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2010年10月11日

【ザックジャパンに告ぐ!】『恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか?』イビチャ・オシム


恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか? (角川oneテーマ21 A 126)
恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか? (角川oneテーマ21 A 126)


【本の概要】

◆今日は、3連休最終日ということで、ちょっと趣向を変えてサッカー本なんぞを。

私が隠れファンとして、JEF監督時代から注目していたイビチャ・オシム元サッカー日本代表監督の最新刊です。

アマゾンには表示されていないものの、帯には大きく「ザックジャパンに告ぐ!」の文字が。

出版時期から考えると、結構ギリギリだったと思うのですが、第5章ではザッケローニ新監督についてもコメントあり。

これからザックジャパンを追う前に、読んでおきたい1冊です!


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【目次】

はじめに

第1章 ほんの少しのリスクと勇敢さを

 勇気が欠けたことを省みよ
 4-3-3シフトの流行
 成功した本田のCF起用 ほか

第2章 べスト16の真実

 自信、忍耐、経験が、カメルーン戦の勝因
 エトーの長所を殺した
 ロングボールのこぼれ球をケアしろ ほか

第3章 南アで日本代表に見えたもの

 どのようにして勝つか?
 岡田監督の遺産
 ロバに機関車は運べない ほか

第4章 スぺインの美しき勝利

 メデイアが勝利した大会
 5つの視点
 敵のビッグプレーヤーを消す戦術 ほか

第5章 2014年ブラジルW杯への提言

 JFAになかった「ぶれない指針」
 ザッケローニは何を求めているかがわかっている男
 ザッケローニの不安点 ほか

おわりに


【ポイント】

■1.自信、忍耐、経験がカメルーン戦の勝因
 日本は、なぜ、初戦のカメルーンに勝てたのか? それは自信、忍耐、経験という3つの言葉に集約されるだろう。日本は、カメルーンのパワープレーを防いだ。このアフリカの国の長所を消した。カメルーンのフィジカルに悩まされはしただろうが、最後まで知的にプレーを続けた。この勝利を今改めて分析するとき、日本人の忍耐力という国民的特性を考えざるをえない。


■2.勇気をもってリスクを冒すべきだったパラグアイ戦
 ミスを恐れ、こぼれ球を拾っても、それが攻撃につながらない。ゴールを決めるアイデアにも欠けていた。ドリブル以以外のアイデアで組織的に突破しようとする姿が見えなかった。確かに体も頭も疲労のため、動かなかったのはわかる。しかし、相手も同じ条件だ。なぜ、そこで、自分たちは、「負けないサッカー」ではなく、「勝つサッカー」をするのだという、強い意志を見せなかったのか。ゴールをスコアするための努力、トライを怠れば、「勝利の5分間」はやってこない。ゴール前に行かねば、誰も得点などできないのである。


■3.日本のプレー効率の悪さの原因はスピード不足にあり
例えば日本代表は、相手のゴール前でのプレー効率が悪い。これについては、世界のどのチームも抱えている問題で日本の場合は、プレー効率の悪さの原因がスピードにあるのだ。
「プレーにスピードがない」「考えることにスピードがない」「ランニングにスピードがない」と、ないないづくしである。
 効率の悪さの原因を突き詰めると、すべて「スピード」に辿り着く。ただし、「走り」は改善できる。日本代表チームの戦略は、まったく問題ないと思う。考え方のスピードとプレーのスピードに問題があるだけなのだ。


■4.Jリーグの観客も学ばなければならない
 Jリーグにおけるサッカーは、まだまだ未完成だ。厳しい意見を言うようだが、まず第一にスタジアムに殺気がないのだ。ヨーロッパのほぼすべての国において存在するプレッシャーは、日本には見当たらない。非常に重要なことなのだが、スタジアムに緊張感がない。雰囲気が、まるでぬるま湯のようであれば、そこで何かビッグなことを成し遂げるのは難しい。


■5.グラーツでの極秘会談で分かったこと
私は、ワールドカップ直前にイングランド戦がグラーツで行われた際、日本代表選手に会うために彼らのホテルを訪れ、非公式に話をした。その部屋には、入れ替わり立ち替わり15人ほどの選手が集まっただろうか。だが、そのとき、私が抱いた印象は、「彼らは野心的ではないな」というものだった。さらに悪いことは、そういう野心を、本来ならギラギラさせていなければならなかったはずの若い選手たちまでが抱いていないということだった。私が指摘する日本の選手たちの主たる野心とは、ヨーロッパのクラブと契約することである。


■6.なぜパラグアイに破れ、8年前にはトルコに敗れたのか
 今こそ、「なぜ、岡田監督率いる日本代表が、日標であるべスト4を達成できなかったのか」という結論を引き出し始めねばならない。なぜ、パラグアイに敗れ、8年前にはトルコに敗れたのか。それは、おそてらく傲慢とも言える楽観主義であり、或いは、日本人が本当の意味で勝つためのチームを持っていなかったためである。特にメンタル面での失敗は、日本にとっては残念な部分だろう。チームは、4年という短いようで長い歳月で作ることができる。だが、もし、彼らが倣慢になったとしたら、そこには未来はない。


■7.相手を威嚇するミッドフィルダーの必要性
日本には、才能のあるミッドフィルダーが揃っているが、攻撃参加する適応力と勇気がない。威嚇とは程遠い場所にいるのだ。
 パラドックス(逆説)に聞こえるかもしれないが、技術と機動性に優れた日本人にとって、ミッドフィルダーというポジションは最も潜在的に適しているし、強いとも思われるポジションのはずだった……だが、裏を返せば最も弱いポジションなのだ。もし敵が、この部分を攻めてくるならば、非常に対処に困るだろう。


■8.パスサッカーを追え
 私は、日本が南アフリカでパスゲームを捨て去ったとは思わない。今後、パスサッカーに立ち返り、スぺインのスタイルを追うことは悪くない。それは、とてもロジカルなトレンドだろう。日本人には、そのスタイルでプレーすることが可能で、傾向として、そういうプレーを好む選手たちが多い。そこまで条件が揃っているならば、そのプレースタイルを追求すべきだ。さらにべターなものにするように努力すべきなのだ。その努カの形が正しいならば、きっと私を驚かせるような素晴らしいものとなるだろう。


【感想】

◆つい先日のザッケローニ新監督の初戦のアルゼンチン戦が、かなり良い内容&結果だったため、何かもうワールドカップのことを忘れてしまいそうになりそうなんですが(私だけ?)、本書を読んで、改めてその問題点が私の中では明らかになりました。

その最たるものが「リスクを取らない」

W杯は大きな大会ゆえ、しょうがない部分もあるのでしょうけど、「負けない」試合運びを意図するあまり、「リスクを取らない」選手が続出しました。

その結果がベスト16での敗退につながったとオシム氏は分析しています。

なお、リスクを取ることの重要性は、大会前に出されたこの本でも口をすっぱくして言われていたのですが、結局心配していた通りになったと言いますか。

考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)
考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)

参考記事:【オシムの言葉】「考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? 」イビチャ・オシム(2010年04月13日)


◆今回割愛した第4章では、南アW杯における出場各国について、オシム氏の分析が掲載されており、ここはサッカーファンなら一読の価値アリ。

一方、日本代表以外の国には興味がない、と言う方には、第3章での日本代表分析を。

この第3章には、上記ポイントで触れた「グラーツでの極秘会談」の話が収録されており、具体的に何人かの選手との話し合った内容についてまで書かれています。

また、実際のW杯でのプレーぶりを踏まえた上での論評も、個人名を挙げてなされており、この章は読み応えがありました。


◆そして、最後の第5章では「ザックジャパン」というか、2014年W杯を目指す日本代表の「あるべき姿」を提言。

一部報道があったように、オシム氏がザッケローニ監督の就任を、手放しで喜んでいない(?)ように感じるのは、「もし日本がパスサッカーを志向するなら、イタリア人監督って、どうなの?」ということのよう。

私はそれほど詳しくないのですが、守備もオシム氏が「マンツーマン」だったのに対して、ザッケローニ監督は「ゾーン」ですから、その辺の考え方の違いもあるのかもしれません。

ただ、本書は当然、先日のアルゼンチン戦を踏まえてはいないわけで、あの試合を観た上でのオシム氏の感想をぜひお伺いしてみたいな、と。

もっとも現時点であっても、次の韓国戦も見てみないと、まだ何とも言えないとは思いますが。


◆本書は、オシム氏の言葉だけで200ページを超えるボリュームがあり、「オシムファン」にはたまらない1冊に仕上がっています。

もちろん、日本代表ファンにとっても、W杯を振り返り、ザックジャパンを応援する上で、ポイントとなる指摘も多々。

ちなみにネタバレ自重なんで伏せますが、オシム氏は「2014年のリーダー」まで挙げていて、これが結構意外な選手なんでちょっとビックリしました(ファンの方には申し訳ないですが)。

それにしても、日本を離れてからも、こうして相変わらず日本代表を応援してくれるオシム氏には、感謝の念が堪えません。

これはもう、2014年W杯では、上位に進出することで、恩返しをしたいものです。


日本代表をより深く知るために!

恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか? (角川oneテーマ21 A 126)
恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか? (角川oneテーマ21 A 126)


【関連記事】

【オシムの言葉】「考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? 」イビチャ・オシム(2010年04月13日)

【オシム激白】「日本人よ!」イビチャ・オシム(2007年07月20日)

「オシムの言葉」とオシム語録の抜粋(2006年06月26日)

【号外】「日本代表に巻選手選出」と「オシムの言葉」(2006年05月15日)

「イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く」西部謙司(2007年05月22日)


【編集後記】

◆アマゾンで何故か画像がないので分かりにくいですが、こちらもオシム氏の特集号です。

Number PLUS 2010 October―Sports Graphic

文藝春秋 (2010-09-22)
売り上げランキング: 1216

何たって「日本サッカーに告ぐ。」ですからね〜。

完全保存版ですし、これは買っておかねば。


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この記事へのコメント
               
私もオシムの隠れファン(笑)で、彼の著書はけっこう好きで読んでいます。「なぜ日本人は失敗を恐れるのか、失敗を恐れて成功を掴むことは出来ない」と・・・・。我々は農耕民族だからこそ出来る「継続的な”カイゼン”」という長所をもっと活かす必要性も感じました。
Posted by 片木 at 2010年10月12日 07:32
               
>片木さん

日本人は確かに「リスクを取らない」と言われますが、一つにはそれに見合うリターンが小さいんじゃないか、とも思ってます。
小さい頃から規律に縛って減点主義を取っておいて、「リスクを取れ」と言われて取れる人もなかなかいないんじゃないかと…。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年10月13日 04:58
               
オシムが2014年のリーダーに挙げた選手は、元々体力よりも技術で勝負するタイプだけに、それほど意外ではないような気がします・・・

私も、彼がリスクを取ってハードにファイトする姿を見てみたいです。
Posted by kazu at 2010年10月15日 03:20
               
>kazuさん

私はJEF時代からオシム氏を見ていて、正直「彼」は「合わない」タイプだと思ってました。
攻撃的MFはパスを出した後もゴール前にあがっていって、最終的にペナルティエリア内で勝負するべきだと思っているフシがあったので。
例えばJEFに初優勝の目があった年の大一番の磐田戦(引き分けに終わった)で、ボランチの佐藤勇人に決めるべき惜しいシュートがあったのですが、外したことよりも、その場所にいたことをえらく褒めてたこともありましたし。
ただ、代表では技術が超一流なので、外すに外せなかった、と思ってました。
ザッケローニ氏がどう判断するか、興味深いですね。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年10月15日 05:44