2014年11月09日
【影響力】『敏腕ロビイストが駆使する 人を意のままに動かす心理学』フォルカー・キッツ
敏腕ロビイストが駆使する 人を意のままに動かす心理学
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。著者のフォルカー・キッツは、ケルンとニューヨークで法律と心理学を学んだ弁護士で、「メディア業界におけるロビイストとして数多くの法案の成立に尽力している」方です。
アマゾンの内容紹介から。
人は誰もがまったく同じ考え方をする。その点こそがロビイストのパワーの正体なのである。有能なロビイストだけが活用している心理術。
「他人を動かしたい」方なら、一読の価値アリです!
注:本書は既にKindle版が出ております。
敏腕ロビイストが駆使する 人を意のままに動かす心理学
Maryland State House / DHuiz
【ポイント】
■1.意識的にちょっとした好意をお願いする好かれていない人に対して、世間は何もしてくれないが、逆に相手が自分のために何かしてくれれば、脳はその相手が自分にどのくらい好意を抱いているか、それを推理する。元はと言えば、相手は前々からあなたに好意を抱いていたのだが、その好意がいっそう強化されるのだ。
この効果は「べンジャミン・フランクリン効果」として知られている。フランクリンは人生戦略の1つとしてこれを挙げていて、自分が共感を得たいと思っている人には意識的にちょっとした好意をお願いするのがいいと言っている。このアドバイスはその後、学術的に確認された。
■2.共通点を見つけて強調する
たとえばこういう実験がある。共同生活を営んでいる大学生を対象として、個人的特徴を元に「誰と誰が仲良くなるか? 誰とは仲良くならないか?」について仮説を立てるという実験だ。すると、まさに類似の原理どおりの結果になる。つまり、類似点が多い被験者同士は仲良しになり、異なる点が多ければ多いほど、話ははずまない。
だから成功したければそれはごく単純で、相手との共通点をできるだけ多く見つけることである。そしてその共通点をはっきり強調するのである。類似の原理はあらゆる特徴に当てはまる。出身地、年齢、学歴、職業、趣味、政治観、性格、そして付き合い方。
■3.相手とできるだけ頻繁に会う
脳は慣れ親しんでいることなら何でも好きだ。だから「相手の共感を得ることができる驚くほど簡単な方法」が1つある。相手とできるだけ頻繁に会うこと、これである。相手は、あなたと会えば会うほどあなたに共感を抱くようになる。それが自然というものだ。
心理学ではこれは「単純接触効果」と呼ばれる。この効果が発揮されるには、前提条件がいくつかある。相手が最初の出会いをネガティブにとらえることは通常はない。もしあるとしたら、相手は誰に対しても好感を持たない人なのだ。最初の出会いが少なくともよくも悪くもなければ、その後の共感度は必ず上昇してゆく。
■4.相手に好意を示す
あなたが他の人たちの「いいね」ボタンを押せば押すほど、あなたのことを気に入っているというユーザ数が増えるのだ。他の人に親切なコメントを書けば書くほど、あなた自身に親切なコメントが返ってくる。
これは心理学では「相思の原則」として知られている。そう言うととても複雑なように聞こえるが、意味するところはごく単純だ。つまり私たちはみんな、愛情と評価を渇望している。誰かが自分に好意を抱いていると聞けばうれしくなり、好意をお返しする! つまり、私たちは自分に好意を抱いてくれる人なら誰にでも好意を抱くのである。あるいは少なくとも、その人が私たちに好意を抱いていることを胸に刻むのだ。
■5.相手の承認欲求を満たす
たとえば、本当は巨大な組織の中のちっぽけな歯車なのに、「何をやっているかがよくわからない英語名の役職名が記された名刺」を使っている人。そういう人に限って、まるで全世界の運命を担っているかのように自分の活躍ぶりを語る。
そういう人を見かけたら対処法は2つある。「気をつけなさい! あなたは自分を過大評価してますよ」と言うか、相手の勝手な思い込みどおりに重要人物扱いするか、どちらかだ。もしその人に何かやってもらいたいことがあったら、あなたはうまく立ち回って、後者の方法を選べばいい。
■6.最後に意思表示をする
あなたのことを覚えてもらうタイミング、あなたの関心事を記憶してもらうタイミングは結局、他の全員が語り終えた瞬間だ。
心理学ではこれを「新近性効果」と呼ぶ。「新近性」とは「最新の」という意味だ。だから「新近性効果」とは、「いちばん最後に処理した情報が、特に強烈にその人の態度に影響する」ということである。(中略)
大半の意見は、ただでさえ1分後には忘れられて、「回答する」必要もなくなる。そして最後のときが来たら、挙手をして発言の意思表示をするのだ。そのとき発する言葉は、それまでに述べられたどの言葉よりも重みがある。それまでの言葉など、もう誰も覚えていない。
【感想】
◆今まで10年近くブログをやってきましたが、「ロビイスト」の方が書かれた本は、本書が初めてだと思います。一応、「ロビイスト」とはなんぞや、ということについては、Wikipediaをご覧頂くとして……。
ロビイスト - Wikipedia
むしろ、「ロビー活動」の方が分かりやすいカモ。
ロビー活動 - Wikipedia
要は「政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動」を行う人のことですね。
と言うワケで、本書では主に「議員さんに働きかける」際のテクニックが色々と挙げられています。
◆これが「折衝」ですとか「交渉」のお話だと、ロジカルである必要があるのでしょうけど、ロビイストが行うのは、あくまで「働きかけ」。
むしろ、相手を説得しようとしたり、論破しようとしたりすると、逆効果になることもあります。
本書ではその点についても触れられていて、こちらが反論すればするほど、それは相手にとっては「薬剤の投与」と同じであり、「体内でそれに対する防御物質を作る」ように、話を聞かなくなってしまうとのこと(「態度投与」)。
逆に「自分で育んだ意見」には、たとえ他の人から与えられた誤報を元にして作った場合であっても、固執してしまうという。
……ということで、「いかに議員たちに、こちらに都合のよい意見を自ら導き出してもらうか」がキモになるわけです。
◆典型的な例が、著者のキッツが大物議員を口説き落としたケースで、その議員は、今までも多くのロビイストから、色々なことを「せがまれて」いました。
キッツたちも、従来は同じように議員に「見解を述べて」いたのですが、ある時違う手段を試してみます。
それは議員に「自分が抱えている問題を尋ねる」というもの。
彼は一瞬ドギマギしたものの、やがて政策に関する自らの悩みを話し始めます。
それに対してキッツは、自分が手伝えることがあれば力になる旨を告げ、議員の要望に対してメールで返答する際、キッツたちの見解を載せておきました。
その後何ヵ月間かは、その議員はキッツたちの「熱烈な代弁者」になってくれたという……。
◆たとえば、メールや電話で済むことを、わざわざこちらから会いに行って話をすることは、およそ合理的ではありません。
しかし、一見非合理的に見えることに、「人の心を動かす鍵」があったりするもの。
これはまさに上記ポイントの3番目のお話なんですけれど、その「重み」をどこまで理解しているかと言うと、私自身ちょっと微妙な気が。
上記ポイントの2番目の「共通点」も含め、こうした「情」に働きかけることの効果を、本書を読んで改めて感じ入った次第です。
◆なお、本書は本国ドイツのアマゾンの評価もなかなかのもの。
Du machst, was ich will: Wie Sie bekommen, was Sie wollen - ein Ex-Lobbyist verrat die besten Tricks: Amazon.de: Volker Kitz: Bucher
特に最高評価のレビューが多い点が、目立ちます。
ただし、テクニック的には、奇をてらったものではなく、王道的なものがメイン(そういう意味ではアマゾンの内容紹介にあった「ロビイストだけが」というフレーズには違和感がありますが)なので、類書を読み込んできた方にとっては、既知のTIPSがほとんどかと。
ただ、個人的には、こういった心理的な手法を、実際にビジネス上で用いて、効果を上げている点を確認できたのが収穫だと思っております。
もちろん、この手の心理術本をあまり読んでいない方なら、基本書的に接して頂きたく。
ロビイスト流の心理テクニックがここに!
敏腕ロビイストが駆使する 人を意のままに動かす心理学
Part 1 議論
Chapter 1 あなたの言葉に耳を傾ける人なんて一人もいない
Chapter 2 あなたの希望に関心を持つ人なんて一人もいない
Chapter 3 めげずに希望を叶える方法
Part 2 情動
Chapter 4 相手の理性ではなく意志に影響を与えよう
Chapter 5 怠けぐせのある脳を使ってみよう
Chapter 6 相手の動機を活用しよう
Part 3 人材
Chapter 7 適切なターゲットを選ぶ
Part 4 人を操るテクニック
Chapter 8 相手に話を聞いてもらう方法
Chapter 9 交渉するのではなく相手を操ることが大事
Chapter 10 群衆の力を利用しよう
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【編集後記】
◆「ドイツ流の心理本」と言えば、トルステン・ハーフェナーのこの本。(文庫)心を上手に操作する方法 (サンマーク文庫)
私は単行本の時点で読みましたが、現在は上記のように文庫化されています。
レビューは上記関連記事にて。
ご声援ありがとうございました!
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