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2012年10月09日

【アイデア】『ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か?』横井軍平


決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か? (P-Vine Books)
決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か? (P-Vine Books)

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、かつて任天堂で数々のヒット作を生み出したことで知られる、故・横井軍平さんのお話を集めた1冊。

さらに、横井さんの影響を受けたと自称するクリエイターの方々の寄稿も収録した、まさに「遺稿集」と呼ぶに等しい作りとなっています。

アマゾンの内容紹介から。
伝説の任天堂開発者本人によって語られた開発哲学「枯れた技術の水平思考」がついに、全貌を顕す。

横井流のアイデア発想法を身につけたいなら必読です!


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【ポイント】

■1.モノを売るためには人間の本能を知らなきゃダメ
 私が包み隠さず言ってしまうのは、男の本能は女の子にあるんですよ。どういう発想でものが売れるかっちゅう講演をよくやるんですが、人間の本能を知らなきゃダメだ、と言ってるんです。その本能が何かというと「セックス」なんですよ。ゲームっていうのは競い合いでしょ。競い合いのルーツって言ったら人間の殺し合いなんですよ。そのもうひとつ奥の原点というのは雌をめぐる雄同士の戦い合いなんです。だからローマ時代には、プロの殺し屋を雇ってコロシアムで戦わせたりする。あれがゲームの原点で、それはなぜかって言うたら、勝つことによっていかに多くの雌に自分の子孫を生ませるかっちゅう……これが、もう地球上の動物ほとんどがそうなんですから。そういう感覚でものを見なければ、何が売れるか売れないか、わからんですよ。


■2.アイディアは子供の頃思ってた「不可能」から
 アイディアとは、子供の頃思ってた「不可能」なことを、いま雑誌などを見て、新しい技術のきっかけというか、ぱっと引っかかるものがあるんですよ。そこで昔のものと引っかけて新しい物が出てくるんです。
 アイディアノートとかはないです。よく、アイディアとか浮かんでぱっとメモをしておくとか言うのは、あれは大嘘です。頭の中で興味を持ったものというのは、確実に覚えていますよ。残ってますよ。書くということは、書かなければ忘れてしまう大したアイディアでないということですよ。


■3.模倣が出たら全部捨てる
 先ほども言ったが、Aという商品が大ヒットすると、ワーっとその商品の偽物が沢山出回りますから、だから私は、A´(エーダッシュ)とバージョンアップして戦おうという気は毛頭ないです。それはもう捨てる。そこで戦っていたのでは、絶対シェア争いになって美味しい話が美味しい話ではなくなりますから。全部捨てて、全く新しいBという商品をつくって戦うという感覚で、任天堂時代は、ものをつくっていました。だからやることが、全然違うんですよ。出てくるものも全然違うものになりますし。私のつくったものを順番に挙げていくと、本当に取り留めのないものになりますよ。


■4.面白さにカラーは必要ない
 面白さはカラーである必要はない。たとえば碁盤の目を見て、ある人が碁を考えついた。「これは新しいアイディア」だと。これで将棋もできると考えたらこれも新しいアイディアなんですよ。オセロもできるとかチェスもできるとか。これがゲームの考え方なんです。しかし、これ以上新しいことを考えられなくなったから、何かないかなってなる。そしたら「えい、碁の白黒が地味だから赤青にしよう」と、これが今カラーがついてるのと同じ発想なんですよ。赤青になったら白黒よりは奇麗かな、と思うけどゲームの本質は何も変わっていない。


■5.貧弱でも現実のもので人を楽しませる
(過剰なグラフィックは)もう、松茸とフォアグラで餃子をつくくってしるようなもんですね(笑)。今は、私はともかく映像から離れたいと思ってます。たとえば、ここにおもちゃがあったとします。これは見ていたら楽しいですよね。だけど映像で画面に出したら、こんなくだらんものはないです。ということはね、現実というものがいかに凄いものかということですよ。おもちゃの人形の原始的な動きは見てて飽きない。今は、貧弱なものでもそういう現実のものをつくりたいですね。そういうもので人を楽しませれば、長く遊べるじゃないかと。そう思いませんか?


■6.新しいビジネスは枯れた技術の水平思考から
私のものの考え方というのは、このタイトルにもなっている「技術というのは最先端を使うべきでない」ということです。「儲かる商品づくりには最先端はかえってマイナスになる」。そして「散々使いこなれて、枯れてきた技術を、水平思考、つまりまるっきり違う目的に使うことによって、ヒット商品というものは生まれ出るのではないか」。
 つまり電卓をそのまま垂直思考したのでは、電卓のままですが、そこまでこなれて枯れた電卓技術を水平思考して、ゲームというものに置き換えたからこそ<ゲーム&ウオッチ>がヒットしたのではないか。


【感想】

◆引用量が多かったのでこの辺で。

私が初めて横井さんの存在を知ったのは、この本ででした。

任天堂 “驚き”を生む方程式
任天堂 “驚き”を生む方程式

参考記事:【枯れた技術の水平思考】「任天堂 “驚き”を生む方程式」井上 理(2009年05月15日)

本来、任天堂全般に関する本なのに、記事のサブタイトル(と言うかキャッチ)にこの「枯れた技術の水平思考」を使ったくらい、横井さんの貢献度に衝撃を受けたワタクシ。

そこで、当時横井さんのことが詳しく書いてあるこの本を買おうとしたものの、マーケットプレイスで超高値が付いていて断念したという。

横井軍平ゲーム館
横井軍平ゲーム館

その後、その復刻版である『横井軍平ゲーム館 RETURNS』が出たものの、何故か同月に『ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男』が発売されており、どちらを買うべきか迷っているうちに、結局タイミングを逸してしまいました(ダメじゃん)。

さすがに本書は、冒頭でも触れたように「遺稿集」とも言えるものなので、即買いしたのですが。


◆アイデアネタとは直接関係ないので割愛しましたが、本書には、なぜ横井さんが任天堂を退社したのか、についても書かれています。

曰く、任天堂は新しい商品を投入するには、リソースの問題があるため、今現在売れている商品のうちどれかを外す必要がある、と。

そして、売れている商品は軒並み1500〜2000億円ある以上、新しい商品を開発するには、それが1000億円の売上が見込めないといけなかったのだそう。

本書によると、横井さんは「500億円は売れると思っていてもあきらめたものが沢山ある」とのことなので、そのアイデアを実現するため「株式会社コト」を設立。

ところが、その独立から約1年後に事故で不慮の死をとげてしまいます。

結果的に独立後に横井さんが関与した商品で入手できるのは、この「くねくねっちょ」くらいかと。

くねっくねっちょ
くねっくねっちょ


◆ところで、過度なグラフィックはもちろん、カラーをも不要とする横井さんの考え方は、技術的に突き詰める事が好きな日本の中にあっては、異彩を放っていたと言えると思います。

そんな横井さんの思想が反映されたのが、お馴染み「Wii」。

上記の『任天堂 “驚き”を生む方程式』の中でも、任天堂の岩田社長が、「DS」や「Wii」における横井さんの影響を認める発言をしていました。
「昔の商品で一番相通ずるのは、やっぱり横井さんがやっていた商品になるんですかね。例えば『光線銃』の技術というのは、最先端じゃない。けれども、太陽電池をセンサーにするという、とんでもないアイデアなわけですよ。電源じゃなくてセンサーにするために、ちょうどいいものだったから使った。そうしたことに代表されるようなことが、任天堂DNAの1つなんだと思います」
さらには、Wikipediaによると、こうした横井さんの発想は、「パラダムシフト」として評価されてるとのこと。

もっとも、第2章を費やして言及されている「バーチャルボーイ」に関しては、さすがに失敗したと言わざるを得ないと思うのですが(横井さんご本人は認めてませんが)。


◆本書は、横井さんの掲載された雑誌や資料を調べ直し、承認を得たもの全てを収録しているのだそう。

それがゆえに「遺稿集」とも言える反面、いくつかのインタビューでは発言内容が若干かぶっていたりします。

もっとも、たとえそうであったとしても、横井さんがオフィシャルに話された内容を漏れなく収録している点で、本書の価値は高いかと

私自身、自らの業界において「枯れた技術の水平思考」が何であるかを考えてみるべきだと強く思いました。


今だからこそ読んでおきたい1冊!

決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か? (P-Vine Books)
決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か? (P-Vine Books)
第1章 横井軍平の「ものづくり」
 コラム 「ひねくれたものの見方」こそが水平思考の原点 加藤隆生(SCRAP代表)
第2章 〈バーチャルボーイ〉とは何だったのか
 コラム 技術は、枯れる前に湿気る。思考と嗜好は似ている 川田十夢(AR三兄弟)
第3章 偉大なる「すきま産業」
 コラム Dedicated to Gunpei Yokoi 真鍋大度(メディアアーティスト)
あとがきにかえて 影山裕樹(編集者)
特別付録・横井軍平関連資料集


【関連記事】

【枯れた技術の水平思考】「任天堂 “驚き”を生む方程式」井上 理(2009年05月15日)

【任天堂の力!】『ニンテンドー・イン・アメリカ: 世界を制した驚異の創造力』ジェフ・ライアン(2012年01月02日)

【スゴ本】「ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ」桝田省治(2010年03月21日)

【再録】★「ハンバーガーを待つ3分間の値段」斎藤由多加 (著)(2006年01月18日)

【名著】『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・バーカー(2012年02月20日)


【編集後記】

◆かつて写真展も行った事のある、好きな写真家の1人であるサラ・ムーンの写真集。

サラ・ムーン (POCKET PHOTO)
サラ・ムーン (POCKET PHOTO)

ポケットサイズなので、本棚にも収納できて便利かと。


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