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2014年10月23日

【行動経済学】『その損の9割は避けられる: “後悔しない選択”ができる行動経済学』大江英樹


その損の9割は避けられる: “後悔しない選択”ができる行動経済学 (単行本)
その損の9割は避けられる: “後悔しない選択”ができる行動経済学 (単行本)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、主に「損」にフォーカスした「行動経済学」の本。

著者の大江英樹さんは、日経電子版で『投資賢者の心理学』を連載中のお方です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
行動経済学では、人は「得した喜び」よりも「損した苦しみ」を2.5倍強烈に感じると言われています。
だからこそ誰にでもある「損を避けたい」という本能が、逆に、さらなる損を呼んでいるとしたら――。
こんな悲劇の当事者とならいために、これだけは知っておく必要があるのです。

身の回りに潜む「損」のワナに陥らないためにも要チェックです!





skillnad / jardenberg


【ポイント】

■1.人は比べやすいものにミスリードされる
新聞の購読プランに3つのタイプがあります。このうち、どれを選ぶかというアンケートをあるグループに対してとったところ、次のような結果になりました。
(1)電子版のみの購読     2000円   16%
(2)印刷版のみの購読    5000円   0%
(3)電子版+印刷版の購読 5000円 84%
 次に別のグループで(1)と(3)の選択肢だけで再度アンケートをとると、何と次のような結果に変わってしまったのです。
(1)電子版のみの購読     2000円  68%
(3)電子版+印刷版の購読 5000円 32%


■2.「1日たった5円」は安いのか高いのか
以前、消費者金融のキャッチコピーに「1万円借りても利息は1日たったの5円」というのを見かけたことがありました。
 1日5円だったら、1年では1825円ですから、年利は何と18.25%と非常に高くなりますが、表現方法を"1日たった5円"とすることで、見事に心の抵抗感が消えてしまいます。
 同じように、通販のCMでも高額商品を売る時の宣伝文句に、"1日にコーヒ1杯分のお値段で素敵な○○があなたのもとに!"というのを、よく見かけます。
 これらはいずれもフレーミング効果」を利用したものだといえるでしょう。


■3.広告は「すでに買った人のため」もある
マーケティングにくわしい友人の話では、商品のCMを一番熱心に見ているのはこれから買う人ではなく、それを買ったばかりの人なのだそうです。
 これは高額商品であればあるほど傾向が強くなるといいます。
 結局、人間は損をしたくないという気持ちが強いのです。
 そのために売り手も「あなたが買ったのはいい商品なのですよ。決して損をしたのではなくて、あなたはとても得をしたのですよ!」というメッセージを送ることで、その顧客の満足度は非常に高くなります。


■4.目の前の「キャッシュ」の魅力は大きい
 行動経済学では「利用可能性ヒューリスティック」という言葉がありますが、これは身近に起こったことや目の当たりにしたことは起きる確率が高くなると思い込む錯覚です。
 この「楽乗キャッシュバックキャンぺーン」はまさにこの利用可能性ヒューリスティックを活用した手法なのです。「50人に1人」が無料ということは、全乗客に当てはめたとしたらわずか2%の割引にしかなりません。
 すべての乗客が料金を2%割引されたところで、それほどうれしいとは思わないでしよう。でも50人に1人の割合で「無料になる」となると、インパクトはかなり強いものがあります。


■5.年末調整は「払う」方がお得
 なぜなら、「年末調整で払いになる」というのは、本来、払うべき税金額よりも少ない額しか納めていなかったということです。しかも、本来なら支払いを猶予されていたわけですから、その間の金利も一緒に払わなければならないはずなのに、それは払う必要がありません。
 一方、「年末調整で返ってくる」というのは、払いすぎていた分が戻ってくるだけの話です。逆に、ここでも納めすぎていた分には利子は一銭もつきません。冷静に考えると"払う"ほうが得なのですが、人間の心理というのはそうはなりません。


■6.コンプガチャの「確率の誤謬」
先のコンプガチャのしくみはごく単純化すれば、
「サイコロを振って6つの目を全部出してください。全部揃ったら1300円差し上げます。ただし、1回振るごとに100円ずついただきます」
 といったものです。
 直感的に考えると、何となく、10回ぐらい振れば目が全部揃うのではないかと思いますが、きちんと確率計算をすれば6つの目が全部揃うためにサイコロを投げる乎均回数は14.7回となります。つまり1470円が負担するコストで、それに対するリターンは1300円ですから平均的には絶対儲かることはありません。
 実際にはコンプガチャのような場合は意図的に特定の"目"が出る確率を低くしたり、サイコロとは比較にならないくらい"目"の数を多くしたりと、とても複雑で確率計算などはほぼ不可能です。


【感想】

◆本書は、ある程度「行動経済学」の本をお読みになっている方にとっては、「ハイハイ、あのネタね!」という事例が目につくかもしれません。

たとえば上記ポイントの初っ端のヤツは、大昔にこの本で読んだモノ(巻末の参考文献にも記載されています)。

4152089792
予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

参考記事:【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

上記参考記事では、ネタバレを自重して実験結果は書きませんでしたが、この本が出てからほぼ6年経っていますし、いいかげん公表してもよかろう、ということで上記の通りになりました。

これは結局、(2)の「印刷版のみ」という「おとり」を選択肢を加えることによって、いとも簡単にミスリードされてしまうことを示しています。


◆また、上記ポイントの4番目も似たようなケースを読んだことがありましたが、改めてもう1度。

まず「一律2%割引」ではなく、「50人に1人が無料」とすることでインパクトを与えるとともに、このキャンペーンの場合、発券機のまわりの係員から「おめでとうございます! カウンターで現金をお受け取りください」とか言われちゃうわけです。

自分が当たっても大喜びですが、これ、周りで見ている人は「次こそは自分も!」と思っちゃうでしょうね。

今ならTwitter等でのバイラルの口コミも期待できますから、キャンペーンとしては成功必至も必至!?

実際、このキャンペーンが生み出した効果は大きく、実施した全日空の搭乗者数は大きく伸びたのだそうです。


◆そして、割愛したお話で興味深かったのが、「内発的動機」を「外発的動機」に変えてしまった例。

家の前の空き地で騒ぎ立てる子供たちがうるさいと思ったあるおじいさんは、その子供たちに「1人100円ずつあげるから、毎日遊びに来ておくれ」と言います。

当然子供たちは大喜び!

その後も毎日遊びにくるのですが、ある時おじいさんは、「お金がなくなってきたので、今日からは10円にしておくれ」と言って、10円ずつ渡します。

すると次の日から遊びに来る子供の数が減り、代わりに別の広場で騒ぎ立てる子供が増えたのだとか。

つまり、元々は100円関係なく「その空地で遊びたい」という内発的動機によって来ていた子供たちですが、それが「毎日100円もらえる」という外発的動機に変わってしまったことにより、1/10のディスカウントによって、行動が変わったという……。

人の家の子に勝手にお金あげたりすると、今は色々と問題もありそうですが、考え方としてはアリだな、とw


◆ちなみに、冒頭でも触れたように、著者の大江さんは、『投資賢者の心理学』という連載をなさっているだけあって、本書の第3章は丸々「金融ネタ」での「損」についてです。

ただし、私自身がその辺はあまり得意でもないので、ゴッソリ割愛。

もっとも、この第3章も含め、定番的な「行動経済学ネタ」でも、上記ポイントの5番目や6番目のように「日本特有の事例」で解説してくれているのが、本書の特長だと思います。

特に5番目の「年末調整」の例は、わかってはいるんですけど、返ってくると嬉しいんですよね〜。←学習してないw


後悔したくない方に!

その損の9割は避けられる: “後悔しない選択”ができる行動経済学 (単行本)
その損の9割は避けられる: “後悔しない選択”ができる行動経済学 (単行本)
1章 「元をとりたい」「ついでだから」…だから、その行動が損を呼ぶ!―誰もがはまる落とし穴を「行動経済学」で考える
2章 買い物、外食、旅行、カード…あなたの「選択眼」に間違いはないか―「選んでいいもの」「欲にかられてはいけないもの」
3章 預貯金、保険、年金、ローン、投資…「まとまったお金」こそ、失敗は許されない―気をつけよう、「甘い勧誘」と「複雑な商品」
4章 評価、人事、功績、出世…この“人間心理”を知り尽くした人が、のし上がっていく―「なんで、あの人が!」の謎は解かれた
5章 自分の健康も人生のパートナーも…満足人生は「いい選択の積み重ね」がつくる―ぶれない「損得感覚」を持つために


【関連記事】

【行動経済学】『なぜ、それを買ってしまうのか』加藤直美(2014年07月06日)

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

【速報!】プレミア付きの名著『ファスト&スロー』がいよいよ文庫化!(2014年06月17日)

【ヒューリスティック】『思い違いの法則: じぶんの脳にだまされない20の法則』レイ・ハーバート(2012年04月24日)

【スゴ本】『価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?』リー・コールドウェル(2013年02月17日)

【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)


【編集後記】

◆Google創業者2人の名言本が登場。

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Google Boys グーグルをつくった男たちが「10年後」を教えてくれる: ラリー・ペイジ&セルゲイ・ブリンの言葉から私たちは何を活かせるか (単行本)

林 信行さん翻訳ですから、大丈夫でしょう!


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Posted by smoothfoxxx at 09:00
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