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2017年05月28日

【行動経済学?】『不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100』スチュアート・ サザーランド


不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100
不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」にて注目していた1冊。

「『認知バイアス』についての古典的名著」ということで、かつてないほどハイライトを引きまくりました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
軍事戦略や政策決定の誤り、原発や航空機の事故を招く重大な過失から、私たちが日常的におかす判断ミスまで、愚かな誤りは人間につきもの。ヒトは理性的な動物どころか、ほぼ常に間違った判断を下し、愚かな行動を繰り返す動物であるらしい。
なぜ人はかくも多くの誤りをおかすのか。著者は膨大な実例や心理実験を挙げて、私たちが陥りがちな事実誤認や判断ミスを分析し、その要因とリスク回避のためのアドバイスも散りばめる。

なお、単行本は絶版のようで、中古が2000円以上しますから、送料を加味すると、このKindle版が1200円以上お買い得です!





Probability and Measure / John-Morgan


【ポイント】

■1.ブーメラン効果
 人はある信条に深くコミットする(この場合は、請願書に署名する)と、反対されることで、ますますその信条を強く支持するようになる。自分の考えが批判されると、それを正当化しようとして意固地になるのだ。これは「ブーメラン効果」と呼ばれる心理である。何かにいったん深くかかわると、そのあと引っ込みがつかなくなり、自分の立場を必死で正当化しようとする。請願書に署名した女性たちは、署名したのは正しい行動だったと自分に言い聞かせるために、避妊教育を批判したパンフレットを受けとったことで、かえって避妊教育の推進に熱意を燃やすようになった。


■2.人は物事を都合よく解釈する
 これに関連して、希望的観測という心理も私たちの判断を大いに左右する。喫煙者は、喫煙が健康に悪いという研究報告を軽視する傾向がある。ある調査では、コーヒー好きの人たちは、コーヒーを飲まない人たちよりも、コーヒーは健康に悪いという説に懐疑的だった。人は宝くじに当たる確率を過大に見積もり、盗難や交通事故に遭う確率を過小に見積もる傾向があることが調査で示されている。人間が物事を自分に都合のよいように解釈することを示した実験は枚挙にいとまがない。


■3.相関関係の誤り
 もっと一般的に言えば、事象Aと事象Bの相関を確かめるには、以下の4つの場合をすべて検討しなければならない。
事象Aがあり、事象Bもある場合  
事象Aがあり、事象Bがない場合  
事象Aがなく、事象Bがある場合  
事象Aも事象Bもない場合
 この4つの場合の頻度を手っ取り早く比較するには、表1のような2×2の表をつくればいい。医師がおかした誤りは、ネガティブケース(この場合は、症状がない、または病気を発症しないケース)を考慮に入れなかったことだ。


■4.逆確率はもとの確率とは違う
 残念ながら、多くの医師がこの2つのタイプの確率を混同している。アメリカで実施された調査によると、95%の医師が、乳癌であれば陽性となる確率が0.92なら、陽性であれば乳癌である確率も0.92だと思い込んでいた。これは大きな間違いだ。検査で陽性であっても癌である確率は非常に低く、場合によっては0.01となる(陽性の判定が出ても、癌であるケースは100人に1人ということだ)。にもかかわらず、95%の医師が逆の条件付き確率をもともとの確率と混同するという初歩的ミスをおかしているのである。


■5.基準率を考慮に入れない誤り
 嘘発見器でクロの判定が出た従業員は、自動的に解雇されるとする。ちょっと考えると、10人中1人は無実の罪で解雇されるにせよ、残り9人は悪事を働いた連中なのだから、経営者としては嘘発見器を使用する価値があるように見えるかもしれない(従業員は不満をもつにせよ)。
 しかし、この推論は間違っている。盗みを働かない従業員のほうが、盗みを働く従業員よりもはるかに多いからだ。たとえば、従業員1000人の場合を考えてみよう。年間を通じて、会社の物品を盗むのはそのうち1%(10人)で、残り99%(990人)は盗まないとする。全員が嘘発見器にかけられ、盗みを働いた10人のうち9人はクロの判定が出るだろうが、990人のうちの99人は無実の罪で解雇されることになる。つまり、嘘発見器で罪が暴かれる従業員1人に対して、10人近い従業員が無実の罪に問われることになるわけだ。



【感想】

◆いやもう、冒頭で申し上げたようにハイライトを引きまくったため、上記で「ポイント」として、抜き出す部分を選ぶ時点で大変でした。

一応こちらが原書なのですが。

Irrationality: the enemy within (English Edition)
Irrationality: the enemy within (English Edition)

初版は1992年らしく、2013年に出た上記の本が「21周年記念版」ということで、その頃からあるのだな、と。

本書は、さらにそれ以前(1960年代)から研究が進められてきた、「認知バイアス」に関する「集大成」とも言えるものです。

なんでも、本書の「訳者あとがき」によると、この原著はリチャード・ドーキンスや、オリバー・サックスといった面々に絶賛されているのだそう。


◆こうした「認知バイアス」の実験結果は、その後「行動経済学」にも取り入れられてきます。

なるほど、紹介されている事例は、類書で目にしたものもちらほら。

ただ、出版時期から考えると、これらはむしろ本書の方が先だった可能性は高いので、ネタかぶりと言われてしまうとツライところです。

実際、扱われているテーマも、「行動経済学本」ではおなじみのモノばかりなので、この手の本がお好きな方にとっては、既視感があるかもしれません。

とはいえ、ここまで広範囲に「認知バイアス」を取り扱っている作品も珍しいかと。

「訳者あとがき」でも
人が陥りやすい錯誤をこれほど広く網羅した一般読者向けの本はまず見当たりません。
と言われています。

つまり、本書1冊を持っていれば、だいたいのケースはカバーできますから、他の本は段ボール行きでもいいのかも!?


◆ただし、本書が特徴的なのが、上記ポイントの4番目や5番目にあるような「統計・確率」に近いお話にも触れていること。

上記ポイントでは割愛しましたが、いわゆる「モンティ・ホール問題」と同じパターンの事例も収録されていました。

モンティ・ホール問題 - Wikipedia

具体的にはこんなのです。
 3枚のカードがある。1枚は両面とも白、1枚は両面とも赤、もう1枚は片面が白で、片面が赤だ。3枚重ねてテーブルに置かれている。一番上の見えている面は赤だ。このカードが両面とも赤である確率は?
答えはもちろん「2/3」なのですが、納得できない方は、本書にてご確認を。

個人的には、「モンティ・ホール問題」よりも腑に落ちやすかったです。


◆結局こうした「認知バイアス」は、人として、まず避けることができません。

上記ポイントの4番目の確率のお話も、実際に間違えている医師が多いわけですし。

ですから、私たちは「避けられない」ものであっても、「知っておく」ことが大事かと。

これは病院だけのお話ではなく、ビジネスシーンでも同様です。

反射的に出た答えや結論が「間違っているかも」と、思えることで、正しい答えが導き出せるかもしれません。


お求めになるなら、今月中がオススメ!

不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100
不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100
01 はじめに
02 誤った印象
03 服従
04 同調
05 内集団と外集団
06 組織の不合理性
07 間違った首尾一貫性
08 効果のない「アメとムチ」
09 衝動と情動
10 証拠の無視
11 証拠の歪曲
12 相関関係の誤り
13 医療における錯誤相関
14 因果関係の誤り
15 証拠の誤った解釈
16 一貫性のない決断、勝ち目のない賭け
17 過信
18 リスク
19 誤った推理
20 直感の誤り
21 効用
22 超常現象
23 合理的な思考は必要か


【関連記事】

【認知バイアス】『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』池谷裕二(2016年01月26日)

『錯覚の科学』が想像以上に凄い件について(2014年08月19日)

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ
新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ

一時期、Kindle Unlimitedの対象となっていたため、セール記事からは除いていたのですが、相変わらず中古が1000円近くする文章術本。

結果、送料を考えるとKindle版が600円以上お得です。

参考記事:【オススメ】『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』唐木 元(2015年08月14日)


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