2013年03月13日
【これからの働き方】『ノマドと社畜 ~ポスト3・11の働き方を真剣に考える』谷本真由美

ノマドと社畜 ~ポスト3・11の働き方を真剣に考える
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、@May_Romaこと谷本真由美さんによる、ビジネスパーソンの「働き方」に関する考察本。すでに先行発売されていたKindle版に大幅加筆修正されたものになります。
アマゾンの内容紹介から。
「紙版希望! 」の多くの声に応えての刊行!
発売後いきなりアマゾンKindleストアで1位になり、話題になった電子版に大幅加筆、新章「社畜とは何か?」などを収録!
国連職員などとして数カ国で働いてきた著者(現ロンドン在住)が、日本で流行るノマド論のおかしさを一刀両断。組織に寄りかからず自立した働き方が必要となる日本の未来を担う人たちのために、本当に有益なアドバイスを贈る。
昨日早々と増刷が決まった話題作だけに、まだの方は要チェックです!

【ポイント】
■1.ノマドという名の「自己啓発商法」日本ではノマド(フリーランサーや個人事業者)向けの実践的なノウハウを、大学や政府が支援する機関などの、しっかりした組織が教える場が少ない半面、「ノマドになるノウハウを売る」という名目で若者をだまして、「ノマドになって有名人になった」「年収1000万円を超えた」「あなたも世界中を飛び回るノマドワーカーになれる」という甘い文句で、書籍やセミナーで儲けようとする人たちがいるようです。(中略)
要するにノマドブームは、世間知らずの学生さんや若者の中で、就職できない人や、就職することを不安に思っている人たちに、さまざまなモノやサービスを売る「自己啓発商法」の一種なのでしょう。
■2.メディアや広告関連の仕事は、実は少数派
日本でノマドワーカーについて書籍やブログ、ネットメディア、テレビ、講演会などで語っている有名人を跳めていてもうひとつ気になる点があります。それはノマドワーカーについて語っている人々の多くが、出版や放送などのいわゆる「メディア業界」で仕事をしている人、もしくは人材コンサルティングや経営コンサルティングなどの「コンサルティング業界」の人であることです。
この人たちが語る内容の多くは、メディア業界で仕事するノマドワーカー(多くの場合、下請け、個人事業者、業者さん、フリーなどと呼ばれています)のことです。ところが、よく考えてみると分かりますが、こうした業界は日本の産業全体の規模で考えると実は少数派なのです。
■3.ゼネラリストは「売り」になるものがない
日本のサラリーマンには、新卒で会社に入り、さまざまな部署を経験するゼネラリスト(何でも屋さん)が少なくありません。
しかし、ゼネラリストは何でも広く浅くできる代わりに、これといった専門がありません。ノマド的な働き方の世界では、各自が自分独自の専門や個性を「売り」にすることが前提ですが、ゼネラリストには何も「売り」になるものがないのです。(中略)
ゼネラリストは調整役として、大きな組織などではこれからも需要はなくならないかもしれませんが、ノマド的な働き方が広まっていくと、その役割や需要はどんどん縮小していくように思えます。その結果どうなるかというと、そういう人には仕事がなくなっていく、ということなのです。
■4.インターンで「仕事の経験」を買う
ノマド的働き方が広がれば、日本の新卒一括採用のような仕組みはなくなっていきます。採用の基準となるのは、その人の学歴や年齢ではなく「売り物になる」技術なり知識になるからです。これは大多数の日本人にとっては恐るべき事態であり、特に若者には過酷な環境になることを意味します。
なぜ若者にとって過酷かというと、「売り物になる」スキルや知識べースの採用になるため、未経験者は雇わないという環境になるからです。
こうなると、経験の浅い若者は雇われにくくなります。これは英米で実際に起こっていることです。経験を「買う」ために、若者は学生のうちからインターンをやります。インターンの経験が仕事の有無を左右するのです。
■5.ノマドになれるのは「スーパーワーカー」だけ
すべてをこなせるオールマイティーな「スーパーワーカー」だけ、が、ノマドになって生き残っていけます。すべてひとりでやらなければならないからこそ、法律や契約書についての知識、会計、税務、商習慣、大企業の意思決定方法、社会人としての常識などを知っていることが重要になります。(中略)
さらに、お客さんから仕事を得るには、営業力、すなわちお客さんの要望を汲み取り、期待される「アウトプット」を出し、良い関係を維持する能力が必須になります。これは、リアル空間であろうが、デジタル空間であろうが同じです。人さまの気持ちが分からない人はノマドになるのは難しいのです。
■6.ノマド的な社畜になる
会社に勤める社畜であっても、日々の仕事を工夫することで、自分らしい個性を出すことが可能です。例えば、仕事を処理する流れをフローチャートに書いて周囲と共有する、報告書の見せ方を工夫する、同じ業界や他の業界で行われている方法を研究して取り入れてみる、などです。この分野ならあなた、と言われるプロになるわけです。その分野が他の組織に行っても汎用性のある分野であれば、鬼に金棒です。転職してもきっとうまくいきます。
【感想】
◆ちょっと引用部分が長くなってしまったのでこの辺で。まず本書の第1章では、谷本さんが実際に会った「ノマドライフを実践する学生」が登場します。
これがまた、いかにも「イメージ先行型」なのが何とも。
街中でMacBook Airを使い、アフィリエイトをしているのですが、彼の所属する大学では、クラスやサークルの人間の多くが「ノマド商法」を行っている有名人のメルマガを購読して、その人が推奨するグッズを購入したり、海外に旅行したり、ブログの広告収入やアフィリエイトでお金を稼いでいるのだそう。
そんな風潮に鉄槌を下すべく(?)、本書は「正しいノマド」の知識を提供してくれるワケです。
◆まず、職種にもよりますが、ノマドは基本的に「技術や専門知識の勝負になる」ということ。
日本では上記ポイントの2番目のように、メディア・広告関係の多いノマドですが、諸外国ではエンジニアや医師、アナリストといった職業でもノマドがいて、その技術によってはかなりの高給を得ているよう(本書の第2章参照のこと)。
また、自分の専門知識だけでなく、「一人親方」である以上、雑務を含め、すべてをこなせる必要もあります。
いくら技術や能力があっても、営業力やコミュニケーションスキルが欠けていては、売上が立たないわけですから、それも当然かと。
さらに、自分が倒れたら収入は実質的にゼロになる以上、そういったリスクも考えねばなりません。
____
/ \ ( ;;;;(
/ _ノ ヽ__\) ;;;;)
/ (─) (─ /;;/ ノマドって結構大変だお・・・
| (__人__) l;;,´|
/ ∩ ノ)━・'/
( \ / _ノ´.| |
.\ " /__| |
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◆一方、社員、ノマドに関わらず、企業はプロフェッショナルを求める傾向にあります。
その結果、上記ポイントの4番目にあるように、「インターンで『仕事の経験』を買う」ことも、今後日本でも起きてくる可能性が。
谷本さんがアメリカの大学院にいた頃、隣にあったメディア系の大学院の学生たちは、代理店や放送局への就職を志望しており、CNNやABCといったメディア企業でのインターン経験を積んでいたのだとか。
インターンの期間中の生活費や、服代、交通費等も自腹な以上、まさに「タダ働き」どころではなく、まさに「買う」状態です。
しかし、そこまでしないと「経験」が手に入らず、職に付けないのですから、皆必死。
それどころか、イギリスのオークションハウスのクリスティーズでインターンをする「権利」はオークションにかけられ、1ヵ月インターンをする権利が約60万円で落札されたのだそう。
今後、日本でもインターンが常識になる日が来るのかもしれません。
◆なお、今回は割愛しましたが、本書の終わりには、「ノマド志望者に英語を身につけることを勧める3つの理由」が挙げられています。
さらには谷本さんオススメの英語勉強法も収録されていますので、英語を勉強中の方は要チェックで(ネタバレ自重)。
そもそも、ノマドライフを実践されているような方なら、すでに本書もKindle版でお読みかもしれませんが、大幅に加筆修正された本書も捨てがたいところかと。
ノマドに関心のない方でも、これからの働き方を考える上で、本書を読む価値はあると思います。
この中身でこのお値段なら「買い」でしょう!

ノマドと社畜 ~ポスト3・11の働き方を真剣に考える
第1章 ノマドブームの正体とは?
第2章 世界を渡り歩くノマドたち
第3章 激烈な格差社会の到来
第4章 社畜とは何か?
第5章 競争社会を生き抜くために
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【編集後記】
◆その谷本さんですが、さっそく次の本が出るようです。
日本が世界一「貧しい」国である件について
40万PV超のこちらのまとめの書籍化とのこと。
@May_Romaさんが語る。本当は「貧困」な日本社会。 - Togetter
これまたビターですね。

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