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2018年08月09日

【わかりやすさ?】『心理学者が教える 読ませる技術 聞かせる技術 心を動かす、わかりやすい表現のコツ』海保博之


心理学者が教える 読ませる技術 聞かせる技術 心を動かす、わかりやすい表現のコツ (ブルーバックス)
心理学者が教える 読ませる技術 聞かせる技術 心を動かす、わかりやすい表現のコツ (ブルーバックス)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、ネット徘徊中に偶然見つけたブルーバックスの新刊。

分かりやすい表現方法について、心理学面からアプローチしているという、ユニークな1冊です。

アマゾンの内容紹介から。
会議での提案、学会発表、講演、道の案内板、上司の指示、コンピュータからのメッセージ、大学の教科書、商品のマニュアル(取扱説明書、操作説明書)、企画書、案内の地図や標識などなど。「どうすればわかりやすくなるか」を認知心理学の知見をフル活用して解説!

なお、現時点で中古は定価の倍値近くするのですが、Kindle版も定価と同額ですから、お好きな方でお読みいただければ、と。





Writing? Yeah. / crdotx


【ポイント】

■1.本書と類書の違い
 筆者は、人の認知機能、すなわち見たり、覚えたり、考えたりする人間の頭の働きについて研究している。そこでは、「わかる」とはどういう頭の働きかが研究の一つの基本テーマとなっている。そこから得られた知見を最大限に活用してみると、これまでとは一味違った内容の本ができるのではないかとの思いから、本書を書いてみた。題して「認知表現学」。
「認知表現学」なる用語があるわけではない。筆者の造語である。しかし、気に入っている。「なぜわからないのか」「どうすればわかりやすくなるのか」「そのようにするとなぜわかりやすくなるのか」を認知心理学の知見をフルに活用して書き込んでみたい。「認知表現学」には、そんな筆者の思いが込められている。
 類書では、「こうすればわかりやすくなります」ということは、ていねいに書かれている。しかし「なぜ」がない。そこが物足りない。それを、本書では克服する努力をしてみた。多少の無理は承知の上での試みである。


■2.文と文のつなぎをどうするか?
 文と文とのつなぎをどうするかは、書くときの苦労の一つである。「しかし(逆接)」「だから(順接)」「また(並列)」「あるいは(選択)」「つまり(要約)」「たとえば(例示)」「ところで(転換)」などなどの接続詞をどうするかに悩まされることになる。やたら接続詞を使ってみたり、それに気づかいすることのわずらわしさを避けてか、「〜が、〜」を使った長文を書いたりすることになる。しかし、あまり接続詞が多くなり過ぎると、全体がぎこちなくなって読みにくくなる。しかし一文を長くするのもよくない。かくして、ジレンマに陥ることになる。このジレンマから派生する表現上の問題を、接続不全症候群と呼んでおく。
 読み手の側に関連する知識がないときは、接続詞を使って文と文との間の関係をはっきりと示した方がわかりやすくなることが知られている。過度につなぎの用語を省略しない方がよい。また、段落や小見出しを有効に活用することも考えてよい。


■3.門外漢には詳しさよりもわかりやすさを
 技術とその操作の説明書であるマニュアルなどでは、ことはもっと深刻である。どれほど技術の粋を集めた機械であっても、その説明がわからなければどうにもならないからである。買わせておいてあとは知らんぷりでは、無責任過ぎる。ユーザーが誤った操作をして事故でも起こせば、製造者責任を問われることもある。
 説明には、「説明の詳しさ×説明のわかりやすさ=一定」の法則があるとの指摘を前にしたことを思い出してほしい。わかりやすく説明しようとすると、多少は詳しさを犠牲にしなくてはならない。正確さをとるなら、わかりにくいのは我慢してもらうことになる。
 どうしてもわかってもらいたいことは、解説篇を作り、その中で、詳細さや正確さよりも、知ってほしいことだけをわかりやすく表現する。


■4.比喩をつかう
 比喩を使う利点は、次のようなところにある。
・直観的にわからせることができる。
・わからせたいことに親しみを持たせることができる。
・わかったという感覚を持たせることができる。
 いずれも既存のメンタルモデルを新しい事態に転移させたことで派生するものである。もちろん、比喩もメンタルモデルであるから、その欠点、つまり、誤りに導くことがあるのは致しかたない。
 いずれにしても、表現者は、比喩の持っているこうした特性をうまく利用すると、わかりやすい表現ができることになる。あまりに事態が目新しくて、相手が自分の力だけではメンタルモデルを転移できないことが想定されるときには、積極的に利用するとよい。ただ、何をたとえに使うとよいかがむずかしい。相手の長期記憶の中に、たとえに使ったもの(喩辞)についての十分な知識がなければ、まったくたとえにならないからである。


■5.題目語(文)を前にする
 さて、なぜ題目語(文)を前にするとわかりやすいのであろうか。
 読み手は、文章を読みはじめると、頭の中にメンタルモデルを作り始める。これに基づいて、次々と処理系に入力されてくる語句や文の意味についての仮説を立てる。仮説に合った(照合する)語句や文はすばやく処理されるが、仮説に合わない文章が入ってくると、わからない、おかしい、ということになり、処理に時間がかかる。場合によっては、それまでに作り上げられていたメンタルモデルを変更することになる。題目語(文)が先頭にくると、このメンタルモデルを作るのに都合がよい。「これから述べることはだいたいこういうことです」と、あらかじめ宣言してくれているわけであるから、読み手はそれに合わせて長期記憶内の知識を準備できる。題目語(文)が、言わばこれから述べることの枠組みを作り出す役割を果たしてくれるのである。


【感想】

◆まだ本書は出たばかり(と言っても先月18日の発売ですが)ということで、レビューはなし。

ただし、アマゾンの内容紹介の詳細な方によると、実は本書は、下記書籍の新装版なのだそうです。

こうすればわかりやすい表現になる―認知表現学への招待
こうすればわかりやすい表現になる―認知表現学への招待

何と30年も前に出版されたものらしく、絶版ゆえか、送料を足すと中古が2300円弱もするという。

なお、こちらの本には星4つのレビューが1つだけ付されているのですが、星を1つ減らした理由が「出版年が古い」というものであり、内容的には概ね絶賛しています。

つまり、中古が高騰していることも含めて、「待望の新装版」と言えるでしょう。


◆さて、本書の特徴に関しては、上記ポイントの1番目にあるとおり。

最後の部分である
類書では、「こうすればわかりやすくなります」ということは、ていねいに書かれている。しかし「なぜ」がない。そこが物足りない。それを、本書では克服する努力をしてみた。
というのが、まさにそれに該当します。

たとえば上記ポイントの4番目や5番目には「メンタルモデル」という言葉が何度か出てきますが、文や話が分かりやすいか否かに、「メンタルモデル」からアプローチする作品は、当ブログでは初めてでした。

なお、メンタルモデルとは何ぞや、という点については、Wikipediaには
人間が実世界で何かがどのように作用するかを思考する際のプロセスを表現したもの
とありますが……。

メンタルモデル - Wikipedia

本書では第6章にて詳しく解説されていますので、そちらをご覧ください。


◆なお本書のTIPSとしてユニークだったのが、たとえば文章を構造的にわかりやすくするだけではなく、相手にはたらきかけて「わかりたい」「わかりそう」と思わせるようにもしていること。

著者の海保さんいわく「相手が、いつも、どんな苦労をしてでもわかりたいとの気持ちがあれば、表現する側は楽ができる」とのことで、本書の第5章では、相手にわかりたいと思わせる表現上の工夫を試みています。

たとえば「最初の部分では、専門用語やカタカナ語はできるだけ使わない」といったTIPSは、私たちも意識していないこともないですし、確かに有益でしょう。

ただその理由が「既有知識との照合ができる情報をできるだけ増やすため」という辺りが、本書の本書らしいところ。

これが普通のビジネス書だったら、普通にTIPSだけ挙げて終わっていて「なぜならば」の部分は割愛していると思います。


◆実際、今回ハイライトを引いた多くの部分と、こうして記事として抜き出した部分がある程度乖離しているのは、最終的に本書が「ビジネス書ではない」からかと。

特に話し方や文章の書き方のビジネス書というのは、「こうすればわかりやすくなります」という部分の「量」と「質」を追求している作品がほとんどです。

一方で「なぜ」の部分を掘り下げていなくとも、こうしたテクニックは十分使えますし、私自身、たとえば「メンタルモデル」を意識したことなどありませんでした。

とはいえ、テクニックを上辺だけで身につけるよりも、そのバックボーンを深堀りしておいた方が、より一層効果が望めるはず。

そういう意味からは、従来のテクニカルな本をたくさん読まれてきた方に、本書をオススメしておきたいと思います。


「わかりやすさ」を根底から理解するために読むべし!

心理学者が教える 読ませる技術 聞かせる技術 心を動かす、わかりやすい表現のコツ (ブルーバックス)
心理学者が教える 読ませる技術 聞かせる技術 心を動かす、わかりやすい表現のコツ (ブルーバックス)
第1章 わかる技術の基礎~人間の情報処理システム
第2章 表現の目的~自分を知る・心を解放する・伝える
第3章 表現する前に頭の中で起こっていること
第4章 さまざまな「わかり方」「わからせ方」
第5章 気持ちを引き込む表現の工夫~「わかりたい」「わかりそう」と思わせる
第6章 相手の知識の世界に配慮する
第7章 「読みたい」「聞きたい」気持ちにさせる表現の技術


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【池上流知的生産術】『<わかりやすさ>の勉強法』池上 彰(2010年11月10日)


【編集後記】

◆テーマ的に当ブログ向きではなかったのでご紹介はしていませんでしたが、こちらのセールも本日までとなっています。



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当ブログでもセールでご紹介したことのあるこの本も、「55%OFF」とお買い得ですから、気になる方は要チェックで!

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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