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2015年10月13日

【プロの発想法】『広告コピーってこう書くんだ! 相談室』谷山雅計


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広告コピーってこう書くんだ! 相談室(袋とじつき)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、9月末の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。

コピーライター作の書籍としては、個人的にはイチオシであった『広告コピーってこう書くんだ!読本』の続編が、8年の時を経てついに登場です!

アマゾンの内容紹介から。
コピーライティングのバイブルとして読みつがれているベストセラー『広告コピーってこう書くんだ! 読本』の実践・指南編。
"コピー脳"を育てる21のアドバイスのほか、広告業界ではじめてキャンペーンコピーの書き方を体系化して解説。
さらに、著者・谷山雅計が「ガス・パッ・チョ! 」(東京ガス)を生みだすまでに書きつづったコピーを「生ノート」として袋とじで公開。
アイディアや発想に悩んだとき、“コピーの壁"にぶつかったときに、進むべき道を教えてくれる1冊です。

切れ味鋭い発想法を学べる点で、私たちビジネスパーソンにも見逃せないかと。





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【ポイント】

■1.逆の視点で考える
 たとえば、受け手のとき。映画を見るにしても、「この伏線をあとで、どう活かすとおもしろいだろう」「ここで出てきたこのキャラクターには、このあと、こんな役割を果たさせるといいんじゃないか」などと、つくり手目線で考えながら見る。(中略)
 いっぽうで、自分がつくり手のときは、受け手の目線で考え抜く。
 コピーライター以外でも、サントリー「モルツ」や湖池屋「ポリンキー」などの数々のヒットCMで知られる佐藤雅彦さん(元電通のCMプランナー。現在は東京芸術大学大学院映像研究科教授)などは、その典型と聞いたことがあります。


■2.打ち合わせを"しのごう"としない
サッカーにたとえると、コピーライターって、やっぱりストイカーなんです。言葉でシュートを打って試合を決めるのが仕事。どんなにへタだろうが、1年めだろうが、2年めだろうが、その役目は変わりません。
 だから、新人だろうがなんだろうが、「オレのこの言葉で、絶対、決めてやる」って気持ちをつねにもたないとうまくならないし、成功もしません。
 これは実際の仕事のときだけの話ではなくて、コピーの講座や、研修などにもあてはまることです。練習だといって手を抜く人が、いいストライカーになれるはずはありませんから。(中略)
 あまり精神論にはもっていきたくないのですが、やっぱり打ち合わせを"しのごう"としてはいけない。打ち合わせのことを"勝負"と思わなきゃいけないんです。


■3.原稿用紙の上で事件を起こす
 その場にいてもそれほど意味がないのなら、その時間にオフィスで別の仕事のコピーを書きつづけていたはうが、よほど生産性が高いし、役に立っていると思うんですよ。コピーライターの現場って、やっぱり根本は原稿用紙に言葉を書くことだし、そこに書くコピーやアイデアが実際の現場をつくるもとになっているわけですから。
 現場に顔を出さないと、「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起こっているんだ」という昔のはやり言葉のように、「どうして来ないんだ」と怒る人もいるのだけど、でもだからといって、"会議室"を軽視する必要もないとぼくは思います。それこそ、コピーライターの仕事は、"会議室"にいて原稿用紙のうえで事件を起こすことです。


■4.自分らしさをいったん忘れる
 その川崎(徹)さんが、講座でぼくらに、「自分らしさ、自分らしさって、あんまりいわないほうがいいよ」とおっしゃったんです。「自分でわかっていない自分が、出てこなくなるから」と。
 どういうことかというと川崎さんは、自分が自覚できている自分は、本当の自分のうちのごく小さな一部だというんですね。
 だから、自分らしさだとか、個性だとかということをあまり強く意識しすぎると、自覚できている小さな自分のなかでしかものを考えなくなってしまって、自分でわかっていない自分が外に出てこなくなる。
 でも、自分らしさや個性のことをいったん忘れて、「どうやったらみんなによりよく伝わるかな」「この商品をどう感じてもらえばいいのかな」などと、課題について考えつづけていると、結果としてそれが出てくる、というんです。


■5.受け手のアタマにちょっとだけ"汗をかかせる"
 みなさんもご存じのように、キャッチボールは受け手が取りやすいところにボールを投げてあげるのが基本です。
 でも、じつはそれだけでは、さほど楽しくないんです。ちゃっと横にそれてしまったり、目の前でバウンドしたりして、体を動かして工夫しないと取れないようなポールを取れたときに、「取れた!」と、もっと楽しくなるんですよ。
 それと同じで、コピーでも、受け手のアタマにほんの少しだけ汗をかかせて、「わかった!」という小さな快感を残してあげるようにする。そうすれば、記憶のなかに長く残るようになります。


【感想】

◆冒頭の内容紹介では「"コピー脳"を育てる21のアドバイス」とありますが、おそらくこれは第1部の「コピーの悩みにお答えします」のことかと。

これ、形式的には「Q&A」であり、著者の谷山さんが前作を出して以降、コピーの授業等で「本は読んだのだけど、こういうところをもっとつっこんで教えて欲しい」といった要望が数多くあり、それに答えたもの。

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広告コピーってこう書くんだ!読本

(最近やっとお買い得なKindle版が出ました)

参考記事:【スゴ本!】「広告コピーってこう書くんだ!読本」谷山雅計(2008年01月15日)

上記記事で「スゴ本!」と書いたように、この前作を読んだ時には、かなりのクオリティの高さに驚愕したものです。

実際、この本は「知る人ぞ知る名著」であり、土井英司さんも絶賛(ご自身の会社の5周年イベントに登壇を依頼されています)。

普通、あれだけの本を出していたら、続編なりを執筆しそうなものですが、今回の作品までこの8年間何も書かれていません。


◆それだけに、この第1部で書かれた内容はことごとく高クオリティ。
・どうすれば、一人前のコピーライターになれますか?
・コピーライターに「向き、不向き」はありますか?
といった、いかにも業界向けのお話もあれば、
・プレゼンのコツを教えてください。
・ネーミングの考え方をおしえてください。
といった、もうちょっと汎用性のあるお話までさまざまです。

ちなみに、その「向き・不向き」の話で言うと、22,23歳くらいのコピーライター志願者に1つ課題を出して100本コピーを書かせたら、だいたいの将来性はわかってしまうのだそう。

谷山さん曰く、「絶対にコピーライターになれる」のが1人か2人、「いまのうちに、あきらめたほうがいいかも」が50人くらい、残りが「可能性はあるかもしれないけど、確実なことはいえない」といったところなのだとか。

ただ、「絶対になれる」人は確かになるものの、彼らが本当に素晴らしい仕事をするとは限らず、むしろ「確実とはいえない」人たちの中から、グーッと伸びて素晴らしい仕事をする人が出てくるらしく。

また、確率的には低くとも「あきらめたほうが」の中からも、その後の努力と成長で、コピーライターとして出てくる人がいるそうですから、簡単にはあきらめなくてもいいのかもしれません。


◆また「汎用性のあるお話」として、上記ポイントの4番目の「自分らしさを忘れる」が挙げられると思うのですが、これは実は「自由」についても言えることなのだそう。

ここで言う「自由」とは「自由な発想」のことで、谷山さんご自身はむしろ「制限大好き人間」とのことw

要は、与えられた課題をひたすら解決していくと、世の中にある商品は同じものはないし、解決しなくてはいけない課題も1つ1つ違っているため、自然とやり口やアウトプットがちがってきます。

その結果、自由にやっているように見えている"だけ"なのだとか。

結局「自分らしさ」も「自由」も、あまりそれを意識してこだわると、自分自身を決めつけてしまい、かえって可能性を狭めてしまうのでは、というのが谷山さんのご意見です。


◆さて、続く第2部は「将軍コピー(キャンペーンコピー)の書き方」。

ここで言う「将軍コピー」とは、広告キャンペーンの真ん中に置かれるもので、ポスターや新聞に1回掲載されて終わり、ではなく、何度も色々なメディアで露出するタイプのものです。

具体的にはJR東海の「そうだ 京都、行こう」や、谷山さんが資生堂のヘアケアブランド「TSUBAKI」で書いた「日本の女性は、美しい。」など。

正直、コピーの素人としたら、どの辺がどうスゴイのか、良く分からなかったのですが、本書を読んで、その意図するところや、「何十億という大きなキャンペーンを束ねる言葉」のポテンシャルを理解することができました。

ちなみに、この「将軍コピー」に対する言葉として「剣豪コピー」というものもあり、むしろ素人目には、こちらの方がスゴく感じると思われ(有名なところでは、としまえんの「史上最低の遊園地。」など)。

ただ、こういった「剣豪コピー」は、何十億ものキャンペーンの真ん中に据えるワケにはいかないのであり、比較してみて改めて「将軍コピー」のスゴさが分かるという。

……問題は、私たちがこうした「将軍コピー」を書く機会がほとんどというか絶対無いことなのですがw


◆そして本書のおしまいには、書名にも「(袋とじつき) 」とあるように、谷山さんが「『ガス・パッ・チョ!』(東京ガス)を生みだすまでに書きつづったコピー」の生原稿の写しを「袋とじ」形式で収録。

ここでは谷山さんが、「いかにして最終案に辿りつくか」という過程が詳細に明かされています。

それもボツコピーそれぞれに、どういう意図があって、何でボツにしたかまで言及されているのですから、コピーライター志望者にとっては、まさに「宝の山」ではないか、と。

おそらく業界関係者にとっては、この袋とじ部分だけでも、本書のお値段はペイしちゃうと思います。


多少人は選びますが、オススメせざるを得ませぬ!

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広告コピーってこう書くんだ! 相談室(袋とじつき)
はじめに
第1部 コピーの悩みにお答えします
第2部 将軍コピー(キャンペーンコピー)の書き方
あとがき
付録 「ガス・パッ・チョ!」が生まれるまで。


【関連記事】

【スゴ本!】「広告コピーってこう書くんだ!読本」谷山雅計(2008年01月15日)

【スゴ本】『表現の技術』高崎卓馬(2012年06月11日)

【脳内経験】『案本 「ユニーク」な「アイディア」の「提案」のための「脳内経験」』山本高史(2008年04月10日)

知らないと損する『クリエイティブコンサルタントの思考の技術』(2015年03月22日)

【オススメ!】『インサイドボックス 究極の創造的思考法』ドリュー・ボイド,ジェイコブ・ゴールデンバーグ(2014年05月15日)


【編集後記】

◆本書の「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の中にあった1冊。

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キャッチコピー力の基本 ひと言で気持ちをとらえて、離さない77のテクニック

こちらのコピーなら、私たちにもなじみが深いですし、本書も下記レビューの通りオススメ。

なお、Kindle版は、相変わらず「50%OFF」という謎の価格設定です。

参考記事:【77のテクニック】「キャッチコピー力の基本」川上徹也(2010年07月26日)


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