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2010年10月20日

【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建


ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、非常に骨太な「戦略本」

既に6月の時点で、土井英司さんがメルマガで称賛されていたのですが、あまりの厚さ(下記画像参照)に、やっと先日読み終わったというw ←ヘタレ

アマゾンの内容紹介から。
本書では、多くの事例をもとに「ストーリー」という視点から、究極の競争優位をもたらす論理を解明していく。 膨大な研究と取材によって紡ぎ出された500ページの本文。そのボリュームを感じさせない圧倒的な筆力で、経営戦略の本質を描き出す。刊行後3カ月にして 増刷続々。すでに戦略論の古典になりうる実力を備えた一冊。
思わず付箋も貼りまくりでございます。

ストーリーとしての競争戦略









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【目次】

第1章 戦略は「ストーリー」

第2章 競争戦略の基本論理

第3章 静止画から動画へ

第4章 始まりはコンセプト

第5章 「キラーパス」を組み込む

第6章 戦略ストーリーを読解する

第7章 戦略ストーリーの「骨法10カ条」


【ポイント】

■1.数字よりも筋の良いストーリー
 戦略構想は定義からして将来を問題にしています。起こったことを数字で体系的に見える化しても、その延長上には戦略は生まれません。あらゆる数字は過去のものだからです。日々事実を積み上げていくオペレーションにとっては見える化は武器になりますが、将来の戦略構想ではあまり役に立ちません。まだ誰も見たことがない、見えないものを見せてくれる。それが優れた戦略です。(中略)

 見える化という思考様式は戦略にとっては役に立たないどころか、ものの考え方が戦略ストーリーの本質からどんどん逸脱してしまいます。戦略にとって大切なのは、「見える化」よりも「話せる化」です。戦略をストーリーとして物語る。ここにリーダーの本質的な役割があります。


■2.企業価値を高めるためには、経営は市場を向いてはいけない
株価だけでなく、さまざまなステークホルダーに貢献するために、向くべきゴールは持続可能な利益です。「どのステークホルダーを優先すべきか? 株主か、顧客か、従業員か、社会全体か?」というような議論は問題の立て方が間違っているというのが私の意見です。当然のことながら、経営はすべてを満足させる責任があります。そして、そのために経営がねらうべきゴールが持続可能な利益なのです。どういう順番でものを考えれば、一見利害が対立しているように見えるすべてのステークホルダーをも満足させることができるのか、そのストーリーが大切です。


■3.目標の設定自体は戦略ではない
 体系的な目標設定が不可欠なのはいうまでもありません。目標が設定されなければ、戦略もありえません。しかし、ここではっきりさせておきたいのは、目標の設定それ自体は戦略ではないということです。「200X年第2四半期までに営業利益率10%確保! これがわれわれの戦略だ」というのは、要するに戦略ではなく目標を言っているわけです。
 ところが、実際の仕事の局面では、目標をきちんと立てていると、あたかも戦略を立てているかのような気になってくるということがよくあります。つまり、「目標を設定する」という仕事が「戦略を立てる」という仕事とすり替わってしまいがちなのです。


■4.セブン-イレブンの「仮説検証型発注」の秘密
コンビニエンスストアのPOSなどのITは、現在ではごく一般的なツールとして普及しています。しかし、ここで競争優位をもたらしているのは、ITそのものではなく、それをどうやって使うのかという、セブン-イレブンの「ルーティン」のほうです。
 仮説検証型発注では、発注の意思決定は本部ではなく店舗の側にあります。店舗の発注担当者は、自ら立てた仮説に基づいて発注量を決定します。たとえば、セブン-イレブンのある店長が、店舗近くの小学校で週末に運動会があるということを知ったとします。すると、その人は「ふだんよりもおにぎりが多く売れるのではないか」という「仮説」を立て、発注量を決めるのです。


■5.「ニッチ」を狙うなら「売れるだけ売らない」
 「すき間市場をねらう」というような言い方で、ニッチの戦略は多くの会社でしばしば議論に上ります。しかし、多くの場合は「ニッチに特化する」といった次の瞬間に、「年間20%成長をめざす」というように、筋が通らないというか、論理がねじれた話になりがちです。本当にニッチに焦点を定めて無競争による利益を追求するのであれば、成長はめざしてはいけないことだからです。成長し、ある程度の規模の市場になれば、競争相手が利益機会を求めて参入してくるはずですから、ニッチがニッチでなくなってしまいます。そうなれば、そもそもの利益創出の最終的な論理も崩れてしまいます。


■6.スタバにとっては直営方式こそがクリティカル・コア
 要するに、第三の場所を維持するために、スターバックスは忙しい人々にあえて嫌われようとしているわけです。しかし、別の視点から見れば、これは「わざわざ人件費をかけてお客さんを待たせ、回転率を悪くする」というとんでもなく非効率な話です。「わざと待たせる」というパスは第三の場所の維持にとって大切な意味を持っているのですが、こんなことをフランチャィズ店のオーナーに期待しても、それは無理というものです。ここからも、スターバックスのストーリーが直営方式を必要とするという因果論理が読み取れます。


■7.「部分非合理・全体合理」な「賢者の盲点」を狙う
 「合理的な愚か者」の戦略の対極にあるのが一見非合理な要素をストーリーに組み込み、それを全体の合理性に転化するというキラーパスの発想です。「賢者の盲点」を衝く戦略といってもよいでしょう。部分の合理性と全体の合理性の間隙を衝くことによって、独自の持続可能な強みを創造しようという戦略です。(中略)

戦略の玄人は賢者の盲点、すなわち部分合理性と全体合理性のギャップに持続的な競争優位の源泉を見出します。賢者の盲点を衝くようなキラーパスを中核に据えて、一貫した戦略ストーリーを構築すれば、「君子危うきに近寄らず」とばかりに、競争相手はむしろ自分から離れてくれます。自然と他社との違いが持続し、競争優位も維持されるという成り行きです。


■8.ガリバーが適切な買取価格を提示できる理由
ガリバーが透明性の高い一括査定で買取できるのは、直近のオークションでその車がいくらなら確実に売れるのか、買い取る時点でわかっているからです。セルサイドに軸足を置いた従来の中古車業者ではこうはいきません。(中略)

ガリバーのストーリーからすれば、一つひとつの買取は「後出しジャンケン」ですから、「利益が出るだろう」ではなく「これだけの(適正な)利益が出る」ということを買取の時点で確定できます。


【感想】

◆500ページものボリュームゆえ、他にもご紹介したい項目は沢山あるのですが、この辺で。

実は第7章は『戦略ストーリーの「骨法10カ条」』ということで、本書のエッセンスが抽出されているのですが、さすがにそこからだけ引っ張るのもどうかと思い、上記ポイントは、普通に全体から拾っております。

私の場合「戦略」というと、すぐ「ポジショニング(SP)」のことばかり頭に浮かんでしまうのですが、本書では本家であるマイケル・ポーターの戦略論だけでなく、「組織能力(OC)」についても言及。

上記ポイントの4番目にあるように、コンビニ業界においては、どこもポジショニングは同じなのに、セブン-イレブンが強いのは、その組織能力にあるわけです。

同様にトヨタも他社と違うポジショニングをしているわけでもなく、かつ、他社が研究をしているにもかかわらず、その強みを手に入れられないのは、組織能力がルーティンに組み込まれているため、簡単に真似できないから、というくだりには、なるほど納得しました(詳細は本書を)。


◆ただし本書の「キモ」は、こうした模倣したいような「部分的な合理性」ではなく、頼まれても真似したくない「部分的な非合理性」に、成功の鍵がある、と看破している点にあります。

詰まるところ「ストーリー戦略論」とは、「部分的な非合理を他の要素とつなげたり、組み合わせることによって、ストーリー全体で強力な全体合理性を獲得するのである」とのこと。

例えば、上記ポイントの6番目のように、スタバにとっては一見非合理な「直営方式」がストーリーの中核にあるわけです。

競合他社がスタバの雰囲気や立地、メニューを真似ることはあっても、よりによって積極的に直営方式を真似ることはないのですが(ほとんどがフランチャイズ方式)、全体のストーリーを読み取ると、その必然性が痛いほど分かるという。

つまり、こうした「真似しようと思わない」ポイントこそが、「競争優位の持続性」をもたらすワケですね。


◆本書の5章では、こうした打ち手を「キラーパス」と呼び、様々な企業を分析。

「デル」「サウスウエスト航空」「アマゾン」といった、戦略本ではお馴染みの会社だけでなく、日本の「マブチモーター」「アスクル」「キラーパス」が登場しています。

さらに第6章では、丸々1章を費やして、中古車売買の「ガリバーインターナショナル」を検証。

中古車は、消費者に小売をすることが一番「美味しい」(マージンが大きい)のに、あえて薄い利益でオークションに流す、というのは、どう考えても不合理です。

ガリバーの「買取専門」部分を真似るところはあっても、小売から手をひくところは中古車業界では他にはありません。

それなのに、なぜガリバーは成功したのか……については、本書でご確認頂きたく。


◆本書はとにかくボリュームはあるものの、著者である楠木さんの語り口が易しいせいか、最後まで面白く読み進めることができました。

そして私も本書を読んで、面白いがゆえに、スタバやガリバーの成功の秘密について、他の人に語りたくなって(ブログに書いて)おります。

ただし上記でも、一部「何がキラーパスか」までは触れてますが、それが「何でキラーパスになるのか」までは明かしておりませんので、続きは本書にて。

きっと目からウロコが落ちると思います。


これはもう激オススメせざるを得ません!(分厚いですがw)

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)


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【編集後記】

◆もう1つの「リストラなう」

正社員は危ない! 
正社員は危ない! "リストラなう"を生き抜く方法
“毎日名刺を5枚配る人”が危ないのはなぜか?大企業に勤める大卒「正社員」は、かつて成長と安定の象徴だった。しかし、いまや彼らは転職マーケットでもっとも評価されない人材になってしまった。人事のプロが教える「崖っぷち正社員」のサバイバル術。
私は自営業ですけど、気になります。


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Posted by smoothfoxxx at 07:30
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