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2010年12月12日

【ネタ?マジ?】『ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣』牧田幸裕


ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣
ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、既に土井英司さんのメルマガで紹介済みのマーケティング本。

土井さんが扱われたくらいですから、マトモな本であることは間違いないのですが、メルマガに「思わず吹き出してしまいました」なる表現があり、どんな本か気になっていました。

今般、私も本書を読んでみて、なるほど納得w

著者の牧田さんが、ジロリアン(ラーメン二郎をこよなく愛する人たち)であることを差し引いても、なかなか勉強になりました。

目次をご覧頂ければお分かりのように、「ラーメン二郎」を分析するだけで、マーケティングや経営の基礎を一通り学べるのがスゴイですw


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【目次】

PART1 ラーメン業界はハンバーガー業界、牛丼業界と何が違うのか? --業界環境を分析する

PART2 二郎に行列しているのは誰なのか? --セグメンテーションとターゲティング

PART3 なぜ二郎は二郎という食べ物なのか? --ポジショニング

PART4 なぜ二郎はボリュームたっぷりで、こってりなのか? --コア・バリュー

PART5 駅から徒歩20分を超える立地でも、なぜ大行列なのか? --チャネルとオペレーション

PART6 宣伝なしで、なぜオープン初日から大行列なのか? --プロモーション

PART7 なぜ二郎は急成長しても、山田総帥の経営哲学がきちんと受け継がれるのか? --組織設計と組織文化

PART8 なぜジロリアンは、身も心も二郎に魅了されるのか? --消費者行動の進化

PART9 時代の変化とともに、二郎はどう変わっていくのか? --時代の変化を読み取るフレームワーク


【ポイント】

■1.ラーメン業界は、特定の顧客の好みに応えれば収益性が高まる「分散型事業」
 2009年度における日本のラーメン業界1位は、幸楽苑で売上高372億円だ。2位は、ハイデイ日高で売上高228億円。3位は、リンガーハットで売上高200億円。視点2以降で検討するが、ハンバーガー業界1位の日本マクドナルドの売上高は5319億円。10倍以上の差がある。ちなみに市場規模は、ラーメン業界は約7000億円、ハンバーガー業界は7130億円とほぽ同規模である。このように異業種比較をすることで、ラーメン業界は「分散型事業」であることがわかる。


■2.日本の産業の多くは、製品自体で差をつけることはできない
 多くの日本企業は、コモディティ市場でシェアを上げるために製品機能を向上させ差別化を図ろうとしているが、あまり成功している例はない。なぜならば、コモディティ製品はすでに基本機能を満たし優れているからだ。
 さらに機能を向上させてもオーバースぺックになり、顧客はその良さを開発投資額に見合うほど認知できない。95点で合格ラインだと感じているところで97点が98点になっても、企業努力はすごく必要だが、顧客は「へー、スゴいねー(棒読み)」としか感じない。


■3.なぜ二郎は大学の近くに多いのか?
 大学生には裕福な大学生もいるにはいるが、一般的には、それほど金銭的な余裕がない。だから、安くて美味くて腹一杯になれる二郎にお世話になる大学生は多い。実家を離れ、ひとり暮らしをしている大学生ならなおさらだろう。何度も何度もお世話になるうちに、それは大学時代の味として脳味噌にインプットされる。子供の頃、お母さんに作ってもらった味噌汁のように。
 そうすると、大学を卒業しビジネスパーソンになったとしても、郷愁の念を持って二郎に通うようになる。二郎を食ぺると大学時代の記憶かフラッシユバックする。


■4.二郎は「重要」な顧客の声に応える
へビーユーザーのジロリアンは、1年で以下の額を二郎に費やす。

800円(大豚相当)×20杯×12ヵ月=19万2000円

 一見さんのジロリアンが、小600円を食べるとすると320人分だ。このようなへビーユーザーを「ロイヤル・ジロリアン」と定義しよう。ロイヤル・ジロリアンの二郎にとっての価値は、一見客320人分に相当する。だから、二郎はこのようなロイヤル・ジロリアンの声に耳を傾ける。「もっと麺を食べたい」といわれれば、麺を増し、「野菜を増してほしい」といわれれば、野菜を増す。
 二郎は、常連客=既存顧客であるロイヤル・ジロリアンの重要性を理解しているので、ロイヤル・ジロリアンの声に耳を傾けるのである。


■5.プロセスに顧客を参加させて、ロイヤリティを向上させる二郎
 二郎では、二郎を食べるプロセスの中で、このような顧客が参加するプロセスが意外に多い。注文の際には、トッピングコールで最終的な味付けを顧客が決定する。水はセルフサービス。食ぺ終わった後には、井を店主へ返し、カウンターを雑巾で拭く。行列をしている途中に麺切れ、スープ切れになった場合は、後続の客への「本日終了の告知」もジロリアンが請け負う。


■6.二郎のコミュニティマーケティング成功の秘訣は「突っ込みどころ」にあり
 では、どうやったらコミュニティは活性化されるのか。それは、対象となるネタ、すなわち製品やサーピスに「突っ込みどころ」があるかないかで決定される。普通のモノは突っ込めない。突っ込めないモノは、議論のしようもない。「ラーメンを食べました。美味しかったです」では、議論できないのである。
 ところが、二郎は「突っ込みどころ」満載だ。
 小でも300グラムを超える量の超極太麺。大なら500グラムを超える。「誰があんな量食べるの? ホントに食べきれるの?」


■7.二郎のブログは、「特別な時間」を伝えるために、実況中継になる
 二郎の感想を書いたブログは多いが、その中に二郎での強烈なひと時を伝えたいと強く感じるメッセージが多い。(中略)

 これらのブログを見ていて、いくつか特徴がある。それは、文章が長く、食事のブログなのに「美味さ」の感想ではなく、実況中継風のものが多いことだ。
 文章が長いのは、ジロリアンにとって二郎を食べる時間が特別な時間だからである。感じること、改めて気がつくことが多いので、メッセージは多くなる。だから、文章が長くなる。


【感想】

◆今回は、比較的ノーマルな視点部分を中心に挙げてみましたが、本書の著者である牧田さんは、生粋のジロリアンらしく、その文章の端々に、「二郎への愛」(?)が感じられました。

例えば、本書を開いて、初っ端のまえがきにはこんな一文が。
 二郎の大行列に並ぶ人たちには、ワクワク感ドキドキ感が感じられ、店内では二郎に挑戦する活気が感じられる。現在の日本で、ここまでのワクワク感や勢いが感じられるのは、二郎と東京ディズニーリゾートくらいだ。
「ディズニーリゾートと同じですかww」

ただ、確かに「唯一無二」という点では、二郎はディズニー並みかもしれません。

一応、「ラーメン二郎」をご存じない方のために、画像集のリンクをば。

絶品『ラーメン二郎』画像集 : 2のまとめR

「二郎はラーメンではなく二郎という食べ物なのだ」と言われるのもよく分かります。


◆ところで上記ポイントで、二郎について書いたブログが多い、というお話があったように、私も初めてその存在を知ったのは、はてブを集めまくったこのエントリーででした。

そろそろ武蔵小杉のラーメン二郎のヤバさについて一言言っとくか - ビジネスから1000000光年

特にこの中の、「山盛りのラーメンの画像」の下にあった「ご覧のとおり、カウンターに置かれた時点でダラダラと二郎汁(なんかスープと呼びたくない)が器を伝ってこぼれている」という一文に爆笑。

これを平らげるのは、「食事」ではなく、もはや「イベント」の領域ですよ。

私もあと10歳くらい若ければ、「試しに1度行ってみるか」となっていたかも。

ブログ読者がこう感じている時点で、すでに「二郎マジック」にはまっているわけです。


◆そして、こういった「ネタ的要素」が成功するのも、ハンバーガー業界や牛丼業界と違って、ラーメン業界が「分散型事業」だから。

一見、同じ「外食産業」ではあるものの、「小資本」で参入して成功できるかどうかは、選んだ食べ物によって、初めから成功/失敗が決まってしまうのですね。

なお、この辺のお話は、以前こちらの本でも詳しく述べられていました。

小さな飲食店 成功のバイブル―赤字会社から年商20億円企業までの軌跡
小さな飲食店 成功のバイブル―赤字会社から年商20億円企業までの軌跡

参考記事:「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)

要は「『既に大きな市場ができており、かつ大手の寡占が緩い業界』を狙え」ということ。

さらに、その業界において、「差別化された製品」を提供するのがミソです。

もちろん、ラーメン二郎は「差別化」という点ではまったく抜かりがないワケですがw


◆私自身は、未だ「二郎未体験」なので、本書や二郎に対しての思い入れ等は特にありません。

ただ、そんな私でも、本書のネタの掘り下げ方は、興味深いですし、実際本書は面白かったです。

女子高生やユダヤ人が出てこなくても(?)、密度の濃い内容を、分かりやすく表現することはできるんだな、とw

日頃、マーケティングや経営に携わってない方こそ、こういった「視点」を身に付けるべきだと思った次第です。


単なる「ネタ本」と思うことなかれ!

ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣
ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣


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「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)


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この記事へのコメント
               
私の住んでいる地域にはラーメン二郎が無いので、私は1度も行った事がありません。

ただ、ネット上でも賛否両論の意見で溢れている有名な店なのでとても興味があります。

なるほど。二郎には二郎なりの戦略があるのですね。ますます二郎に興味が沸いてきました。

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Posted by 読書ブログ屋 at 2010年12月13日 01:09
               
>読書ブログ屋さん

スイマセン、自宅のネットが昨夜から不通になったため、レスが遅くなってしまいました(汗)。

この本を読むと、「熱狂的なファンを作る」というビジネススタイルがどういうものか良く分かります。
私にとっては、二郎はどう考えても越えられない山なんですがw

また、応援ありがとうございます!
私も僭越ながらぽちさせて頂きました!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年12月13日 12:25