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2015年01月16日

【灘校流?】『試験に受かる「技術」 灘高が教えてくれた「超」合理的メソッド』吉田たかよし


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試験に受かる「技術」 灘高が教えてくれた「超」合理的メソッド (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、灘高から東大(理科一類)に進まれ、その後も数々の試験をパスされてきた吉田たかよしさんの勉強本

勉強にも「仕事に役立つ勉強」や「教養としての勉強」もありますが、本書はタイトル通り「試験に受かるための勉強」が、そのテーマとなっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
公立小学校→灘中高→東大(理科一類)→東大大学院(工学系研究科)→国家公務員試験一種(経済職)2年連続→NHKアナウンサー→医師国家試験→政策秘担当書資格取得→衆議院議員公設第一秘書→東大大学院医学博士課程
名だたる難関試験をすべてストレートで合格してきた著者が考案した、灘高流の「超」合理的勉強法がマスターできる実践的解説書

久し振りに「戦術系勉強本」で充実した作品に出会えました!





F2, examination hall uthm / Z17R0


【ポイント】

■1.四方を暗記ネタで囲む「四面楚歌」勉強法
本当は灘高と同じように四方八方に黒板を設置したかったのですが、それは無理だったので、古いカレンダーを裏向きにしてそこら中の壁に貼り、暗記したい数学の公式や英単語を書き入れることにしたのです。さらに、普段、自室で勉強していて、これは暗記したほうがいいなと思ったら、その都度、A4のコピー用紙に必要事項をマジックで書き込み、壁の空いているスぺースに次々と貼り付けていきました。こうして1週間もすれば、自室の壁は四方八方が暗記の貼り紙だらけになったのです。これにより、よそ見をしている時間をも勉強に有効活用できるようになったわけです。


■2.「集中!」と叫べば勉強中の雑念が吹っ飛ぶ
 勉強中に雑念がわいてくるというのは、多くの受験生にとって悩みの種になっています。(中略)
そんなときは、大きな声で「集中!」と叫んでください。少なくともその瞬間は、雑念が完全に消えてくれます。(中略)
 効果的に雑念を消すには、他のことに強制的に意識を振り向け、いわば雑念を上書きするのがー番です。「集中!」と叫ぶのは、そのための手段で、実際叫んでいる最中は、脳の言語中枢の性質上、雑念を考えることはできなくなります。もちろん、雑念が激しいときは、叫び終わると、また元に戻る場合もあります。そんなときは、根気よく何度も「集中!」と叫び続ければ、やがて雑念は完全に消え去ります。


■3.漢字が羅列した用語を覚える「漢文書き下し式勉強法」
 たとえば、「張作霖爆殺事件」は、漢字の間にひらがなを挿入し、「張作霖を爆殺した事件」と言い換えたら、途端にわかりやすく、取っ付きやすくなります。(中略)
 そこで、受験勉強をしているときに漢字の羅列が出てきたら、漢文の訓読のように、漢字の斜め下に小さいひらがなを書き入れるようにしました。さらに、頭の中では自動的に漢文書き下し文のように変換して、それを暗記します。つまり、「張作霖爆殺事件」という"戒名"のまま覚えるのではなく、意味をしっかり表している「張作霖を爆殺した事件」と書き下し調の文として覚えるのです。こちらのほうが日本人の認知機能にはるかに合致しているので、記憶の定着率は格段によくなります。


■4.ケアレスミスをなくすために「指さしチェック」
 これは医者になってから知ったことですが、人間の脳には先が尖ったものに注目する性質があります。キバやヤリなど尖ったものは人体には危険です。だから、自分の身を守るために尖った先を警戒するのは生き残るうえで当然の本能だったのです。指さしチェックは、人体に刻み込まれているこうした性質を活用してケアレスミスを効率的になくせるというわけです。
 車掌さんは指をさすのと同時に声を出して確認しますが、これも、ケアレスミスを防ぐうえで大切なことです。指をさしながら声を出して確認することを、「指差喚呼」といいます。これは、受験生もそっくりそのままマネるべきです。


■5.選択肢は4段階で判定する
 その選択肢が、たぶん間違いだと思ったら、とりあえず/を引きます。さらに吟味して、絶対に間違いだと確信を持てたら、反対斜めの\を付け加えて×にします。これはファイナルアンサー。いったん×を付けたものは、基本的にはもう考え直すことはしません。
 一方、確信は持てないが、これは正しそうだと思ったら、とりあえず△を付けます。5つの選択肢の中で、複数の選択肢に△が付くことはよくありますが、その場合は、よく読み比べ、△の中で最も正解に近いと思うものを選び、△を取り囲むように○を書き入れます。
 つまり、このやり方は、単に正解と不正解の二分法で片付けるのではなく、絶対に間違い×、たぶん間違い/、たぶん正解△、絶対に正解○の4段階という、よりきめ細かい判定をするのです。


■6.模擬テストでは問題を解くのに使った時間を書く
 受験した模擬テストが手元にあれば、ぜひ、今すぐチェックしてください。まず、時間管理のうえで最も基本となるのが、問題用紙にあなたが実際に各問題を解くのに使った時間を書いておくということ。もし、あなたの問題用紙に取り組んだ時間が記録されていなければ、これこそ「カツ!」。あなたは、少なくともその模擬テストを通して、時間配分に関し、ほとんど何も学び取れていないということを問題用紙が証明しているのです。
 模擬テストというのは、受け終わった後で検証し直し、問題点があれば修正するというプロセスを通して、受験の技能を向上させてくれるものです。ところが、どの問いにどのくらいの時間を使ったのか記録が残っていなければ、時間配分に関して正確な検証は行えず、スキルアップもできるはずはないわけです。


【感想】

◆本書は、サブタイトルに「灘校が教えてくれた」とあったので、てっきり「灘校メソッド」のようなものがあるのかと思ったのですが、必ずしもそういうわけではありませんでした。

特に灘校に特化しているのは、序章の「劣等生まで東大に送り込む 驚異の灘高式勉強法」だけであり、基本的には吉田さんが独自に編み出した勉強法が列挙されている仕様。

ただし、たとえば上記ポイントの1番目の「四面楚歌勉強法」は、灘校生の間で広まったり、4番目の「漢文書き下し式勉強法」は東大生の間でブームになったりしたそうなので、「独りよがり」な勉強法ではないと思います。

一見、奇異に感じられたり、効果が疑わしかったりしても、実際にやってみて結果が出るなら取り入れる、というのは合理的であり、灘高生や東大生が認めている以上、私たちにも効果はあるかと。


◆実際、この「有名受験校で広まった勉強法」としては、『ドラゴン桜』に登場する勉強テクニックが有名ですね。

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ドラゴン桜(21) <完> (モーニング KC)

あそこに登場した勉強法の多くは、当時編集者だった佐渡島庸平さんが灘校時代、周りの皆が普通にやっていたものだったとのこと。

個人的には、たとえご本人が各種試験を突破されているとしても、受験指導のない著者さんの勉強法は、ある程度マユツバで考えているのですが、「灘校フィルター」を通過しているのですから、本書の勉強法も信憑性は高いと思います。

……ただし、「過去問を解く」のは勉強法として「王道」ですが、「灘中では中学生の段階で東大の過去問にチャレンジする」というのは、いかがなものかと。

とはいえ、「できない状態から挑戦して何を学び取るか」という点を初めとして、本書における「過去問」への掘り下げ方は、かなり納得できるものでしたので、この部分はぜひご一読ください。


◆また、本書が特徴的なのは、類書が流し気味にしそうな項目でも、章立てまでして取り扱っていること。

下記目次の通り、上記の「過去問」は第1章にて、「ラインマーカーの引き方」は第4章、「ケアレスミス」は第5章、「マークシート」は第6章にて、それぞれ解説されています。

上記ポイントの4番目は、もちろん第5章からなのですが、実は「指さしチェック」にはもうちょっと続きがありまして。

まず、「利き手と反対の手でやる」方が効率が良いのだそう(しかも、これも灘高生の間で広まったとのこと)。

さらに、センター試験のようなマークシートなら、マークの塗り間違いがないか、左右両手で指さし確認すると、さらにミスが減るのだとか。

こういったことまで、色々試してらっしゃるのですから、吉田さんの勉強法に対する熱意は、かなりのものだと思います。


◆なお、本文とは別に、本書では「コラム」形式で「吉田式勉強法」が30超収録されています。

上記ポイントでは2番目だけがそうなのですが、ホントなら、ここからセレクトしただけで、記事が1本書けたかもw

それぞれの内容については、アマゾンのページの目次のところにかなり掲載されていますので、そちらにてご確認ください。

付箋を貼った中では、「スーパーマン暗唱」と、「デュシェンヌ・スマイル」辺りが興味深かったです(詳細は本書を)。


◆このような「吉田式勉強法」を含め、本書は勉強本の中でも「戦術」面に特化した1冊と言えるかと。

ちなみに「戦術系勉強本」というのは、当ブログでご紹介済みの作品としては、こういった感じです。

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最短で結果が出る最強の勉強法 (講談社+α文庫)

参考記事:【スタディ・ハック】「最短で結果が出る超勉強法」荘司雅彦(2007年07月02日)

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地アタマを鍛える知的勉強法 (講談社現代新書)

参考記事:【勉強法】「実力がワンランクアップするヒント集」から選んだ10のポイント(2010年01月05日)

ですから、上記のような勉強本がツボだったかたなら、本書も一読の価値アリ!

ただし、私は吉田さんの本を読むのが初めてであり、過去の著作とのかぶりについては一切考慮しておりませんので、ご留意ください。


まさに「受験のための技術」を追求した1冊!

4062882981
試験に受かる「技術」 灘高が教えてくれた「超」合理的メソッド (講談社現代新書)
序章 劣等生まで東大に送り込む 驚異の灘高式勉強法
第1章 合格への最短距離 過去問勉強法
第2章 効率のよい勉強だけを狙い撃ち ストライクゾーン勉強法
第3章 受験を成功に導く 科学的記憶法
第4章 合格に直結するラインマーカーの引き方
第5章 ケアレスミスを根絶する必殺テクニック
第6章 「超」合理的マークシート攻略法
第7章 失敗を防ぐ時間配分「超」攻略法
第8章 センター試験は模試が命!
第9章 心が弱くても受験勉強をやり遂げる生活の仕方


【関連記事】

【スタディ・ハック】「最短で結果が出る超勉強法」荘司雅彦(2007年07月02日)

【勉強法】「実力がワンランクアップするヒント集」から選んだ10のポイント(2010年01月05日)

【オススメ】『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』池谷裕二(2011年12月09日)

【力作!】『合格(ウカ)る技術』宇都出雅巳(2011年02月24日)

【学習ハック!】「1日5分 頭がよくなる習慣」佐藤 伝(2008年01月09日)


【編集後記】

◆こちらも東大出身の著者さんによる作品。

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東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法

……出て1ヶ月以上も経ってるのに、気が付きませんでした。


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