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2011年09月03日

【理系思考】『サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話』山口芳生


サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話
サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、ご存知カジュアル・イタリアンのサイゼリヤについて、「第三者的な目から」迫った1冊。

先日ご紹介した『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』が、創業者で会長の正垣泰彦さんの手によるものであるのに対し、本書は『月刊食堂』誌上で連載された「サイゼリヤ革命」を担当した山口芳生さんが、正垣会長だけでなく、その周囲の方からも話を聞いて書き上げたものとなっています。

その分、多角的にサイゼリヤが分析されていて、読みどころも多々。

思わず付箋も貼りまくりました!


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【ポイント】

■1.低価格路線への批判に対する反論
「そんなの楽したいから言っているだけ。心を込めて作ってるから高くていいなんて、お客さんは思っていないもの。お客さんに一番よくわかるのは価格であり、安いというのは本当に大切なこと。世界中のビジネスを見ても、みんな安くていいものという方向に向かっているじゃない。食べもの屋だけが例外なんてありえない。だから僕は、『安いものは嫌だ』と本当にお客さんが言うんだったら、このビジネスやめるよ。そんな楽な商売、つまらないもの。むずかしいからこそ面白いんじゃないか」


■2.素材へのこだわりとは、すべてを責任を持ってコントロールすること
 サイゼリヤの素材に対するこだわりは、ブランドに対するこだわりではない。ごはんであれば、炊き上がりの原理を調べ、おいしいものをバラつきのない状態で提供するにはどうすればいいかを突き詰めていけば、炊飯器の種類やコメの種類は決まってくるし、炊飯1回あたりの米粒量まで管理する必要があることがわかってくる。つまり、生産からお客に提供するところまで、すべてを責任持ってコントロールすることが、サイゼリヤのおいしさに対するこだわりなのである。


■3.直輸入での原価低減
 それれまで商社経由で仕入れていたスパゲティの上代はキロ270円だったが、直輸入に切り替えると同130円と半額以下になった。日本で高級食材と言われているものも現地では、それほど高いものではなく、商社がいかに高い粗利を得ていたかが浮き彫りになった。こういうからくりを読み解いていくことも、長岡が開発輸入に熱心に取り組む一因となったのだろう。


■4.コンテナの形式にまで気を遣う理由
 さらに輸人には、高級ワインと同じくリーファー・コンテナ、つまり温度管理可能なコンテナを使う。その理由を長岡は『フードピズ』に連載された「透視図の中のワイン」でこんなふうに説明する。
「最初の1年はドライ・コンテナでしたが、その後、リーファーに切り替えました。日本の低価格帯イタリアワインがまずい理由は、流通の管理にあります。安いワインはフレッシュであるほど旨いのですから、劣化しないようリーファーで運ぶべきなんです」(フードビズ46号/'10年)


■5.生産性で牛の品種を決定する
 試験的に導人した牛の品種を決めたのも、実は生産性が物差しになっている。自社で畜産を行なう場合、価格が安くて品質の良い飼料は牧草という結論になったが、牧草を刈り集め、餌として与えるのでは人時がかかってしまう。だったら、家畜が自分で牧草を食べてくれる放牧が一番生産性が高くなる。放牧に適した品種は何かということで、日本短角牛とジャージー牛に決定したのである。


■6.千葉大を中心に理系の人材を採用する理由
「科学的思考能力のある人間を採用するのは、ひとつには彼らの能力の高さゆえ、ポカを起こす確率が少なくなる、つまり生産性が高くなるからなのだが、もうひとつには、彼らが通常のオペレーション上で改善すべき点を発見した場合、それを数字に置き換えることができるという点が大きい。数字に置き換えるとは、標準化ができるということ。明確な指標が数字としてあれば、数値の変動により問題点の発見なども容易になり、改善の効果も明らかになる」


■7.ショッピングセンター(SC)で他店従業員に歓迎されるサイゼリヤ
 売上げが何倍にもなる大きな理由は、SCの従業員が歓迎するからだ。SCの外食テナントは基本的に、来街するお客の飲食ならびに休息のための施設という位置付けである。価格もそれなりで、SCで働く人たちが毎日、利用できる額ではない。しかし、サイゼリヤの価格帯なら社員食堂代わりに利用できるのだ。(中略)
 日本のSCは基本的に大商圏型なので、来街は週末に集中する。したがって週末はいいが、平日は大苦戦というのがSC内飲食店の常である。だが、サイゼリヤの場合は、SC内従業員の需要という基礎票があるので、平日も安定した売上げを確保できる。以前の店舗の何倍も売れるのは当然なのだ。


【感想】

◆以前、正垣さんのご本の記事で書いたように、正垣さん自身のご本を待ちわびていた私にとって、『おいしいから売れるのではない〜』は、まさに「待望の1冊」でした。

本書は、その本からわずか1か月あまりで出たワケですから、「それほど期待はしていなかった」、というのが正直なところ。

特に、私の苦手な「ネタかぶり」が心配でした。

ところが予想以上にネタがかぶっておらず、その点でまずは「合格」。

さすが、「サイゼリヤの取材回数が外食記者の中では断トツ」という山口さんだけのことはあります。


◆特に、『おいしいから売れるのではない〜』と比べて掘り下げられているのが、正垣さん以外の方に対する取材による部分。

上記ポイントの4番目にもあるような、社員の方のお話も多数収録されていますし、他にも現在のサイゼリヤを支える主力メンバーが登場する点も見逃せないところかと。

また、正垣さんのお母さんという方がスゴくて、サイゼリヤ1号店が火事で全焼した際には、大学生だった正垣さんに「よかったね」と一言。
「せっかく火事が起こったのに、やめるなんてもったいない。いいかい、苦労や問題というのは、自分を成長させるためい起きているんだから、正面から受け止めなさい。火事で店がなくなるなんて、最高じゃないの」
この1号店は、客も入らず、従業員にまともに給料を払うこともできない状態だったので「やめられて良かったね」という意味かと思ったら全然違いましたw

そう言われて納得し、その後同じ場所で店を続ける正垣さんもスゴイと思いますが。


◆ただ、今や死角のないように見えるサイゼリヤですが、過去何度か挑戦したものの、未だ成功していないのがファストフードサービス(FFS)です。

まず05年8月には、東京都北区十条駅近くに、実験第1号店『イート・ラン』をオープン。

さらに同年11月には、埼玉県ふじみ野市にスパゲティとタコスのファストカジュアル業態の実験店『スパQ&タコQ』を開店し、その発展形である『サイゼリヤ・エクスプレス』も一時期は4店舗まで増えました、結果的には多摩店1店舗のみを残して、FFSはすべて撤退しています。

提供されている商品の素材やそのオペレーション、さらに価格も問題がなさそうに思えるのですが、なぜ成功できなかったのか(詳細は本書を)。

サイゼリヤの掲げる'15年の1000店舗体制を考える上では、FFSの成功は必須なので、今後の展開に注目したいところです。


◆本書は、その参考資料が、業界誌中心であることからも分かるように、やや専門的な部分があることは否定できません。

ただ、サイゼリヤの経営方針やその理念を知る上では、見逃せない仕上がりになっているのも事実です。

個人的には、相変わらず週に1度は訪れているサイゼリヤに対して、さらに興味が増してきました。

イタリアでも実現できない399円という価格で提供されている「イタリア人も絶賛するプロシュート(パルマ産塾成生ハム)」を、今度こそ食べてみなくては。


安くて良いものを提供できる秘密がここに!

サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話
サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話
◆原理原則第1章 サイゼリヤは安い!! 
第2章 味と品質
第3章 安さとおいしさ
◆科学する脳 
第4章 バーチカルMDとは!? 
第5章 経営理念と哲学 
第6章 サイゼリヤ誕生 
◆飛躍へのステップ 
第7章 人間・正垣泰彦の魅力
第8章 成長の軌跡
第9章 海外戦略と試行錯誤のFFS


【関連記事】

【スゴ本】『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦(2011年07月24日)

【意外な発見】40代の自分が「16歳の教科書2」を読んでみますた(2009年09月08日)

【スゴ本】『トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる』宇野隆史(2011年05月12日)

【オススメ!】「外食の天才が教える発想の魔術」フィル・ロマーノ(2008年03月20日)

「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)


【編集後記】

◆今日ご紹介した本とは全く畑違いなんですが。

別冊サイゾー FAVORITE 2011年 10月号 [雑誌]
別冊サイゾー FAVORITE 2011年 10月号 [雑誌]

月刊『サイゾー』の別冊なんですが、どうもモテネタが含まれている模様。


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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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この記事へのコメント
初めてコメントさせて頂きます。
守男と申します。
サイゼリヤは、自分もチョクチョク利用させて頂いてるので、興味深々です。
サイゼイリヤがFFSを、ターゲットにしていたとは・・・俺も情報不足す。教えて頂き有難うございます。

他の記事も拝読させて頂きました。(全記事を読んでおらず申し訳ないです)
ビジネスや勉強法に、モテるための本も投稿されているのが、魅力的ですね。

Posted by 守男 at 2011年09月03日 19:49
サイゼリアの社長は、戦後の食品消費量を調査して、トマトの消費が年々上昇していることを発見し、イタリアンにターゲットを絞ったそうですが、文中の「彼らが通常のオペレーション上で改善すべき点を発見した場合、それを数字に置き換えることができるという点が大きい」という部分も数字を用いた経営の大切さを表している部分であり参考になりました。以前私の勤めていた会社の社長が「数字を用いない経営をテキトーな経営という」と言っていましたが、思いっきり納得してしまいました。
Posted by 岩波貴士 at 2011年09月04日 00:19
>守男さん

初めまして、コメントありがとうございます。
サイゼリヤのFFSについては、未だ「コレ」といった正解手が見いだせていないようです。
そもそも私も、FFSをやっていたことさえ知りませんでした。

他の記事もご覧頂き感謝です。
すでに3000記事弱あるので、全部読むのはは自分でもムリですし、お気になさらず。

今後ともよろしくお願いします。

>岩波貴士さん

おっしゃるように、サイゼリヤの正垣さんは、バリバリの数字志向で、本書でもその経営方針や考え方がよく表されていました。
元々は、1号店時に自分がホールに立ってないときの料理のクオリティが低すぎたため、「標準化」しようとされたからのようですが。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年09月04日 01:36