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2009年08月13日

【面白】「テレビの笑いを変えた男横澤彪かく語りき」




【本の概要】

◆今日お送りするのは、私と同じ世代(アラフォー?w)の方ならビビビと来るんじゃないか、というディープな本

著者の横澤 彪さんは、フジテレビ在籍中にプロデューサーとして「オレたちひょうきん族」や、「笑っていいとも!」を世に送り出した方です。

現在の「フジテレビ人気」「女子アナブーム」を作り出された方が語りまくっただけあって、中身も非常に濃いものに。

当時テレビっ子だった私には、ぶっちゃけ面白かったです!


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【目次】

第1章 創生期
第2章 顕生期
第3章 熟成期
第4章 全盛期
第5章 転生期
第6章 原点回期
第7章 かく語りき
第8章 再生期


【ポイント】

◆本書は、横澤さんに対して、フジテレビアナウンサーの塚越孝さんがインタビューしていく形式をとっています。

引用内での太字部分はその塚越さんの発言ですので、お間違いなく。


■かんき出版の神吉晴夫さんとの出会い

◆私もこの本読むまで全然知らなかったのですが、横澤さん、プロデューサーとして花開くまで、色々苦労されています。

その1つがサンケイ新聞出版局への出向。

ただそこで出会ったのが、当時のフジテレビ社長の鹿内信隆さんの命で、光文社から顧問として連れてこられた神吉晴夫さん。

Wikipediaにも「戦後最大の出版プロデューサー」なんて書かれている凄腕の方です。


◆神吉さんは、「本は書名が命です」と言って、タイトル決めに時間をかけ、「朝日新聞に広告出さないと売れないですよ」とライバル会社に広告を打つという「オキテ破り」を主張w

さらには、読者カードに赤鉛筆で線を引いて、編集でもない販売担当の横澤さんに「調べて返事出しとけ」、と。

横澤さんは言います。

だから、神吉さんっていうのは、僕の一つのキーマンなんですね。出版の人なんだけど、僕のプロデューサー虎の巻っていうのは、実は出版時代に盗んでいるわけ。(中略)
 だから、テレビ業界には僕、師匠ってあんまりいないんだけども、実は出版業界にはいたよーっていう。そういうとんでもない人がね。

他にも、神吉さんのエピソードがいくつかあり、私自身が出版よりの人間なので、この部分はかなり参考になりました。

また、異業種にも応用できる考え方、というのはあるものなのだな、と深く納得。


「笑ってる場合ですよ!」誕生秘話

◆今の若い人はご存じないと思いますが、「笑っていいとも!」の前身として生まれたのが「笑ってる場合ですよ!」

お昼のコアタイムに、その後ビッグネームとなる「B&B」「ツービート」「紳助・竜介」といったメンバーが登場する当時としても型破りの番組でした。

企画段階では、とりあえずは、時間帯からいって「主婦」をターゲットにしよう、と。

 じゃあみんなで、女性のデスクとか、色んなスタッフ全部集まって、作家もいっぱいいたんだけど集まってね、「主婦」のイメージを書こうじゃないか、と。自分の描く「主婦」っていうのをイメージを描きましょうって言ったらですね。大体が20歳代の後半ね。子供が2人いて、団地とかマンションに住んでて・・・。が、みんなのイメージとして出てきたの。ということは、みんながそう思っている主婦がそうだと思ってたら、まぁ当たらないなと。この番組は。

いきなり企画段階で「ダメ出し」であります。

 つまり、色んな主婦がいるって考えたときから、物事が始まるんじゃないかと。私の意見としてね。18で子供生んじゃった主婦もいるだろうと。50でまだ主婦やってる人もいるだろうと。だから、もし「主婦」って捉えるんだったらば、そういうふうに幅広く考えないとマズいんじゃないかと言ったのね。だとしたら、「主婦」という切り口じゃなくて、「お笑い好きな人」みたいなほうがいいんじゃないかと。

これ、サラっと書かれててますけど、ほとんど30年近く前の話なのがスゴイです。

当時にして、「属性」から逃れられていたとは。

その後の、まだ視聴率が悪くなかったこの番組の打ち切りを決断したお話も、読み応えアリ。


■タモリの素顔

◆その後始まった「笑っていいとも!」は皆さんご存知だと思います。

司会のタモリについて、横澤さん曰く「オフ感覚の人」。

だって仕事したがらないもん、まずね。(中略)

みのもんたは、仕事してなきゃ不安で不安でしょうがないんだもん。タモさんはしたくないんだよね。まずしたくないの。それから、なるべく自分の出番とかしゃべりを軽くしたいと思うタイプ。普通は、まだまだ俺が全部仕切るみたいのが多いでしょ。違うの。

さらにビックリしたのがコレ。

 それからすごいのはね、20何年間「笑っていいとも!」やってますけども、タモリの企画ってないの(笑)。

なんというユルキャラwww

同じお笑いでも、島田紳助氏のように自らガンガンプロデュースしていくのとは好対照です罠。


■明暗を分けたフジテレビとTBS

◆漫才ブームに乗って大躍進をとげたフジテレビに対して、その波に「乗り損ねた」TBS。

当時だけでなく、その後にも影響があったようです。

乗り損なったですよね、TBSは。

 だからバラエティのね、その後バラエティってどうやって作るのか、分かんなくなっちゃったんですよ。
 一時ねぇ、確か所(ジョージ)と(明石家)さんまがね、30分の番組、司会とかって。「TBSから仕事来ました〜」とかって喜んでいったわけ。そうしたらね、2回か3回かでやめましたよ、彼ら。なぜかって言うとね、2人で行ってね、飛び込みで行って、「こんばんは!」って挨拶してしゃべってる間にね、なんか「カメラ止めます」って言われて、止まっちゃったんだって。で、「なんで止まるの?」って言ったら、「今、見切れました」ってカメラマンがね。

あぁ、そんな古いこと言ってたんだ。

 だって、別に見切れたっていいじゃねぇかみたいなね、本人にしてみればね。それから次に台本通りやって下さいみたいな。それでまたキレちゃったの。そんなことでね、それだけ遅れちゃったってこと。


◆なお、この後に続く、横澤さんの人生訓(?)も含蓄アリ。

 だから、僕の感想としてね、とりあえず流行りものとか波とかそういうものが来たら、絶対に乗ると。まず乗ることが大事なのね。それで途中でやめてもいいから、とりあえず乗ってみると。

なるほど、「流行りもの」には乗れ、と。

・・・とりあえず、まだの人はtwitterも始めてみるといいカモw


■劇場で笑って頂くのが芸人の本線

◆横澤さんは、その後失脚させられる鹿内宏明氏の命によって、ヴァージン・ジャパンの社長を務めた後に、スカウトされてご存知吉本興業に入社。

東京支社長として、吉本の東京進出に尽力します。

お笑いブームを担った一人だけあって、横澤さんのお笑いに対する見方はシビア。

最近の若手に対してもこう言われています。

公平に言ったらね、今の・・・。例えば、たいへん申し訳ない言い方ですけど、紳助・竜介の漫才と、今やってる人の漫才を観たら、今の人のほうが遥かに上ですわ。上手い、上手い!上手いですよ。でも、「おまえ、ネタ何個持ってるの?」っていったら、せいぜい1個だね。1個。ネタ1個。で、何分もつか・・・。つまり、生の客前に出ていって何分できるっていったら、どんなに我慢しても10分でしょう。

あぁ、そうでしょうね。10分やったら、彼らにとって長いでしょうね。

 10分、10分やったら・・・。まぁ、学園祭とかやってますからね。それでワーキャー言う相手にはできるけれども、それが爺さん婆さんの前にいって「はい、どうぜ」って言ったらね、やっぱりもたない。そういうくらいの力量しかない。ないんですよ。そういうその・・・、ギャグでもなんでも、瞬発的にワーってくるけれども、ころっと忘れられちゃうでしょ、もう。早いんですよ。


◆ただその「消えるのが早い」という問題も、テレビサイドに立ってみれば「取っ替えひっかえやる」という方法で対応可能。

では逆にそれが、「芸人にとって問題か」というと、芸人の側も、特に「一生"お笑い"をやりたい」、というワケでもなく。

要するにテレビに出ることはベリーグッドなんですけども、どうにでも変貌しながらでもね。テレビには残りたいんだけども、別に漫才とかお笑いにこだわっているわけでもなんでもないから。そういう人たちがガァーっといるもんで。

うーん、何だかどっちもどっちという感じ。


■者ども、立ち上がれ!

◆最近のバラエティ番組に対する横澤さんの苦言から。

それから、えーっと・・・、座らせたのがいけないって思うのね。ひな壇にしちゃったから、動かないじゃないですか。これが最悪なんだよね。

はぁー、最悪?

 うーん、立たせろと、みんな。立って動かしたほうが面白いんですよ。番組っていうのは。もうね、椅子座ってね、これはトーク番組だけで結構でね。そうじゃなければ立たせましょうよと。(中略)

そうか!そうですね。今はひな壇芸人とかひな壇タレントとか・・・。

 そうそう、あそこにねぇ、あそこ埋めればねぇ、満足しちゃうわけね。あそこにそこそこの芸人が埋まれば、「埋まった!」みたいな。

「立ってる・座ってる」という視点は私は全然ありませんでした。

ただ、そう言われてみれば、バラエティのひな壇番組でも、最初から最後まで座りっぱなしの番組よりは、途中で動きがある番組の方が面白いかも・・・って言えるほど数見てませんが。


【感想】

◆ポイントだけ抜いてもわかりにくいので、ある程度説明しながらピックアップしてみました。

ただ、今回も付箋貼りまくった割には全然ご紹介しきれてません!

基本的に、「考え方」「やり方」「発想」といった視点から選んだので、結果的に単純に「テラワロス」的な部分はカットせざるをえず(シクシク)。

また、ライブドア事件で有名になったフジテレビの日枝会長が、若かりし日にひょうきん族の「ひょうきん懺悔室」で、懺悔している所なんてレアな写真が収録されているのも見ものですw


◆横澤さんご自身は、テレビで拝見している限りはひょうひょうとされてますけど、実は一本が通ったお方。

「ひょうきん族」が世に出る寸前、「ひょうきん」という言葉が古くないか、と故・鹿内春雄議長にクレームをつけられたものの、「なんとしてもやらせて頂きたい」とツッぱったところ、

「分かった。その代わりおまえ、当たらなかったらよぉ、9階から飛び降りろ」

と言われたそう。

それでも譲らず、結果的に大成功したのですから、大したものです。


◆ちなみにその時の裏番組は、当時のオバケ番組「8時だョ!全員集合」

どう考えても勝ち目のなさそうな勝負に、どうして横澤さんは勝てたのか。

「これ!」と単純に答えられるようなモノでもないので、詳しくは本書をお読み頂きたく。

なお、私も本書を読んで初めて知ったのですが、「全員集合」のコントと「タケちゃんマン」は、子供たちのために時間がかち合わないようにしてたのだとか。

なんというか、懐の深さみたいなものを感じました。


◆他にも面白いエピソードは山ほどあって、「元リクルートの江副さんが、東大ではパーティ券を売りまくっていた」とか、東大の大学祭で「亀●静香さんが●の肉を"焼き鳥"と称して店を開いた」(超自重!)とか。

また横澤さんご自身のお話でも、フジテレビ入社後に「井深大さんと盛田昭夫さんに面接されて、ソニーに転職しかけた」とか、出版時代に東販の仕入担当だったのが、「セブンイレブンの鈴木敏文さんだった」等、盛りだくさんw

こういう話は、「タメになる」とかでは全然ないんですが、著名人の若い頃の素顔というのも、読んでいて非常に楽しめました。


◆とにかく横澤さんというのは、私たちの世代のマスコミ志望だった人間から見たら、「神様」のような人でしたから、マジで。

ヨメに「この人知ってる?」と本を渡したところ、帯の画像を見て「ひょうきん族の神父役の人ね」と言われて、膝から崩れ落ちそうになりますたが。



(「懺悔室」の後がエンディングテーマで、その直後に、20年前(?)のパソコンのCMが流れるのがステキw)

ただ、その横澤さんも、プロデューサーとして花開いたのが実は40になってからというのが、本書を読んでの一番の驚きでした。

もちろん、上記ポイントでも挙げたように、それまでの仕事を通じて色々と得たものがあったわけで、その点でも励まされる方もいらっしゃるかと。


非常に面白くてタメになった1冊!



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【編集後記】

◆本書でも軽く触れられている、フジテレビのクーデターについて書かれているのがこの本。

メディアの支配者〈上〉 (講談社文庫)メディアの支配者〈下〉 (講談社文庫)
Amazy

この夏、時間を作って読んでみたいな、と思っております。


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