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2012年07月03日

【オススメ!】『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』トビアス・J・モスコウィッツ,L・ジョン・ワーサイム


オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く
オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、前々回の未読本の記事で取り上げたものの、今まで積読状態だった1冊。

スポーツにおける様々な事象・疑問を「行動経済学」の視点からバッサリと解決しており、目からウロコの連続でした。

アマゾンの内容紹介から。
なぜ、勝てる試合を捨てようとするのか? なぜ、審判は地元に有利な笛を吹くのか? なぜ、タイガー・ウッズもパットを外すのか? カウントで微妙に動くストライクゾーン、過大評価されるドラフト1位、真っ赤なウソをつく統計データ、はたしてファンは敵か、味方か? 勝敗のホントの鍵を握っているのは誰だ?…スポーツは、行動経済学のネタの宝庫だ。

本の帯には『ヤバい経済学』の著者であるスティーヴン・レヴィットの「『ヤバい経済学』に迫る本はこれが初めてだ!」の文字が!

そしていつものペースで付箋を貼っていたら、こんなことに!?




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【ポイント】

■1.カウントによって「動く」ストライクゾーン
バッターがツーストライクに追い込まれているとしよう。あとストライク1つで三振、バッターアウトだ。最近の3年にわたる野球の投球データを集め、ツーストライクでストライクゾーンに球が来て、バッターがそれを見送ったケースを調べた(フルカウント、つまリスリーボール・ツーストライクのケースは除いた)ところ、審判が正しい判定をしているのは全体の61%だけであるのがわかった。つまり、審判はそういうケースの39%ではボールだという間違った判定をしているのである。ということは、カウントがツーストライクのとき、審判が誤審をする割合は普通のときの2倍以上だ。そしてそうした誤審はバッター有利に偏っているのである。


■2.データ的に正しいと分かっていてもギャンブルプレーを選べないワケ
 もっと一般的に、へッドコーチといえばだいたいは、結局のところスーパーボウルに勝って記念の指輪を手に入れる可能性よりも、自分の持っている価値あるものを失う可能性に動かされている。何かというと、いまの仕事だ。そしてスポーツの世界では、失業するためのいちばんの早道といえば、定石を踏み外したり、何か過激な手に出たりして、失敗することだ。フォースダウンで残り3ヤードのときに自分のチームにパントしろと指示すれば(仮に、データに照らせばそれは賢い選択ではなくても)まず非難されることはない。安全な道を選び、ウォルマートを買って損をした運用担当者みたいなものだ。勝負に出て失敗すれば地獄が待っている。


■3.「打率3割」という越えられない壁
スター選手と、そういうのもいたねって選手の間に横たわる越えられない壁が3割であり、調停の場で野手の主張を弁護する側も反論する側も、最初に持ち出すのがこの数字だ。当然、3割には金銭的に大きな価値がある。ぼくたちが計算したのによると、他の点ではまったく同じで、打率だけが2割9分9厘と3割に分かれている野手2人の年俸の差は2%にも及ぶ。メジャーリーグの選手の平均年俸に照らせば13万ドルだ(MLBの平均年俸は340万ドルだが、3割バッターの平均年俸は650万ドル近い)。それだけの違いが打率のたった0.001の差で生まれる。打数1000回当たりヒット1本の差だ。


■4.観客はホームチームの後押しができるか?
 過去20年間、NBAで行なわれた2万3000を超える試合で集計すると、ビジターチームのフリースロー成功率は75.9%、対するホームチームの成功率は……75.9%で、小数点の1つ下の位まで同じだった。では、試合の局面が違うとこうしたフリースロー成功率も違ってくるだろうか? たとえば、第4クォーターとか延長戦ではどうだろう? 同点だったら? 答えはNOだ。接戦のとき、ホームチームのファンは全力で敵チームの邪魔をし、ホームチームの後押しをしようとする。そんなときでさえ成功率は変わらない。


■5.筋肉増強剤を使うインセンティブとは?
 ぼくたちが発見したのによると、出場停止を科された選手のほうが、より上のリーグでプレーしている可能性がずっと高い。具体的には、筋肉増強剤を使って出場停止を食らった選手は、食らっていない選手に比べて、1つ上のリーグに上がれる可能性が60%も高い。これがどれぐらいのことかというと、あるリーグで1年余分にプレーしても、上のリーグに上がれる可能性は20%しか増えない。だから筋肉増強剤の効果は3年分の経験に相当する。アメリカ以外で生まれた選手には、筋肉増強剤はさらに大きな効果を持つ。1つ上のリーグに上がれる可能性は70%近く高まる。科学の証拠に加え、ステロイドの効果はこうしたデータでも裏づけられている。


■6.勝率に対する観客動員数の弾力性
 MLBの全チームについて、20世紀中の各シーズンに、地元での試合の観客数がチームの成績にどれぐらい反応しているかを計算すれば、ファンがチームの成功にどれぐらい敏感かを測ることができる。指標が1なら、チームの勝ち星が10%増えれば観客数も10%増える。1対1の割合だ。指標が1を超えるなら観客は10%を超えて増加する(ファンは成績に敏感)。1を下回るならファンは成績に鈍感で、チームは勝つインセンティブが小さい。
 さて。それじゃカブスはどうだっただろう? やってみると、カブスの観客数は球界一、勝率への反応が悪かった(次のぺージのグラフを参照)。カブスの勝率に対する観客数の感応度はたったの0.6で、1を大きく下回った。リーグの平均は1だ。


【感想】

◆本書は今までスポーツを見てきて、皆が何となく感じていた疑問点を詳細な「データ」によって解決してくれています。

例えば、初っ端のストライクゾーンのケースなどは、野球をテレビで観ていて「え?今のがボール?」と感じたことがある方も多いと思うのですが、これはいわゆる「不作為バイアス」と呼ばれるもの。

審判は、自分の判定が間違うことを恐れて、バッターアウトにしにくいワケです。

これは逆にスリーボールの時も同様で、審判が「誤って」ストライクの判定をする割合は、通常の12.2%から20%に増加するのだそう。


◆この不作為バイアスの具体例として本書で挙げられているのが、1993年のNCAAトーナメント決勝における、ミシガン大学のクリス・ウェバーのトラベリングです。

試合残り時間18秒で、相手のノースカロライナが2点リードしている場面で、リバウンドを取ったウェバーは明らかなトラベリングをしてしまいますが、審判の笛は何故か鳴らず。



もっとも、その後ドリブルをして反対側のエンドまで行ったウェバーは、タイムアウトを要求したものの、この時点でミシガンにはタイムアウトが残っておらず、万事休す。

これは審判も笛を吹かざるを得ない反則であり、結局試合はノースカロライナが勝ったという……。

本書によると、ダブルドリブルやパーミング、トラべリングといった類の反則は、競った試合の終盤や延長戦になると、試合のもっと早い段階に比べて、半分も取られなくなるのだとか。


◆また逆に本書では、「それが当然!」と思っていたことも、実はそうでもなかったりすることをも明らかにしています。

例えば、多くのスポーツにおける「ホームアドバンテージ」。

これはデータを見ても明らかで、競技ごとに程度の差はあれど、実際に存在しています(サッカー、バスケットボール、クリケット、ラグビー、アイスホッケー、フットボール、野球等々)。

ただし、その原因は、私たちが通常考えているものとはちょっと違うよう。

本書では、第9章において俗に言われている様々な要素(「観客の応援」「相手チームの遠征による疲労」「日程」等々)を検証し、それらを否定していきます。

そして、続く第10章において「真の理由」を、やはり「豊富なデータ」により解明!

……ってこのテーマは本書のサブタイトルにもなっているので、ネタバレ自重ということで(スイマセン)。


◆ただ参考までに言うと、その「真の理由」は、ことサッカーにおいては「スタジアムに陸上競技のトラックがあるかないか」で変わってくるのだそう。

もちろん、サッカー専用の競技場の方が、「真の理由」が発動する割合が倍に増加!

そういう意味では、先日の代表戦を国立競技場ではなく、埼玉スタジアムにしたザッケローニ監督、グッジョブ!と言えそうです。

サッカーミックスジュース : W杯最終予選のホーム試合は全て埼スタかよ、国立でやれよ国立で

代表を応援する方は、本書を読んだら、もう国立競技場で代表戦なんてして欲しくなくなること必至かと。


◆ちなみに本書の翻訳は望月衛さんで、これは冒頭の『ヤバい経済学』と同じです。

ですから、原書の軽妙な語り口も『ヤバい経済学』よろしく再現されていますし、訳者あとがきでは、上記ポイントの6番目の「弾力性」について言及。
阪神タイガースは……第18章に出てくる弾力性を計算してみたら、0.5だった。さもありなん。そんなんだから四半世紀以上も……いや、なんでもないです。
ちょww

しいて残念な点を挙げるとしたら、本書の著者二人が米国人であるため、対象となるスポーツが野球、バスケット、アメリカンフットボールが中心になってしまい、サッカーが少ないことかと(でも上記のトラックの件は私の好きなサッカーでしたね)。

そもそもスポーツに興味のない方にはアレですが、本書を読むと、スポーツを見る目がきっと変わると思います。


スキルアップにはならないですが激オススメw

オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く
オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く
第1章 ホイッスルを飲み込む
ファンもリーグも、審判のミスジャッジを願っているのはなぜか?

第2章 ここは勝負だ!
ヘッドコーチたちが、自分のチームの勝つ可能性を下げるような判断を下すのはなぜか?

第3章 スーパーボウルの予測は、やるだけ無駄
ピッツバーグ・スティーラーズがあんなに成功しているのはなぜか?
ピッツバーグ・パイレーツがああもダメなのはなぜか?

第4章 タイガー・ウッズも(みんなが思っているのとは違うところで)人の子
タイガー・ウッズもぼくらとまったく同じであり、ゴルフのプレーに関してさえたいして違わない

第5章 オフェンスを制する者も勝負を制す
オフェンスよりもディフェンスのほうが大事って本当なんだろうか?

第6章 数じゃない、価値で評価しろ
ドワイト・ハワードの232回のブロックショットは、ティム・ダンカンの149回のブロックショットよりも価値が低いのはなぜか?

第7章 抜け目のないGMは2割9分9厘のバッターを選ぶ
2割9分9厘のバッターが3割バッターよりもずっと希少なのは(それに、ひょっとすると価値が高いのは)なぜか?

第8章 ミスター・ルーニーありがとう
NFLの黒人ヘッドコーチの成績がいまだかつてない悪さなのはなぜか?そしてそれがいいことなのはなぜか?

第9章 楽しい我が家
「地元が有利なのはなぜか」の昔からある説明はどこまでつじつまがあっているんだろう

第10章 それじゃ、我が家が楽しいのは本当はどうしてなんだろう?
ヒント。ファンが騒ぐというのが重要な点だが、みんなが思っているのとは違う形で重要なのだ

第11章 「チーム(team)」の文字に「オレ(I)」はない
でも、mとeは入ってる

第12章 過大評価されるドラフト1位
マイク・マッコイはいかにしてNFLのドラフトを席巻したか

第13章 コイントスこそすべてを制す
NFLの延長戦に比べれば、アメリカン・アイドルなんてぜんぜん公平なのはなぜか?

第14章 なぜ、ステロイドに手を出してしまうのか?
ドミニカ人の野球選手が他に比べてステロイドを使ってる可能性が高いのはなぜか?
アメリカ人の選手がハッパを吸ってる可能性が高いのはなぜか?

第15章 プレーの前にタイムをかける作戦は本当にうまくいくんだろうか?
選手は凍らされると溶ける?

第16章 「絶好調」という神話
選手やチームは勢いの波に乗ったりできるのだろうか?あるいは、ぼくら(や彼ら)はそんな気になっているだけなのだろうか?

第17章 真っ赤なウソをつく統計データ
「ここ5回のうち4回」というのは、ほぼ間違いなくここ6回のうち4回であるのはなぜか?

第18章 シカゴ・カブスは呪われている?
違うというなら、なんでああも勝てない?

エピローグ


【関連記事】

【オススメ】『競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法』ジェフリー・マー(2012年05月04日)

すぐに使える『ヤバい統計学』テクニック7選(2011年03月05日)

【ヤバ経再び】『超ヤバい経済学』スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー(2010年09月27日)

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)


【編集後記】

◆今日の本に関連して。

競争優位で勝つ統計学 ーーわずかな差を大きな勝利に変える方法
競争優位で勝つ統計学 ーーわずかな差を大きな勝利に変える方法

今回は割愛しましたが、ツキの話等、一部内容的にかぶっているテーマがありました。

レビューは上記関連記事にてご覧ください。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く作者: トビアス・J・モスコウィッツ出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2012/06/08メディア: 単行本(ソフトカバー) サッカーでも野球でもホームチームが有利なのはなぜだろう? これについては、色々検証されてきた
スポーツファンなら必読:オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く【本読みの記録】at 2012年10月13日 22:36
この記事へのコメント
smoothさん、こんにちは!
私もこの本ちょうど昨日読み終えたところです( ´∀`)人(´∀` )ナカーマ
知っていると知らないとでは何となくソンをしそうな気がする、新しい発見がたくさんある本ですねー。
審判のボール、ストライクの判定を凝視してしまいそうです(笑)。
Posted by ニャロメ at 2012年07月03日 11:27
>ニャロメさん

おー!もうお読みでしたか。
昨日読み終えたとは、何たる偶然ワロタww
しかも記事としてはニャロメさんの方が先に書かれてましたよね。
サスガでございます。

いや、ホントこの本勉強になりましたよ〜。
ニャロメさん的には、「コーチのインセンティブは勝利ではなくて自分の職」、という所は微妙だと思いますが(汗)。

そうそう、私はサッカー好きなので、成分少な目なのが残念でしたが、ニャロメさんは野球ですから読みどころも多かったですよね。
部員さんにもぜひオススメをw
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2012年07月04日 06:06