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2014年11月01日

【オススメ】『「読ませる」ための文章センスが身につく本』奥野宣之


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「読ませる」ための文章センスが身につく本


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。

ノート術本で知られる奥野宣之さんが、その「本業」とも言える「文章術」を指南して下さっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
わかりやすく、伝わりやすい文章を書くことは大事。
でも、それよりも重要なのは……「読んでもらう」こと。
ビジネスの現場で文章を作る人のための、読んでもらえて、伝わって、書くのが楽しくなる文章術!

なるほど、元々はライターをされていただけあって、「流石!」と思わせられました!






Мече във влака Дъблин—Лърган / Михал Орела


【ポイント】

■1.思い切って言い切る
 ご存じの通り、日本語の会話は、よく言えば娩曲的な、悪く言えば持って回った言い方が多い。だから頭に浮かんだ言い方をそのまま使って書いていくと、たいてい歯切れの悪い文章になってしまうのです。
 日ごろの会話やメールで使っている言葉の感覚で文章を書いてはいけません。
 電話だったら「弊社のほうでは、お引き取りいたしかねます」と言ったりします。しかし、こんな言い回しが書類に出てくると、「ハッキリしてくれ」と言いたくなる。少々ぶっきらぼうなようでも「弊社では引き取りできません」と書いたほうが伝わるし、読み取る側にとっても親切でしょう。
 思い切って言い切ってみると、おのずと文章が短くなり、テンポもよくなります。


■2.予防線を張らない
文章を作るときには、予測できる読み手の反論や批判を先まわりして答えたり、封じておいたりすることがよくあります。「自慢じゃないが」「私だけの話と思われるかもしれないけれど」といった短いものから、「○○という人のために説明しておくと……」という長い一節もあります。
 第2講で言いたいことは、こういった「先まわり」の言い回しを軽はずみに使ってはいけない、ということです。
 必然性のないところで使うと、まず言い訳じみた自信のない文章になります。


■3.主語の「私」は入れない
 たまに目にする文章の書き出しに、次のようなものがあります。
「私は企画会議が好きです」
 何の変哲もない書き出しですが、読まれる文章かという評価をするなら「減点」です。
 余計な一人称があるからです。この「私は」を取って、
「企画会議が好きです」
 これでも充分、意味が通じますね。
 小説ではないのだから、会議が大好きなのは「書き手」に決まっている。よって「私は」は不要。「書かなくてもわかることは書かない」のが競ませる文章の鉄則です。


■4.現在地を明らかにする
ここまで、ウェブデザインの注意点について説明してきた。
続いてここからは、販売サイトの文章表現について、基本的な事柄を解説していく。
ここを理解できれば、ウェブPRの基本をほぽ押さえたと言ってもいいだろう。
 この文章が示しているのは「ここまで」と「これから」。結果として、現在地も明らかにされています。
 こういった現在地のナビゲーションを読んでも、話はまったく前に進みません。これは話と話のつなぎであって、行程の中では立ち止まっている。しかし、こういう「間」があるおかげで、読む側は短時間で頭を整理することができ、ストレスを感じずに読み進むことができるのです。


■5.お願いやお詫びでは、漢字をひらく
余談ですが、この講演会の登壇者を決めるに当たって、北条院ブリスコ先生にお願いしてはどうかと発案したのは、わたしです。
というのも、3年前、わたしがふさぎこんでいたとき、ひとつの救いになったのがブリスコ先生の本『負けてもいいじゃない』だったからです。
 普通なら、もう少し漢字を使って書くところですが、できるだけひらいて、「私」もひらがなにしてみました。
 これで、読むスピードを少し落とさせることができます。さらに、条件などを書いた前半とのギャップで、より読んでもらえる可能性が高まる。
 無味乾燥なビジネス文書の中に、ほんの少し、こういう情緒を感じさせる文章を加えることで、「この依頼はひと味違うな」と思ってもらうことができるわけです。(中略)
 だから、お願いやお詫びなどで、情感に訴える文章を書きたいときには、漢字をひらいて、ひらがなが多めになるように心掛けてみてください。


■6.対象そのものより、その「影」を書く
 研修のレポートに「店舗営業のノウハウを1週間で身につけるのは、たいへんハードでそのぶん、忘れられないものになりました」と書く。これだと何の印象にも残りません。しかし、次のように書いたらどうでしょうか。
「1週間の間,お店以外のことはまったく考えられませんでした。家に帰って3日になるのに、昨夜も店に立つ夢を見ました」
 つまり、研修「そのものの印象」を書くのではなく、研修の「自分への影響」を書く。先ほど、暑さを温度や太陽ではなく、アスファルトや水筒の水といった「影響を受けたもの」から書いたのと一緒です。
 対象そのものを書くのではなく、その影を書く。
 こうすることで、対象が浮き彫りになり、読み手とその感動を共有できるのです。


【感想】

◆上記をお読み頂ければお分かりのように、本書は「正確な文章を書くための本」ではありません。

それこそまさに、タイトル通り「『読んでもらう』ための文章術の本」です。

本書曰く、読んでもらうためには「わかりやすくて正確なだけの「明文」では、ダメ」とのこと。

この「読ませるために必要な要素」を、著者の奥野さんは「ツヤ」と呼び、主にエッセイやコラムのような「雑文」から、その手法を拾い出しています。

本書内では「プロの技」と題して、各講ごとに例文が引用されているのですが、ただでさえ引用部分が多かったので、今回は丸ごと割愛。

ただ、ナンシー関さんや、開高健さん、阿川佐和子さんといった、全国レベルの著名人から、我らが山本一郎さん、成毛眞さんといったネット界隈の巨匠まで、幅広く登場していますので、お楽しみに。


◆個々にみていくと、まず、上記ポイントの1番目の「言い切る」ことについては、類書でも言われている通りです。

奥野さんも、言い切る事によって「文章が勢いづく」「説得力があったりする」ことを指摘。

ただ、ネット上では一筋縄ではいかないわけで、こういう現象も起こり得ます。
それを防ぐための手段の1つが、続くポイントの2番目の「予防線」。

それをも禁じられてしまうと、私なんぞは、炎上の心配をしてしまうのですが、一応本書には「炎上リスクを下げる技」なるものも収録されています。

もっとも、イマドキのネット文章術的には、ブコメでツッコまれまくった方が、はてなブックマークの人気エントリに入りやすくなるのかもしれませんがw


◆一方、「なるほど」と思ったのが、上記ポイントの5番目の「漢字をひらく」ことの意義。

類書でも「読みやすく」するために、普通は漢字で書いているところを、わざとひらがなに置き換える手法を目にしたことはありましたが、本書で意図しているところは、その「読むスピード」です。

つまり、漢字が多いと読むスピードが加速され、ひらがなが多いと、逆にゆっくりになるという。

そこで本書では、お願いやお詫びのシーンで、ひらがなを多用することを推奨しているのですが、これは個人的には「目からウロコ」でした。

さらに奥野さんは、パッと見たときの「字面」(漢字やひらがな、カタカナのバランス等)まで考えられており、さすが、プロは違うな、と。


◆最後のポイントの6番目は、技法としては「小説」に用いられるものに近いです。

ただ、これについて奥野さん曰く「むしろ実用的な文章に使える」とのこと。

実際、上記の文例は「研修レポート」であり、ビジネスシーンそのものです。

ただし、ここでのキモは「大事なことはあえて言わずに、想起させる」こと。

読む側が自ら読み取ることにより、強いインパクトを残せるワケですね。


◆本書は他にも、個人的に留意したい点が多々ありました。

ただ、いつものように(?)それを列挙してしまうと、いつまで経っても直らない以前に、今回のエントリーでさえ、モロにそうだったりするので、思いっきり自重しております。

ちなみに、本書の「おわりに」によると、奥野さんは本書の執筆中「文章をどうこう言ってるおまえの文章はどうなのよ?」という言葉が、何度も頭をよぎったのだそう。

かくいう私も、「文章術の本のレビューを書く」ことによって、同じようないごこちの悪さ(「いつまで経っても上達しない」等)を、今回も感じました。

とはいえ、それでも私としては、この本をご紹介したく。


初歩レベルの文章術本に満足できない方にオススメ!

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「読ませる」ための文章センスが身につく本
第1章 つかむ――読みはじめのハードルをいかに超えるか

第2章 のせる――醒めずに心地よく読み続けてもらうために

第3章 転がす――読み手の意識をコントロールする

第4章 落とす――論理としての「正しさ」よりオチの「納得感」


【関連記事】

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【スゴ本】『いますぐ書け、の文章法』堀井憲一郎(2011年09月09日)


【編集後記】

◆本書の中で引用されていた、私もお気に入りの1冊。

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いますぐ書け、の文章法 (ちくま新書)

レビューは上記関連記事にて。


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