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2018年08月15日

【徹底分析!】『amazon 世界最先端の戦略がわかる』成毛 眞


amazon 世界最先端の戦略がわかる
amazon 世界最先端の戦略がわかる


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日著者である成毛眞さんの出版記念セミナーにも参加した話題作。

セミナー後、Kindleセールやら未読本記事のような「急ぎのエントリー」が続いたため出遅れましたが、やっとレビューいたします。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
この本では、「小売り」「資金」「クラウド」「会員サービス」「M&A」「物流」「テクノロジー」「組織」などの面から、元マイクロソフトの社長である成毛眞氏が徹底解説。
この1社さえ押さえておけば、世界で今何が起こっているのか、現代のビジネスマンや企業家が知っておくべき最新のビジネス感覚を身に着けることができます。

なお、私はセミナーに参加して単行本をゲットしましたが、版元があまりセールをしないダイヤモンド社さんなだけに、「10%OFF」のKindle版がオススメです!





Shipments from Amazon / public.resource.org


【ポイント】

■1.資金繰りを豊かにしているマーケットプレイス
 公表されていないが、手数料は大きな額ではないだろう。たとえば、マーケットプレイスで出品業者が1000円の商品を販売すると、アマゾンが手数料として10%とっていたとする。最終的に手にするのは100円程度だ。だが、一時的に、アマゾンの手元に1000円が入る。つまり、売上からアマゾンの手数料を引いた「預かり金」を出品者に支払うまでの期間はアマゾンにとって無利子で運用可能な資金になるのだ。
 2013年時点での試算だが、ある米在住流通コンサルタントの仮説では、預かり金でアマゾンが無利子で自由に運用できる額は19億ドルに達すると指摘している。これは、支払いまでの期間を2週間と仮定して計算をした場合の数字だ。(中略)
 アマゾンはCCCのマイナスの要因については一切語っていないが、マーケットプレイスに積極投資を可能にした金脈があることは間違いなさそうだ。


■2.アマゾンのほとんどの利益を稼ぎ出すAWS
 また、自前でサーバーを調達すれば、経年劣化し保守コストがかさむようになるが、AWSならばメンテナンスはアマゾンが行うため、企業は常に最新のサービスを利用できる。事業が成長したときには、容量も柔軟に変更可能だ。
 現在ではアマゾンにAWSを利用する申し込みをしてから15分程度で数千台のサーバーを利用する体制が整うという。自前のサーバーを大金をはたき、何年もかけて用意するのが馬鹿馬鹿しくなってくる。
 システムも、ジャンルを問わず豊富な種類で用意されている。次ぺージの図を見てほしい。労務の手続きや給与計算をしてくれる人事のシステムから、データ分析、画像解析などを使って飲食店の利用客を分析したり、農業に使えるものもあるのだ。


■3.M&A目的のためにサービスを立ち上げる
『ジェフ べゾス 果てなき野望』(日経BP)によれば、「アマゾン マムは、ダイアパーズ・ドット・コムをたたきつぶし、会社を売却させるために導入されたプログラムだった」とされている。つまり、この新サービスは、ダイアパーズ買収のために始めたということらしい。
 当時、ダイアパーズ・ドット・コムでは45ドルだったパンパースを、アマゾンでは39ドルにした。しかも、「アマゾン マム」の会員になって定期おトク便を利用すると、30ドル以下と異様に安くなった。
 パンパースを製造するP&Gの卸価格と配送料を考えると、アマゾンは完全に赤字である。アマゾン マムは紙おむつを売るだけで、3ヵ月で1億ドル以上の赤字になったと言われている。
 アマゾンに儲ける気はまったくなく、ただダイアパーズに白旗を揚げさせるための戦略であった。安値攻勢に晒されたダイアパーズは堪らず、同年にアマゾンに好待遇でのM&Aを提案され、身売りを決めた。


■4.ピックアップロボットKIVAを活用した倉庫
 KIVAは、掃除ロボットのルンバに似た、オレンジ色の機械で、棚の並ぶ倉庫内を人間に代わって動き回り、棚の下に入り込み、商品を棚ごと回収して、持ち場にいる従業員のところまで届けてくれる。
 KIVAを導入することで、以前だとピッカーと呼ばれる従業員がピッキング作業用のカートを何時間も押していた作業が、数分で完了できるようになった。(中略)
 自動倉庫には、デメリットとして製品ごとにロケーションを決定させなければならないということがあるが、フリーロケーションならば、たんにスぺースさえ作れば、あとは商品を置いてKIVAに運ばせるだけですむ。そのため、倉庫の棚を商品のサイズに関係なく作ることができる。(中略)
 つまり、アマゾンの倉庫は建物さえあれば、「自動倉庫」などという巨大な装置を使わなくても即座に操業開始できるのだ。フリーロケーションとKIVAの組み合わせがあれば、面倒なべルトコンべアや自動ピッキング装置などのメンテナンスなども不要になる。


■5.リアルタイムで審査するアマゾンレンディング
 銀行は、融資を決めるときは一般的に決算書で判断する。
 しかし、アマゾンは決算書など見ない。自分で持っているデータの方が確かだからだ。(中略)
 決算書は過去の状態を示す数値でしかない。数ヵ月前の状況しかわからず、今のその会社の状態は見えない。
 一方、アマゾンが持つデータは現時点での取引がわかる。アマゾンは、マーケットプレイスを通じて、在庫管理や発送などの物流を代行している。リアルタイムで商品が何個売れたかまでわかるのだ。だから、外部の人間では知り得ない出店業者のモノの流れまでわかる。決算書ではわからない情報をつかめれば、企業の資金繰りも把握できるようになる。
 あとは融資の判断のための基準を決めれば、融資は全自動で行える。このデータを武器に、アマゾンは、これまでの銀行の融資対象になりにくい会社へも融資をしている。


【感想】

◆古くからのアマゾンユーザーである私にとっても、非常に勉強になった作品でした。

実際、アマゾンの「サービス」を利用している人にとっても、そのサービス自体は分かっていても、裏の仕組みやらビジネスモデルまでは、普通目が届きません。

その点本書は、そういったビジネスモデルの部分まで掘り下げている点がありがたかったです。

たとえば、上記ポイントの1番目にある「マーケットプレイス」。

私にとっては、「古本を買うためのもの」というイメージが強く、アマゾンの儲けとして大したことはないであろうことは理解していました。

それでも「塵も積もれば」的に合算すれば、それなりの金額になるからやってるんだとばかり思っていましたが、あにはからんや。

キャッシュフローの観点からすると、アマゾンの中でも優等生なワケです。


◆同じく「マーケットプレイス」絡みでいうなら、上記ポイントの5番目の「アマゾンレンディング」については、本書で初めてその存在を知りました。

Amazon.co.jp、法人の販売事業者向けに新しい融資サービス「Amazon レンディング」の提供開始

この融資サービス、利率的には銀行より悪いのですが、とにかくスピーディ。

融資を申し込めば24時間以内に資金が借りられ、事業者の出入金管理画面に融資の上限や期間、金利が表示されるのだとか。

ただ、そんな急に資金が必要なのかとも思ったのですが、商品が突然SNSで拡散されたり、テレビで取り上げられたりしたら、在庫の確保が十分ではないこともありえます。

そんな時に銀行に融資を申し込んでも審査に時間がかかり、仕入れが間に合わず、販売の機会を逃し損ねないところ、アマゾンレンディングなら大丈夫(ニッコリ)。

アマゾンにしてみれば、万が一貸倒れた場合には、倉庫で保管している在庫を差し押さえればいいワケですから、損しようがないビジネスモデルなんですね。


◆また同じく「初耳」だったのが、上記ポイントの4番目の「KIVA」。

どういうものなのか、今ひとつピンと来なかったので、YouTubeでググったら、こんな動画がありました。



……なるほど、こりゃすげーわw

一方、アマゾン以外の倉庫は、上記にも登場する「自動倉庫」なる巨大装置を置いており、それによって倉庫での作業を自動化させているのだそう。

ただ、この自動倉庫、商品を置く場所が決まっており、たとえば百科事典なら百科事典の棚にまとめて1巻から10巻まで順番にあります。

ところがアマゾンだと、来た順にバラバラに並び、それを逆にコンピュータで記憶させているのだとか。

それを「A列の31番の上の棚においてある品物を1個取り出せ」のようなコンピューターの指示に従って、KIVAが処理するのだそうです。

このお話が登場する第6章は、アマゾンのビジネスモデルを考える上で非常に重要な「物流」がテーマなので、本当は別の部分も抜き出したかったのですが、インパクトが強かったこちらを選んだ次第。


◆また、割愛したといえば、ボリューム的にカットした話が多すぎて、本書を読んだ他の方からツッコミが入りそうで怖いです。

たとえば、中小企業のアマゾンでの出店をサポートする「FBA(フィルメント・バイ・アマゾン)」。

フルフィルメント by Amazon(FBA) - 利用の流れ - Amazon.co.jp

これは商品の保管から注文処理、出荷、決済、配送、返品対応まで、すべてをアマゾソがまとめて代行してくれるサービスです。

さらに「FBA」を利用すると、自分のページに「プライムマーク」が付く点も魅力的。

実際、「プライムマーク」が付いていると、商品購入されやすいのだそうです。

……確かに配送や返品対応をアマゾンがやっていれば、その点は安心ですけど、だからといって商品のクオリティがどうかは別なんですけどねw


◆他にも本書では、私も入っている「アマゾンプライム」についてもページを割いています。

送料無料とか、当日配送はもちろんのこと、今注目すべきは「プライムビデオ」かと。

私は時間がなくて全然観たことないのですが、最近はオリジナルコンテンツも充実してきたのだそうです。

Amazon.co.jp: Prime Video オリジナルコンテンツ

もともとアマゾンは、消費者のDVDの販売履歴を持っていますから、これを踏まえたニーズを取り込んだ番組制作も可能かと。

そう考えるとますます私たちの生活は、「アマゾン一色」になりそうな気が……。


アマゾンをより深く知るために読むべし!

amazon 世界最先端の戦略がわかる
amazon 世界最先端の戦略がわかる
序章 アマゾンがなかったら生活できないかも
第1章 圧倒的な商品数と安い値段がどうして可能になるのか
第2章 キャッシュがあるから失敗できる
第3章 アマゾンで一番利益をあげているAWS
第4章 アマゾンの「プライム会員」とは何なのか
第5章 アマゾンから、効率のいいM&Aを知る
第6章 巨大な倉庫と配送力で物流を制す
第7章 プラットフォームの主になるには
第8章 アマゾンを底ざさえするのがテクノロジー
第9章 アマゾンという組織


【関連記事】

【セミナーレポ】成毛眞さんの「『amazon 世界最先端の戦略がわかる』出版記念特別セミナー」にお邪魔してきました(2018年08月12日)

【ロジスティクス】『アマゾンと物流大戦争』角井亮一(2017年01月19日)

【Amazon】アマゾンプライムに申し込んで変わった8つのこと(2007年10月18日)

【Amazon】今週号の週刊東洋経済は、やっぱり買っとくべきな件(2009年08月24日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

ライザップ糖質量ハンドブック
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別にライザップに通っていなくとも、糖質制限されている方ならお役立ちのヨカン!

中古に送料を足すと、ほぼ定価並みとなりますから、Kindle版が500円以上お買い得です!


【編集後記2】

◆昨日ご報告し忘れましたが、先日の「文響社 全品50%OFFセール」で人気だったのは、この辺でした(順不同)。

1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
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その悩み、哲学者がすでに答えを出しています
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超筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超科学的な理由
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本物の大富豪が教える金持ちになるためのすべて
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参考記事:【起業】『本物の大富豪が教える金持ちになるためのすべて』フェリックス・デニス(2017年10月06日)

良かったら、ご参考まで。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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