「恐怖本能」
 現在、「世界は危険だ」という主旨のニュースは、昔よりも効果的に配信されるようになった。一方で、現在の世界は、人類史上類を見ないほど平和で安全だ。これって、ちょっとおかしくないだろうか?
 わたしたちの先祖の命を救ってくれた恐怖本能は、いまやジャーナリストたちの雇用を支えている。かといって、「ジャーナリストが悪い」とか「ジャーナリストが行動を改めるべき」という指摘をするのは筋違いだ。メディアが「人々の恐怖本能を利用してやろう」と考える以前に、わたしたちの恐怖本能が、「どうぞ利用してください」と言っているようなものなのだから。
 わたしたちがやるべきことは、見出しの陰に隠れている事実に目を向けることだ。そうすれば、恐怖本能がいかにして、「世界は怖い」という印象を人々に植え付けるかがわかるだろう。


■3.「過大視本能」を抑える3つの方法
●比較しよう
大きな数字は、そのままだと大きく見える。ひとつしかない数字は間違いのもと。必ず疑ってかかるべきだ。ほかの数字と比較し、できれば割り算をすること。
●80:20ルールを使おう
項目が並んでいたら、まずは最も大きな項目だけに注目しよう。多くの場合、小さな項目は無視しても差し支えない。
●割り算をしよう
割合を見ると、量を見た場合とはまったく違う結論にたどり着くことがある。たいていの場合、割合のほうが役に立つ。特に、違う大きさのグループを比べるのであればなおさらだ。国や地域を比較するときは、「ひとりあたり」に注目しよう。


■4.役に立たない「犯人捜し本能」
 たとえば、飛行機事故を睡眠不足のパイロットのせいにしても、次の事故は防げない。次の事故を防ぐには、なぜパイロットはウトウトしてしまったのかを探るべきだろう。今後どうしたら睡眠不足のパイロットに操縦させないようにできるだろう? パイロットのウトウトを見つけた時点で考えるのをやめてしまったら、そこから先に進めない。世界の深刻な問題を理解するためには、問題を引き起こすシステムを見直さないといけない。犯人捜しをしている場合ではない。
 物事がうまくいっているときにも、犯人捜し本能はわき上がる。「誰かのせいにしたい」気持ちは、責めるときも褒めるときも同じなのだ。物事がうまくいくと、誰かひとりの功績にしたり、単純な理由を見つけたくなってしまう。でも、ここでもたいていの場合、物事ははるかに複雑なのだ。
 もし本当に世界を変えたいのなら、肝に銘じておこう。犯人捜し本能は役に立たないと。


■5.「焦り本能」に付け込まない
 わたしは誇張が嫌いだ。厳密な調査に基づくデータの信頼性を傷つけたくない。温暖化を示すデータは本物だし、その大部分は温室効果ガスによるものだということも証明されている。温室効果ガスの原因は、たとえば化石燃料を燃やすといった人間の活動だ。また、いますぐに広範囲に手を打つほうが、どうしようもなくなってから動くよりはるかに安上がりにすむことも証明されている。でも、もし誇張がバレてしまったら、誰からもそっぽを向かれてしまう。
 わたしは、最悪のシナリオを見せるなら、いちばん可能性の高いシナリオと、最高のシナリオも見せたいと言い張った。最悪のシナリオだけを取り上げて、科学的根拠に基づく予測を超えて作り話のような未来の姿を見せるなんて、わたしたちの使命とは違いすぎる。人々に基本的な事実を知ってもらうことが、ギャップマインダーの目標だ。信頼を損なうようなことはしたくなかった。それでもアル・ゴアは、専門家の予想の上をいくような恐ろしげなバブルチャートをつくってほしいと迫る。何度か頼まれて、最後にわたしはきっぱりと断った。「副大統領。予想はなしです。バブルチャートもつくりません」


【感想】

◆本書の冒頭にある「イントロダクション」では、世界の事実に関する13問のクイズが収録されています。

その一部はアマゾンのページにもあるので、そこから引用するとこんな感じなのですが。
質問 世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%
三択ですから、何も知らずテキトウに選んでも1/3の確率で正解するはず。

ところが実際には、それを下回る正答率になってしまうのだそうです。

ちなみにこれは、一般の人のみならず、マスメディア関係者を対象にした調査でも同様で、たとえばこの動画の10分半辺りを観ると、むしろマスメディア関係者の方が正答率が悪いという(ネタバレを含みますので答えを知りたくない方はスルーで)。


つまり、きちんとした教育を受けたか否かも関係ないわけです。


◆ではなぜこのような「思い込み」に、皆が囚われているかというと、著者であるハンス・ロスリングいわく、「人間の本能」が「ドラマチックすぎる世界の見方」をしてしまうから。

本書ではこのような「本能」を10個、下記目次にあるように、各章を費やして解説してくれています。

そして上記の5つのポイントも、それらの中から1つずつ選んでみた次第。

小見出しにもあえて、「本能」の各名称を盛り込んでみました。

それぞれを見ていくと、「あるある」となること必至。

私たちが日頃接するニュースや情報も、このような「本能」につけこんで、視聴率や発行部数、さらにはアクセス数を稼いでいる気がしないでもありません。


◆また本書では、このような「本能」によって引き起こされる現象の事例も、豊富に紹介されています。

特に、ハンス・ロスリング氏は医師なだけに、医療現場でのお話も多々。

エボラ出血熱の感染を現地まで飛んで防ごうとしたり、モザンビークで公衆衛生プログラムを作って乳幼児の死亡率を下げようとする……なんてエピソードも登場します。

そしていずれにも関係してくるのが、上記の「本能」でした。

特に生死がかかわってくると、人は冷静に考えられず、反射的にこうした「本能」に頼ってしまうのですよね……。

ちなみに本書の第11章では、コンゴで流行していた神経麻痺症状の調査のため、村人の血液を採取しようとして「血を売る」のと勘違いされ、ナタを持った村人たちに囲まれてしまう大ピンチに遭遇してしまうのですが(顛末は本書を)。


◆なお、エピソードという意味では、上記ポイントの5番目では、あのアル・ゴア元副大統領が登場しています。

2009年にTED会場の舞台裏で、ロスリング氏はゴア氏に、お得意のバブルチャートで二酸化炭素の排出量が今後どうなるかを表すよう頼まれたのだとか。

ただしそれは「最悪の場合どんな悲惨なことになるか」という極端なケースのものでした。

そこでロスリング氏は上記にもあるように、この依頼を固辞。

ただ、上記の「13問のクイズ」の13番目が地球温暖化に関するものなのですが、この問いだけ正答率が異様に高いのは、ゴア氏の啓蒙活動のおかげだと、ロスリング氏も認めています。

実際に依頼されたのは、このドキュメンタリーより後の事ですしね。

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◆本書は私たちに、「本能」に惑わされることなく、世界の正しい姿を見ることを推奨しています。

確かに間違った「思い込み」に凝り固まっていると、大きなビジネスチャンスも逃してしまいそうな。

たとえば、かつてはいわゆる貧困層ばかりだったアジアやアフリカの人々の暮らしぶりが、今はここまで改善されているとは、大きな驚きでした。

この辺は、各企業において世界戦略を考える上でも見逃せないハズ。

また、投資をされている方なら、ポートフォリオを見直すきっかけになるかもしれません。

もっとも、「アジア」「アフリカ」とまとめてはいけなくて、国によってピンからキリまである……というのも本書で学んだことなのですがw


新年早々、これはオススメせざるを得ません!

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
イントロダクション
第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み
第2章 ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増える」という思い込み
第4章 恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
第5章 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み
第6章 パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み
第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
第9章 犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み
第10章 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
第11章 ファクトフルネスを実践しよう


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

ヤマケイハンディ図鑑7 新版 日本の野鳥 山溪ハンディ図鑑
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我が家はすぐそばに隅田川が流れ、ユリカモメほか野鳥が多々観察できるため、ヨメとムスコは双眼鏡でしょっちゅう覗いていますから、この本の事も教えてやらねば(今日中にw)。

定価中古ともに高くて、送料を考えるとKindle版が2200円ほどお得になります。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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