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2011年04月04日

【出版関係者必読?】『出版大崩壊 電子書籍の罠』山田 順


出版大崩壊 (文春新書)
出版大崩壊 (文春新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今年のブレイクが期待される「電子書籍」について、鋭く掘り下げた1冊。

未読本の記事で取り上げて、自分で買っておきながら、たぬきち氏に先を越されてしまいました。

アマゾンの内容紹介から。
大手出版社に34年間勤め、電子出版に身を投じた編集者が、自らの体験を基に既成メディアの希望的観測を打ち砕く衝撃レポート。
帯にある『某大手出版社が出版中止した「禁断の書」』というのが、まんざらでもない、ショッキングな内容でした。


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【ポイント】

■1.活かされなかった過去の教訓
 私は、日本の電子書籍専用端末が壊滅した後、ソニーの人間から「独自技術を使うより、たとえば、すでに普及しているAdobe Readerでも読めるAdobe eBook形式などを使うほうがよほどよかった」という後日談を聞いたことがある。
 日本でこの先、電子書籍リーダーによる電子書籍市場が形成されるとしたら、タイトルをそろえ、消費者の利便性を増す。このことに尽きる。ところが、2010年12月に発売されたシャープの「GALAPAGOS」(ガラパゴス)も、アメリカから逆上陸となったソニーの「ソニーリーダー」にも、この教訓が活かされていなかった。


■2.読者のことを考えなくなった本の販売
 出版社の販売部と販促部の主な仕事は、平台と棚の確保である。そのためにはブツ(本)が多くなければならない。そこで、「〇〇は今度5周年ですから、5周年フェアをやりましょう」などという発想が生まれる。(中略)

 しかし、たとえば、「××ブックス」が何周年を迎えたからといって、読者の日常とはなんの関係もない。いったい誰がそのことで本を買うだろうか?


■3.出版プロデューサー杉森昌武氏の考える電子書籍で売れるコンテンツ
「もし、一般書籍や文芸ものをやるなら、それは絶対に売れないと断言できる。少なくとも、『Kindle』や『iPad』がそれこそ1000万台売れないと、そんな市場はできっこない」
「それなら、マンガならいいの?」
「いや、それも違う。ケータイマンガは別として、PCや『Kindle』『iPad』でマンガを読むわけがない。なぜって、ケータイで売れているマンガの多くはエロ系、それもBLTLものばかりだからね」


■4.紙版と比べたら売上は数十分の1
 低迷する出版界のなかで著作を次々にヒットさせてきた池上彰氏は、いまや出版界の救世主とされるが、電子版では並の作家だ。『伝える力』の電子版は2万ダウンロードそこそこで、「紙で100万部を突破しているのに、これでは……。もし、電子版だけだったら、とても商売にならない」
 と関係者は嘆く。


■5.現状でビジネスになるのは、IT側だけ
電子書籍元年を通して、私は横川君のような人間に何人か出会った。彼らは電子出版というビジネスがいかに将来性があるかを語り、ネットビジネスでは先行者利益がいちばん大事なので、早く参戦すべきだと説くのである。
 このことを振り返っていま思うのは、現状の電子出版でビジネスになるのは、IT側だけだということだ。コンテンツ提供側は多大な出費を覚悟して、彼らが用意したスキームに乗って走り出す。しかし、走ってみて気がつくのは、話が違うということである。


■6.セルフパブリッシングの成功者に見る実態
このマクエスチョンさんにしても、インタビューでこう言っている。
「(私の本が売れたのは)1.99ドルという値段。アイキャッチする表紙。女性をターゲットにしたロマンチックコメディというライトなコンテンツだったから。それに、自分で書籍系のブログに頻繁に書き込みをしたからでしょう」
 つまり、値段を安くし、コンテンツの内容をわかりやすくしたうえ、自ら積極的に宣伝しなければ売れないのである。
 

■7.紙版より徐々に安い値付けになる
 電子書籍も、いまは紙の定価に沿って値決めをしているが、いずれは100〜300円の範囲に価格は落ち着くだろう。実際、ある購入者アンケートでは、購入者の7割が300円を超えると買わなくなる傾向が明らかになっている。


【感想】

◆何やら景気の悪い話ばかりになってしまいましたが、本書はほぼ全編このようなテイスト。

本書の「はじめに」によれば、そもそも本書は電子化を積極的に進める出版社から発売される予定だったものが、その内容ゆえに途中で中止となり、最終的に文芸春秋社から出版されることになったのだとか。

というと、著者の山田さんも、ガチガチの「反・電子化」の人のように思われるかも知れませんが、実はむしろ「推進派」であり、しかもご自身でビジネスまで手がけられた(そして失敗した)経験まである方です(その顛末については、本書の第9章をお読み頂きたく)。

しかも『AERA』2010年6月21日号の取材時には『Kindle』と『iPad』を持参して、「時代に乗り遅れるわけにはいかない」とまでおっしゃったのだそう。

そんな方が、本書のような本を出すに至ったくらい、少なくとも現状の電子書籍には、バラ色の未来は待っていないようです。


◆もっとも、電子書籍を推進している出版社も、電子化をしたくてしている、というよりも、せざるをえなくてやっているというか、出版業界自体の先細り傾向が顕著になり、その打開策として推進している気がしないでもなく。

上記ポイントの3番目に「『Kindle』や『iPad』がそれこそ1000万台売れないと、そんな市場はできっこない」とありましたが、逆にそれだけハードが普及すれば、打開の可能性は広がるわけで、各社体力をそこまで維持できれば、何とかなるのかもしれません。

ただし、現状では「数十分の1」の売上が、「数分の1」レベルまで上がったとしても、今度は価格の問題が。

上記にあるように、低価格でないと売れないとなれば、当然トータルの売上金額は従来より下がってしまいます。

結局のところ、業界全体としては、いずれは電子版を主流にしつつ、紙版をほそぼそとやり、規模は縮小、という可能性が高いのかも。


◆ところで、かつてマッキンゼーの面接で「電子マネーの普及を予言した」と言われる勝間和代さんは、ソニーリーダーについてこんな風に言われてます。

ソニーブックリーダー使用初日雑感〜思ったよりかなりいいです- 勝間和代公式ブログ: 私的なことがらを記録しよう!!

なるほど、便利か否か、と言ったら便利。

ただ、それこそ、自炊してまで本を読もうという層が、どのくらいいるのか。

音楽はある意味「受動的」であるため、携帯プレイヤーが広く普及したのが納得できるのですが、本は「能動的」である分、ハードルは高くなる気がするのですが。


◆また本書は、電子書籍のみならず、音楽やアニメ、ゲームといったコンテンツ産業についても言及。
デジタル化は、いずれ、すべてのコンテンツビジネスを滅ぼすのではないかとさえ思う。
と言われているように、こちらも先行きは暗いようです。

もちろん電子書籍に関連して、新聞、雑誌等についても当然触れられており、正直、どれ一つ明るい未来が待っているところはありません。

しかし、その解決案の1つとして、「おわりに」にあの(?)高城 剛さんのお話が(ネタバレ自重)。

なるほど、そう来ますか……。


業界人もそうでない人も一読をオススメ!

出版大崩壊 (文春新書)
出版大崩壊 (文春新書)
第1章 「Kindle」「iPad」ショック
第2章 異常な電子書籍ブーム
第3章 そもそも電子書籍とはなにか?
第4章 岐路に出つ出版界
第5章 「中抜き」と「価格決定権」
第6章 日本市場の特殊性
第7章 「自炊」の不法コピー
第8章 著作権の呪縛
第9章 ビジネスとしての電子出版
第10章 「誰でも自費出版」の衆愚
第11章 コンテンツ産業がたどった道


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【編集後記】

◆今日ご紹介した本に関連して。

2015年の電子書籍
2015年の電子書籍

野村総研さんがどう言われているのか興味アリ。


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Posted by smoothfoxxx at 08:30
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