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2011年01月19日

【ミス対策】『「事務ミス」をナメるな!』中田 亨


「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)
「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「ヒューマンエラー」の専門家である中田 亨さんの最新刊。

過去には『理系のための「即効!」卒業論文術』なんて本も出されている中田さんですが、本書はバリバリの文系向けの「事務ミス」のお話です。

アマゾンの内容紹介から。
本書では、新しい視点から「事務ミス」を分析しなおし、ミスや事故が絶えない会社を「ミスに強い組織」に変える具体策を提示する。
人はなぜミスをし続けるのか、ミスを防ぐ上で注目すべき力とは何か、さらに、事務ミスを防ぐポイントとして、「手順」や「書式レイアウト」「報告」「通達」「マニュアル」等をどう見直すか、などを、具体例をあげながら紹介する。
ミスの起きにくい仕組みづくりを考えるうえで必読の1冊です!


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【目次】

I 理論篇 なぜ人はミスをし続けるのか?

第1章 人は「有能」だからこそ間違える

第2章 間違えのメカニズム追究はきりがない

第3章 そもそも「間違い」とは何か?

第4章 時代が事務ミスを許さない!

II 実践篇 ミスはこう防ぐ

第5章 ミスの解決は、「6つの面」から考える

第6章 「気付かない」から事故になる

第7章 異変のはじまりはどこか?

第8章 「ミスをしないこと」は目標になりえるか

第9章 御社の「手順」はムダだらけ

第10章 氾濫する「ダメ書式レイアウト」

第11章 「ミスに強い」組織に変える


【ポイント】

■1.明らかに間違った選択肢を排除すると、残りがよく見える
【例題】群馬県の県庁所在地は、「タカサキ」でしょうか「タカザキ」でしょうか?

「タカサキのだるま市」や、「JRタカサキ線」という言葉を聞いたことがある人なら、「タカザキ」が間違いであることに気付きます。よって消去法で「タカサキ」が正解と推量されるわけです。(中略)

 単に「群馬県の県庁所在地はタカサキですか?」とだけ尋ねられれば、もっと慎重に考えたことでしょう。実は、正解は「前橋」なのです。


■2.あわてている人は強すぎる欲求が理性に勝って1つしか目に入らない
 最近の建物のドアは、ほとんどが外開きに作られています。これは、火災の際に人間がパニック状態になり、思慮深い行動ができなくなることを見越して、そうしてあるのです。
 火災では人間は、「外に出たい」の一心になり、たとえ内開きのドアであっても、無理に外に押して開けようとするのです。少し冷静になれば「押してもダメなら引いてみな」と考えられるのですが、そうした理性は欲求の前に吹き飛んでしまうのです。


■3.デメリットをメリットに変える解決法
 酒類を販売する時は、全ての客の年齢をいちいち確認しなければなりません。確認を怠ると、店が罰せられます。
 しかし、どう見ても中高年の客に、「あなたの年齢を証明するものを提示してください」とは、客を馬鹿にしているようで言いづらいものです。
 どうすればよいでしょうか?
 米国の酒屋のレジには、こんなステッカーが貼ってあります。
「若々しいお客様には、年齢をお尋ねします!」


■4.事故を防ぐ3つの力

●異常検知力
 異常検知力とは、仕事の中に潜在している異変の兆候を、目ざとく検知する能力のことです。
 毒入り冷凍ギョーザ事件にあてはめて考えると、異常検知力は、ギョーザの中に毒が入っていないか検知できる力のことです。

●異常源探知力
 作業のどの段階で異変が始まったのか。そしてどこからどこまでが間違っているのか。これを事故の結果からさかのぼって解明できる能力が、異常源探知力です。英語では「トレーサビリティ」といいます。
 異常源探知力が弱いと、事故復旧のコストが跳ね上がります。

●作業確実実行力
 各作業を失敗せずに実行できる能力を、作業確実実行力と言います。ミスをせず、無駄を出さず、締め切りに遅れずに、所定の品質を満たす結果を出す技能のことです。(中略)

 しかし実際には、作業確実実行力は、事故防止に対してあまり効果がありません。


■5.重要な手順は先に片づける
 我々は作業の目的を簡単に忘れがちです。ど忘れしないように、重要な手順は先に片づけるべきです。牛肉を買うのが目的なら、脇目もふらずに肉売り場に直行するのです。
 ところで、スーパーの店内レイアウトは、肉や魚といった主菜の売り場に行く前に、野菜などの副菜売り場を通る仕掛けになっています。
 客は主菜から買うと、それに合わせる副菜しか買わず、無駄づかいしません。そこで、わざと副菜を先に見せ、無駄な物も買いやすくさせているといわれます。


■6.被害が多い事故パターンを数個改善するだけで事故は大幅に減らせる
 私の経験から言えば、事故にもパレートの法則がはたらいています。つまり、次のような関係が成り立つことが多いのです。

○事務ミスの全パターンの中の3割が、トラブルの7割を生み出している。
○全仕事手順中の3割で、トラブルの7割が発生している。(中略)

パレート法則下であるがゆえに、統計に基づく改善の意義はますます強くなります。被害が特に多い事故パターンを数個改善するだけで、事故は大幅に減らすことができるからです。


■7.情報はその性質に応じて書き留める場所を区別する
 情報には、案件個別的か共通的かという違いがあります。特定の案件だけに関する情報は、その仕事の荷札のように密着させるように書き留めるのが正しいのです。
 抽象的な仕事の場合は、密着させる対象物がありません。
 しかし、こうした案件も、締め切り時間などの属時間的な内容は持っているはずです。
 それゆえこれらの情報は、案件の締め切り時刻が近づいたら教えてくれるように、アラーム機能を持った電子メモ帳やコンピューターに記録するのが適切です。
 どの案件にも共通する情報は、仕事のルールと見なすべきものですから、マニュアルなどの冊子体に書き入れるべきでしょう。


【感想】

◆本書ではまず第1章で、ミスが「人の高度な知的能力」ゆえに起こることを明らかにしています。

つまり、ある程度の情報の不足や乱れを補ったり正したりして、スムーズに処理していることが、逆にミスの原因にもなっているということ。

ポイントの1番目のお話は「ひっかけクイズ」のようですが、他にもこんな文章が読めてしまうことも「高度な知的能力」がゆえ。
みれだや あまやりを じうどてきに とのりぞける。
ちなみに当ブログの過去の記事の引用部分も、スキャナの読み間違えをそのまま放置していた(している?)ことが多々あります(スイマセン)。


◆同様に第2章では、お馴染みの「ウェイソンの4枚カード問題」や、「モンティ・ホール問題」といった「人が間違えやすい問題」を解説。

要は、人の「脳内メカニズム」によって、間違えが起こりやすいパターンもある、ということです。

とはいえ、全てのパターンを列挙して対策を取ることは不可能ですし、たとえメカニズムが分からなくても、ミス対策は立てなければなりません。

本書の第5章ではミスを「6つの面」から考え、それぞれの解決策を具体例を挙げて提示しています。
1.それ無しで済ます
2.やり方を変える
3.道具を変える
4.やり直しが効くようにする
5.致命傷にならないための備えを講じる
6.問題を逆手にとる
それぞれ実行のコストと対策の抜本性に違いがあるので、問題に応じて対策を選ぶべきである、と。


◆第6章から8章までは、ポイントの4番目の「事故を防ぐ3つの力」のそれぞれについて、私たちの身の回りでの具体例を挙げて解説しているのですが、今さらのように「なるほど」と思うことが多々。

一見、「何でこんなアナログなやり方を?」と思っていたことでも、実はミスを防ぐために行われていることが分かりました。

たとえば、やたらとデカい鉄道の「タブレット(通行許可証)」も、衝突事故を防ぐため。

また、銀行の窓口で渡される「合い札」も、仕事ごとに発行することによって、人違いのミスを防いでいるのだそう。

もっとも今や、オフィスからオンラインバンキングを行う方が主流でしょうから、「合い札」もいずれなくなるのかもしれませんが。


◆私たちビジネスパーソンとしては、第10章の書式レイアウトのお話や、第11章の組織の仕組みづくりのあたりが、もろに仕事に活かせそうです。

書式に関しては、例えばエクセルで表ひとつ作るにしても、ちょっとしたレイアウトの違いによって、ミスが起きやすかったりそうでなかったりするワケで。

数字を縦に並べるか、横に並べるか、罫線はこれでいいのか、etc……。

特に昔のコンピューターは、一行ずつしか印字できないラインプリンターが使われていたので、その名残りでデータが横並びになっていることがある、というのは知りませんでした。

やはり、現状を思考停止して受け入れるのではなく、「本当にこれでいいのか?」と、今一度問い直してみることが必要なのかもしれませんね。


ミスの起きない仕組み作りを考えたい方にオススメ!

「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)
「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)


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「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)


【編集後記】

◆まだちょっと先ですが、こんなご本が出るようです。

英語は「音読」だけでいい!
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英語は、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングそれぞれをバラバラに学習しても、その効果は期待できない。本書では、著者独自の音読手法でボキャブラリーを増強しつつ、リーディングからスピーキングまで、それぞれかけ算で英語力が身につく16倍速の勉強法を紹介。楽しみながら完全独習できるノウハウ満載
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「事務ミス」をナメるな! 中田亨・著 | これ以上“人災”を出さないために。【23:30の雑記帳】at 2011年03月19日 17:25
                               
この記事へのコメント
               
smoothさん、こんばんは〜!
中田亨さんの前作「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」がとても面白かったのでこちらの本もamazonアタックしておきました。普通にタカサキ!と読んだ時点でポチっとです(笑)。こんなワタシでもミスは減らせるのかしら・・・。
Posted by ニャロメ at 2011年01月19日 22:25
               
>ニャロメさん

アマゾンアタックありがとうございます(涙)。
「タカサキ」引っかかっちゃいましたかw
私も見事にヤラれましたw
本書にはミス防止のヒントが多々収録されていますので、ぜひご覧下さいませ。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年01月20日 03:15