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2009年06月07日

【スゴマニュアル】「完全網羅 起業成功マニュアル」ガイ・カワサキ


完全網羅 起業成功マニュアル
海と月社
三木俊哉(翻訳)
発売日:2009-05-29


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、アップルの元伝説的エバンジェリストであり、現在は著名ベンチャー・キャピタリストである、ガイ・カワサキの起業指導本。

アマゾンで「全米ベストセラー」とあったので、評判はどんなもんかとあちらのアマゾンを見てみたところ、確かにかなり評判良いようです。

本書を読んで感じたのが、そのカバーする範囲の広さと内容の細かさ

「マニュアル」というだけあって、かなりガチな1冊です!


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【目次】

まず、お読みください。

第一歩 Causation
第1章 エンジン始動の奥義

明確化 Articulation
第2章 ポジショニングの奥義
第3章 売り込みの奥義
第4章 事業計画作成の奥義

活性化 Activation
第5章 自己資本経営の奥義
第6章 人材採用の奥義
第7章 資金調達の奥義

成長 Proliferation
第8章 パートナーシップの奥義
第9章 ブランド構築の奥義
第10章 事業拡大の奥義

責務 Obligation
第11章 気高き事業遂行の奥義

あとがき


【ポイント】

■「標語」(マントラ)を作る

◆起業家が、ふつう最初に作るのが「ミッションステートメント」

ただし、その欠点は、何から何まで詰め込もうとして、みな似たり寄ったりになることです。

そこで代わりに作るとよいのが、組織の「標語」(マントラ)

本書ではすぐれた標語の例が挙げられていましたので、その中からいくつかご紹介。

★本物のアスレチックパフォーマンス(ナイキ)

★満足を味わうひととき(スターバックス)

例えばスターバックスにについて言うなら、同社のミッションステートメントである「会社として成長しながらも妥協なき原理原則を保持し、世界最高品質のコーヒーを提供する」より、確かに憶えやすいですね。


◆そして、ここで気をつけなければならないのは、「標語」「うたい文句」とは違うということ。

前者は従業員向けの言葉、すなわち仕事で何をすべきかの指針である。後者は顧客向けの言葉、すなわち製品・サービスをどう使うべきかの指針である。

例えば、ナイキについていうなら、標語は上記の通り「本物のアスレチックパフォーマンス」ですが、うたい文句はお馴染み「ジャスト・ドゥ・イット」

本書では、いくつかの有名企業のミッションステートメントと、著者であるガイが考えたそれらの会社の標語とが、対になって紹介されています。

確かにガイの標語の方がグサっと来るのは事実かも・・・。


■ビジネスモデル構築のヒント

◆本書の中から2つほど抜粋します。

●具体的に

 顧客を正確に記述できればできるほどよい。多くの起業家は小さな市場に押し込められ、普遍性を実現できないことを恐れる。しかし、ほとんどの成功企業はまず特定の市場をターゲットにし、追って他の分野に対応することで(たいていは予想外に)規模を拡大している。

●シンプルに

 10語前後でビジネスモデルを記述できなければ、それはビジネスモデルではない。しかもシンプルな日常語を使おう。(中略)ビジネス用語でビジネスモデルを表すことはできない。

◆後者については、「10語前後」というのは英語ならではかもしれませんが、それでも優れたビジネスモデルは簡潔に言い表されるもののよう。

先日ご紹介したクックパッドも、サイトにあるのは「みんなのレシピを見る」「自分のレシピを載せる」だけですもんね。


■社内起業向けの提言から

◆本書には、ところどころにいくつかのコラム風の「付録」があるのですが、その初っ端が「社内起業術」

社内起業家向けの特別のアドバイスが列挙されているので、そこから2つほどご紹介。

●隠密裏に行動する

プロジェクトが無視できないほどに進捗するまでは、あるいは会社でその必要性が認識されるまでは、ひとりでこっそり取り組んだほうがよい。

●構造転換を予測し、これに乗じる

きっかけが市場の変化などの外部要因であれ、CEO交代などの内部的要因であれ、構造転換は変化のしるしであり、あなたにチャンスをもたらす可能性がある。有能な社内起業家はこうした転換を予測し、それが起こったときに新しい製品・サービスを披露する用意ができている。「これまでの成果をご覧ください」。反対に、だめな連中はこう言う。「ついに転換のときです。会社のお許しと半年の時間と分析チームがあれば、新しい製品戦略を考えてみます」


◆個人的には、後者のお話に関してこの本で読んだ、中島聡さんの「Windows95」開発秘話をふと思い出しました(社内起業とは違いますが)。

ただ、「問題意識」を日頃から持っていた、という点では同じなのかも。


■ポジショニングの奥義

◆ポジショニングに関しても、いくつかアドバイスがありましたので、そこから抜粋します。

●顧客中心

 ポジショニングとはあなたが顧客のために何をするかである。あなたがどうなりたいかではない。自分たちが「リーディングカンパニー」だという宣言は自己中心であり、顧客中心ではない。

●具体的

 すぐれたポジショニングは特定の顧客をターゲットとする。対象顧客ならそれがすぐにわかる。対象顧客でなくともわかる。たとえば「ウェブサイトのセキュリティ向上」は、「銀行のオンライン取引における不正行為の削減」に比べれば平凡であいまいな価値表現だ。

この辺は、会社だけでなく個人事業主についても言えることですね。

「●●業専門の■■」なんてキャッチフレーズも見かけますし。

●適合的

組織のコアコンピテンシーの裏側にあるのは顧客のコアニーズである。組織のコアコンピテンシーと顧客のコアニーズが適合していなければ、あなたの組織やポジショニングは顧客にとって魅力的ではない。

これまた重要

上のものと同様に、個人についても言えることです。


■10/20/30ルールを守る

◆これは第3章の「売り込みの奥義」から。

数字の意味するところは、「10枚のスライド」「20分」「30ポイントのフォント」です。

なお、YouTubeにこの部分についてスピーチしているガイ・カワサキの動画がありました。

2分弱ですし、字幕も付いてますので、ぜひご覧ください。




◆この動画では、さらっと言われてますが、本書における「10枚のスライド」の部分では、その10個の項目(「タイトル」「問題」「解決策」「ビジネスモデル」「製品・サービスの目玉」「マーケティング・販売」「競合」「経営陣」「財務予測と重要指針」「現状、ここまでの成果、スケジュール、資金の用途」)とそれぞれの、内容とコメント、が、3つの売り込み先(「投資家向け」「見込み客」「潜在パートナー」ごとに表になってまとめられているという優れもの

結構ここだけでもチェックする価値アリだと思われ。


■人脈づくり術

◆こちらも「付録」から。

人脈と言っても、ビジネスとしての人脈(本書では「シュムージング(schmoozing)」と呼んでいます)なので、お間違いのなきよう。

●的確な質問をして口を閉じる

 シュムージングの名人は会話を独り占めしない。彼らはまず相手の関心を引く質問をし、それから聞き役に回る。シュムージングの名手は話し上手ではない。聞き上手である。

●フォローアップする

 だれかと会ったら24時間以内にフォローアップしよう。

●お返しをする

 シュムージングの名手は人の恩に報いる。それも喜んで。するとポイントが少しばかり加算されるだけでなく、さらに別のお願いがしやすくなる。

●お返しを要求する

 「え?」と思われるかもしれないが、人に恩をかけたらお返しを要求すべきである。そうすれば、相手は恩を受けて申し訳ないという気持ちから解放される。すべてがご破算になるわけだ。すると向こうも新しいお願いをしやすくなる。


◆最後の「お返しを要求する」というのは、ちょっと高度かもしれませんね。

なお、私に献本されても、お返し(記事)は期待しないでくださいマセ。


■Eメール利用術

◆これまた「付録」の1つ。

また2つほど抜粋してみます。

仕事術ともちょっと違う点もありますね。

●24時間以内に返信する

 先にも述べたが、反応のよさは人脈を固めるうえで大事な要素だ。Eメールのテーマが新鮮なうちに返信する必要がある。

ちなみに、勝間さんも、マスメディア関係のメールのやりとりは、タイムリーに行うようセミナーで言われていました。

私も出版社さん等からの最初のメールは、できるだけ迅速に返すようにしています。

●短く簡潔にする

 ムダ口をたたかず、さっさと結論を言う。理想的な長さは5センテンス以内。言うべきことを5つの文で言えないとしたら、じつはさほど話すことがないのだ。

・・・これは私はちょっとキツいかも。

ただ、お忙しい著者さんだと、確かにあっけないくらい簡潔なメールだったりしますね。


■マスコミ、報道陣を引きつけるための基本コンセプト

◆第9章の「ブランド構築の奥義」から。

「ブランド構築」ということで、「4P」の話やら、「コミュニティ」の話やらも出てくるのですが、その中のパブリシティについてです。

●うわさを立てて報道させる

 たいていの組織は報道がうわさを生むと思っている。すると読者が顧客になりたがると。これは逆である。実際はこうだ。まず、あなたが何かすごいものをつくり出す。そして障壁を低くして、これを人々の手に行き渡らせる。すると彼らがうわさをするようになり、それをマスコミが記事にするのである。

そういえば、野口嘉則さんのベストセラー「鏡の法則」も、テレビで取り上げられたことによって大ヒットになったと思われていますが、そもそも取り上げられた理由と言うのも、ネットでの検索回数が多かったからで、すでに一部ではウワサになっていたんですよね。

●転ばぬ先の「友」を実践する

 私がアップルに勤めていたころ、マスコミは終始この会社の幹部にインタビューしたがった。それほど話題の会社だった。こいうふうにちやほやされると、どうしても「ニューヨーク・タイムズ」「ウォールストリート・ジャーナル」「フォーブス」といった有力どころを重視したくなるものだ。
 私自身はむしろ、聞いたこともないような新聞や雑誌の記者に肩入れしようとした。何年かたったいま、こうした記者たちは有名どころで働いており、当時の私の態度を覚えていてくれる。転ばぬ先の「友」――それも「友」があなたの力になるかどうかわからないうちから友情を結ぶことが大切だ。

私の場合は、出版社さんからのコンタクトも、どの出版社さんだから「優遇or冷遇」するとかはないです。

そもそも、出版業界の雇用は流動性が激しいみたいですし・・・。


【感想】

◆えー、今回はかなり偏った抜きだしになっております。

特に、「資金調達」の章とか、まったくスルー。

著者であるガイ・カワサキが、今ベンチャー・キャピタリストであることを思うと、ホントはかなり重要のような気もするのですが、正直、この章を必要とするような方が、当ブログの読者にいらっしゃるのかどうか。

それよりかは、と思って、「ブランド構築」等を取り上げてみた次第。


◆とにかく、「至れり尽くせり」と言ってもいいくらい、細かく書かれているのが、本書の特長。

「全米で人気」というのもうなづけます。

アマゾンに寄せられた推薦の言葉もすごいですし・・・。

●クレイトン・クリステンセン『イノベーションノジレンマ』著者
「これは愉快で完璧、そして極めて実用的な起業家向けハンドブック。
まさにカワサキの真骨頂。
起業を望む人は必ず読むべきだ」

●ジェイ・コンラッド・レビンソン『ゲリラ・マーケティング』著者
「わがビジネスは世界的に知られたブランドになった。
それでも本書を読むと、すべてをなげうって一からやり直したくなる。
ガイの本はこれまで疑いもしなかった多くのことがらの
真実を明かし、私の思い込みをことごとく打ち砕く。
だから、まるで小説のように楽しめた。
本書の読者となら、私も銀行になっておつきあいしたい」

●ジェフリー・ムーア『キャズム』著者
「本書が明らかにするように100パーセントの保証というものはない。
あるのは大きなチャンスだけだ。
本書を読んで素晴らしい成果を実現されたい」

●リック・ウォレン『人生を導く5つの目的』著者
「経験に学ぶのは賢明だが、
他人の経験から学ぶのはもっと賢明だ。
本書でわが友ガイ・カワサキは、自らの起業体験の傷にひそむ教訓、
その過程で得られた知見を語る。
新しいことをはじめようとするすべての人に、
現場で実証済みの実用的な支援を提供してくれる」

●マイケル・モリッツ セコイア・キャピタルの著名ベンチャーキャピタリスト
「成功する起業家に必要なのはガレージ、アイデア、そして本書だ。
立ち上げ間もない会社の活力の本質を、ガイはきびきび説き明かしてくれる。
本書の内容をすべてわが社のウェブサイトに載せられたら、
われわれの仕事はずっとラクになるのに」

●ウェンディ・コップ 教育NPO「ティーチ・フォー・アメリカ」の創業者兼CEO
「ベンチャーキャピタルから出資を受けようとする偉大な新興企業にも、
新しい非営利組織にも役立つ。
世界を変えようとする者は例外なく読むべきだ。
私がティーチ・フォー・アメリカを始めたときに本書があればよかった」

私の出番なんぞ100万年経ってもなさそう。


◆ただ、本書に欠けていて、そして最も大事なものが、「ビジネスのネタ」

「そもそも何をやるのか」という根本的な問題については、言及されていません。

つまり本書は「1を100(100万?)にする」方法は書かれているのですが、それに先立って「ゼロを1にする」方法については明かされていないのです。

というか、そもそもそういう趣旨の本じゃないんですけどね。

この辺の「ゼロを1にする」ための発想方法等については、下記の「関連書籍&記事」もあわせてご覧頂きたく。


◆もっとも、そのアイデア自体はいつ浮かぶかわかりませんから、あらかじめ本書のような本を読んで基礎知識を蓄えておくと、「やろう」、とおもった時にロスなくできるかも。

ご紹介した「付録」以外にも、各章ごとに「FAQ」が付いており(資金調達の章ではなんと15ページも!)、より理解も深まります。

本気で起業を志す方なら、一読して損はないハズ。


ガチな起業マニュアルにお腹一杯です!

完全網羅 起業成功マニュアル
海と月社
三木俊哉(翻訳)
発売日:2009-05-29


【関連書籍(起業系)】

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術
世界文化社
Michael E. Gerber(原著)原田 喜浩(翻訳)
発売日:2003-05
おすすめ度:4.5
『米ビジネス誌「Inc.」の成長企業500社のCEOへのアンケート』で、『7つの習慣』『ビジョナリー・カンパニー』等を抑えて1位に輝いた名著です。

参考記事:【スゴ本!】「はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E・ガーバー(2008年09月10日)

なぜ、ベンチャーは失敗しやすいのか?
インデックス・コミュニケーションズ
発売日:2007-12-14
おすすめ度:5.0
◆根っからの起業家である真田哲弥さんが、東大起業サークルのビジネスモデルにバッサバッサとダメ出しするという、かなり実用的な本。

参考記事:【起業センス】「なぜ、ベンチャーは失敗しやすいのか?」真田哲弥,東京大学起業サークルTNK(2008年02月04日)


【関連書籍(発想系)】

外食の天才が教える発想の魔術
日本経済新聞出版社
発売日:2007-04-21
おすすめ度:5.0
◆「こういう人にしてみたら、アイデアなんていくらでも沸いて出てくるんだろうな」と思ってしまうくらいのアイデアマンが主役。

参考記事:【オススメ!】「外食の天才が教える発想の魔術」フィル・ロマーノ(2008年03月20日)

◆島田紳助氏といえば、当ブログではDVDが大人気ですが、この本も特に「起業」という点では必読です。

参考記事:【ザ・商人】「ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する」島田紳助(2007年06月08日)


【編集後記】

◆いつの間にか、この本もアマゾンの在庫が復活していました。

私は待ちきれずにリアル書店で購入済み・・・。


メインは小説なので、当ブログの読者さん的にはどうなのかわかりませんが、私個人としては、選書やレビューの仕方等、参考になる点が多々ありました。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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この記事へのコメント
               
The art of Startのロングバージョンの動画があります。(英語)


http://video.google.com/videoplay?docid=-3755718939216161559

Posted by 麿 at 2009年06月07日 11:51
               
>麿さん

コメントありがとうございます。
そして、ステキな情報ありがとうございます!

・・・こういうの見るたび、「英語がわかったらなー」と思うわけですが(涙)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2009年06月08日 01:55