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2011年08月16日

【リーダー論】『これからのリーダーに知っておいてほしいこと』中村邦夫


これからのリーダーに知っておいてほしいこと
これからのリーダーに知っておいてほしいこと


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、パナソニック株式会社代表取締役会長である中村邦夫さんの経営本。

ドラッカリアンの一人として知られ、実力・実績がありながらも、中村さんには「自分に一人に焦点が当てられて、自慢と受け止められるような話を本にしない」という信念がおありでした。

しかし、「先行きが見通しにくいいま、若いリーダー層に向けて松下幸之助の経営哲学について参考になる話をしてほしい」との要請が松下政経塾とPHP研究所から中村氏にあり、「最初で最後」との約束でロングインタビューを了承。

そのインタビューを元に、編集サイドからの質問と、それに応じる中村氏の回答、さらに松下幸之助氏の著作からの抜粋というスタイルに再構成したのが本書になります。

ただ本書は、「旧来の幸之助神話を壊した男」と言われる中村氏の肉声に接することができる、という点だけでも読む価値があるのではないか、と。


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【ポイント】

■1.組織はトップの人格・度量以上にはならない
組織というのは、そのトップの人格・度量以上にはならないということも忘れないでほしい。社長の度量以上に会社は大きくなるということはない。それはどのような組織においてもそうです。ゆえに、会社を大きくしよう、あるいは品格の高い会社にしようと思うのなら、社長がそうならないといけない。リーダーである自分の組織を立派なものにしようというのなら、そのリーダーである自分が立派な人物にならないといけない。僕はそう思うのです。ですから、厳しい状況にあるときも、"逆境にある"などと考えて悩み込んでしまわずに、まずは自分の人格を鍛える、度量を大きくするための絶好の機会だと思って、前向きに取り組んでほしいと思いますね。


■2.撤退する能力こそが経営者の資質の中で一番重要なもの
経営者にとって事業を撤退する、退くということは、始めることよりも難しいことなのです。撤退するには、始めるとき以上に、勇気や信念が要るのです。しかも摩擦を恐れないことが必要になりますから、誰もが平然とやれるものではない。だからこそ、退くことができるという能力が、経営者には不可欠なのだと思います。
 さらにいえば、経営者が決断できないために、時代遅れになった事業をいつまでも引っ張っているようでは、会社はやはり潰れます。そういう点からしても、この撤退する能力というものは、経営者の資質で一番重要なものだと思います。


■3.決断も早ければ早いほど良い
時間に関して1ついえることは、経営者というものは決断をするために存在しており、いい決断、正しい決断をしたいからといって、時間を費やしているようではいけないということです。それでは、事態が余計に悪化することもありうる。適宜適切に決断をしていく、いやむしろ早ければ早いほどいいわけです。
 それでもやはり、"これでいいのか"と迷うことが多々あることでしょう。しかし最後には"えいや!"で決断するしかないのです。経営者は、結局は自分で納得せざるを得ないのです。


■4.厳しいお客様や取引先の会社から逃げない
 商売人の会社であるパナソニックにとって、お客様第一を実現するには、"お客様の顔がいつも見えている"ことが必要になります。では、そのためになにをすればいいかというと、まず厳しいお客様や取引先の会社さんから逃げないことだと思っています。
 そういう人からは、会うたびに叱られ、助言をいただきます。しかし、あたりまえのことですが、その厳しさから逃げてしまうようではいけないのです。(中略)

 お客様や取引先からクレームがあったら、まずは自分が行く。そういうことから、お客様の顔が見えてくるのだと思います。


■5.「ガラス張り経営」を目指す
 松下幸之助創業者の事跡を見ていてほんとうに驚くのは、大正7(1918)年に創業されて間もない時期、月次の売上げや利益を従業員に発表されていたということです。企業は「社会の公器」であると言われ、それを実践していく、有言実行していくことを、創業間もない頃からやっておられた。大正年間にそういう企業経営者が他にいたのだろうかと、僕は思ったのです。さらにいえば、当時の中小企業経営者に、そういう公心(おおやけごころ)が果たしてあったでしょうか。23歳で事業を起こされて、普通そういうことができるものですかね。
 いまの中小企業経営者の方々が、創業者から第一に学ぶとしたら、その行動面なのではないでしようか。


■6.あらゆるリーダーは想定外のことを意識しておくことが必要
 今度の防潮堤も、想定外の高さの津波が来ても越えないという前提があったとは思いますが、しかしそもそも想定外のことに処してこそ、それを考えてこそ、行政の責任者といえるのではないでしょうか。
 それは企業経営も同じであり、あらゆるリーダーは想定外のことを意識しておくことが必要なのです。おそらく創業者なら、部下が10メーターでいいという報告に来たら、「いや、そんなことない。20メーターから30メーターのものをつくれ」と言われたかもしれません。安全に対して、カネをケチるようではいけないのです。


【感想】

◆引用部分がちょっと多かったのでこの辺で。

もっとも、ガッツリ引用しときながら、実は結構重要な部分も割愛しております。

たとえば、松下幸之助氏の逸話の中でも有名な「熱海会談」

一地区一販売会社にするとなると、交渉は大阪が一番厳しくなることはわかっていたのに、創業者自らが営業本部長代行になり、あえてその大阪地区を担当したのだそう。

そしてそこから「まずは困難なところからやる」という教訓を中村氏は得て、それがその後の自身による「創造的破壊」へとつながっていきます(詳細は本書を)。


◆また、中村氏が行ったいくつかの「改革」の裏には、他の経営者の方からのアドバイスがあった模様。

特にキヤノンの御手洗冨士夫氏は、中村氏曰く「経営の先生」だそうです。

「セル生産」を決断したのも、御手洗氏による「なに? 中村さん、あんたんとこ、セル生産やってないの? それはダメだわ」という一言があったからなのだとか。

中村氏のこの辺の柔軟性は素晴らしく、「トヨタの社内資料にはカラーコピーは使われない」と聞いた翌日の会議から、白黒コピーに徹底させています。

……変わらなきゃいけないときでも変われない、多くの「リーダー」達に見習って頂きたいところw


◆なお、本書内では、中村氏が節目節目で影響を受けた本が紹介されており、そちらも見逃せません。

小説 上杉鷹山 全一冊 (集英社文庫)
小説 上杉鷹山 全一冊 (集英社文庫)

⇒中村氏が販売会社に社長として出向した際に、その強引なやり方に心配した上司に、読むことを勧められた本。


落ちこぼれタケダを変える (日経ビジネス人文庫)
落ちこぼれタケダを変える (日経ビジネス人文庫)

⇒単行本発売当時には、役員用に購入して全員に配り感想文を書いてもらったそう。


叱り叱られの記 (エスカルゴ・ブックス)
叱り叱られの記 (エスカルゴ・ブックス)

⇒これは影響を受けたというより、中村氏と違って、松下幸之助氏から「直接叱られた」三洋電気OBの本(マーケットプレイスでも高値なのが残念)。

上2冊は、マーケットプレイスでお手頃価格で入手できますので、興味のある方は是非。


◆本書はタイトルに「リーダー」と入っていますが、ここには「経営者」だけが入るわけではありません。

あらゆる組織には「リーダー」がおり、それは小さな「課」から、大きな「国」まで同様です。

ポイントの最後で挙げたように、「想定外」に対処しきれなかった国も問題ですが、私たちは自分の所属する組織において、優れたリーダーを目指すべきかと。

そのためにも、本書の教えを再度よく読んで、日々実践につなげたいと思います……って私は自営なんで一人ぼっちですがw


こんな「国難」の時だからこそ読んでおきたい1冊!

これからのリーダーに知っておいてほしいこと
これからのリーダーに知っておいてほしいこと
序にかえて――これからのリーダーに知っておいてほしいこと
第一部 より楽しく仕事をするために
第二部 よく学び、よく考え、よく伝えるために
筆三部 "日に新た"であり続けるために
おわりに 国難と対峙するこれからのリーダーたちへ


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【編集後記】

◆こちらは中村氏が書かれたわけではなくて、中村氏「を」描いたご本。

中村邦夫―「幸之助神話」を壊した男 (日経ビジネス人文庫)
中村邦夫―「幸之助神話」を壊した男 (日経ビジネス人文庫)

なかなか面白そうですね。


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