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2017年04月22日

【マーケティング】『すごい立地戦略 街は、ビジネスヒントの宝庫だった』榎本篤史


すごい立地戦略 街は、ビジネスヒントの宝庫だった (PHPビジネス新書)
すごい立地戦略 街は、ビジネスヒントの宝庫だった (PHPビジネス新書)



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、以前土井英司さんのメルマガで、「ビジネスパーソンの教養としても、ぜひ読んでおきたい内容」「目からウロコが落ちる思いで読みました」などと激賞されていて、ぜひ読んでみたかった1冊。

1ヶ月近く経って、やっとKindle化されたので、今般手に取ってみた次第です。

アマゾンの内容紹介から。
店舗経営者や店舗開発担当者のみならず、営業職や、街歩きが好きなビジネスパーソンにおすすめの一冊。ただの移動や散歩が、戦略図を読み解くビジネスヒント探しの旅に変わる感覚を体験できる。「セブンイレブンは○○角を狙う」「港区と足立区ではどっちが儲かる?」「なぜ大阪と京都の立地戦略は難しいのか」等、3万件の調査実績をもつ店舗開発のプロフェッショナルが語り尽くす、「初めてでも絶対ハマる」立地戦略の話。

何やら新書版が在庫切れのせいか、2倍近いプレミア価格が付いていますから、ここは普通にKindle版がオススメです!





The Intersection of 15th and Champa / Jeffrey Beall


【ポイント】

■1.セブン-イレブンの進出が遅れた県の特徴
 そしてこれが重要なのですが、集中出店方式の他にも、セブン‐イレブンが出店先を決めるときに目安にしているものがあります。それが「人口量」です。実はセブン‐イレブンは、人口量の多い地域ではそれに比例して店舗数も多いという相関関係が顕著です。
 沖縄県は、物流がネックになっていたことが出店の遅れた大きな理由と思いますが、鳥取県や四国は、人口が全国でも最下位近くです。日本で最も人口が多いのは東京都ですが、都内でセブン‐イレブンが多く出店している市区町村はどこだと思いますか? 答えは足立区、大田区、世田谷区、江戸川区です。これらの区は、都内で最も人口の多い区です。


■2.「出すべき場所」に出店するセブン-イレブン
 ローソンやファミリーマートの店舗開発は、空きテナントを探すやり方で新店舗の物件を探しています。不動産屋に「こんなところに空いているテナントはないですか?」と通い、情報を得て、そこから出てきた物件を選んで出店しています。これがオーソドックスな店舗開発の進め方です。
 ところが、セブン‐イレブンは違います。出店先のエリアを分析した結果、「この角地に出すべきだ!」となった場所に出店します。そこが空きテナントなのかは、はっきりいって問いません。そこに会社があろうと、民家があろうと、もともとあった物件を移動させてまで、決めた場所に出店するといっても過言ではありません。


■3.立地が悪くても顧客誘導するドン・キホーテ
 ドン・キホーテの特徴のひとつに、「アクセスが悪い場所にある」という傾向があります。特に都心の店舗は、駅から徒歩でも行ける距離ではありますが、駅のすぐ近くというよりは、しばらく歩いたところにある場合がほとんどです。(中略)
 これがもっと駅の近くにあれば、お店に入る人も増えてさらに儲かるように思うかもしれません。ですが、安く買えるのがウリの店舗です。駅の近くの物件の賃料と収益との兼ね合いから、ある程度駅から離れた安い土地に出店しているという面もあるでしょう。
 それでも、もしお客様が全然来なかったら売上は成り立たないですよね。あえて駅から離れるというリスクがあっても出店できるのは、なぜでしょうか?
 この答えも、「ドン・キホーテ自体が顧客誘導施設になり得るから」です。「顧客誘導施設」とは、読んで字のごとく「顧客を惹きつける施設」、つまりお客様を集める施設です。


■4.立地ではなく、人で選ばれる「美容師」
 たとえば、いつもお願いしていた美容師さんに、「来月から独立して隣町にお店を出します」といわれたら、あなたはどうしますか?
 隣町まで通うのが面倒な人もいるでしょうが、「どうしてもこの美容師さんがいい」という人も、特に女性は多いものです。そういう人は、担当の美容師さんについて行くように、隣町の新しい美容院へ通うようになります。
 美容院はサービス業ですから、ただ商品を販売する物売り業とは異なります。サービス業は、商品にお客様がつくのではなく、「人にお客様がつく」業態です。そのため目的性が高く、場所がどこにあるかよりも、重要なのは「誰がいるか」なので、「その人がいるお店に行きたい」となるのです。


■5.親和性の高い立地関係
 たとえば、結婚式場近くの美容院。女性の方なら、友人の結婚式に出る際、式場近くの美容院でヘアセットをしてもらおうと考えたことのある方も多いでしょう。式場の近くで、大々的に「結婚式のヘアセットの予約承ります」とアピールしておけば、そういったお客様も取り込むことができます。
 それから、墓地の近くの花屋。お墓参りに行くときには、お墓に供える花を持っていくはずです。うっかり持ってくるのを忘れてしまったとき、墓地の近くに花屋があればそこで買うことができます。お盆の時期などは、花屋でも菊を中心としたお供え用の花束が売り出されていますね。
 花屋は、コンサートホールやイベント会場の近くとも親和性が高いでしょう。「友達のコンサートに行くのに手ぶらではちょっと……」というときに、近くに花屋があればすぐに花束を用意できます。


【感想】

◆本書の帯の部分にある問題について。

これ、シンプルに「AかBか」の二者択一なので、それほど難しく感じないかもしれません。

ただし本書に実際に掲載されている問題だと、横の通りに沿って、Aの左にEが、Bの右にFがあり、さらに横の通りを挟んで向かい側の角地の、Aの真下にCが、Bの真下にDがあるという仕様。

さらに本来、横の道の方が縦よりも断然広く、それに加えて交通量も違っていて……と、自分で書いていてかなり分かりにくかったので、図にしてみました。



なお、書き忘れてしまったのですが、縦の道の交通量は、上から下に「2000台/半日」とあり、こちらは一方通行という設定のよう。

いずれにせよ、この6か所の中から「コンビニを出す場所」を決めなければなりません。


◆ここではまず、交通量を多い通りを基準に考えます。

つまり、左から右に流れる通りが一番多いですから、反対側にあるCとDは候補外に。

残るE、A、B、Fで比較した場合、角地の方がダブルで集客が望めますから、EとFも除外します。

結局残ったのは、帯と同じAとBであり、ここで考えるべきなのが、クルマでお店を出るときの出やすさ。

どちらが出やすいかを考えたら……(ネタバレ自重)。←ほとんど言ってるw

ちなみに「立地にかかわる業界」では、この問題におけるAの角地を「送り角」、Bの角地を「受け角」と言うそうです。


◆……と、どうでも良さげな豆知識に触れたのは、これが上記ポイントの2番目に関係してくるから。

その2番目にあるように、セブンの出店は、候補地が更地でなくとも、今そこにいる相手に交渉するのですが、そこが一軒家だったら、引っ越してもらうか、家主にオーナーになって店舗を運営してもらうよう交渉するのだそうです。

さらにすごいのが、その交渉が長引いた場合、候補地のそばに空きテナントができたら、とりあえずそこに出店して、引き続き交渉を続けるのだとか。

ですから、もし「送り角」にセブンがあったら、その時点で「受け角」と交渉中である可能性が高いらしく(スゲーw)。

そして、セブンが他のコンビニチェーンと比べて10万円の日販差があるのは、この立地戦略にもある、というのが著者の榎本さんのご意見です。


◆一方、上記ポイントの3番目と4番目は、立地が関係ないパターン。

ドンキはどこにあってもドンキなのでしょうし、どこにでもあるコンビニと違うのは理解できます。

というか、今まで当ブログでご紹介してきた小売・外食系の本でも、あまり立地には言及されてなかった記憶が。

もっとも、成功者が「うちの店が成功したのは立地のおかげだ」などと公言するのもおかしいですかw

そして美容院については、以前池袋界隈のお店に通っていたときの担当者が、狛江のお店に移った際、わざわざ50分近くかけて通っていた私には納得しきり。

結局その方が地方の実家に戻られる際には、別のお店の人を紹介してくれて、そこにも30分以上かけて通っているんですけどねw

ただそのお店も、裏通りの半地下だったのを、やや人通りの多い場所に移ったところ、一見さんが結構増えたらしいので、やはり立地も大切なんでしょう。


◆最後のポイントの5番目の親和性の高さに関しても、皆さん思い当たるフシはあるのでは?

たとえば運転免許の試験場の周りに証明写真のお店がいくつもあったりとか、大学の周りに安い定食屋がいっぱいある等々。

私は免許の更新に行くたびに「ここにいる人たちは、ほぼ自分と同じ星座なんだから、何か商売できないかなw」とか思っていますw

逆に大学の周りのお店で盲点なのが、休みが長いことで、1年の1/3くらいは普通に休みだったハズ。

これはオフィス街でも同様で、基本的に土日は人がおらず、かつ、ランチタイム以降は夜まで集客が望めず、さらには夜もまっすぐ帰るか繁華街に流れる人が多いため、結局「ランチタイムだけ営業するお店」もあるのだそうです。

……これで普通に賃料払っていたら、それはキツいですよね。


「立地」が分かると「ビジネス」が見えます!

すごい立地戦略 街は、ビジネスヒントの宝庫だった (PHPビジネス新書)
すごい立地戦略 街は、ビジネスヒントの宝庫だった (PHPビジネス新書)

第1章 ロードサイド、人間心理を読んだ戦略の宝庫
第2章 出店争いの最前線!群雄割拠のコンビニ業界に学ぶ
第3章 激戦!栄枯盛衰の飲食店、その立地戦略とは
第4章 出店戦略が必要ない!?立地にこだわらない業態
第5章 地域・街・駅、立地戦略に必要な鳥の目・虫の目
第6章 これだけは押さえたい、立地にまつわる実践知識


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【スゴ本】『トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる』宇野隆史(2011年05月12日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

Mr. Evineの 中学英文法を修了するドリル Mr. Evine シリーズ
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ムスメの英語勉強用に以前買って、絶賛積読中の1冊。

相変わらず中古がそこそこ高くて、送料考えたらKindle版が900円弱お得な計算です。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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