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2011年05月31日

【スゴ本】『プロフェッショナルコンサルティング』波頭 亮,冨山和彦


プロフェッショナルコンサルティング
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【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、日本が誇るトップコンサルタントである波頭 亮さん冨山和彦さんの対談本。

日本企業の問題点から、若手コンサルタントへの提言等、極めて濃いお話が、これでもかと詰め込まれていました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
戦略系コンサルタントの第1人者・波頭亮氏と、企業再生の実践派コンサルタント・冨山和彦氏が、コンサルティングの心髄を解き明かす! カネボウ
再生の決め手となったたった1行のソリューション、NTTドコモと東京デジタルホンのケーススタディ、などこの2人だから話せる経営のリアルが語り尽くされた対談。
思わず付箋も貼りまくり。

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【ポイント】

■1.日本人は頑張り方が足りなかった
波頭 少しマクロで言うと、95年頃は、日本のGDPは世界の15%〜16%あった。それが今や8〜8.5%ぐらい。半分ですよ。それだけ日本のプレゼンスが落ちたということ。円べースで見て95年以降はGDPが増えていないでしょう。

富山 まったく増えていないです。

波頭 日本人は頑張ってきたように思っているかもしれないけど、世界の標準と比ぺると、やっぱり頑張り方が足りなかった、ということです。80年代のバブルの宴を経た後は、日本はマクロ的には合理的なことがやれていなかったし、ミクロ的には十分に頑張っていなかったと言わざるを得ないと思います。


■2.難しさを増す組織の意思決定
冨山 特にリーマンショック以降、顕著なのは、「意思決定の力×実行の力=経営の力」、という構図がはっきりしたことですよね。しかも、実行という横軸も難しいけれど、実は意思決定という縦軸も難しくなっている。意思決定は本当に難しくなってきている。(中略)

 だから今、日本の企業で比較的うまくいっている会社って、かなリワンマンに近い意思決定メカニズムを持っている会社が多いんです。集団型の意思決定を手続き上、踏まないといけない会社は、意思決定にかかる人数が増えれば増えるほど内容も丸くなって拙劣になるしスピードも遅くなる。だから遅くて拙劣な、最悪な意思決定になる。


■3.しがらみを断つことの難しさ
波頭 冨山さんは産業再生機構で小泉(純一郎)さんと一緒に仕事をされてましたのでよくご存知でしょうが、小泉さんがどうしてあれだけの非連続的な政策をできたのかというと、政治家になって以来一切のしがらみを持たないことを強く意識していたからだと言われていますよね。大臣時代ですらも、昼飯も晩飯も1人で食べていたそうですからね。

冨山 お中元は全部、返してきますしね。

波頭 総理大臣になったときにしがらみを持たないために、という理由で若い頃から1人で食事をしているというのはすごい政治家ですね。凄みを感じます。

冨山 でも、最後の最後に一番しがらむのは、やっぱり、社長になるときの経緯なんです。決定的しがらみはそこで生まれる。「誰のおかげで、おまえ、社長になれたんだ」ということになる(笑)。それは絶対なるんですよ。それが権力者のリアリティなんです。


■4.MBAで学べることはコンサルタントで必要な能力の1/10
波頭 私はマッキンゼーではコンサルタントの教育担当もしていたのですが、そのときに伝えていたことがあります。それは、ビジネススクールで学んできた知識はもちろん有用だけれど、マッキンゼーのコンサルタントとして必要とされるノウハウの10分の1ぐらいだと心得ておくべきだということです。だから、残り9割をどうやって身につけていくかが、みなさんがコンサルタントとしてどれだけ成長し、どこまで成功できるかどうかを決める、と。ビジネススクールで、寝ないで必死に勉強してきたのに、「エー!まだ10倍要るの?」という声が来ましたね(笑)。でも、10倍は大げさかもしれないですが、ビジネススクール程度のもので企業の経営ができるんだったら、それは楽過ぎます。
 そこの奥の深さとか広がりに対して、やっぱり若いコンサルタントが謙虚に、必死で勉強しようとするスタイルが、まず必要ですよね。


■5.業界誌2年分を読み込めば業界の仕組みと構造が見えてくる
波頭 すごく具体的な話でいうと、どの業界でも業界新聞とか業界誌ってありますよね。私がよくやっていたのは、2年分を読むことでした。新しいクライアントが決まると。月刊誌2年分、24冊。1ぺージ目から最終ぺージまで全部読む。

冨山 やりましたね。

波頭 そうするとね、ターミノロジー(専門用語)だったり、業界の基礎的な仕組みだったりについてだいたいの基礎知識ができる。業界誌って1年間の間にはだいたいの重要なテーマを取り上げるから、一通りのことがわかってくる。


■6.経営者に論理的思考が必要な理由
冨山 経営者にしても、なんとなく直感でやってきて、当たっているうちはいいんですけど、外れてきたときが問題なんです。だから「漫然とだが俺はこう思うんだ」ということを、自分自身の中である種のメカニックスとして整理しておくことが重要になる。(中略)
逆に因果律があれば、そのメカニックスに照らして「どうも前提の事実、環境状況が変わっているようだ」とか「むしろ因果の後ろのほうに設定していたメカニズムの仮説がずれているのかもしれない」といった修正がきく。これができずに漫然とやっていると漫然と失敗し続ける。そのときは「仮説なき戦い」に戻ってしまう。だから経営者も組織の人たちも、論理的思考はやっておいたほうがいい。


■7.カネボウ再生のソリューションはたったの1行
波頭 冨山さんがやられたカネボウ化粧品のケースでは、最終的なソリューションって、たった1行だったと聞いています。再生への最初の一歩の大きな打ち手としては。「社長を●●●●●●らせる」(注:ネタバレ自重)。それだけ。これは本当にすばらしい。感動しました。
 しかも、その1点がカネボウ復活のピンポイントであり、これを実現できるかどうかが正念場だったから、資本のカを使ってでも譲らないで踏み込むぞ、とトップに迫ったわけでしょう。まさにその1点に狙いを絞って。(中略)

冨山 自分なりには論理的なんです(笑)。「なぜ」「なぜ」を突き詰めてって、出てきた結論でしたから。


【感想】

◆最後の部分のネタバレについては、申し訳ございません。

アマゾンの内容紹介でも「たった1行」としか書かれてませんし、それが知りたくて書店で手に取る人もいることを考えると、ここで書くわけにはいかないな、と。

実際、波頭さんが激賞されているように、このソリューションの凄みは、「コンサルタントだからこそ分かる」部分もあるのかもしれません。

今回は割愛していますが、その結論に至るまでには、当然多くの議論や仮説があったそう。

さらには前のトップにも「冨山さん、ウチの会社を知らないんだ」と言われたとか。

それを「わかってて言ってるんですよ」と反論して、そのための策を用意する。

まさに「トップコンサルタント」たるゆえんです。


◆ちなみに、俗に言う「ビジネス系コンサルタント」は、日本におよそ3万人いて、そのうち、一流企業の管理職と対等にビジネスの話ができて、有効なアドバイスができるのは、その1割の3000人くらいだそう。

そのうち、一流企業の経営やオペレーションに対して有効なレポートが書けるのが、300人くらい。

さらに、大企業のトップ級から相談を受けるだけの経験や実績がある人は、30人くらいに過ぎないのだとか。

本書のお二人は、この30人に当然含まれるワケですが、上記ポイントにもあるように、マッキンゼーのコンサルタントであるためだけでも、MBAで学ぶことの10倍必要らしいですから、どんだけ勉強されてきたのやら。

そこまでいかなくとも、「300人レベル」に入るためには、「3ヶ月に1個ずつマスター(修士号)を取るぐらいの気持ちがほしい」と波頭さんは言われてます。

この辺のスキルアップのお話については、第3章の「プロフェッショナルコンサルタントへの道」に詳しいので、気になる方は要チェックで。


◆一方、ケーススタディとして面白かったのが、第5章の「東京デジタルホンvs.NTTドコモ」。

東京デジタルホンとは、今のソフトバンクモバイルであり、その前のボーダーフォン、さらに遡ればJフォンのことです。

実はこの立ち上げ時に、冨山さんが当時いた会社(コーポレート・ディレクション)が成長戦略のコンサルティングを担当。

最終的にボーダーフォンに買収されるまでの、一連の経営施策を立案されたのだそう。

当時としては斬新な考えである「女性をターゲットとする」ことや、社名変更、料金体系、プロモーション戦略等々の陰には冨山さんがいらっしゃったとは。

ただし、唯一冨山さんが悔やまれていたのが、インターネット接続において、ドコモが予想以上に早く手を打って来たこと(「iモード」)。

しかも、当時のドコモ陣営には、なんと波頭さんがいらっしゃったのだとか!?


◆今まで対談本というと、異なる業界やキャラが立ちまくった同士の組み合わせであることが結構多いと思うのですが、本書は完全に同じ業界の、しかも同じトップクラスのレイヤーにいる者同士の対談だけあって、話の展開が早く、密度も濃かったです。

その分、専門用語もバシバシ飛び交うものの、キチンと注釈で対応済みw

これからコンサルタントを目指す方、コンサル業界に興味のある方なら、まさに「必読」の内容かと。

また、経営に行き詰まりを感じている管理職・経営者の方も、本書から得られることは多いと思います。


これはオススメせざるを得ませぬ!

プロフェッショナルコンサルティング
プロフェッショナルコンサルティング
序 章 エグゼキューション・ケーパビリティの時代
第1章 日本企業が変革できない本当の理由
第2章 トップマネジメント・コンサルティングとは何か?
第3章 プロフェッショナルコンサルタントへの道
第4章 本物の論理的思考力を身につける
第5章 東京デジタルホンvs.NTTドコモ
第6章 世界で勝つための日本の戦略
第7章 「ファクト」「論理」「情理」がすべて
第8章 経営の諸問題はたった1つの施策で解決できる


【関連記事】

【復活!】『挫折力 一流になれる50の思考・行動術』冨山和彦(2011年01月25日)

【幕藩体制崩壊?】「指一本の執念が勝負を決める」冨山和彦(2007年07月11日)

「プロフェッショナル原論」波頭 亮(2006年12月15日)

【就活】「就活の法則」波頭 亮(2008年06月21日)

【仕事術】『仕事のアマ 仕事のプロ──頭ひとつ抜け出す人の思考法』長谷川和廣(2010年12月03日)


【編集後記】

◆ちょっと気になる1冊。

感動の条件 [DVD付]
感動の条件 [DVD付]

斎藤一人さんご推薦のDVD付書籍です。

DVDは90分の講演会を収録したものらしいので、これだけでも元が取れそうな気がw


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この記事へのコメント
               
ご紹介、ありがとうございます! 本書の編集担当、東洋経済新報社の齋藤と申します。 対談本は初めての編集なのですが、できるだけお二方のテンポのよい会話のライブ感を残しつつ、なおかつ、ただ刺激的なトークを読んで終わりにならによう、読者に多くのことを収穫して貰えるよう腐心した一作でもあります。(某大手フラッグキャリアの話などもあったのですが危険すぎるので泣く泣く割愛。この辺の判断も苦労しました・・・)。
 タイトルだけで判断するとコンサルタント以外の方は手にとりづらいかもしれないので、こういう場でご紹介いただけること、誠に感謝しております。ありがとうございました。

PS
カネボウの「1行」のソリューションも伏せ字にしてご配慮いただき、ありがとうございます(笑)。
Posted by 齋藤 at 2011年05月31日 09:44
               
>齋藤さん

はじめまして、コメントありがとうございます。
ご本、著者が突出した力をお持ちのお二人の対談だけあって、非常に濃厚でした。
某大手フラッグキャリアのお話も、できたらお伺いしたい位w
お忙しいお二人ですから、講演会は難しいでしょうけど、オフレコ等で聞いてみたいですね〜(笑)。

そして、確かにタイトル的にはコンサル業界に興味がない方には手に取りにくいかもしれませんね。
この辺は、あざといタイトルをつけない東洋経済さんらしいな、と(笑)。
ただ、明日5月の売上ランキングを記事にするのですが、当ブログではしっかりお買い上げ頂いております。

最後の伏せ字については、自分が編集者だったら、さすがにバラして欲しくない内容でしたので自重した次第です(笑)。

今後ともよろしくお願い申し上げます。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年06月01日 05:07