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2010年02月12日

本当にヤバい「テレビ局の裏側」の脆弱性4つ




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、フリーのテレビディレクターである中川勇樹さんの「テレビ業界内部告発本

昨年末発売の本なのですが、たまたまTwitterで佐々木俊尚さんが購入されたのを知ったのと、行きつけのリアル書店のランキングに入っていたので、読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から。

明るい画面のすぐ裏で、スタッフは余ったロケ弁当で空腹をしのぎ、人気出演者は降板宣告に怯え、経営陣はタメ息をつく。広告費の激減、視聴率の恒常的低下…テレビという巨大産業が、もがき苦しんでいる。なぜ新聞を読み上げるだけの「情報番組」が横行するのか?なぜあの看板キャスターが交代したのか?スポンサーの地雷はどこにあるのか?ベテランディレクターが非難覚悟で業界の問題点と未来を実況中継。

本書を読めば、最近よく目にする「テレビ業界の問題の原因」がわかるかと。

そしてタイトルは、いつもの「ホッテントリメーカー」作でございます。


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【目次】

第1章 決して放送しない話

 テレビが生む格差
 同じ仕事で500万の差
 ワイドショーのスタッフシフト ほか

第2章 なぜ必ず徹夜になるのか

 すぐに電話」が原則
 ロケ装備は1000万円
 編集マンを奪い合う ほか

第3章 捏造してでも叶えたかった

 追い込まれたディレクター
 「あるある大事典」の真実
 ネタはNHK番組から ほか

第4章 「決定的瞬間」はつくりもの

 テレビは全部やらせか
 その「仕込み」は許される?
 本物の「援交」学生を探せ ほか

第5部 人気番組ほどつらい

 知られざる予算ダウン
 制作費はたった3割
 ギャラで番組が傾く ほか

第6章 お詫びの対象になります

 ボツになった「サラ金」企画
 「CMはトイレタイム」事件
 CMの間引きが発覚 ほか

第7章 テレビが変わる、視聴者が変わる

 憲法にない「報道の自由」
 放送外ビジネスへ動く
 画面の中の4000億円市場


【ポイント】

■1.テレビ局社員と制作会社社員の給料差は激しい

◆差があることは知ってましたが、ここまでとは。

 小規模な制作会社から来ていた40歳くらいのベテランディレクターは、数多くの事件現場を踏み、豊富な人脈を持ってスクープを連発していた。あるとき彼の年収が同年代のテレビ局社員の半分以下であり、10歳ほど年下の「大手」制作会社社員の筆者よりも低いことを知ったのは、さすがにショックだった。

個人的には、制作会社間でもそれほど差がある、というのもビックリでしたが。


■2.改ざんとは言えないものの、実験結果の編集は行われている

◆例えばダイエットの実験結果の例で。

被験者10名のうち、はっきり結果が出たのは2名だけだった。このとき、編集上は「Aさんはウエストがマイナス10センチ、Bさんはなんと15センチも細くなったんです」と重点的に紹介し、残りは「平均マイナス3センチ」で済ませる。平均にはAさんとBさんも含まれるので、残りの8人には実はほとんど効果がでていないわけだが、すごく効果が出たように見えないだろうか。

確かにA&B両名を除いたところの平均は0.6センチですから、ほとんど効果はない、といっていいですよね。

「あるある大辞典」の一件以来、データの捏造や改ざんは行われてはいないものの(多分)、このくらいの編集は当たり前のよう。


■3.バラエティ番組の「仕込み」は仕方ないこと?

◆考えてみれば、旅番組やバラエティ番組で、タレントがいきなりお店に入って断られたことはないワケで。

これらはほとんどの場合、番組スタッフが事前に交渉して、日時を決めた上で訪問しているそう。

これを「やらせ」として問題にする人はおそらくいないであろう。情報番組やバラエティ番組のほとんど全ては、こういった「仕込み」なしには成立しない。むしろ必要な演出の一部と言えるものだ。

なお、筆者によると「電波少年」は本当に「アポなし」で撮影していたらしく、一度ロケが重なった際に、現場は大混乱だったそうw


■4.制作費はたった3割

◆本書ではわかりやすい例として「1社提供番組」であった「あるある大辞典」でお金の流れを解説しています。

まず「制作費」とは何ぞや?

 制作費とは文字通り番組を制作するためのお金で、広告代理店が営業経費などマージンを差し引いてからテレビ局に渡す。マージンは条件により異なるが、10%台から25%程度と言われる。さらにここからテレビ局が自社の利益や営業経費を差し引いたものが番組制作費となる。

「あるある」の場合、番組制作費が3250万円なので、1社提供のスポンサーである花王は、4500〜5000万円ほどの制作費を払っていたと推測されるそう。

ただ、花王は、この制作費に加えて、「電波料」も支払っています。

波代とも呼ばれるこの料金は制作費と同額にまでなることが多い。つまり「あるある」の場合、番組制作費は3250万円でも、スポンサーは1億円近い金額を支払っていたと推測できる。

しかも、実際に現場で制作する下請け制作会社に回っていた金額がたった900万円弱だったというのもスゴイです。

うーん、間で搾取されすぎてるような…?


■5.不快な「山場CM」

「山場CM」とは、慶應義塾大学の榊博文教授が命名したもので、俗に言う「CMまたぎ」(CMをまたいで視聴者に見てもらうために、CM前に引き付けて、CM後にその続きを流す)のこと。

 前出の榊教授が大学生に行ったアンケートでは、「山場CM」を不快とする人が全体の86%に及んだ。さらに、日本のCMの4割を「山場CM」が占めており、アメリカの15%、イギリス6.4%、フランス0%と比べて格段に高い。

そこまで「山場CM」にするのも、結局は「視聴率のため」

私は知らなかったのですが、CMの時間も「番組視聴率としてカウントされる」のだそう。

この問題は、欧米のように法で規制しないと難しそうです。


■6.その他の視聴率稼ぎのテクニック

「昔はそんなことやってなかったよな」、と思わせられるテクニックの数々がw

●「またぎ」

他局の番組の開始時間(例えば「8時」)に合わせて、面白いネタをやる、という手法。

直前に番組が終了した他局の視聴者を引き寄せる効果もある。


●「フライング」

毎正時ちょうどではなく数分前に番組を始める手法。

「マジカル頭脳パワー!!」が、ゴールデンタイムの番組としてこの手法で成功したため、一気に拡大した。


●「ステブレレス」

「ステブレ」とはステーションブレイクの略で、番組と番組の間のCM枠のことを指すが、この間のチャンネル変更を防ぐために、間を空けずにそのまま次の番組を放送する手法。

この時間のCM量を減らしているので、その分番組内のCMを増やさざるをえない、という負の側面を持つ。


◆いずれも、番組の本質とは関係ない小手先のテクニックと言えないこともないですが、これで視聴率が稼げれば正解というのが、テレビ局としての理論かと。


■7.有名俳優がショッピング番組に出演するワケ

◆単純に「売れなくなったから?」とオモタら、甘かったです。

「なぜこんな番組に?」と思われるかもしれないが、彼らにとってはいい仕事なのだ。実はショッピング番組は、通常の数倍の出演料を支払うのが慣例となっている。一度制作された番組は、地上波の系列局を越えて、いくつもの地方局、CS局、BS局で数ヵ月に渡り、何十回も放送され続けるからだ。番組終了は数時間で終了するのだから、俳優やタレントにとってテレビショッピングは、割のよい一種の営業なのである。

ただし、ショッピング番組自体は、商品の効果・効能を実際より良く見せるための過剰な演出等が問題となり、今までも何度か厚生労働省や公正取引委員会から警告を受けているのだとか。

いくら出演料が高くとも、紹介している商品が新聞ネタになったら、イメージ悪化は避けられません罠。


【感想】

◆以前書いたことがあったかもしれませんが、ワタクシ、新卒時に某キー局の役員面接まで奇跡的に残り、最終的には落とされたものの、その後、その局の子会社である制作会社から入社のお誘いを受けたことがありました。

当時は「マスコミ企業の仕組み」等、全くわかっていなかったので、ホントにテレビ局の仕事がやりたかったら、そこにお世話になっていてもおかしくなかったハズ。

ただ、テレビの仕事がやりたかったわけではないので、結局は普通のメーカーに就職し、その後脱サラして税理士となり、何故か仕事より熱心にブログを書いているのですがw

なお、本書によれば、テレビ業界で働きたかったら、ADやリサーチャー、ロケ車両のドライバーであれば、結構求人はあるそう。

しかも2011年にはBSデジタル局も増えるため、番組制作会社や技術会社の多くは人手不足に陥っているのだとか。


◆ただし、テレビ業界が繁栄するためには「スポンサー」が必要なわけで、昨今の不況のあおりを受けて、企業の広告宣伝費にかける金額は明らかに落ちています。

そこに降って沸いたような「トヨタショック」が。

【テレビ/芸能】トヨタが広告宣伝費を更に減らす模様で、TV局も芸能界もピンチ! 近く冠スポンサー番組は全て終了へ…CMギャラも苦境に

ネタ元が日刊ゲンダイなんで、どこまで信じていいのかわかりませんが、テレビCM費に関しては、少なくとも今後減ることはあっても、増えることは考えにくいです。


◆それに加えて、インフラとしてのテレビをも揺るがすような出来事が起きているような。

ソフトバンク、Ustreamに18億円出資 - ITmedia News

そのUstreamを使った中継録画で、最近お気に入りなのがコチラ。

Ustreamがサービス停止したことにより動画割愛しました

参考記事:沖野修也@The RoomのプレイがUstreamでダダ漏れ:小鳥ピヨピヨ

単なる動画配信は以前からありましたが、こちらはリアルタイムでの中継が出来るのがミソです。

結局テレビ業界(だけに限りませんが)は、「既得権益集団」であり、それがゆえの好業績だったり、社員の高収入だったりしたのが、そろそろ怪しくなってきたというワケかと。

私はまだ読んでないのですが、池田信夫さんが5年も前に出されたこんな本もあります。



◆実際のところ、本書ではそういったインフラ的な問題ではなく、もうちょっと現場ネタのお話がメイン。

「ハード」ではなく「ソフト」と言いますか。

そういうテレビ局の「ソフトを制作する能力」という点では、ポイントには挙げそこなったのですが、「邦画の製作」があります。

本書によると、「06年から3年間の日本映画の興行収入の上位5作品を見ると、全てテレビ局が参加している作品」なのだそう。

そういえば、2009年興行収入トップの映画「ROOKIES−卒業−」も、思いっきりTBSで宣伝してましたっけ。



…あれ?メチャクチャ言われてますねw

あと、2009年5位の「オダルフィ」アマルフィ」はフジテレビ系列でしたし(やっぱりメチャクチャ評価w)。


◆来週出る週刊東洋経済でも、テレビ(と新聞)の特集なのだそう。

媒体的に「ハード中心」の誌面になるような気がするので、併せて本書もご覧頂きたく。

ぶっちゃけ「小ネタ中心」かもしれませんが、これもまた、テレビ業界のひとつの側面ですから。




【関連記事】

【面白】「テレビの笑いを変えた男横澤彪かく語りき」(2009年08月13日)

【マスメディア終わりの始まり】「2011年新聞・テレビ消滅」佐々木俊尚(2009年08月15日)

【必読!】「新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に」小林弘人(2009年04月16日)

「テレビCM崩壊」Joseph Jaffe(著)(2006年08月05日)

「視聴率男」の発想術 五味一男 (著)(2006年02月04日)


【編集後記】

◆4月に出る「1Q84 BOOK 3」には及ばないものの、昨夜の時点でこの本もしっかり2位につけておりました。


うーん、メンズも出してもらえんだろかw


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