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2015年03月28日

【仕事術】『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』塩野 誠


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世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の本同様「未読本・気になる本」の記事で人気の高かった1冊。

冨山和彦さん率いる株式会社経営共創基盤(IGPI)の共同出資者である塩野 誠さんが、「グローバルエリート」になるための方策を指南してくれています。

アマゾンの内容紹介から。
「プロフェッショナル」「グローバルエリート」の必要性が叫ばれる中、精神論やキャリア分類にとどまらず、「実際にどうトレーニングするべきか」にフォーカスを絞ったビジネス・トレーニングの書。

なお、既にお買い得なKindle版も提供中です!





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【ポイント】

■1.世界における日本の位置を把握する
私はアジア進出を考えている企業にアドバイスをする際に、タイのGDPで神奈川県より少し大きいくらいですから、最初から日本と同程度の売上を期待することはできません、それでも長期的に見て進出しますか、と聞くことにしています。
 世界的な比較感では、いかに日本の経済力がまだまだ大きいものかわかります。日本は国内市場が比較的大きいため、企業側に海外に出てビジネスをしていこうという意識が低かったとも言えます。近隣の韓国のGDPは130兆円程度と日本の26%であり、海外に出なければいけないという意識があるのも理解できます。


■2.英語を使わないという選択肢はない
 地球上のどんな場所でも付加価値を提供し、それに対する対価を享受しようとするグローバル企業は地球上のすべての競合他社に勝っていくことが求められます。
 そうしたグローバル企業の参謀や戦略家になることをあなたが決めたのであれば、ビジネス上で英語を使わないという選択肢はありません。英語が必要か否かを問うのは時間の無駄です。
 また、世界中を見ても日本は英語の価値が高い国です。少し英語ができるだけで年収が上がるのは日本ならではです。人々が複数言語を操るヨーロッパなどでは考えにくいことでしょう。有名な話ですが、TOEICの平均点において日本は48国中40位です。私も英語が嫌いではなかったことが、これまでのキャリアの選択において一番助けられたことだと思っています。


■3.「ロジ」をなめない
 エリート意識の強い若い方に顕著ですが、会議の設定や必要な物品の準備、顧客の送り迎えといったいわゆる「ロジ」をなめてかかることは絶対にあってはなりません。こういったことを「仕事の本質と関係ないから」と言う人は仕事をわかっていない人です。こうしたロジを完壁にこなした上で、会議の内容も素晴らしいというのがプロフェッショナルです。イベント運営を任された時には国賓を迎える外交官になったつもりで、分刻みのタイムテーブル、スタッフの立ち位置の確認等、何度も予行演習を行って完璧を目指しましょう。


■4.無駄なプライドを捨て、できるだけ早く失敗する
学びは日々の仕事からこそが自分の血肉になり、特に成功より失敗からのほうが多くを学ぶことができます。キャリアにおいても早い段階、若いうちに失敗して痛みを覚えておくと、些細なことでもダブルチェックするようになります。仕事は失敗を恐れずに70%くらいの完成度で進めて、修正を繰り返しながらゴールに到達できるようにします。ビジネスにおいて明日の朝までに用意すべき資料を100%の完成度にして1週間後に出しても価値がないので、修正しながら進めることを覚えましょう。


■5.若いうちはお金より経験を選ぶ
 私は有名中学・高校、大学を出て有名商社や銀行に入った30歳前後の方に中途採用面接でよく会いますが、成長が20歳くらいで止まっているというか、子どもと話をしているような印象を受ける人が少なからずいます。大きな組織の20代ではそうそう重要な仕事をさせてもらうことは難しいので、自ら経験を積める場所を選択していかないと何も知らずに老いてしまいます。20代での数百万円の年収の差は誤差の範囲です。経験を買いまくるつもりで、迷ったら困難なほうを選ぶべきです。若い頃の時間は中年の時間より貴重です。


【感想】

◆実は本書の大きな読みどころの1つが、冒頭の「はじめに」でして、ここで著者の塩野さんは、本書の「対象読者」を限定しています。

曰く、「対象としない読者の方にご購入いただき、経済的にご迷惑をおかけしたり、レビューで星1つの評価をされる前にご説明と免責を行います」とのこと。

そして、本書の「対象読者」と、その「解説」が続くのですが、スペースの関係から、ここでは「対象読者」のみ、いくつか列挙しておきます。

●日本のGDPと雇用の3割のグローバルな競争をしているビジネスにおいて、そのまた数パーセント程度のトップクラスの高度知識人材として仕事をしたい人

●特定の企業の中だけで通用する知識やスキルではなく横移動が可能な汎用的な知識やスキルによって仕事をしたい人

●トップクラスの仕事をしたい若い人、または若い人と同じくらい柔軟な人

●MBAや戦略系コンサルティング会社に過度の怖れや期待を抱きたくない人
etc...

限定、という割には、結局当ブログの読者さんの結構な割合の方が、当てはまりそうな予感。


◆ただし、上記で抜き出したポイントは、すべて本書の第1部の「心構え編」からであり、第2部、第3部についてはスルーしております。

というのも、第2部以降は、経理・財務面に踏み込んでいたり、「企業価値の評価」といったあたりまで言及しているから。

実際、第2部の終わりの方では、実際に「企業価値の計算方法」等が記載されているのですが、正直良く分かりませんでした(すいません)。

さらにページ数は少ないとはいえ、第3部は「資本・業務提携シミュレーション編」ですから、このテーマだけで1冊になりそうな。

第1部の方では「正しい名刺交換」ですとか、「ビジネスプロフェッショナルが習慣付けるべき体調管理」といったベーシックなお話があったのに、何でここまで落差(高度差?)があるのやら……。

もっともこの点については、やはり「はじめに」で解説されているのですが、塩野さんが「どれも目的に向かって結果を残すために必要な知識だと考えているから」とのことです。


◆ちなみに、アマゾンの著者略歴には何故か載っていないのですが、本書の著者紹介によると、塩野さんの経歴にはシティバンクや、ゴールドマンサックス、ベイン&カンパニーといった錚々たる会社名が。

それもあってか、海外MBA経験者の中に「人生で一番苦労した」と言っている人がいるのを取り上げて、「メジャーな戦略系コンサル会社からしてみたら『MBA=長期休暇』の認識が普通です」とバッサリです。

また、上記ポイントの2番目にもあるように、英語に関しては「できて当たり前」のスタンス。

ただし、我が国のGDPの7割程度はドメスティックなサービス産業であり、「誰もが『グローバル人材』になる必要はない」とも言われています。

この辺は、併せて下記の本もお読み頂ければ。

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10年後に食える仕事、食えない仕事

参考記事:【必読!】『10年後に食える仕事、食えない仕事』渡邉正裕(2012年02月04日)


◆最終的に本書は、その「振り幅の大きさ」をどう考えるかで、評価が変わってくると思います。

つまり、「名刺交換」レベルの話と「資本・業務提携」レベルの話とが、1冊に収まっている、という状態が「OK」なのか「ファッ!?」なのか。

アマゾンの書影には写っていないものの、少なくとも本書の帯を見る限りは、前者中心の本のようなイメージを与えているのですが、「名刺交換? は?(薄笑い)」と舐めてかかると打ちのめされること必至。

いずれにせよ、グローバルエリートにとっては「どれも必要な知識」なワケですから、まずは通してお読み頂きたく。


戦略思考を身につけるために!

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世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?
第1部 心構え編
 1 日本の存在する位置を正確に把握する
2 ビジネスの基本を徹底する
3 自らを学習マシーンだとイメージする
4 アイディアに最大の価値を置く
5 リーダーシップを理解する

第2部 実践編
1 企業や業界を大きな視点からとらえる
2 戦略提言を分かりやすくプレゼンする
3 戦略家のメディアリテラシー
4 企業価値を評価する
5 コーポレートファイナンスを理解する

第3部 資本・業務提携シミュレーション編
1 海外企業と資本・業務提携できるレベルをめざす


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【編集後記】

塩野さんがいらっしゃるIGPIのCEO・冨山和彦さんのご本は、どれもアツいんですが、中でも同じくらいハードに働かれている波頭 亮さんと対談したこの本はオススメです。

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プロフェッショナルコンサルティング

なお、この本もKindle版が出ている模様。


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