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2018年01月25日

【比喩?】『たとえる技術』せきしろ


B01MDLGXKP
たとえる技術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「エッセー・随筆フェア」の中でも気になっていた1冊。

今まで何度かKindleセールの対象となっていましたが、今回やっと読むことができました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
芥川賞作家・ピース又吉直樹や、直木賞作家・西加奈子らとの共著でも知られる文筆家、せきしろ。エッセイが東海大の入試に使われるなど、確かな文章力に定評があり、また数々の芸人にコント脚本を提供するなど、圧倒的なユーモアを生み出すせきしろの、表現力の秘密は「たとえ」にあった――。

なお、今回のセールでは「50%OFF」ということで、送料を加味した中古よりも400円弱お買い得です!





IMG_8545 / stephenshellard


【ポイント】

■1.たとえると伝達力がアップする
 帰省した時、驚いた。夜が暗かったのだ。建物も少なければ、街灯も少ない。東京という比較対象ができたことにより気づく暗さ。
 しかしこの話を東京生まれ東京育ちの人にしてもなかなか伝わらなかった。「夜は暗いものだろ」と言われて終わってしまう。「いや、そんなもんじゃないんだよ」と力説しても伝わらない。無理矢理田舎に連れていこうかと思ったが、そんなお金があるわけない。
 そこで暗さをたとえる。
開演後に入った劇場のように暗い
 頼りになるのは足元のわずかな灯りと、誘導するスタッフの小さなライトくらい。暗い。「ああ、そういう時って座席番号がなかなか確認できないんだよね」と共感が生まれ、暗さを明確にイメージしやすくなるのだ。


■2.視点を変える
 例えば大喜利で『こんな女性アイドルは嫌だ』というお題があったとする。回答を考える時、誰もがまずは嫌な女性アイドルを考える。「恋愛ばかりする」「ファンを大切にしない」「歌も踊りもできない」「やる気がない」などのフレーズが浮かび上がる。(中略)
ここで終わらせてもまったく問題ないのだが、他人とは違った自分なりの回答が欲しいならば視点を変えていけば良い。
 変化させていく過程は次の通りだ。
アイドル→ 女性 → 人間 → 動物 → 生物 → 地球
 イメージとしては自分が対象から徐々に離れて、遠くなっていく感覚である。
 まずはアイドルから視点をずらして女性として考える。つまり「嫌な女性」を考えるのだ。すると「電車で化粧を直す」「大声で笑う」などの回答が出てくるので、それをアイドルに当てはめれば「電車で化粧を直すアイドル」「大声で笑うアイドル」といった「嫌なアイドル」の回答が生まれる。


■3.よくある表現をアレンジする
 それがここで述べるアレンジするという方法だ。誰でも思いつきそうなたとえ、誰もが使っているたとえ、使い古されているたとえなど、既存のたとえをアレンジする。
 ではどうアレンジするのかというと、「綿菓子のような雲」の綿菓子を具体的にして差別化を図るのだ。
綿菓子のような雲
     ↓  
懐かしい味のする綿菓子のような雲
「懐かしい味のする」という言葉を加えただけで印象が変わる。よくある雲だったはずが、昔を懐かしむ大人が見ている雲に思えてくる。故郷を思い出しながら見ている雲だろうか。「綿菓子のような雲」の時よりも情景が浮かぶ。


■4.たとえに相手の好きなものを交える
 当時見つけた技術のひとつとして、ただたとえるだけではなく、たとえの中に相手が好きなものを交えるというのがある。もしも相手が野球好きなのであれば野球関連のフレーズを盛り込んで、たとえるのだ。
「それは凄いですね! まるでバックスクリーン三連発のようです」
「そうなんですよ!」
 好きなものでたとえられて悪い気はしない。蛇が嫌いなのに「まるで蛇の抜け殻みたいですね」とたとえられるより良いに決まっている。(中略)
 もちろん相手が野球好きである確証を得てから行うのが定石である。相手が野球に興味がないと、野球で一生懸命たとえたところで何のことを言っているのか理解できないだろうし、野球を嫌悪していたならたちまち先の蛇の例になってしまう。


■5.彦摩呂方式で勢いでいく
 ただ、繊細な部分を無視して勢いでいくパターンもある。いわゆる彦摩呂方式である。
肉汁の宝石箱
肉汁のIT革命
肉汁の郵政民営化
 繊細さは見事に消え去ったが、それを補って余りある説得力がある。肉汁にこだわりすぎたたとえよりも不思議とおいしさが伝わってくる。
 この彦摩呂方式の最大の利点は、おいしくなくても使えるところだ。意味がわからなくとも納得させてしまうパワーがあるのだ。ある意味おいしさのたとえとしては正解なのではないかと思える。
 そこで、いざとなったら彦摩呂方式を使えるようにあらかじめ言葉を用意しておくのも良いだろう。


【感想】

◆今までご紹介したことがなかったタイプの本だけに、正直、このレビューもどう書くか迷ったワタクシ。

まず、上記ポイントで挙げたものは、いずれも、私個人として一応「アリ」だな、と思えるものばかりを集めています。

かといって、本書全体がこうしたテイストかというと、そういうワケではなくて、もうちょっとかっ飛んだ事例がわんさか。

そしてそれらが、ウケを狙ったものなのか、著者のせきしろさんとしては真面目に考えられたのかが、分かりにくい感じです。

……単に私の笑いのツボが、今のメインストリームとズレている可能性が高いのですが。


◆かつ、上記で挙げたポイントは、いずれもTIPS的な要素を持つものですが、本書の大部分を占めるのは、せきしろさんが作られた「たとえの事例」です。

それも様々な切り口(色、形、大きさ、感情等々)ごとに、それぞれ8個程度ずつ列挙されている仕様。

ただ、そういった事例1つひとつを鑑賞することはできるのですが、その前に収録されているセンテンスが、「たとえ」のコツであるケースと、その切り口に関連するエッセイのケースがあって、ちと戸惑いました。

多分本書がビジネス書だったら、すべて「コツ」で統一しているところ、かなりフリーダムな作りになっています。


◆とはいえ、単なる「たとえ」にとどまらない「発想のユニークさ」は、上記ポイントの2番目で明らかに。

ここでは、「アイドル」から「女性」にずらしていますが、本書ではその後、「人間」や「動物」、さらには「生物」にずらした上で、具体的な「嫌な人間」「嫌な動物」等を提示しています。

たとえば「嫌な人」ということで、「列に割り込む人」と考えたなら、「列に割り込むアイドル」。

「嫌な動物」ということで、「農作物を荒らす」とするなら、「農作物を荒らすアイドル」……ってもはや『こんな女性アイドルは嫌だ』を超越しすぎていますw

でも、こういう視点は、商品開発や、問題解決に活かせそうな予感。


◆また、上記ポイントの4番目の例は、コミュニケーションスキルとしても有益でしょう。

好かれる好かれないとは別に、共通の趣味等があれば、その用語を活用することで、話も伝わりやすいですし。

一方、ポイントの5番目の「彦摩呂方式」は、どこまで汎用性があるのか分かりませんが、ハマれば効果がありそうな。

上記でも「あらかじめ言葉を用意しておくのも良いだろう」とあるので、決めフレーズを用意しておくと、雑談等でウケるかもしれません(仕事にはオススメできませんが)。


◆……とカッコ書きで書いたように、正直本書の内容は、ビジネスシーンで活用するには、ちとリスクが高めです。

それと、本書の冒頭でも
たとえに関する難しい話は省き、「〜のような」「〜のように」というわかりやすい形に特化している
とあるように、隠喩や擬人法のような比喩については、いっさい触れられていません。

その辺を踏まえた上で、せきしろさんの軽妙なエッセイや、思わずクスリとするたとえを楽しむのならば、本書は一読の価値アリ。

それと、アタマが堅くなってきた、とお思いの方なら、パラダイムシフトが味わえるかもしれません!?


いずれにせよ、お求めになるならセール期間内に!

B01MDLGXKP
たとえる技術
たとえないより、たとえたほうがいい理由
たとえを作る、いくつかの視点
状態を、たとえる
たとえるとできる、いろいろなこと
感情を、たとえる


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【編集後記】

◆本日終了のKindleセールには、このようなものもあります。



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……いずれも単独記事を書けるほどではなかったので、スルーしてしまいましたが、気になるものがございましたらご確認は今日中に!


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