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2014年08月23日

【目からウロコ!?】『データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』矢野和男


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データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、元々は川田浩志先生のブログ記事で知り、「これは買わねば!」とアマゾンアタックをかけた1冊。

ただ、今月初めにHONZで編集者さんが広告を出されていた際には、まったくノーケアでした(恥)。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
人間の行動を支配する隠れた法則を、「方程式」に表す。ヒューマンビッグデータがそれを初めて可能にした!時間の使い方・組織運営・経済現象など、人間と社会に関する認識を根底からくつがえす科学的新事実。科学としての確立と現場での応用が同時進行し、世界を変えつつある新たなサイエンスの登場を、世界の第一人者が自ら綴る!

本書も付箋を貼りまくったのですが、画像の方は自重しておきますw






The Language of Discovery: A Grammar for Designing Big Data Interactions - Lightening talk by Joe Lamantia / visualpun.ch


【ポイント】

■1.積極的に問題解決する人は、会話時によく動く
 センサで測った行動データは、数字の列である。これからその人の身体運動の特徴もまた数字で表すことができる。たとえば、赤外線の対面センサと加速度センサのデータを組み合わせることで、人と面会している(相手から赤外線の信号を受信している)ときに、身体をよく動かすかどうか(1分間に何回身体を動かすか)が定量化できる。すなわち
「会話するときの、身体運動の量」(毎分何回身体を動かすか)
を、数値として定量化できる。この数値には、人により、大きい人と小さい人がいる。この数値が大きい人の集団と、前記のさまざまな質問への回答を比べてみると、実は
「積極的に問題解決する人」
の集団とよく一致するのである。すなわち、「会話時に頻繁によく動く」のは、「積極的に問題解決する人」に共通の特徴なのである。


■2.コールセンタの生産性アップの鍵は「会話」
関係者は、スキルが受注に強く影響すると何の疑問も持たずに考えていた。しかし、計測してみると、それは事実ではなかった。
 電話での応対には、性格的な向き不向きがあるとも考えられてきた。しかし、このパーソナリティと受注率との相関を調べてみても、相関はなかった。
 実は、受注は、意外なことと相関していた。それは、休憩所での会話の「活発度」である。休憩時間における会話のとき身体運動が活発な日は受注率が高く、活発でない日は受注率が低いのである。


■3.最後に会ってからの期間が長くなると、ますます会いにくくなる
 人と対面したり、1人になったりという変化を大量データから解析した結果によれば、再会の確率は最後に会ってからの時間が経過するに従って低下していくのだ。最後にある人に会ってからの時間をTとすると、再会の確率は1/Tに比例して減少していく。
 たとえば、あなたが藤田課長と最後に会ってから、1時間たったとしよう。このときに再会する確率をPとすると、2時間後にはこの面会確率がP/2、3時間後にはP/3になる。この法則性が、会社幹部でも、新人でも、営業職でも研究者でも成り立つのである。
 一言でいうと、最後に会ってからの時間(期間)が長くなると、ますます会いにくくなる(面会確率が下がる)ことが明らかになった。そして、それはきれいな反比例の法則に従うのである。これを「1/Tの法則」と呼ぼう。


■4.「フロー」に入るには「やや速めの身体運動を継続する」
 実験結果は、この期待通りだった。やや速い身体の動き(定量的には2〜3Hzの動き、つまり240〜360回/分程度の、歩行時のリズムに近い動き)が継続し、また一貫して生じていることが最適経験(=フロー)の頻度と相関していた。
 具体的には、フローの頻度の多い人は、やや速めの身体運動の頻度に関して、ある5分間とその次の5分間とを比較したときに、その頻度の変化が少ないということが明らかになった。フローなりやすい人は、やや速めの身体運動を継統する傾向が強いのだ。これは、身体の継続的な速い動きが、目の前の行為への集中を深めていくということと、集中する人は身体が継続的に速く動くことの両方を示している。


■5.仕事がうまくいく人は「知り合いの知り合い」が多い
 実は、この仕事がうまくいく人は、共通して前記の「到達度」が高かったのである。「到達度」とは、自分の知り合いの知り合いまで(2ステップ)含めて何人の人にたどり着けるかであった。したがって、知り合いの知り合いまで含めて、自分の持っていない情報や能力にアクセスできる力を定量化したもので「運のよさ」を表す指標になるかもしれないと先に議論した。「到達度」が高い人が、顧客からの想定外の問い合わせの答えを知っているわけではないが、その答えやヒントに出会える確率が高かったと解釈できる。これは身近に見れば運がよい人に見えるであろう。運のよい人は、想定外の複雑な問題に対処でき、仕事がうまくいくのだ。


■6.顧客単価をげるには「高感度スポット」に人を配置する
 一方、人工知能Hは、入力した大量のデータを、一旦、小さな要素にばらばらに分解し、これをさまざまな組み合わせで再度合成することにより、業績向上に影響する可能性のある膨大な数の要因群を自動的に生成した。(中略)
 この結果、顧客単価に影響がある、意外な業績要因を人工知能Hは提示した。それは、店内のある特定の場所に従業員がいることであった。この場所を「高感度スポット」と呼ぼう。この高感度スポットに、従業員がたった10秒滞在時間を増やすごとに、そのときに店内にいる顧客の購買金額が平均145円も向上するということをHは定量的に示唆したのだ。


【感想】

◆冒頭で申しあげたように「付箋を貼りまくった」ことからも、本書が濃厚であることはご理解頂けると思うのですが、ぶっちゃけ「超文系」の私には、理解が難しい点がちらほらありましたw

たとえば、冒頭のHONZのエントリーには、「1日の活動時間のうち約29%が原稿執筆に割ける時間の限界値」というお話が登場するのですが、その前提(?)となるのが、「カルノー効率」なるもの。

カルノーの定理 (熱力学) - Wikipedia

どうも、「人間の活動効率が、熱効率と同じ式に制約される」らしいのですが、自分自身が納得するのはまだしも、ポイントとして挙げることはできませんでした。

……この辺に関するご質問等はご遠慮頂きたく(小声)。


◆それに比べると(?)、ビジネスシーンで業績を挙げるお話は、腑に落ちまくり。

上記ポイントの2番目のコールセンタ(本書では「センサ」「コールセンタ」のようにおしまいの「ー」が割愛されています)のケースは、アウトバウンド(顧客に売り込む)でしたが、米国ではインバウンド(顧客からの問い合わせ)のケースも実験が行われています。

それによると、生産性は、やはり「休憩時のオペレータの活発度」に強く影響されていたのだそう。

そこで、それまでバラバラにとっていた休憩をメンバーができるだけ合わせてとるという施策により、最大で20%も生産性がアップしたのだとか。

本書で指摘されていたのが、「アウトバウンド/インバウンド」「日本/米国」さらには、日米で業務のルールや職場のプロセスや常識が異なるにもかかわらず、同じ結果が出た、という点。

これはもう「普遍的」なもの、と考えても良さそうです。


◆一方、「会社レベル」ではなくて、「個人レベル」で実践できるものといえば、上記ポイントの4番目の「フロー」。

フロー (心理学) - Wikipedia

この「フロー」が、身体運動と関係している、というのは非常に納得できるお話です。

しかも矢野先生は、この研究をあのミハイ・チクセントミハイ教授と共同で行われたという(スゲーw)。

「具体的に日常生活でどうするか」についても矢野先生は触れられており、たとえば「会話する時に、できるだけ座らずに立って行う」とフローになりやすいのだとか。

また先生ご自身、「仕事が停滞した時にはオフィスの中を歩きまわって2Hzを超える身体運動を増やす」ことをこころがけているのだそうです。


◆もう1つ「個人で実践できる」としたら、上記ポイントの5番目の「知り合いの知り合いを増やす」ことでしょうか?

たとえば新しい部署に異動したり、転職してまわりに知り合いがいないような場合には、とりあえず「知り合いが多い人」に接触すべき(会話を増やす等)かと。

ただし、リーダーが「組織としての能力」を高めるためには、自分の「到達度」を高めるだけではいけません。

ここで意識すべきは「メンバー内に"三角形"を増やすこと」……なんですけど、詳しくは本書にて。


◆本書は、ネタ元の川田先生はもちろんのこと、川田先生のネタ元となった西村典子さん、やアマゾンレビュアーの皆さんも絶賛中です。

テーマ的に成毛眞さん含め、HONZ自体でメンバーの皆さんがレビューしないのも不思議と言うかもったいないぐらい。

アマゾンの順位は、すでに3ケタ台に位置しているので、何かあったら在庫切れになること必至かと。

個人的には、「あとがき」に登場する「データを読み取り、生活パターンの変化から個人にアドバイスをする」システム、「ライフシグナルズ」が気になるところですがw


目からウロコが落ちまくる1冊!

4794220685
データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則
イントロダクション
第1章 時間は自由に使えるか
第2章 ハピネスを測る
第3章 「人間行動の方程式」を求めて
第4章 運とまじめに向き合う
第5章 経済を動かす新しい「見えざる手」
第6章 社会と人生の科学がもたらすもの


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【スゴ本!】「なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学」パコ・アンダーヒル(2007年10月09日)


【編集後記】

◆先日、大好評の上、一瞬で品切れになったこの本の在庫が復活しましたので、躊躇された方はこの機会にぜひ!

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錯覚の科学 (文春文庫)

参考記事:『錯覚の科学』が想像以上に凄い件について(2014年08月19日)

上記記事でご紹介している動画のことを、知らない方がちらほらいて、ちょっと意外だったりw


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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