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2015年06月30日

【教育経済学!?】『「学力」の経済学』中室牧子


「学力」の経済学
「学力」の経済学


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、前々回の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げていた1冊。

セレクトした時点でも予想した通り、『ヤバい経済学』がお好きな方には、かなりツボだと思います。

アマゾンの内容紹介から、一部引用。
「ゲームは子どもに悪影響?」
「子どもはほめて育てるべき?」
「勉強させるためにご褒美で釣るのっていけない?」
個人の経験で語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!

すでに、お求めやすいKindle版も出ていますので、お忘れなく!





Back to School / Phil Roeder


【ポイント】

■1.褒美を出すならアウトプットよりインプットに
 インプットにご褒美を与えると、子どもたちは本を読んだり、宿題をしたりするようになるのでしょうが、必ずしも成績がよくなるとは限りません。
 一方、アウトプットにご褒美を与えることは、より直接的に成績をよくすることを目標にしているのですから、直感的には、アウトプットにご褒美を与えるほうがうまくいきそうに思えます。
 しかし、結果は逆でした。学力テストの結果がよくなったのは、インプットにご褒美を与えられた子どもたちだったのです。
 とくに、数あるインプットの中でも、本を読むことにご褒美を与えられた子どもたちの学力の上昇は顕著でした。一方で、アウトプットにご褒美を与えられた子どもたちの学力は、意外にも、まったく改善しませんでした。どちらの場合も、子どもたちは同じように喜び、ご褒美を獲得しようとやる気をみせたにもかかわらず。


■2.成績が悪い子の自尊心をむやみに高めるのは逆効果
 フォーサイス教授らは、自分の授業の履修者のうち、最初の試験で成績の悪かった学生たちをランダムに2つのグループにわけ、毎週、メールで別のメッセージを送りました。
 ひとつ目のグループ(=処置群)には、宿題にかんする連絡とともに(「あなたはやればできる」というような)自尊心を高めるようなメッセージを送りました。一方、残りのグループ(=対照群)には自尊心を高めるようなメッセージは送らず、かわりに宿題に関する事務的な連絡や、個人の管理能力や責任感の重要性を説くメッセージを送りました。
 この結果、自尊心を高めるメッセージを受け取ったグループの学生は、受け取らなかったグループの学生よりも、期末試験の成績が統計的に有意に低かったことが示されました。この研究は、学生の自尊心を高めるような介入は、学生たちの成績を決してよくすることはないことを示しています。


■3.学校は、学力だけでなく非認知能力を高める
 米国の大学に入学するには、SATと呼ばれる共通テストと、高校の時の通知表の両方を提出する必要があります。ボーウェン教授らは、SATの成績は認知能力のみを表すのに対して、高校の通知表の成績には、締め切りを守って宿題を提出したり、授業中に積極的に発言したりするという非認知能力も反映されているはずと考え、大学の中退率への影響を検証しました。
 その結果、中退することなくきちんと大学を卒業できていたのは、SATの成績がよかった学生ではなく、出身高校のレべルにかかわらず通知表の成績がよかった学生だったことが判明しました。
 高校でよい成績を取る過程で獲得した非認知能力(まじめ、先生との関係がよい、計画性がある、やり抜く力がある、など)は、高校を卒業した後も、彼らを成功に導いてくれたのです。


■4.教育を受けることの経済的な価値を与えるだけで、子どもの学力は上がる
 マダガスカルで行われた実験では、ランダムに分けられた小学生のうち、あるグループに振り分けられた子どもと親(=処置群)は、家計調査から学歴と年収のデータを用いて算出された教育の収益率を知らされました。そして5か月後、教育の収益率の情報を知らされた子どもたちは、知らされなかった子どもたち(=対照群)よりも学力が高くなったことが示されています。
 この効果はかなり大きく、たった5か月で、しかもただ単に情報を伝えるというほとんどコストのかからない介入によって、テネシー州で2年間にわたり実施された少人数学級よりも高い効果が得られたのです。。


■5.「平等」に行われた政策でも、親の学歴や所得によって教育格差を拡大させてしまう
 一橋大学の川口教授の研究によれば、ゆとり教育の一環として学佼週休2日制が導入された2002年の前後で比べると、子どもたちの学習時間にはある変化が見られました。親の学歴によって、子どもの学習時間に顕著な格差が生じていたのです。
 学歴の高い親に育てられた子どもは、土曜日の学習時間の減少を平日の学習時間の増加で埋め合わせたのですが、学歴の低い親はそのような行動を取らず、結果として土曜日が休みになったことで、学習時間の格差が生じた形となりました。(中略)
 このように、ある世代の子ども全員を対象にして「平等」に行われた政策は、親の学歴や所得による教育格差を拡大させてしまうことがあるのです。


【感想】

◆二児の親としては、なかなか興味深い作品でした。

実は私も、お恥ずかしながら、いくつか勘違いしていたお話がアリ。

たとえば、上記ポイントの1番目の「インプット」と「アウトプット」の件で言うなら、ムスメに「前回のテストより塾での順位が上がったら、●●を買ってやる」とニンジンをぶらさげたことがありました。

これではムスメは「具体的に何をしたらいいのか」までは分かりません。

こちらとしては、好きなやり方でやらせた方が、やる気が出て成果が上がると思ったのですが、失敗だった模様(順位も上がりませんでした)。


◆ただし、アウトプットにご褒美をつけても、学力が改善するケースもあります。

ニューヨーク市立大学のロドリゲス准教授は、子どもの学習の面倒をみる指導者や先輩がいる場合には、ご褒美の対象がアウトプットであっても学力が改善することを発見したのだそう。

これは、指導者や先輩が「目標のためにどのような努力をすべきかについて具体的な道筋を示してくれた」から。

結局私のように「本人丸投げ」での「アウトプット」へのご褒美というのは、NGのようです。

ちなみに本書によると、子どもが小さいうちは、トロフィーのように、金以外のご褒美を与えるのが良いのだとか。

一方、中高生以上には、やはりトロフィーよりもお金が効果的だったこともわかっているそうです。

……やっぱ世の中「金」なんですかね?(違


◆上記ポイントの2番目の「自尊心」の件も、まったく知りませんでした。

私なんぞ、どこかの記事で知ったのか、こんな本まで買っている(アマゾンの履歴によると2010年5月に購入)というのに……。

4752850346
ベッツィ・ヤング博士の自尊心を高める子育て法―子どもを自立させる6つのプログラム

そもそも、フロリダ州立大学のバウマイスター教授らの研究によると、「自尊心が高まると学力が高まる」という、従来の定説は誤りなのだそう。

「自尊心と学力の関係はあくまで相関関係」に過ぎず、因果関係は逆、つまり学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしている、とのこと。

……バウマイスター教授のこの本、前々から買おう買おうと思いつつ、まだ買ってなかったのですが、やはり読んでおくべきでしたか。

4772695354
WILLPOWER 意志力の科学


◆また、上記ポイントの3番目にあるように、IQや学力テストで計測される「認知能力」だけでなく、「忍耐力」や「社会性」といった「非認知能力」も将来の年収や学歴にも大きな影響を与えるようです。

上記では割愛していますが、その「非認知能力」のうち重要なものの1つが「自制心」。

これはいわゆる「マシュマロテスト」等でも、その影響力の大きさが知られていますね。

4152095415
マシュマロ・テスト:成功する子・しない子

そして、もう1つの重要な非認知能力が「やり抜く力」。

これに関しては、本書ではTEDの動画が紹介されていますので、ご参考まで。



なお、本書ではこうした「非認知能力」を伸ばすコツについても、キチンと触れられています。


◆まだまだ触れておきたい点があるのですが、キリがないのでこの辺で。

割愛した中では、「ゲームと勉強時間の関係」ですとか、「いつから子どもに『投資』すると収益率が最大になるか」なんてお話が、大変興味深かったです。

さらには、直接「教育」とは関係ないのですが、本書の「はじめに」にて明らかにされた、著者の中室准教授の担当するあるクラスで起きた悲劇……。

なんと中間試験当日に、250人ほどの履修者のうち、15人ものお祖母さんが亡くなられたのだそうです。

  ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー

……なんか、聞いたことのあるような話だと思った方は、この本をお読みなのかもw

4150504156
ずる――噓とごまかしの行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

参考記事:【オススメ】『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』ダン・アリエリー(2012年12月11日)

その後どのようにして、中室准教授が「悲劇」を防いだかについても、本書にてご確認ください。


『ヤバ経』好きなら、読んで損なしの1冊!

「学力」の経済学
「学力」の経済学
第1章 他人の狎功体験〞はわが子にも活かせるのか?
第2章 子どもを爐緩美〞で釣ってはいけないのか?
第3章 猜拔〞は本当にそんなに大切なのか?
第4章 狆人数学級〞には効果があるのか?
第5章 爐いだ萓〞とはどんな先生なのか?


【関連記事】

ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)

【オススメ】『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』ダン・アリエリー(2012年12月11日)

【データ分析】『統計学が最強の学問である』西内 啓(2013年01月27日)

【思考力】『東大・京大に合格する子どもの育て方』江藤 宏(2015年04月30日)


【編集後記】

◆本書よりもさらに「幼児」からの教育に特化した本。

4492314636
幼児教育の経済学

こちらも面白そうですね!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 09:00
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