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2010年04月16日

【意思決定】「まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠」マイケル・J・モーブッサン


まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠
まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「意思決定」に関して、非常によい「気づき」を与えてくれる1冊。

著者のマイケル・J・モーブッサン氏は、『米スマート・マネー誌の調査で「ウォール街で最も影響力のある人物」の1人』に選ばれている人物なのだそう。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

私たちが意思決定するとき、常に周囲から影響を受けています。ですが、多くの場合、それに気づかずにいます。物事をよく考える意思決定者は、これらの無数の影響力を認識し、それらをうまくコントロールして決断します。モーブッサンの投資業界での経験や、心理学と科学の研究を通して、よくある意思決定の過ちを論じ、どうしてそのようなミスが連続するのかを例を挙げて説明し、どのようにしたら、このような問題を繰り返さないですむかを考えていきます。

私自身、思い当たるフシが……。


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【目次】

序章 頭がいい人ほど陥る罠

第1章 自分だけはうまくいく?

第2章 他の選択肢が見えなくなる

第3章 専門家の意見は鵜呑みにするな

第4章 あなたも周りの状況に影響されている

第5章 “木を見て森を見ず”に陥らない

第6章 正解は、時と場合による

第7章 突然、襲ってくる大規模な変化の危険性

第8章 運と実力を見極める

終章 もう一度、よく考えよう


【ポイント】

■人は自分だけは特別だと思い込んでいる

ある事柄が自分にどのような影響をもたらすかを知りたければ、同じ状況で他人はどうだったのかを見てみるのがいい。ハーバード大学の心理学者ダニエル・ギルバートは、なぜ人々は客観的な視点を持たないのか、ということに関して次のように考えている。「この(客観的な視点を持つという)シンプルなテクニックには大きな説得力がある。この視点を積極的に取り入れた方がいいに決まっている。しかし、人はそうしようとはしない」
 人がそうしようとしない理由は、周りの人間と比べて自分は特別で、優秀であるとほとんどの人が思い込んでいるからである。


■ストレスによって人間は長期で考えることができなくなる

もし自分がライオンに食べられる寸前であれば、消化機能をよくすることや、体を成長させること、そのために病気を予防することや、子孫を残すことなどの問題について考える必要はないのだ。サポルスキーに言わせると、ストレス反応があると短期的に得になることを追求できるが、長期的に何がいいのかを考えられないのだ。これが、トンネルビジョンになる原因の一つだ。
 とすると、ストレスを抱える人問は、長期的な計画を立てられないということがわかる。明日、仕事を失うかもしれないマネジャーは、3年後をよくするための意思決定になど興味はないのだ。


■規定値(デフォルト)の誤り

隣国同士であるドイツとオーストリアを見てみよう。ドイツ人のわずか12パーセントしか臓器提供者になることに同意をしていないのに対してオーストリア人のほぼ100パーセントが同意している。違いは、何か。ドイツでは、ドナーになるには自ら申し出なければならない。オーストリアでは、ドナーにならないために自ら申し出なければならない。この違いは、ドイツとオーストリアでは臓器提供に対する姿勢が違うのではくて、デフォルトの設定が違うことによる。


■惰性がもたらす影響力

 惰性、あるいは変化への抵抗からも、実世界で状況の影響力がいかに意思決定に影響するかがわかる。「どうして、私たちはこのやり方をしているのだろう」という疑問に対するよくある答えは「これまでずっと、このやり方でやってきたから」というものだ。習慣のもともとの目的が消えてしまったり、よりよい手段が出てきたりしても、人はもともとの、すでに不便になってしまった習慣を続けてしまうものである。状況の影響力によって、人は古い問題に対して新しい視点で見ようとはしない。


■企業は「スター」の周りで彼らをサポートしたチームや上司・部下等の仕組みをを過小評価している

ハーバード・ビジネススクールの教授が10年の間、1000人以上の株式アナリストに関して、彼らが転職に際に、彼らのパフォーマンスがどのように変化したかを追跡調査した研究がある。そこで得られた結果は、いささか厳しいものであった。「企業がスターを雇った場合に、転職したスターのパフォーマンスは激しく下落する。仕事のグループ、あるいはチームの機能も大幅に下がり、企業の市場価値は低下する」。スターの評価はもともとの組織のシステムに合致した結果であるということを考慮せずに雇用した結果が、これである。


■相関関係と因果関係は違うものだと理解する

 人は物事に因果関係を見出そうとする傾向があるが、それは単にある結果に対する原因を自分ででっち上げているにすぎないと言ってもいい。多くの場合、偶然の結果である相関性に因果関係があると決めつけてしまっているのだ。相関性という言葉を聞いたら、必ず3つの条件を考慮しなければならない。つまり時間、関係性、そして追加要素(z)が他の2要素を相関させないということである。


■人がある一定のやり方や考え方をする時、新しい方法を思いつくのは難しい

 よい結果が繰り返し起こると、人は自分のやり方が正しく、それですべてうまくいっていると考える。この錯覚が人に根拠のない自信を植えつけ、(たいていはよくない)予期せぬ出来事へとつながるのである。相転移が突然の変化であるという事実は、その混乱へのおまけにすぎない。


■褒めるとダメで罵倒すると上手くいくワケ

教官は、よい飛行ができなかったパイロットを罵倒すると、次はもっとうまく飛ぶと信じていた。実際には、パイロットのパフオーマンスが平均に回帰しただけであった。つまり、次はもう少しましに飛べた、というだけのことなのだ。もしパイロットがものすごくすばらしい飛行をした時、教官はきっと褒めるだろう。そして、パイロットの次の飛行では平均に回帰し、普段どおりの飛行なので、教官は褒めることがパイロットのためにならないと結論づけてしまうのだ。次回の飛行のパフォーマンスを上げるのに、教官のフイードバックは重要でないことには気がついていない。教官のフィードバックと実際の飛行、この2つは因果関係にないのである。


【感想】

◆意思決定に際して、多くの人は「自信満々」に行ったりするのですが、その多くが、何らかしらの外部からの影響を受けたり、非常に狭い視野で判断されている、という事例が、本書ではイヤというほど登場しています。

上記ポイントではその中から、個人的にピンと来たもののみを抜き出しているため、実際にはこの何倍もの事例や問題点が提示されており、お腹いっぱい

もっとも、本書はただ単に問題点を挙げているだけではなく、各章のおしまいに、「具体的な対処法が列挙」されています(記事では、まとめて「ネタバレ自重」してますが)。

終章においても

本書に価値があるとすれば、今日からでもすぐに実践できる具体的な行動に落とし込めるという点である。

とありますが、「これは!」と思う問題点があれば、その章の対処法をチェックして頂きたく。


◆個人的には、「ストレスがあると長期的に物事が考えられなくなる」というのは、ちょっと怖いな、と。

恒常的にストレスがある職場は別としても、ストレスが強い時期に、長期計画なんぞ立てるべきではなさそうです。

でも、それ言われちゃうと、リストラされそうな人にとっては、「早期退職制度に応募すべきか否か」何てことは、既にストレスがかかっている以上、適切な判断はできないような…?

転職や独立も「長期的」という意味では同じことですから、「強いストレスがかかっている」と思ったら、一歩引いて考えるべきなんでしょう。


◆一方、ポイントの最後に出てきた「平均回帰」のお話は、私も言われてみて「なるほど」と思ったクチ。

これは、投資でも同じで、個人投資家のパフォーマンスが悪いのは、「市場が過熱しているときに金を注ぎ込み、下落してから引き揚げるから」なのだそう。

また、一般的に人は「運と実力」を切り分けるのが苦手で、良い結果なら「実力」によるもの、悪い結果なら「運」のせい、と考える傾向があるのだとか。

まさに「それ、何て俺」状態な私は、常日頃から意識しておかないと。


◆今回改めて思ったのは、本書に限ったことでもないのですが、「やはり翻訳本は濃いな」ということ。

本国での評価も高いようですし、そういった点も踏まえた上で、選んで翻訳しているので当然なのでしょうけど。

ちなみに、著者のマイケル・モーブッサン氏の前著『投資の科学 あなたが知らないマーケットの不思議な振る舞い』は、当ブログで以前ご紹介した土井英司氏監修の『アメリカCEOのベストビジネス書100』にも選出されています。

投資に興味のある方はぜひチェックしてみて下さい。


少しでも正しい判断を下したい方なら必読!

まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠
まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠


【関連記事】

【スゴ本】『しまった! 「失敗の心理」を科学する 』ジョゼフ・T・ハリナン (著)(2010年01月27日)

【決断】本田直之さんの「意思決定力」から学んだ6つのポイント(2009年10月17日)

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

【意思決定】「一瞬の判断」マイケル・ユシーム(2008年05月23日)

【未来予測】「マインドセット ものを考える力」ジョン・ネスビッツ (著), 本田 直之(監修), 門田 美鈴(翻訳)(2008年05月21日)


【編集後記】

◆あの「問題作」がいよいよ「紙」でも登場です!

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

私も既に電子版で読み終えていますが、やはり通常の本で再読しようかと。


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この記事へのコメント
               
smoothさん
ご紹介ありがとうございます!
日本の皆さんにも役立つ書籍を、
オリジナルコンテンツも翻訳も
今後ともしていきたいと思います。

よろしくお願いします。訳者:関谷英里子
Posted by 関谷英里子 at 2010年04月16日 10:07
               
誤字あります。対処法です。
Posted by サム at 2010年04月16日 14:31
               
>関谷さん

翻訳者様じきじきのコメントありがとうございます(&ツイートも)。
読みやすくてよかったですよ。
個人的には翻訳本好きですが、またオリジナルも期待しております。

>サムさん

ご指摘感謝です!
早速直しました。

…匿名でやってると、こんな時間でも対処できるのが良かったりw
Posted by smooth at 2010年04月16日 14:44
               
そうですよね。ワタクシも紙の本も買いました〜中身知っているのに(爆)

1読者としては、電子化しても
あんまり読書スタイル変わらなそう(汗)

ではでは。
Posted by ゆきんこ at 2010年04月16日 16:43
               
>ゆきんこさん

私の場合、ぶっちゃけ付箋を貼れないとキツいっす。
電子書籍でもシステム的に、付箋貼るのとかありますが、今までのやり方(位置とか出具合とか)が使えないので悩むところです。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2010年04月17日 07:32