スポンサーリンク

2018年01月23日

【ユニクロの真実?】『ユニクロ潜入一年』横田増生


ユニクロ潜入一年 (文春e-book)
ユニクロ潜入一年 (文春e-book)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「文藝春秋2017年ベストセラーセール」でも人気の1冊。

まだ昨秋に出たばかりの作品ということで、すでに多くの方にお求めいただいております。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「週刊文春」誌上で大反響を呼んだ「ユニクロ潜入ルポ」をもとに、一年にわたる潜入取材の全貌を書き下ろした。読む者をまさにユニクロ店舗のバックヤードへと誘うかのような現場感に溢れたルポルタージュである。気鋭のジャーナリストが強い意志をもち、取材に時間をかけ、原稿に推敲を重ねた読み応えのあるノンフィクション作品が誕生した。

なお、まだ中古がそれほど値崩れしておらず、送料を考えるとKindle版が600円弱お買い得となります!





IMG_2238 / Ivani.Chang


【ポイント】

■1.「倒産」を連呼して危機感を煽る
当時、経営に自信をなくしていた柳井社長は、社長職を後継者に譲りたがっていた、といわれている。しかし、玉塚氏が社長となった後、経営が上向いてくると、もう一度、自分が全権を握りたいという思いから玉塚氏を更迭した、という見方がある。
 つまり、この「会社がつぶれる」や「倒産する」というのは、柳井社長流のユニクロを自分の思い通りに操縦するための、魔法の呪文のような言葉ではないのか。
 財務諸表まで詳細に読み込むことのない社員やアルバイトに向かって、会社が倒産する、と言って危機感を煽れば、思い通りに出勤日や出勤時間を削ることができる。そうすれば、人件費を変動費のようにして、売上げの落ち込みに合わせて、引き下げることができるのである。つまり、「倒産する」という脅し文句を使うことで、従業員への給与の支払いを抑え、その分を会社の利益に回している、というように理解できる。


■2.来客数の多い週末でも時給が同じ
 ユニクロの経営は、平日だけの数字を抜き出して、決算書を作れば、おそらく収支トントンとなるのではないか。週末や祝日、それに感謝祭や年末年始で、人件費を抑え、大きな売上げをとることで、利益を出している。
 一方、働く側としては、平日に働くのと比べると、週末に働くのは、2倍近い負荷がかかる。つまり、2倍疲れる。感謝祭ともなれば、3倍の負荷となり、3倍疲れることとなる。
 ならば、平日と週末・祝日、感謝祭や年末年始の時給が同じというのは、おかしくないのか。もちろん、法律的には何の問題もない。しかし、労働量に見合っただけの時給を支払わないのなら、忙しい時期だけ働いてくれ、というユニクロの要求は虫がよすぎないか。


■3.会社としてのガバナンスが効いていない
 2016年8月31日時点で、柳井社長の持ち株比率は26.6%強(オランダの資産会社、テイテイワイマネージメントを含む)、一海氏は4.5%、康治氏は7.9%(同氏の資産運用会社であるMASTERMIND保有分を含む)、妻の照代氏は4.4%強(同氏の資産運用会社であるFight&Stepの分を含む)──となる。  家族4人の株式を合わせると、持ち株比率は43%を超える。(中略)
 実質上、「株主」と「取締役会」はほぼ同じであるのだから、企業のガバナンスは効いていないも同然となる。ユニクロにおいてチェック・アンド・バランスは、機能するのが難しい。ほとんどすべて柳井社長の思うがままである。それゆえ柳井社長は、ユニクロという会社を自分のモノだと考えているのではないだろうか。
 

■4.広報戦略にすぎないCSR活動
 前章で書いた深圳でストがあった深圳慶盛服飾皮具に積極的に介入して、もし工場が支払う義務があった社会保障をユニクロが肩代わりするようなことになれば、それは同社のCSRの意義からは大きく逸脱する。また、カンボジアの下請け工場のストも、深入りすると、ユニクロに不利益をもたらす結果になりかねない。
 CSR活動が、すべて算盤ずくの行動であるとするなら、ユニクロの海外の下請け工場が抱える諸問題に、ユニクロが消極的な態度をとることに納得がいく。深圳やカンボジアの下請け工場に肩入れすれば、損をすることはあっても、得をすることはない。損を最小限に抑えながらも、"よい会社"に見られようとするには、プレスリリースを出すだけで、静観しているというのが最善の策なのかもしれない。


■5.未だ続くサービス残業
「本部が見ることのできる僕の実働時間数は、繁忙期なら上限の月220時間未満に収まるように、例えば219時間50分のようになっているはずです。なぜなら毎週、毎日、その月あとどれくらいなら上限内に収まるかを計算しながら、〈勤確〉を修正していたからです。これは僕に限ったことではありません。ビックロでは、総店長や店長、代行者はほぼ同じことをしていました。(中略)サービス残業は、ビックロ上層部の間では公然の秘密でした」
 こうした勤務時間の改竄によるサービス残業の問題は、序章でも指摘した通り前著『ユニクロ帝国』が書かれたころにも行われていた。2011年の出版から5年たった時点でも、ユニクロでは同じような手法で、サービス残業が行われている、というのだ。


【感想】

◆実際に著者の横田さんがユニクロに「潜入」して書き上げただけに、「迫真のルポルタージュ」と言ってもいい作品でした。

その潜入先は3店舗(イオンモール幕張新都心店、ららぽーと豊洲店、ビックロ新宿東口店)。

それぞれのお店でバイトとしての採用面接を受けるため、その都度「身元がバレないか」と横田さんはハラハラするものの、無事潜入に成功します。

もちろん、ユニクロの柳井さんから版元の文芸春秋が訴えられることとなったこちらの前作で、店員らの話では色々聞いていたでしょうが、やはり働いてみて初めて分かったことも多々。

ユニクロ帝国の光と影
ユニクロ帝国の光と影

特にユニクロの場合、採用の際に「守秘義務契約書」にサインせねばならず(控えはもらえないもの)、退社してからでもそれに抵触すると訴えられる恐れがあって、前作の取材では大変だったそうです。


◆さて、横田さんが比較的容易に潜入できた理由の1つが、「どの店舗も人不足である」ということ。

なんと「顧客を店員に勧誘する」(「部長会議ニュース」で柳井社長が直接激を飛ばしている)ことすら奨励されているくらいです。

たとえ仕事が激務であっても、それに相応する賃金が払われれば、まだ人も集まりますが、ユニクロの場合、上記ポイントの2番目にあるように平日も週末もバイトの時給は同じ。

一応、周囲のお店には合わせるようで、2番目の豊洲店では、最初の幕張新都心店より高めの時給だったとのこと。

ただし、最後のビックロは、家賃が高いこともあってか、周囲のアパレルよりは時給が断然低く、結果アジア系のアルバイトが5割を占めていた(豊洲店は1割)のだそうです。

ちなみに横田さんも、アジア人の買い物客が多いためなのかと当初思っていましたが、実際にはその割合は1割にも満たず、単純にその時給では日本人が集まらない模様。

それでも店舗が広いこともあって、仕事は激務を究め「世界で一番忙しい店舗」なのだとか。


◆それでいて、経費削減のため、アルバイトを働かせられないとどうなるか?

当然、社員がその分を補わねばならず、上記ポイントの5番目にあるように「サービス残業」が常態化します。

なお、このポイントの5番目で証言しているのは、元ビックロの代行者(店長をサポートする現場責任者)であった池田氏(仮名)。

ある程度の責任がある方の証言は、いかにこうした「ごまかし」がユニクロ内で横行しているかを明らかにしてくれます。

特にユニクロの場合、柳井社長の「鶴の一声」で経営方針が180度変わるため、その都度売り場に手を加えたりする必要があり、現場は大変だったようです。


◆本書では、ユニクロにおける様々な問題点が挙げられているのですが、必ずしも会社としての問題ではないものもありました。

たとえば「思うようにシフトに入れない割に、シフト外で急に呼び出される」という問題は、その店舗の責任者にも依りそうですし、以前別のアパレルにいた人の「マニュアル通りの接客ばかり押し付けられる」という問題は、「それがユニクロのスタイルだから」と言われたらどうしょうもない気が。

また、横田さんは、店員はユニクロの服を着るよう要請されて、社販で大量に買った結果「安価な値段相応の品質」と感想を述べられているのですが、ぶっちゃけ、服の事はほとんどご存知ない(今まで奥さんが服を買っていたそう)感じです。

確かに、ユニクロがその安い値段ゆえに人気を博しているのは事実ですが、「この値段でこの高品質!?」というコスパを実現しているがゆえに、その分、上記ポイントの4番目にあるような海外の製造部門にしわ寄せがいっている、と考えた方が自然ではないか、と。

それでも、マクドナルド復活の要因が「社員の給料を上げたこと」だとすると、柳井さんにももうちょっと考えて欲しいところですが……。


ユニクロの真実がここに!

ユニクロ潜入一年 (文春e-book)
ユニクロ潜入一年 (文春e-book)
序 章 突きつけられた解雇通知
第1章 柳井正社長からの“招待状”
第2章 潜入取材のはじまり
第3章 現場からの悲鳴
第4章 会社は誰のものか
第5章 ユニクロ下請け工場に潜入した香港NGO
第6章 カンボジア“ブラック告発”現地取材
第7章 ビックロブルース
終 章 柳井正社長への“潜入の勧め”


【関連記事】

【ユニクロ流】『柳井正の希望を持とう』(2011年06月12日)

【ユニクロ銀座店リニューアル記念?】「柳井正の見方・考え方」に学んだ4つのポイント(2009年10月08日)

そろそろユニクロ以外のファストファッションについてもひと言言っておくか(2009年12月28日)

【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

語学で身を立てる (集英社新書)
語学で身を立てる (集英社新書)

送料を足した中古の方がお得ですが、「62%OFF」という激安設定ゆえ、その差はわずかです。

アマゾンレビューがおおむね高評価ですから、気になる方はこの機会にぜひ!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「企業経営」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
Posted by smoothfoxxx at 08:00
企業経営このエントリーを含むはてなブックマークYahoo!ブックマークに登録

スポンサーリンク