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2010年09月07日

【結構スゴ本】『「空気」と「世間」』鴻上尚史


「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
「空気」と「世間」 (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、ちょっと前の本なのですが、「思うところあって」今取り上げるべきだと思った1冊。

劇団「第三舞台」主宰の鴻上尚史さんが、「世間」「社会」の違いや、俗に言う「空気」について考察した『「空気」と「世間」』です。

アマゾンの内容紹介から。
「空気」の存在に怯えている人は多い。なぜ「空気」は怖いのか? その正体を探っていくと見えてきたのが、崩れかけた「世間」の姿だった……。人気の脚本・演出家が、阿部謹也、山本七平といった先人の仕事を現代に投影させながら、自分の体験や発見を踏まえた会心作!「空気」と「世間」を知り、息苦しい現代日本を生きていくための方法を示します。
出た当時に読んで「スゲー!」と思ったのですが、今、改めて読むと、さらに腑に落ちる点が多くて驚きました。


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【目次】

第1章 「空気を読め!」はなぜ無敵か?

 お笑い番組の「空気」
 「順番に来るいじめ」
 日常というテレビ番組 ほか

第2章 世間とは何か

 席取りをするおばさんの「世間」と「社会」
 「しようがない」の意味
 インテリが無視する「世間」 ほか

第3章 「世間」と「空気」

 「世間」が流動化したものが「空気」
 日本人がパーティーが苦手な理由
 差別意識のない差別の道徳 ほか

第4章 「空気」に対抗する方法

 絶対化に対抗する相対的な視点
 「多数決」さえ絶対化する日本人
 議論を拒否する「空気」の支配 ほか

第5章 「世間」が壊れ「空気」が流行る時代

 中途半端に壊れている「世間」
 精神的なグローバル化
 不安と共に急速に壊れ始めた ほか

第6章 あなたを支えるもの

 資本主義の「中世」化
 「世間」を感じるために他者を攻撃する
 ほんの少し強い「個人」になる ほか

第7章 「社会」と出会う方法

 「世間」に向けて発信した秋葉原連続通り魔事件の被告
 「社会」に向かって書くということ
 「社会」と出会うための日本語/複数の共同体にゆるやかに所属する ほか


【ポイント】

■1.阿部謹也の語った「世間」
 僕なりに阿部さんの言葉を要約すると――。
 日本の「個人」は、「世間」の中に生きる個人であって、西洋的な「個人」など日本には存在しないのです。そして、もちろん、独立した「個人」が構成する「社会」なんてものも、日本にはないんだと言うのです。
 日本人は、「社会」と「世間」を使い分けながら、いわば、ダブルスタンダード(二重基準)の世界で生きてきたのです。

「世間」とは何か (講談社現代新書)
「世間」とは何か (講談社現代新書)


■2.日本人が後ろから来る人のためにドアを押さえない理由
 日本では、後から来る人のために、ドアを押さえている人はまれです。みんな、自分が通った後、後ろの人のことをまったく気にしないまま、通過します。大きく動いて戻ってきたドアにぶつかりそうになることも珍しくありません。
 マナーのまったくない、道徳的に最低の国民なのでしょうか?
 ここまで読んだ人なら、もうそれは違うと分かるでしょう。後ろから来る人は、「社会」に属している人だから、無関心なだけなのです。「世間」に属している人が後から来たら、立ち止まってとても気にするでしょう。


■3.日本人にとってディベートが異質なわけ
 自分の意見を、百八十度変えて、議論するというシステムは、日本にないものでした。日本人は、集団の決定が、まさに「臨在感的把握」によって絶対化することに慣れていたので、同じ人間がどちらの立場も積極的に主張するということに、なにか戸惑いを覚えたのです。


■4.日本を支えてきた「世間」の二大要素
 会社と地域共同体は、日本の「世間」を代表する二大要素です。
 日本人を支えてきたのは、地域共同体の安定と会社の安定だったということです。この二つのセイフティー・ネットの存在が、一神教に頼らなくても、安定的で混乱の少ない国と国民を作ったのです。


■5.共同体やその「匂い」に惹かれる人たち
「共同体の匂い」を感じるだけでも、人は元気になります。バラバラだと思える私たちが、じつは同じ集団に属していて、同じ感覚を大切にしている、と感じるだけでも生きる勇気がわくのです。
 お笑い番組が隆盛なのは、「笑って嫌なことを忘れたい」という理由が一番でしょうが、同時に、「他人と同じものを笑うことができる」という「共同体の匂い」に惹かれているからだと思います。


■6.「社会」に向かって書くということ
「社会」に向かって書くとは、自分がなぜそう思ったかを、一定の情報を相手に与えながら、つまりは必要な情報を交えて、自分の気持ちを書く、といということです。
 まったく違ったバックボーンを持った人に理解してもらうためにには、ちゃんとした状況説明が絶対に必要なのです。
 当然、ある一定の長さが必要になります。長過ぎても「社会」は読んでくれませんが、3行ぐらいでは、必要な情報はとても伝わりません。


■7.他人との距離が極端な2種類しかない若者
 他人との距離が、極端な2種類しかない若者が増えてきていると僕は思っています。
 思いっきリタメ口の馴れ馴れしい距離と、「すみません」を連発するよそよそしい距離しかない若者です。それは、理想的な「世間」を相手に求めるか、相手がまったく関係のない「社会」に住んでいると決めつけるか、のニつの世界にしか生きてないことだと思うのです。


■8.複数の共同体に属することのすすめ
 不安ゆえに、ひとつの共同体にしがみつけぱ、それは「世間」となります。しがみつこうとする自分を叱るのではなく、不安ゆえに、たったひとつの共同体=「世間」を必死で信じようと不毛な努力をするのでもなく、不安だからこそ、複数の共同体に所属して、自分の不安を軽くするのです。それは、相対化された「世間」と呼んでもいいし、「社会」とつながっている「世間」とも言えるのです。


【感想】

◆本書は前半で、上記でも登場した阿部謹也氏の『「世間」とは何か 』や、それに先立つ山本七平氏の『「空気」の研究』を紹介し、日本における「社会」「世間」、そして「個人」について論証していきます。

鴻上さん曰く、「空気」とは、「世間」が流動化した状態である、と。

詳しくは本書を読んで頂くとして、個人的には、その言葉の定義以上に、その考え方によって解き明かされる、私たち日本人の行動習慣の「ワケ」が興味深かったです。


◆古くは「村八分」、そして今なら「いじめ」

それだけでなく、「ドアを手で押さえてあげる」「妊婦に席を譲る」「階段で乳母車を運ぶのを手伝う」といった、欧米では半ば常識とされている行為を、なぜ日本人が行わないのかが明らかにされています。

私も3ヶ月だけですが、イギリスにいて、ドアを手で押さえる、というのは半ば習慣というか、とにかく延々と誰かしらがドアを押さえているのを目にすると、やらないわけにはいかないのですよ。

これは、知らない人であっても、同じ「社会」に生きる者として当然だからなのですが、日本人の場合、「世間」に属していない人に対しては、おしなべて「無関心」になるワケです。


◆そして我々日本人は、この「世間」に縛られながらも、同時に頼りにしているのですが、近代化につれて、まず「地域共同体」が弱体化。

さらに今では、もう1つの要素である「会社」までもが、我々の面倒を見られなくなりつつあります(特に後者については、本書の発売された1年前より、さらに状況は悪化している気が)。

ちなみに欧米では、拠り所となるのは、基本的には「宗教」であり、「神との関係」が問題になります。

そう言えば私も、子どもの頃この映画を見て、「神との関係」に体験したことのない強烈な「違和感」を感じた記憶が……。

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◆またこれは、私が本書を読んで思いついたのですが、Twitterが日本で予想以上に普及した理由の1つが「世間に向かって書いているから」ではないか、とか。

それほど長文でないところや、フォローした人しか基本的には読まないところ、さらには、ある程度説明不足であっても、それを許容するあたりが、「社会」というより「世間」に向けた感じがします。

まぁ、元々はショートメッセージが根底にあるわけですから、身内に向けて書いていて、当たり前なのですが。

ただ、それを言ったらSNSの方が「共同体」的なニュアンスは強いので、やっぱり違うのかも知れません(スイマセン)。


◆なお、あとがきによると、本書はいじめに苦しんでいる中学生にまで届いて欲しいと思って鴻上さんは書かれたのだそう。

それもあって、内容的には深いのに、とても読みやすい印象を受けました。

一方、ビジネスパーソンにとっても、「会社での身の振り方」を理解できるという点で、読んで損はないはず。

もちろん、こういった日本特有のシステムについて、外国人から質問された場合にも、答えられるのではないでしょうか(英語でどう言うのかは分かりませんが)。


今だからこそ読んでおきたい1冊!

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
「空気」と「世間」 (講談社現代新書)


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「つながり」という危ない快楽 速水由紀子(著)(2006年08月06日)


【編集後記】

◆すっかり出遅れてしまいましたが、この本も既に発売中。

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本田直之さんご推薦の1冊デス!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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この記事へのコメント
面白そうですね!空気とか世間とか今の段階ではよくわからないですがとても深そうな内容ですね。

Posted by タカダヨシヒコ at 2010年09月07日 18:54
>タカダヨシヒコさん

この本、かなり奥が深いと思いますよ〜。
マーケットプレイスでも結構出てますし、一読をオススメします!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年09月08日 03:42