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2012年06月07日

【スゴ本】『理系の子―高校生科学オリンピックの青春』ジュディ・ダットン


理系の子―高校生科学オリンピックの青春
理系の子―高校生科学オリンピックの青春


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「インテル国際学生サイエンスフェア」における高校生たちの苦闘ぶりを描いた1冊。

元々は「HONZ」の成毛眞さんのエントリーでその存在は知っていたものの、当ブログ的にはどうかな、と二の足を踏んでいました。

ところが、当ブログの読者である川田浩志先生が熱烈にプッシュされているのを拝見して、アマゾンアタック!

なるほど大変面白く、3月の時点で購入しなかったことを後悔した次第です。

さすが成毛さんが「2012年No.1の第1候補」と言われるだけのことはあるな、と。


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【所感などなど】

◆本書は、いつものように仕事や生活に役立つTIPSを抜き出すタイプの本ではないので、思う所をつらづらと。

まず、物語の舞台となる「インテル国際学生サイエンスフェア(ISEF)」について。
 ISEFは、サイエンス・フェアにおけるスーパーボウルだ。毎年、50ヵ国をくだらない国々から1500人以上の高校生が集まり、400万ドルをゆうに超える賞金と奨学金をめぐって戦いが繰り広げられる。いわば高校生による科学のオリンピックである。
ちなみに、全体を通じて1位、2位と順位づけをするのではなく、部門賞が設けられており、それぞれで順位がついて賞金がもらえる模様。

しかも、その賞金とは別に大学への奨学金が付されることもあり、高校生によっては「この大会に大学への夢をかける」ケースも散見されました。


◆というのも、参加する高校生は、必ずしも裕福な家庭出身ではないから。

冒頭の成毛さんの記事でも紹介されている、「暖房器具もないトレーラーハウスに一家6人で住むナヴァホ族の少年」ギャレットは、喘息の妹を救いたいがために、廃車が積まれたゴミ捨て場からラジエーターを持ってきて、太陽エネルギーを活用したヒーターを作り上げました。

少年矯正施設から参加したロイドは、この大会がなければ、大学へ行こうなどとは思わなかったはず。

馬による治療法「ホース・セラピー」を考え出したキャトリンも、父親の癌の治療費で家は借金を抱えており、やはりISEFで奨学金を得られないと、大学へは進学できない状態でした。


◆本書が感動的なのは、個々の研究内容もさることながら、こうしたそれぞれの高校生たちの「物語」を丹念に追っているから。

自らがハンセン病になったエリザベスは、周囲の偏見と闘いながら、原因となる「癩菌」が投薬でどのように滅菌されていくか調べました。

デュポンの社員が多く住む「企業城下町」出身のケリードラは、デュポンの垂れ流す化学物質を研究することで、近所や家族との軋轢をも生み出してしまいます。

彼女がデュポンに努める姉と出かけられるようになったのは、研究を始めてから2年も経ってからでした。

そう、私たちが本書に心動かされるのは、こうしたドラマに寄る部分が大きいのだと思います。


◆それにしても、このISEFを初めとする、米国の科学イベントの充実ぶりには圧倒されました。

ISEFはある意味「頂点」なのですが、そこに至るまでの地方の大会がいくつもあり、企業がスポンサーとなって協賛しているようです。

こうした地方大会でもそれなりの賞金や奨学金が出るのですから、それは子どもたちも研究しようと思いますわな。

加えて、ISEF参加者の「5人に1人」が特許を出願しているそうですから(高校生ですよ!?)、この分野で日本が追いつくのはまだまだ難しそうです。

本書では「第2のビル・ゲイツ」と呼ばれるフィリップが登場するのですが、彼の立ち上げた会社(新素材グラフェンを大量生産する会社)は、最初の5年間での総売り上げが1200万ドルにものぼるのだとか。


◆また、私は本書によって、「子育て」についても考えさせられました。

例えば、上記のフィリップは、ニュージャージー州プリンストンで普通の教育環境にあったのが、9・11をきっかけに両親がド田舎に移住することを決意したため、まともな学校に行けなくなります。

結局彼とその弟妹は、母親との「自宅学習」にてその才能を伸ばしていくことになるのですが、こうした環境とフィリップの「成功」には関係があったはず。

ちなみにフィリップの母親が、プリンストン時代に近所の"教育ママ"から「クモン」を勧められて教室を見学に行ったものの、ネガティブな印象を受けるシーンもあり、子供二人を「公●」に通わせているsmooth涙目の巻。

まー、確かに自由研究とは、真逆ではあるんですけどね。


◆本書では、第11章まで各々の高校生たちについて描写し、いよいよ第12章からISEF2009の本大会の模様が。

家族や周囲の期待や、自らの運命(「大学に進学できるか否か」等)を背負った少年少女たちが、ネヴァダ州リーノーのスパークス・コンヴェンションセンターに集まってきます。

ブースを設置し、審査員たちにアピールをしたり、質問に回答したり。

ブース訪問が終わると、今度は100人もの審査員たちが、120の研究について意見を出し合って審査します。

そしていよいよ結果発表……については、本書の第13章にてご確認アレ。


読みだしたら途中で止められない面白さでした!

理系の子―高校生科学オリンピックの青春
理系の子―高校生科学オリンピックの青春
序章 これがサイエンス・フェアだ
1.核にとり憑かれた少年
2.ゴミ捨て場の天才
3.わたしがハンセン病に?
4.鉄格子の向こうの星
5.ホース・セラピー
6.デュポン社に挑戦した少女
7.もはやこれまで
8.手袋ボーイ
9.イライザと蜂
10.ロリーナの声に耳を傾けて
11.第二のビル・ゲイツ
12.世界最大のサイエンス・フェア
13.そして、優勝は…
終章 祭りの終わり
特別寄稿 サイエンス・フェアが教えてくれたこと


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【編集後記】

◆そんな日本の「科学」の未来を考える1冊。

科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか (新潮選書)
科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか (新潮選書)

こちらも当ブログでご紹介するのは難しいのですが、面白そうです。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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この記事へのコメント
このブログでご紹介してくださったとは!!

たいへん嬉しいです(著者ではありませんが 笑)。

多くの人に感激を共有していただきたいです。

それにしても、日本も、
こういう科学者が育成される環境が
もっと整うとよいな〜と思います。
Posted by 川田浩志 at 2012年06月07日 11:14
>川田先生

コメントありがとうございます。
こちらこそ、先生がこの本プッシュして下さらなかったら、多分読まずにいたと思いますので、本当に感謝しております。

おっしゃる通り、米国に比べると現在の日本は、必ずしも科学者育成に適した環境ではないですが、こういう本が出ることで、人々の意識が変わっていくとよいですね!

今後ともよろしくお願いします!

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2012年06月08日 06:53