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2010年04月13日

【オシムの言葉】「考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? 」イビチャ・オシム


考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)
考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、性懲りもなく(?)サッカー本

サッカー日本代表前監督、イビチャ・オシム氏の最新刊です。

「JEF時代からのファン」である私にとっては、「1冊丸々オシム氏の言葉だけ」という本書は、それだけで「買い」

また、かなり踏み込んだ内容となっているため、サッカー好きなら見逃せない1冊だと思われ!


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【目次】

第1章 日本はW杯グループリーグを突破できる

 グループEは、難しくもないが簡単でもない
 日本は決勝トーナメントに進める
 3戦全敗の覚悟も必要 ほか

第2章 サプラィズがあるからW杯は楽しい

 サプライズを起こすのはどの国か?
 グループリーグの天国と地獄
 優勝候補はどこだ ほか

弟3章 日本代表への提言

 岡田監督のべスト4宣言
 必要なものは「自信」
 アジア予選のオーストラリア戦で喫した1敗 ほか

第4章 なぜ日本人はリスクを冒さないのか?

 リスクを負わぬ者に勝利なし
 ハングリーでないというハンディ
 日本人の無関心 ほか

第5章 日本サッカーの未来へ

 子供たちに自由を
 ユース世代に必要なビジョンを持った指導者
 世界に誇れる日本の独自組織「高校サッカー」 ほか

おわりに


【ポイント】

■アフリカ選手権での失望

彼らは、巨額な札束を手にして堕落したのである。今日、お金のために美しいプレーはなくなり、サッカーは破壊されている。
はびこっているのは勝利至上主義である。戦っているのは、11人対11人のチーム同士のように見えるが、実はそうではない。スポンサーがチームを通じて戦っているのだ。商業主義がサッカーを支配すれば、まるでローマ時代のコロシアムのようにタイトな勝利だけを競うものとなる。


■オランダ戦でのポイント

 オランダ戦を考えるときに、最も大事なのはFLANKS(ウイング)のポジションをシャットアウトすることだ。そこを抑えることに成功するか失敗するかが非常に重要で、勝敗を分けるボイントとなる。
 これはオランダだけではないが、FLANKSのポジションが最も危険で、FLANKSを突破できるチームが勝つのだ。近年のサッカーにおいては、FLANKSの突破と、そこを抑えることに焦点が当てられている。優れたチームは、このサイドをうまく使い、相手のサイドに仕事をさせない。


■気象条件からの予測

 そして南アフリカ大会では、非常にタイトで汚いサッカーをするチームが増えるのではないかとも予想する。古くは、1966年のイングランド大会、1974年の西ドイツ大会など、寒い気象条件で行われた大会では、総じてタイトなマーク、汚いサッカーが流行した。日本は、そういうタイトなプレーは苦手である。如何に現代的なサッカーに組み替えていくことができるかということが試されるだろう。


■サッカーにおけるスピードとは

 では、サッカーにおける「スピード」とは何か。それは、相手選手より速く走ることだけを意味してはいない。スター選手の中には足が遅い選手もいる。私が訴える「スピード」とは、素早く考えどのような局面に置かれても、動きながら瞬時にして判断する「スピード」である。例えば日本が対戦するオラングを見ればよくわかる。彼らは、速く走りながらも正確にボールタッチができる。


■日本人とディシプリン(discipline)

 ヨーロッパから日本を訪れた人は、日本がいかにディシプリンを持った国かということに深い感銘を受ける。規律とルールの下に社会が平和に機能している。しかし、私は、サッカーにおいては、日本がディシプリンを守り続けることができないことを知って、少なからず失望した。
 日本人は、長い時問ディシプリン生活を送ってきたせいか、サッカーでも決めごとがある状況下においては強い。例えば中澤と闘莉王を1セットとして置くと、センターディフェンス周辺の環境では滅法強い。だが、ここで順応、適応、すなわち「瞬時に考える」という条件が加わってくると、その頑強さにヒビが入ってしまうのである。


■リーダーについて

 ナポレオンのように、リーダーには生まれながらの資質があるのだ。その資質とは際立ったプレーをする技術での優位性ではなく、生まれ持った性格だと考えている。アグレッシブに最後までプレーをし続けるというパーソナリティである。(中略)

 人間的にポジティブで信頼され、チームの方向性を示すのが、本物のリーダーである。
 そして、そのリーダーは、チームによって選ばれなければならない。政治家と同じ上うに、グループが責任をもって自らのリーダーを選ぶのだ。


■なぜリスクを負わないのか?

何かに勝つためには、リスクや犠牲を負わなければならないのだ。日本代表チームは、リスクを負えるチームである。彼らはリスクを負うことのできる資質を持っている。資質を持っていない者はリスクを負えないが、日本代表は違うのだ。それなばなぜ、彼らは、そのアドバンテージを有効に活用しないのか。
 私は、いつも、そこに疑問を感じている。もう少しのリスクが必要なのだ。それは個人のリスクであってもいい。チーム全体のリスクであってもいい。リスクを負うことによってゲームで敗戦を味わうことより、もっと多くのものを得ることができる。


■負けることに慣れてはいけない

サッカーの世界では、負けることを何とも思わないような選手には用がない。だが、日本人は、どうも負けることの悔しさを正面から受け止めない。それが美徳だと勘違いしているようだ。
 もしかすると、この日本人独特の価値観が理由で、日本のサッカーが急激な進歩を遂げることができていないのかもしれないとも思う。彼らの持つ素晴らしいコンディションの割には、その成長速度が比例していないことが不思議であるが、その理由として、こういう独特の価値観が足を引っ張っているのだろうか。


【感想】

冒頭で「踏み込んだ内容」と申し上げましたが、具体的には選手名を挙げてコメントがされている点にまずビックリしました。

さすがに「私ならこの23人を選ぶ」というような、「人事面」に言及することはないものの、具体名の挙がった選手を現代表に足し引きすれば、何となくアウトラインが見えてきそう。

自らも重用した、中村俊輔や、遠藤保仁については、高く評価しながらも、しっかり小言を言ってるのが、オシム氏らしいというかw

今話題の(?)本田圭佑や、イタリアにいる森本貴幸についても触れられています(評価については本書を)。

そしておそらく、今回のW杯のメンバーには選ばれそうも無い、高原直泰についても、その才能を惜しんでいるのが印象的でした。


◆また、W杯直前、ということもあってか、同じグループである、カメルーン、オランダ、デンマークについても分析。

同時に、「日本がこれらの国々とどう戦うべきか」についても、ページを割いています。

特にデンマークについては、「過小評価してはならない」と何度も念押し。

とはいえ、可能性としてはかなり微妙なのですが、実際に「デンマークに勝ったらグループリーグ突破」という星勘定になった場合、オシム氏の心配を余所に、おそらくマスメディアでは「既に突破できているような報道の仕方」になりそうな悪寒。


◆一方、「サッカーの話」として、「日本人は、誰かにいつも何かをいわれなければ行動ができない」と言われているのですが、それはそのまま私たち自身にも当てはまること(え?私だけ??)。

「リスクを取らない性質」というのも、そのまま「日本人に起業家が少ない理由」の遠因になっていそうな感じもします。

サッカーに国民性が出ると言いますか、やはり日本人は日本人らしいサッカーをしたり、日本人らしい生き方をしてしまうのだな、と本書を読んで、改めて思った次第。

そういう意味では、本書は一種の「日本人論」と言えるかもしれません。


◆なお、W杯後の次期代表監督に関しては、オシム氏はこのように言われています。

物事を現実的に見ることができ、大志を持ち、選手とのコミュニケーションがうまく取れ、メディアにとってカリスマ性があり、そして信用できる人間となる。

具体的にどんな候補がいるか、というのは本書を読んで頂くとして、なるほど一人は胸躍る選択だな、と(ネタバレ自重)w

ぶっちゃけ、今度の大会も、今からでも(ry

私だけじゃなくて、みんな心配しています!

とりあえず、日本代表の現状はあまり明るくないようですが、「日本と世界の両方のサッカーを知る」オシム氏の言葉に耳を傾けて下さい。


2010年W杯課題図書に決定!

考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)
考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)


【関連記事】

【オシム激白】「日本人よ!」イビチャ・オシム(2007年07月20日)

「オシムの言葉」とオシム語録の抜粋(2006年06月26日)

【号外】「日本代表に巻選手選出」と「オシムの言葉」(2006年05月15日)

「イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く」西部謙司(2007年05月22日)

「敗因と」金子達仁,戸塚 啓,木崎伸也(2007年01月05日)


【編集後記】

◆今日の本に関連して、あの「オシムの言葉」が文庫本になっていました。

オシムの言葉 (集英社文庫)
オシムの言葉 (集英社文庫)

まだお読みになってない方は、要チェックで。


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