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2015年12月15日

『脳が認める勉強法』が想像以上に凄い


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脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、かなり「ガチ」な勉強本

脳ネタ本でお馴染みの池谷裕二先生が帯で激賞しているという話題作です。

アマゾンの内容紹介から。
大学受験も、資格試験も、仕事の勉強も、勉強法を変えることから道は開ける。米三大紙『ニューヨーク・タイムズ』の人気サイエンスレポーターが、第一線の科学者らへの取材をもとに、もっとも効率のいい最新の記憶法・勉強法を徹底解明。この一冊で、あなたの勉強習慣が一変する!

384ページという力作ですが、Kindle版なら持ち運びにも便利です!

なお、タイトルは久々にホッテントリメーカーのお世話になりましたw






When Young Children "Hate" School / wecometolearn


【ポイント】

■1.勉強の場所を変えたほうが思い出しやすくなる
 テストの点数には著しい差が現れた。2回とも同じ部屋で勉強したグループは、40単語のうち平均16個思いだした。勉強する部屋が変わった学生は、平均24個思いだした。単純に勉強する場所を変えただけで、思いだす数が40パーセント以上増えた。(中略)
 勉強する部屋を変えたほうが、同じ部屋で勉強するよりも思いだしやすくなるのはなぜか? その理由は誰にもわからない。1つの可能性としては、最初の部屋で勉強したときに単語に付随する情報と、それとは若干異なる別の部屋で覚えたときに付随する情報が、脳内で別々に記憶されていることが考えられる。この2種類の情報には重なる部分があるが、情報は多いほうがいい。あるいは、2種類の部屋で覚えることで、勉強した単語、勉強中に目や耳に入った事実、勉強中に思ったことを思いだす手がかりの数が2倍になるのかもしれない。


■2.試験までの期間に応じて学習間隔を変える
 試験が1週間後にあるときは、学習時間を2回に分け、今日と翌日、または今日と明後日に勉強する。学習時間をさらに1回増やしたいなら、試験の前日にするとよい。試験が1ヵ月後なら、今日勉強して1週間後にもう一度勉強するのがいい(学習時間が2回の場合)。もう1回増やすなら、そこから3週間ほどあけて、試験の前日に時間を設ける。試験の日程が遠い(つまり、準備する時間がたくさんある)ほど、学習時間の1回目と2回目の間隔が広がる。試験までの時間と2回目の学習までの最適な間隔を割合で表すと、試験までの時間が長いほどその割合は減少することが、この実験で明らかになったのだ。


■3.インプットとアウトプットの理想的な比率とは?
 彼の結論はこうだ。「総じて言うと、最高の結果が得られるのは、およそ40パーセントの時間を覚えるのに使った後で暗唱の練習を始める場合だ。暗唱の練習を始めるのが早すぎても遅すぎても、暗唱の精度は低くなる」。年長の生徒になると、覚えるのに使う時間の割合はもっと少なくすむようになり、全体の3分の1前後となった。「読む時間と練習の時間を最適な割合で使ったグループの結果は、読むことにすべての時間を費やしたグループに比べて30パーセント近く優れていた」と彼は書いている。


■4.目的別睡眠法
 睡眠には複数の段階があり、段階ごとにそれぞれのやり方で、記憶された情報の強化や選別が行われる。たとえば、睡眠の前半に起こる「深い眠り」は、名称、日付、公式、概念といった事実を記憶にとどめるために重要な役割を果たすことがわかっている。情報をたくさん暗記しないといけないテスト(外国語の単語、人名や名称、出来事の日付、化学構造などを問うテスト)が控えている場合は、普段どおりの時間に就寝して「深い眠り」を十分にとり、翌朝早く起きて簡単に復習するとよい。
 ただし、運動能力や創造的思考(数学、科学、作文など)の強化に役立つ眠りの段階は、目覚める前の朝の時間帯に訪れる。音楽の発表会やスポーツの競技会、あるいは創造的思考を必要とするテストの準備をする場合は、普段よりも遅くまで起きて準備するほうがいいだろう。


■5.「流暢性の幻想」にとらわれない
人は、いまわかることはその後もいつでも思いだせると思い込む。このような現象を、科学者は「流暢性が招く幻想」と名づけた。
 この幻想は、自動的かつ無意識に形成される。だから、この幻想を生む元凶となるものに注意を払う必要がある。たとえば、ノートに線を引く、ノートにとったことを書き写す、教師が作ったまとめを見直す、覚えた直後に同じことを勉強する、などがそうだ。いまあげたことは受け身の勉強なので、理解を深める効果はほとんどない。自分の知識をより深く脳に刻み込むためには、自己テストや間隔をあけた学習のように、思いだすのに多少の苦労が伴うことをする必要がある。そうすれぱ、「流暢性の幻想」にとらわれているかどうかも明らかになる。


【感想】

◆冒頭で触れた池谷先生の推薦文は、アマゾンにも下記のように掲載されていまして
「記憶研究の専門家である私が舌を巻いた。本書は勉学に関する脳科学本の決定版だ。正確かつ有益な情報が詰まっている」
と、かなりのプッシュぶり。

そして確かに、池谷先生がそう言われるだけの内容ではありました。

ただし、今回は「脳科学本」の側面よりも、「勉強本」の側面を中心に、上記では抜き出してみた次第です。

その結果下記目次で言うと、Part2の「記憶力を高める」からがほとんどになったという。

厳密には付録の「学習効果を高める11のQ&A」から2つ引用したのですが、その元となるお話の1つは、やはりPart2からのものでした。

……ちなみに、この「学習効果を高める11のQ&A」からだけで記事を書くことも可能だったものの、さすがにそれは自重w


◆さて、まず上記ポイントの1番目の「勉強の場所を変える」お話については、類書でも言われていたことがありました。

ただし、そのもととなった実験は1970年代に行われていたようで、決して最近のエビデンスではありません。

実は本書ではこうした「昔の実験の掘り下げ」が結構散見されていて、上記ポイントの3番目の実験は、何と1917年!?

上記ポイントの2番目の実験は、比較的新しくて2008年なんですけど、それより後に出た勉強本はいくらでもあるハズ。

また、今回は割愛しましたが、あのエビングハウスの「忘却曲線」は1880年代に初めて出版物に掲載されたもので、その実験内容についても詳しく言及されています。

この辺は結論だけを用いる単なるTIPS本とは違い、「科学読み物」として深みがあるな、と思った次第。


◆一方、同じPart2で割愛した中で触れておきたいのが、「自己テスト」の効果です。

これもいくつかの類書で言われてはいますが、要は「自分で自分をテストすることのほうが勉強よりも効果が高い」ということ。

これはまだ、1度やったことのあるものをテストするのですから分かりますが、「目からウロコ」だったのが「知らないことをテストする『事前テスト』」にも効果がある、というお話でした。

この場合、もちろんテストの結果は散々なんですけど、普通に勉強をするより、このテストを事前に行った方が、その後の学習効果が高まるのだそうです。

そしてその仕組みは、「答えを推測したおかげで、勉強して覚えるときよりも覚えたいという意識が強く働き、正しい答えがより深く脳に刻み込まれたから」とのこと(詳細は本書を)。

そう考えると、「先に過去問を解く」という勉強法も、それと同じロジックなのかもしれません。


◆なお、本書を読んでいて思い浮かべたのが、本書のようにエビデンスをもとに結論を導き出していくタイプの勉強本であるこちらです。

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実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~

参考記事:【勉強法】『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~』竹内龍人(2014年04月28日)

後半部分はメンタル中心なので、ちと毛色が違いますが、前半のテクニック編は、エビデンス中心の勉強法を指南。

特に興味深かったのが、「ある内容を勉強した後、その内容のテストを行ってから違う内容の勉強を行うと、後からやった方の勉強のテスト結果も向上する」という「中間テスト効果」で、これは未だ理由が分かっていないのだそう。

いずれにせよ、「テスト」は事前にやっても中間にやってもプラスの効果があるようですね。


◆ちなみに本書のPart3のテーマは、「ひらめき」や「創造性」なので、資格試験には関係ないと思い今回は割愛w

ただ、ここで触れておきたかったのが、「インターリーブ」という「学習中に関連性はあるが違う何かを混ぜる」という勉強法です(詳細は本書を)。

またPart4では、上記ポイントの4番目にある「睡眠」についても、かなり詳しく言及。

これも学習対象によって睡眠を変えるという、類書ではあまり見ない内容だったので、詳しくは本書にてご確認ください。

……何やら駆け足で、最後の方は尻切れトンボ気味になってしまいましたが、それだけ内容が濃いということでご勘弁を。


勉強本好きならば、一読の価値アリです!

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脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!
はじめに――余白を広げる
【Part 1】 脳はいかに学ぶか
 第1章 学習マシンとしての脳──記憶という生命現象を解き明かす
 第2章 なぜ脳は忘れるのか──記憶のシステムを機能させる忘却の力
【Part 2】 記憶力を高める
 第3章 環境に変化をつける──いつもの場所、静かな環境で勉強するのは非効率 
 第4章 勉強時間を分散する──一度に勉強するより分けたほうが効果的
 第5章 無知を味方にする──最善のテスト対策は、自分で自分をテストすること
【Part 3】 解決力を高める
 第6章 ひらめきを生む──アイデアの「孵化」が問題解決のカギ
 第7章 創造性を飛躍させる──無から有をつくりあげる「抽出」のプロセス
 第8章 反復学習の落とし穴──別のことを差し挟む「インターリーブ」の威力
【Part 4】 無意識を活用する
 第9章 考えないで学ぶ──五感の判別能力を学習に活用する
 第10章 眠りながら学ぶ──記憶を整理・定着させる睡眠の力を利用する
おわりに――脳波狩猟採集を忘れていない
付録――学習効果を高める11のQ&A


【関連記事】

【勉強法】『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~』竹内龍人(2014年04月28日)

【スゴ本!】『東大に2回合格した医者が教える 脳を一番効率よく使う勉強法』福井一成(2014年04月26日)

【オススメ!】『脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する』トレーシー・アロウェイ,ロス・アロウェイ(2014年01月14日)

【オススメ】『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』池谷裕二(2011年12月09日)

【脳トレ?】『脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイド』アルバロ・フェルナンデス,エルコノン・ゴールドバーグ,パスカル・マイケロン(2015年10月27日)


【編集後記】

◆アマゾンによると、本書とよく一緒に買われている本がこちらなのだそう(Kindle版アリ)。

脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイド
脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイド

ただしこちらも結構お高いので、上記関連記事の最後にあるレビューを読まれてからご検討ください(勉強本とは違うと思います)。


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