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2017年04月11日

【文章術】『文章は接続詞で決まる』石黒 圭


文章は接続詞で決まる (光文社新書)
文章は接続詞で決まる (光文社新書)



【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日スタートした「春の光文社新書フェア」でも人気だった「文章術本」

昨年のセールで買って「積読状態」だった本書ですが、再度セール対象になったということで、今般読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から。
「読む人にわかりやすく印象に残る文章を書くために、プロの作家はまず、接続詞から考えます」。ふだん何気なく使っている接続詞の具体的な役割を知り、効果的に使う技術を磨く。

帯に「ロングセラー」とあるように、かなり昔に出ている本書ですが、未だ中古がそれほど値崩れしていないため、セール期間内ならばKindle版が300円以上お買い得です!





Conjunction Junction / kreg.steppe


【ポイント】

■1.読者に推論させる「だから」の使い方
 接続詞の文脈効果を高めるには、読み手に推論をさせるような接続詞の使い方が効果的です。推論させるためには、見え見えの後続文脈ではなく、読み手にとってちょっと意外な後続文脈に橋渡しをするのがよいことになります。
 絵本は人間にとって最も大切なこと、基本的なことを、子どもにも分かるやさしい言葉で表現している。だから、子どもだけでなく大切なことをつい忘れがちの大人にとってもかけがえのない本だといえる。 (『毎日新聞』2005年7月7日夕刊)
 この文では、「子どもにとって大切な本だ」だけではなく、「大人にとってもかけがえのない本だ」として、意外感を出したところがミソです。


■2.「そして」は連発せずに最後の1つに使う
 手続きのさいには、申込書、旅行の代金、そしてパスポートを持ってきてください。
「そして」には最後に1つ、大切な情報をつけ加える働きがあるのです。ですから、最後の情報、ここでは「パスポート」に自然に注目がいくことになりますし、「そして」を濫発すると、読み手が混乱することにつながります。終わりだと思っていた情報がまだ続いていくことになるからです。
 では、「そして」はなぜ最後に大切な情報をつけ加える働きを持つのでしょうか。それは、「そして」がもともと帰着点を表す「そうして」に由来するからです。「そうして」、つまり、そのようにしてそこに至ったという帰着点としての意味から、そうした「そして」のニュアンスが生まれてきたと考えられます。


■3.書き手の主観が入る「つまり」
「つまり」は、内容の同一性はできるだけ保とうとはするものの、内容や表現を読み手にわかりやすくなるように咀嚼するものですから、「すなわち」よりも言い換えに書き手の主観や解釈が入るのが普通です。読み手の理解に寄り添うようにわかりやすく表現することは、どのような状況においても大切なことですので、話し言葉、書き言葉、小説、新聞、論文などのジャンルを問わず、平均的によく出てくる接続詞です。
 もちろん、過度の使用は逆効果です。読み手のがわからすると、書き手の解釈を押しつけられている印象や、読み手の理解レベルを低く見られているような印象を受けるおそれがあるからです。


■4.「むしろ」「かえって」は根拠と一緒に
「むしろ」「かえって」は、一見常識的・直感的に当然のように見える内容を否定し、じつは常識的・直感的におかしく見える事態のほうが相対的に妥当性が高いということを予告する接続詞です。私たちが無意識のうちに寄りかかっている一見常識的・直感的な内容を否定するというあり方は、説得のレトリックとして有力な方法であり、書き手が自分の意見を示すさいに、効果的に用いることが可能です。
 ただ、気をつけておかなければならないのは、常識的・直感的に見える内容を否定する以上、そこに明確な根拠を示す必要があるという点です。「むしろ」「かえって」は根拠とセットで示すことで、初めて高い説得力を発揮します。


■5.対話での接続詞はその場の空気を変える
 接続詞という品詞は、基本的に話の流れを話し手が管理しているときに現れるものです。ですから、対話では、基本的には接続詞があまり使われません。接続詞の多用は、話の流れを話し手が独占しているような印象を与えるため、相互交渉を前提とする対話では相手にたいして失礼になることが多いからです。
 しかし、一方的に話しつづける相手にたいし、そろそろ自分の話したいことを話したいと思うこともあります。そのようなときは、話題を転換させるために、「ところで」のような転換の接続詞を使って、自分の話題を切りだします。
 また、相手の一面的な評価にたいし、自分の考えを述べたくなることもあります。そのようなときは、「でも」などのような逆接の接続詞を使って相手の話をさえぎり、自分の率直な意見を表明することを予告します。


【感想】

◆本書はタイトルどおり接続詞にフォーカスした作品なのですが、今まで当ブログでご紹介してきたいくつかの本では、むしろ接続詞は使わないことを薦めていました。

ざっと挙げてみてもこんなところが。

書いて生きていく プロ文章論
書いて生きていく プロ文章論
 構成を考えるとき、もっといえば、書くときに注意すべきことをひとつだけ挙げておくとすれば、順接の接続詞をなるべく使わない、ということです。とりわけ「また」「さらに」をなるべく使わない。
参考記事:【文章心得】『書いて生きていく プロ文章論』に学ぶ7つの心得(2010年12月05日)

説得する文章力 (ベスト新書)
説得する文章力 (ベスト新書)
 私は、接続詞は「そして」と「しかし」と「だから」以外ほとんど使わない。これ以外は必要ないからだ。
参考記事:【超文章術?】『説得する文章力』副島隆彦(2013年11月13日)

文は一行目から書かなくていい: ビジネスの文章からメール、ブログ、Twitterまで (小学館文庫プレジデントセレクト)
文は一行目から書かなくていい: ビジネスの文章からメール、ブログ、Twitterまで (小学館文庫プレジデントセレクト)
 自分の書いた文章を読み直すと、どうも冗長で締まりがない。そう感じたときは接続詞を切り落としてくたさい。接続詞の「そして」「また」「だから」を省いただけで、文章がシャープになることがあります。
 構成のしっかりした、よく練られた文章には接続詞は少ないものです。
参考記事:【文章術】『文は一行目から書かなくていい』藤原智美(2011年06月06日)

これらはまだ、ある程度限定的な否定ですけど、この池上さんの本だとバッサリです。

情報を活かす力 (PHPビジネス新書)
情報を活かす力 (PHPビジネス新書)
 文章を書くときは、接続詞を極力少なくする努力をしてみてください。接続詞が多い文章は幼稚に見えます。(中略)
 接続詞が多い文章は幼稚な上に、リズムが悪くなります。「決して接続詞を使わないぞ」と決意して文章を書くようにすると、文章の論理の流れにも敏感になります。接続詞を安易に使っていると、文章がなんとなくつながっているように見えてしまうからです。
参考記事:お前らもっと『情報を活かす力』の凄さを知るべき(2016年06月22日)

いずれにせよ、乱用は避け、かつ、少ない使用をこころがけるべきだと思っていました。


◆一方本書では、接続詞を「効果的に使う」ことを推奨。

もちろん間違った使い方をしたり、必要以上に多用するのは問題ですが、基本的に接続詞を「ポジティブ」に捉えています。

……主題からして、当たり前といえば当たり前なんですがw

さて、本書はまず第1章と第2章で、接続詞の「総論」を。

第3章〜第8章で各論を展開しています。

実は、この各論部分が圧巻で、接続詞全体を「論理の接続詞」「整理の接続詞」「理解の接続詞」「展開の接続詞」「文末の接続詞」に分け、個々の接続詞を1つずつ取り上げながら、その用法や留意すべきポイントについて説明しているという。

ちなみに上記ポイントは、すべてこの各論部分から抜き出したものであり、おそらく当ブログの読者さんにとっても、この各論部分が一番役立つのではないか、と思います。


◆ただし第8章だけは「話し言葉の接続詞」ということで、書き言葉が前提の第2〜7章までとは少々違った感じ。

上記ポイントの5番目はこの第8章からで、確かに対話でヘンな接続詞を使われると、「空気が変わり」ます。

なお、対話で接続詞を使う際には「4つのリスク」があり、どれも家族や友達ならまだしも、ビジネスシーンでやらかすと問題になりそうな。

たとえば、発言の最初が「でも」のような逆説で始まったり、「だから」で自己正当化されると、聞いている方は「カチン」と来がちです。

……ウチのムスメも、ヨメに怒られて言い訳する際、よく「だから」を連発するのですが、その後に続く「自己主張」に正当性が全然ないので、かえって火に油を注ぐ羽目になっているという。

また、この第8章では、「よく使う接続詞で隠れた性格がわかる」と指摘していて、これも納得しきり……。


◆ところで私自身は、接続詞を使う際、あまり深く考えておらず(ヲイw)、当ブログを書く際にも、「なんとなく」で通してきました(今回の記事もです)。

ほとんど文末の終わり方と一緒で、「実際に一度書いてみて違和感があったら直す」レベル。

ただ、これがいわゆる「文芸作品」だったら、悩みまくって接続詞を選ぶ(もしくは使わない)のでしょうし、「論文」等でしたら、きちんと理論構成を考えて、接続詞を使うべきでしょう。

身も蓋もないかもしれませんが、必要に応じてバランスよく使うのが望ましいのだと思いますし、本書は巻末に索引があるので、気になったらパッと確認できるのがありがたかったです。


セール期間内なら「買い」の1冊!

文章は接続詞で決まる (光文社新書)
文章は接続詞で決まる (光文社新書)

序章 接続詞がよいと文章が映える
第1章 接続詞とは何か
第2章 接続詞の役割
第3章 論理の接続詞
第4章 整理の接続詞
第5章 理解の接続詞
第6章 展開の接続詞
第7章 文末の接続詞
第8章 話し言葉の接続詞
第9章 接続詞のさじ加減
第10章 接続詞の戦略的使用
第11章 接続詞と表現効果


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【編集後記】

◆本書と同じ石黒圭さんの作品としては、この作品もセール対象となっています。

「読む」技術〜速読・精読・味読の力をつける〜 (光文社新書)
「読む」技術〜速読・精読・味読の力をつける〜 (光文社新書)


こちらはさらに中古が高くて、Kindle版が400円強お得ということに!


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