スポンサーリンク

2018年11月25日

【交渉術】『交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則』ライアン・ゴールドスティン


交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則
交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でもなかなかの人気だった交渉術本。

著者のライアン・ゴールドスティン氏は、クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所の東京オフィス代表であり、下記のような有名企業の訴訟に携わってきた凄腕弁護士です。

アマゾンの内容紹介から。
交渉に勝つ者が生き残る。 どんなに劣勢でも交渉に勝つことはできる。
アップルvsサムスン訴訟にかかわったNTTドコモ、三菱電機、東レ、丸紅、NEC、セイコーエプソン、リコーなどの訴訟代理人を務める「世界で最も恐れられる弁護士事務所」の東京オフィスのトップ弁護士が教える「交渉プロフェッショナル」の20原則!

なお、滅多にセールをしないダイヤモンド社さんの作品ですから、1割引きのKindle版をお求めになってもよいかと。





20150423-APHIS-RBN-6186 / USDAgov


【ポイント】

■1.「合意」のために不本意な譲歩をしない
 そもそも、私たちが交渉をするのは、何らかの実現したい目的があるからだ。家賃交渉をするのは、安くて好立地な賃貸住宅に住むという目的のためであり、営業マンが売買交渉をするのは、少しでも高く買ってもらうためだ。あるいは、企業が合併交渉をするのは、より有利な事業環境を手に入れるためである。その目的を達成するために、相手との利害調整を行うのが交渉なのだ。
 つまり、交渉の目的は「合意すること」ではなく、あくまでも「自分の目的」を達成することでなければならないのだ。当たり前のことのようだが、この原点を決して忘れてはならない。合意するために不本意な譲歩・妥協をして、「自分の目的」を放棄してはならないのだ。


■2.点ではなく線で考える
 だから、私はこう考えている。
 交渉は「点」ではなく「線」で考えるべきだ、と。
 目の前の交渉(=点)に勝つことだけが、交渉ではない。「交渉決裂カード」を切ることができない場合には、あえて犇従瓩瞭擦鯀んでも「生き残る」ことを選択すべきだ。私は、それも覚悟のひとつだと思う。
 そのうえで、自らのパワーを増強することに専念する。「交渉決裂カード」を自らの力でつくり出すのだ。そのプロセスも、交渉の一部。第三者には犇従瓩噺えても、それは「戦い」の継続なのだ。そして、再び、理不尽な要求を突きつけられたときには、「交渉決裂カード」を武器に 毅然 とした交渉を行う。これも、立派な交渉プロセスだと思うのだ。


■3.常に「戦わない方法」を考える
 そもそもの発端は、ビートルズ時代にジョン・レノンが作曲した「カム・トゥゲザー」という曲にある。この曲が、チャック・ベリーの楽曲の出版権者モリス・レヴィという人物から、チャックの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」というヒット曲の盗作であると、訴訟騒ぎを起こされたのだ。
 数年にわたって 揉めたようだが、最終的に示談が成立。その条件が、モリス・レヴィが所有する楽曲をジョン・レノンがレコード化することだった。ジョン・レノンのレコードはヒットするに違いない。そのレコードに楽曲が収録されれば、モリス・レヴィに莫大な印税が転がり込むわけだ。
 これは、なかなかの妙案である。モリス・レヴィの目的は金。ジョン・レノンは「盗作問題」での裁判沙汰は避けたかったはずだ。その両者の目的をともに満たすアイデアだ。しかも、そのレコードが売れれば、双方にメリットがある。まさに、創造的な解決策だと言えるだろう。


■4.「誠実」と「愚か」の一線を間違えない
 交渉において、「嘘」「ごまかし」は厳禁だが、聞かれもしないのに、自分に不利な情報を積極的に公開する必要はない。つつかれてもいない 藪 を自らつついて蛇を出して驚いているのは、「誠実」というより「愚か」と言うべきだろう。
 たとえば、先ほどの海外企業との交渉で言えば、私たちが問題にしていたのは ある製品 の特許侵害であった。
 あくまで、ある製品についての交渉なのだから、私たちが「他の製品でも特許侵害をしているのではないか?」と聞かない限り、彼らは自らそれを打ち明ける義務はない。あとで特許侵害していることがわかったとしても、自ら打ち明けなかった彼らを責めることはできない。聞かない方が悪いのだ。交渉は戦いである。双方に自己防衛する権利はある。応える義務がある場合にだけ、「嘘」ではない回答をすれば、それで十分に誠実な対応というべきなのだ。


■5.相手の出方を探るのが基本
 クライアントである日本企業が、欧米企業から特許侵害で訴えられたときのことだ。クライアントは「これは大ごとだ」と、私のもとへ駆け込んできた。たしかに、事実関係をシビアにとらえれば、10〜15億円の賠償請求をしてきてもおかしくない状況だった。しかも、欧米企業がわざわざ日本に来て交渉をするというから、かなり強気に押してくるに違いないと身構えていた。
 ところが、向こうのオファーを聞いて呆れた。なんと、2000万円の賠償請求だったのだ。(中略)
 その後、2000万円からさらに減額させる作戦を考えたうえで、あっさりと合意にこぎ着けることに成功。私たちに圧倒的に有利な合意だったのは言うまでもない。
 同時に、こう思った。もしも、あのとき、私たちが先にオファーしていたらどうなっていただろうか、と。


【感想】

◆交渉術にも色々あるのですが、当ブログでも何冊かご紹介してきたのが、「交渉相手は敵ではない」というタイプの作品。

これは比較的最近、「交渉学」の分野でさかんに研究されているそうなのですが、要は従来のように交渉当事者が対立するのではなく、協調しながら両者にとって利益のある合意に至る手法です。

一方本書は、これを「理想論」とバッサリ。
そもそも交渉とは、当事者間で利害対立があるから行われるものである。対立が出発点である限り、それは「戦い」にほかならないのだ。
本書の「交渉の武器」というタイトルも、あくまで交渉においては「勝利」を目指すがゆえのものなのだとか。

それを踏まえて本書の第1章では、「『合意』は交渉のゴールではない」と題して、安易な合意に注意を促しています。

上記ポイントの1番目もこの第1章からであり、ゆえに不本意な譲歩や妥協をしなければ合意ができなければ、「交渉決裂」という選択をすべきとのこと。


◆そこでまずは、「この一線だけは絶対に譲らない」という「交渉決裂ライン」を決めます。

そして、交渉に臨む前に、複数の選択肢を用意しておくことも大事なのだとか。

この選択肢があることで、目の前の交渉が決裂することをむやみに恐れる必要がなくなります。

ただし、下請け企業のように、交渉が決裂すると、仕事を引き上げられ、倒産してしまう恐れがある場合はどうすればいいのか?

本書の第2章では、「弱者の交渉戦略」と題して、こうした問題について言及されています。

上記ポイントの2番目は、この第2章からであり、あえて「屈従」の道を選んでも「生き残ること」を選択すべき、とのこと。

その後の具体的な反撃手段については、本書にてご確認ください。


◆続く第3章では、「誠実さ」がテーマです。

場合によっては「謝罪」することも重要なのですが、安易な謝罪は命取りとのこと。

本書曰く、謝罪は「タイミング」と「範囲」が重要なのだそうです。

ただし上記ポイントの4番目にあるように、「聞かれもしないことをペラペラ話す」のは「誠実」ではなく「愚か」なだけ。

嘘は言ってはいけない(言質を取られて不利になる)ものの、こちら側に不利なことは、聞かれるまで話す必要はありません。

……これってまさに、私が税務調査の前に、いつもクライアントに注意していることなのですが。


◆なお、上記ポイントの3番目は、「自分の目的を達成する」ために「戦いを避ける例」として挙げられていたものです。

類書では「姉妹がオレンジを取り合っていたのが、お互いが必要な『果肉』と『皮』で分け合った」話が有名ですね。

一方、ここでのジョン・レノンのレコードとは、1975年に発表した『ロックンロール』というアルバムのこと。

ロックン・ロール
ロックン・ロール

内容紹介(アマゾンも以前は内部でレビューを用意していた)の冒頭が
進歩的段階を迎えていた時期のジョン・レノンが、なぜ本作のような1950年代のロックン・ロール・スタンダード集を発表したのかは分からないが
で始まっているのですが、なるほど当時の状況からしても唐突だったんでしょうね。

ちなみに、問題となったビートルズの『カム・トゥギャザー』は皆さんご存じだと思いますが、チャック・ベリーの『ユー・キャント・キャッチ・ミー』は、こんな曲です。



……うーん、確かに似てると言われたら似ている感じ。


◆ちなみに上記ポイントの5番目にある、「最初のオファーは相手に出させる」というのは、本書同様にハードコアスタイルである、こちらの作品でも読んだことがありました。

交渉で負けない絶対セオリー&パワーフレーズ70
交渉で負けない絶対セオリー&パワーフレーズ70

参考記事:【オススメ!】『交渉で負けない絶対セオリー&パワーフレーズ70』大橋弘昌(2014年07月07日)

ただ、金額的にこのような大きな違いのある例は見たことがなかったので、抜き出してみた次第です。

いずれにせよ、本書は「正統派」の交渉術本であり、そのTIPSの多くが納得できるものですが、特に第2章の「弱者の交渉戦略」が本書の読みどころではないか、と。

自分が強い立場だったり、勝って当たり前の交渉ならば、さほど苦労はいりませんが、そうでない弱い立場での抗い方、というのは、誰もが読んでおくべき内容だと思います。


「世界で最も恐れられる弁護士事務所」のエッセンスがここに!

交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則
交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則
第1章 「合意」は交渉のゴールではない
第2章 弱者の交渉戦略
第3章 「誠実さ」は武器である
第4章 「戦う」からこそ創造的になる


【関連記事】

【オススメ!】『交渉で負けない絶対セオリー&パワーフレーズ70』大橋弘昌(2014年07月07日)

【交渉術】『実践・交渉のセオリー ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック』高杉尚孝(2016年08月23日)

【交渉術】『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』島田久仁彦(2013年08月08日)

【交渉術】『プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法』石井琢磨(2013年07月29日)

【裏ワザ?】『弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール』奥山倫行(2013年01月13日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム (文春e-book)
2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム (文春e-book)

おなじみ勝間和代さんの整理整頓本が、本日限りで「61%OFF」のお値打ち価格となっています。

結果、送料を加算した中古よりも、Kindle版が400円以上お買い得なことに!

参考記事:【断捨離】『2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム』勝間和代(2018年01月21日)


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「コミュニケーション」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
Posted by smoothfoxxx at 10:00
コミュニケーションこのエントリーを含むはてなブックマークYahoo!ブックマークに登録

スポンサーリンク