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2018年11月21日

【AI読み?】『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子


AI vs. 教科書が読めない子どもたち
AI vs. 教科書が読めない子どもたち


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「東洋経済新報社キャンペーン」の中でも、発売当時かなりの話題となった作品。

土井英司さんがメルマガで長きに渡って激プッシュしており、私も読もうかどうか迷っていたくせに、今回見落としていて、後回しになってしまいました。

アマゾンの内容紹介から。
東ロボくんは東大には入れなかった。AIの限界ーー。しかし、”彼”はMARCHクラスには楽勝で合格していた! これが意味することとはなにか? AIは何を得意とし、何を苦手とするのか? AI楽観論者は、人間とAIが補完し合い共存するシナリオを描く。しかし、東ロボくんの実験と同時に行なわれた全国2万5000人を対象にした読解力調査では恐るべき実態が判明する。AIの限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌だという。では、最悪のシナリオを避けるのはどうしたらいいのか? 最終章では教育に関する専門家でもある新井先生の提言が語られる。

送料を加算した中古よりは、Kindle版が600円弱お得ですから、気になってらした方はこの機会にぜひ!





IBM Q Lab / IBM Research


【ポイント】

■1.「AI恐慌」となる危険性
 AI楽観論者が言うように、多くの仕事がAIに代替されても、AIが代替できない新たな仕事が生まれる可能性はあります。しかし、たとえ新たな仕事が生まれたとしても、その仕事がAIで仕事を失った勤労者の新たな仕事になるとは限りません。現代の労働力の質がAIのそれと似ているということは、AIでは対処できない新しい仕事は、多くの人間にとっても苦手な仕事である可能性が非常に高いということを意味するからです。
 では、AIに多くの仕事が代替された社会ではどんなことが起こるでしょうか。労働市場は深刻な人手不足に陥っているのに、巷間には失業者や最低賃金の仕事を掛け持ちする人々が溢れている。結果、経済はAI恐慌の嵐に晒される──。残念なことに、それが私の思い描く未来予想図です。


■2.AIで半沢直樹は職を失う?
 半沢直樹氏はローンオフィサーです。その仕事は、取引相手の返済能力の信用度を審査することで、個人融資ならば担保物件の価値、年収や雇用主である企業の事業規模、さらには年齢や家族構成までさまざまな情報を考慮し、データに基づいて融資の条件を計算し、融資の可否を判断します。(中略)
 このような仕事、特に担保に基づく住宅ローンなどの個人融資は、ビッグデータによる機械学習ができるようになったAIには得意分野になるはず──ドラマを見ながら私はそう考えました。銀行には過去の融資についての教師データを大量に持っており、答は融資するか否か、つまりイエスかノーのどちらかだからです。半沢氏の仕事はいずれ AI に代替され、残念なことに胸のすくようなあの「倍返しだ!」の台詞は、数年後にはもう聞けなくなってしまう可能性が高いと思います。


■3.Siriは賢いのか?
 たとえば、「この近くのおいしいイタリア料理の店は」と、訊いてみてください。Siriは、GPSで位置情報を判断して、近くにある「おいしい」イタリア料理の店を推薦してくれるはずです。でも、それは話のポイントではありません。次に「この近くのまずいイタリア料理の店は」と訊ねてみてください。すると、似たような店を推薦します。評判の悪い店から順に表示することはありません。Siriには「まずい」と「おいしい」の違いがわからないのです。さらに、「この近くのイタリア料理以外のレストランは」と訊いてみてください。また、似たような店を推薦します。つまり「以外の」ということがわからないということです。(中略)
 繰り返しますが、Siriを貶めようとしているのではありません。ここに、AIと自然言語処理の、そしてその大元である数学の限界があることを知っていただきたいからです。


■4.大人でも簡単な文章が読めない?
 これまで作問した中で難易度がとても高かった係り受けの問題に次のような問題があります。
次の文を読みなさい。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。
セルロースは(  )と形が違う
デンプン  アミラーゼ  グルコース  酵素


■5.全国2万5000人を対象に実施した読解力調査でわかったこと
・中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない
・学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない
・進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度である
・読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い
・読解能力値は中学生の間は平均的には向上する
・読解能力値は高校では向上していない
・読解能力値と家庭の経済状況には負の相関がある
・通塾の有無と読解能力値は無関係
・読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関はない


【感想】

◆著者の新井先生は、「国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長」であり、人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタとして知られるお方です。

そこでまず本書の第1章では、新井先生の「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトのAI、通称「東ロボくん」の苦闘ぶりが描かれている次第。

冒頭の内容紹介では、「MARCHクラスには楽勝で合格」と書かれていますが、ここに来るまでには大変な苦労がありました。

なにせセンター入試の科目も、何か1つの科目だけできればいい、というワケではありません。

たとえば言語処理1つをとっても世界史と英語と数学では、まったく異なるアプローチが採られたのだそう(詳細は本書を)。

この第1章では、AIが何が得意で何が苦手であり、その苦手を克服するには、どのような対応策があるのか等々、「なんとなくのイメージとしてのAI」しか知らなかった私には、大変勉強になりました。


◆そしてAIが得意な分野であれば、それは実際の仕事においてもAIに取って代わられるということに他なりません。

上記ポイントの2番目にあるように、半沢直樹氏が行っていた「与信審査」は、AIに代替されるべき業務であり、実際、ジャパンネット銀行は2016年10月から、中小企業向けの融資の与信審査にAIを活用しているのだそうです。

同じように「将来なくなるであろう職業」はいくつもありますが、そもそもこの予測を最初に行ったのは、オックスフォードでもMITの『機械との競争』でもなく、2010年に出版された新井先生のこの本だったという。

コンピュータが仕事を奪う
コンピュータが仕事を奪う

ただし、出版直後、東京駅前の某大型書店を訪れた新井先生が目にしたのは、この本がビジネス書棚ではなく、SFの棚にある光景でした。

この事実こそが、新井先生が「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトをスタートさせようと考えた最初の動機だったとのことです。


◆続く第2章では、AIの不得意分野である、「常識」や「意味の理解」にフォーカス。

まず「常識」についていうなら、たとえばロボットが冷蔵庫から缶ジュースを取り出す、という簡単なデモでさえ、裏では綿密に作られたシナリオがあるのだそうです。
撮影に使う冷蔵庫やそのドアはどのような形状か、どうすれば開くのか、あらかじめプログラムされています。しかも、冷蔵庫の中に入っているのは、多くの場合、缶ジュース一本だけです。応用問題として、ビールとコーラとジュースが間隔を空けて置いてある場合もあるかもしれません。けれども、冷蔵庫が牛乳や野菜や使いかけのドレッシングでぎゅうぎゅうというようなことはありません。つまり、非常に限定された条件でなければ、ロボットには冷蔵庫から缶ジュースを取り出すということさえ、簡単ではないということです。
また、上記ポイントの3番目にあるSiriの仕様については、私はてっきり意味を理解しているのかと思いきや、そうではなかった模様。

Siriは文章の意味は分からなくても、その文章に出てくる既知の単語とその組み合わせから、統計的に推測して正しそうな回答を導き出そうとしているのだそうです。

つまり「まずい」と「おいしい」の答えが同じになったのは、「まずい店」を検索する人が少ないため、「まずい」という言葉の重要度が小さいと見なされたから。

……ただし、本書が出版された以上、Siriの開発チームが手を加えていて、今現在は違う可能性があるそうなのですが(我が家にiPhoneがないので確認できず)w


◆一方、東ロボプロジェクトと同時に、新井先生が行っていたのが「全国読解力調査」であり、それに関しては第3章に詳しいです。

これに関しては、下記記事がブクマ600弱を集めて、はてブ人気記事となっていましたから、ご存知の方も多いことかと。

大事なのは「読む」力だ!〜4万人の読解力テストで判明した問題を新井紀子・国立情報学研究所教授に聞く(江川紹子) - 個人 - Yahoo!ニュース

私は別の記事で、最初の2問(「Alex」と「ドミニカ」の問題)を見た記憶があるのですが、上記ポイントの4番目は、今回初めて解きました。

……私は一応合っていたのですが、「某新聞社の論説委員から経産省の官僚まで」結構な方々が間違えたのだとか。

ネタバレ自重で答えはここではあえて書きませんが、上記リンク先に同じ問題が掲載されていて答えも載っていますから、間違えた方は本書をお求めください(アサマシ)!?


◆上記ポイントの5番目は、その調査結果をまとめたものなのですが、なるほど、本来AIと差を付けられるべき読解力がこの状態では、新井先生が深刻にお考えになっているのも理解できます。

要は、この程度の読解力しかないなら、AIの方がよほど生産性が高いということ。

その結果考えられるのが、上記ポイントの1番目にある「AI恐慌」であり、何とかしなければならないのですが……。

ただし、新井先生も「次の作品で」と言われているように、本書には読解力を高める具体的な解決策がないのは、少々惜しまれるところ。

ただし、上記ポイントの5番目の最後にあるように「読書の好き嫌い」とも相関関係がないとなると、読書の仕方にキモがありそうな?

正直、私のムスコも、この「AI読み」をしていそうなので、本書は私自身にとってはもちろんのこと、親としても読んで良かったと思います。

……というか今気が付いたのですが、私が昨日買ったときより、Kindle価格が120円値下がりしているんですが!?


これからのAI時代を生き抜くためにも読むべし!

AI vs. 教科書が読めない子どもたち
AI vs. 教科書が読めない子どもたち
第1章 MARCHに合格―AIはライバル
第2章 桜散る―シンギュラリティはSF
第3章 教科書が読めない―全国読解力調査
第4章 最悪のシナリオ


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【編集後記】

◆明日終了するKindleセールの中には、このようなものもあります。



Amazon.co.jp: 50%OFF以上 秋の読書フェア: Kindleストア

タイトルを見た時は、一瞬期待してしまったのですが、基本的にはラノベ関係が中心のよう。

ただし、アルクさんのこの本は、当ブログでもご紹介しており、Kindle版が実質600円以上お得な計算です。

翻訳地獄へようこそ
翻訳地獄へようこそ

参考記事:【英語】『翻訳地獄へようこそ』宮脇孝雄(2018年09月13日)


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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