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2018年09月03日

【音楽】『「Jポップ」は死んだ』烏賀陽弘道


「Jポップ」は死んだ (扶桑社BOOKS新書)
「Jポップ」は死んだ (扶桑社BOOKS新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「新書フェア」の中からの音楽本。

著者の烏賀陽弘道さんは、10年以上前に岩波新書から『Jポップとは何か』という作品を出されており、本書はその続編的な位置づけになるのだそうです。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
CDの売上が半減し、国民的大ヒットもなくなり、街からCDショップが消えたいま、音楽業界は風前の灯なのか? ところがどっこい、じつは活気に満ちている。元気の素はパチンコ? ウエディング? カラオケ? 逞しき音楽業界の爐い洵瓩鯏按譴靴晋従貅荳爐派發彫りにしていく。

なお、中古版とKindle価格がほぼ同じお値段ですから、送料分強、Kindle版がお買い得となります!





J-POP CD in Bangkok / Twang_Dunga


【ポイント】

■1.ノルマがある日本のライブハウス
 ミュージシャン側から見ると、日本の旧来型「ライブハウス」が欧米のクラブやバーと決定的に違うのは、出演者からお金を取ることである。
 正確にいうと、出演者のミュージシャンからまず「チケットノルマ」という名称で「入場料×●人分」という形で金を取る。(中略)
 これはつまり、集客のリスクは店ではなく出演者が負う、ということである。(中略)
 店側からすれば「それなら客を呼んでこい。そうすればもっと金を払ってやる」という言い分である。つまり金銭をモチベーションにして、集客の責任を出演者に負わせるという仕組みである。
 ところが、この「出演者が客を集める責任を負う」という慣行も、日本のライブハウス独特なのである。


■2.野外フェスの利点は空間に制限がないこと
 野外フェスの利点のひとつは、屋内コンサートと違って観客を収容する空間に制限がないことだ(実際には、チケット発行数という形で観客数には上限がある)。既存の日本の屋内型コンサート会場は「消防法」の規制を受ける。安全確保という名分で、その施設ごとに観客数の上限が決まっていて、それを超えて客を入れると法律違反に問われる。
 また、座席が固定されていて、ステージ前や通路のスペースが狭い。そこで観客の将棋倒し(最悪の場合、観客の圧力でステージや椅子に挟まれて圧死する)や酸欠で事故が起きて社会問題化することを主催者は恐れる。(中略)
 野外フェスだと、こうした空間的な制約がないに等しい。もちろん、将棋倒しや圧死が起きないような制限はあるし警備員もいる。しかしそれさえなければ、汗だくで踊りながら押し合いへし合い(『モッシュ』という)をしても叱られない。ちょっと離れた場所でシートを敷き、飲食しながら寝そべって音楽を楽しんでもいい。


■3.成功体験に固執したJポップ産業
 経済紙『日本経済新聞』の子会社である「日経BP社」が『日経エンタテインメント!』という月刊誌を創刊したのは1997年である。バブル景気が1992年に終わったあと、「Jポップ産業」が、数少ない成長産業として大きな社会的注目を浴びていた。同誌をはじめとする経済誌は「ヒットの法則(あるいは戦略、公式)」などの言葉で、一般企業がヒット商品を生み出すヒントとして、Jポップ産業の宣伝やマーケティング手法を分析・研究しようとした。  
 これは、Jポップ産業が若者層への売り込みを得意としていたからである。1990年代は、団塊の世代に次いで人口の多い「団塊ジュニア」世代(第二次ベビーブーマー。1971〜1974年生まれ)が20歳代を迎えた時期だ。音楽産業に限らず、どの業種もこの分厚いマーケットである「若者市場」にどうやって自社製品を売るか、頭を悩ませていた。
 この1990年代が過ぎると、日本は「少子化時代」を迎えた。「若者」の数が急減したのである。ところが、Jポップ産業は「若者向けの商品開発」「若者向けマーケティング」など「若者市場偏重」から抜け出せなかった。成功体験に固執したのかもしれない。「ポピュラー音楽は若者文化」という長年の固定観念に囚われすぎたのかもしれない。


■4.パチンコ機は重要な音楽再生機
 まとめると、いまやパチンコ機は「音楽再生機」として、日本人にとって重要なマスメディアになったということだ。パチンコ産業が「縮小した」と嘆く市場規模が23兆2290億円である。第2章で触れたが、コンサートチケット産業が「急成長した」という結果が3100億円だったことを思い出してほしい。パチンコ産業はコンサート産業の75倍という巨大な国民的娯楽なのだ。そして著作権使用料額でいえば、パチンコは通信カラオケの約2倍の金額を著作権者にもたらしている。「なんだ、パチンコか」と軽視してはならない。「巨大な音楽マスメディア」。それが現在のパチンコの姿である。


■5.医療的な側面もある「高齢者用カラオケ」
 高齢者用カラオケには、音楽療法に応じたソフトがいくつも用意されている。足腰の衰えを防ぐためのステップ体操。昔の流行歌や唱歌を聞くと、記憶や感情が衰えているお年寄りが昔を思い出して脳が活性化する。外出が不自由になったお年寄りが季節感を失わないように「サクラ」「こいのぼり」「新茶」といった季節の要素を歌に取り入れる。そうした音楽療法のメソッドに沿ったプログラムが組んである。
 かつては、こうした音楽療法では講師が自分でピアノを弾いていた。1980年代からカラオケ機器が小型化して持ち運びができるようになり、高齢者施設に持ち込まれるようになる。そしてカラオケ機器メーカーも高齢者用プログラムを用意するようになった。


【感想】

◆今回のセールの告知記事でも触れたように、当ブログでは以前、この本をご紹介しています。

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)
ヒットの崩壊 (講談社現代新書)

参考記事:【音楽】『ヒットの崩壊』柴 那典(2016年12月01日)

上記エントリやこの本の内容紹介をご覧になっても分かるように、こちらはJポップの興隆と衰退を描いたもの。

発売時期を見ても、この柴さんの作品の後に書かれた本書は、ネタ的にかぶるか二番煎じとなる危険性はあると、当初思っていました。

ところが実際に本書を読んでみると、思っていた以上に、扱われていた対象が異なっていたという。


◆その大きな理由の1つが、著者の烏賀陽さんが、セミプロレベルの音楽プレイヤー(ベース弾き)であること。

たとえば上記ポイントの1番目にあるライブハウスのノルマ問題は、ニューヨークやパリのライブハウスで演奏した経験もある烏賀陽さんご自身が、疑問に思ってきたことです。

確かに、演奏者側にノルマを課してしまえば、お店が側に集客リスクはありませんから、経営的にはラクでしょう。

ただ、そういう形態であるなら、もはやお店は単なる「ハコ貸し」に過ぎません。

実際、欧米から来て日本に住むミュージシャンの間では「Pay to play system(演奏したいならカネ払え方式)」と揶揄されているのだそう。

本書の第1章では、烏賀陽さんは老舗のライブハウスの店長に話を聞いたり、逆にノルマを取らないお店や、そこで演奏するプレイヤーに取材を敢行。

とはいえ、「自分の演奏を聴いて欲しい」のなら、ネットにアップしてもよいわけですから、ノルマ制も減る方向にあるそうです。


◆続く第2章のテーマは、最近流行りの「フェス」について。

上記ポイントの2番目にもあるように、「野外」で行う利点は、フェスのブームにも一役買っているようです。

また、フェスの経済波及効果はかなりのもので、たとえば新潟県の年間県税収額は約2581億円なので、フジロック(194億900万円)は3日間でその約10分の1のお金を落としていく計算になるという(スゲー!)。

なるほど、CDの売れ行きが下がるのに対して、コンサート等の売上が伸びるのも分かります。

ちなみに本書では、こんな変化球的な「フェス」にもフォーカスしているのですが、その存在自体、私は初めて知りましたよ……。




◆一方第3章では、上記の柴さんの本でも大きく扱われていた、Jポップの「タイアップ」について検証しています。

上記ポイントの3番目にもあるように、当時の「タイアップ商法」の大顧客だったのは、20歳前後の「団塊ジュニア」でしたが、そのやり方が「少子化時代」の若者に通用するワケもなく。

また、上記では割愛していますが、タイアップの特徴は「どんな楽曲をタイアップに選ぶか」の最終決定権が企業側にあることで、彼らは当然音楽の専門家ではありません。

結果、「いくら質がよくても、無名の新人や楽曲に懸けるよりは、有名な楽曲や音楽家を使って経営上のリスクを回避しようという心理」が働いてしまいます。

すると、すでに有名なアーチストにタイアップが付き、ますます有名になる一方、タイアップが付かない無名組は、いつまでたっても売上が10万枚にも達しないことに。

必然的に「100万枚以上組」と「10万枚以下組」の二極化が進んでしまうと、テレビタイアップの神通力が失せてきたときに、トップスターの代わりになるアーチストがいなかったワケです。

そしてこの時期に、トップスター予備軍をじっくり育てる手間を怠ったことが、音楽業界にとって致命的なダメージになった次第。


◆そのCDの売上の代りに伸びてきたのが、カラオケと上記ポイントの4番目のパチンコ機(「歌パチ」)です。

私はパチンコをしないので、全然知らなかったのですが、最近のパチンコ機には、楽曲が大きく使われているんですね(白目)。

また、そのカラオケは一時期ほどの勢いはないものの、上記ポイントの5番目にあるように「高齢者市場」というマーケットに目を付けているようです。

……というワケで、本書は柴さんの本とは違ったアプローチで「Jポップ」に迫った本書。

他にも、手軽に音楽製作が楽しめるソフトや、器具、真空管の音を模した低価格アンプ等の紹介もあったりして、盛り沢山です。

VOX 新真空管Nutube搭載 ギター・アンプ・ヘッド MV50 Boutique タイプ
VOX 新真空管Nutube搭載 ギター・アンプ・ヘッド MV50 Boutique タイプ

……いやこれ、今ギターやってたら、私も即買っていたと思われ。

また、烏賀陽さんが渋谷の屋根裏で観たという「子供ばんど」のライブに、やはり高校生だった私も居合わせた可能性があったりして、勝手に親近感を覚えてしまいましたw


「今」と「これから」の音楽を探る良書です!

「Jポップ」は死んだ (扶桑社BOOKS新書)
「Jポップ」は死んだ (扶桑社BOOKS新書)
第1章 どんな場所で日本人は音楽に触れるのか その一―ガラガラでもライブハウスが潰れない理由
第2章 どんな場所で日本人は音楽に触れるのか その二―進化するコンサートのかたち
第3章 インターネットというゲームチェンジャーが来た
第4章 CDは不況だが音楽不況にあらず―新しい音楽消費のかたち
第5章 なぜ若者はギターを弾かなくなったのか(


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【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)


【編集後記】

◆昨日の月替わりセールで人気だったのはこの辺でした(順不同)。

翻訳地獄へようこそ
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コミュ障のための聴き方・話し方 人と会っても疲れない
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問題解決 ― あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術
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残酷すぎる成功法則
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参考記事:【科学的自己啓発書】『残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する』エリック・バーカー(2017年10月27日)

つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい―――鼻の奥が万病のもと!退治する7つの方法
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一応、ご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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