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2008年05月18日

【メディアの未来】グーグルに勝つ広告モデル


グーグルに勝つ広告モデル (光文社新書 349)
光文社
岡本一郎(著)
発売日:2008-05-16
おすすめ度:5.0


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、久々のマーケティング関係のご本。

タイトルに「グーグル」なんて入っているので、ネット関係の本だと思ったらあにはからんや

「ネット」というより、むしろ、従来のマスメディアを含む「ネット時代のメディア論」といった感じの一冊でした。

「マスメディア関係ねー」と言わずに、読んでみると意外な発見があるハズ(汗)。

私は、目からウロコが激しく落ちましたよ!


080526追記

[R30]さんとこでも大絶賛されました!

[R30]: 書評『グーグルに勝つ広告モデル』


人気blogランキングいつも応援ありがとうございます!




【目次】

マスメディアの本質は「注目=アテンション」の卸売業
アテンションのゼロサムゲームから脱却できるか?
マスメディアの競合としてのインターネットメディア分析
4マスメディアvs.インターネット
テレビvs.インターネット
オンデマンドポイントキャスト事業の提言
ターゲットメディアとしてのラジオの確立
情報のコモディティ商戦から新聞は抜け出せるか
ネットとの差別化に特化する雑誌
合従連衡によってプレイヤーの数を減らす
なぜ、それでもマスメディアは必要なのか
コンテンツ論
マーケッターに求められるパラダイムシフト


【ポイント】

■ヤフーとグーグルの違い

⇒テレビ、新聞、雑誌、ラジオの4マスメディアのビジネスモデルの本質は、「大衆の注目の卸売り」「アテンション・エコノミー」

グーグルは、「アテンション」ではなく「インタレスト」(能動的な興味・関心)の卸売りをするビジネスモデル

ヤフーは情報の流通経路にインターネットを使っているだけで、依拠しているのは「アテンション・エコノミー」であり、それゆえトップページにバナー広告やテキスト広告を貼り付けている

⇒消費者の態度変容プロセスの枠組みとして使われる「AIDMA」では、アテンションはインタレストより一段購買に近いステップにあり、グーグルは対象者を「インタレスト」に絞っているので、購買までのステップが短く、必然的に広告効果が高くなり、結果として広告単価を高く設定できる


■コンテンツビジネス

⇒テレビも含めたメディア/コンテンツ産業が、他の産業と大きく異なる点の一つが「過去のストックが競合になる」ということ

⇒ストックは時間の経過に伴い、いずれ無限大まで増加するが、需要はその瞬間に存在する市場に限定されるため、需要のバランスは時間が経つにつれて、ストックが無限に大きい方向に振れ続けていく

⇒グーグルの時価総額の高さは、社会全体が膨大になりすぎたコンテンツや情報を整理することに対して、高い付加価値を見出している、ということ

⇒いいかえれば、一人ひとりの個人がこれまで情報の整理にかけていたコストを、グーグルが削減しているということになる(「時間を売っている」


■テレビ視聴者のニーズ

⇒日米での調査によると、視聴者の映像コンテンツに対するニーズは「タイムシフト」(好きなときにみたい)と、「編成権」(好きな部分だけみたい)の2つに収斂している

●「タイムシフト」

⇒視聴者自身がタイムシフトするためにHDレコーダーを購入した場合には、「CMを見ない」ことがわかっている(おおむね半分強の人がほとんど見ない)

⇒米国ではHDレコーダーによるCMスキップが問題になっているが、韓国ではテレビ局によるタイムシフトのサービス(「オンデマンドポイントキャスト」)を自らが提供しており、HDレコーダーは全く売れていない

⇒CMを見てもらうために「HDレコーダーがCMをスキップできないようにする」「プロダクトプレースメントを実施する」という方法を取るよりも、テレビ局自らがタイムシフトサービスを提供する」方が良いのでは?


●「編成権」

⇒東京MXテレビでは、番組をコーナーごとに分割してYouTubeに乗せている(ビュー数によりコーナーごとのアテンションを獲得するパワーが分かる)


■地上波と新ビジネスモデルでの併走

●新ビジネスモデル

⇒今現在のテレビ広告の到達単価は1円以下と他のメディアと比べると低いが、これは、ターゲッティングができないから

⇒そこで、オンデマンドポイントキャストを行い、視聴者の年齢、居住エリア、年収等をプロファイルデータとして取得し、それに応じた広告を流すことにより、広告単価を上げる

⇒ただし、ターゲティングすることでそれぞれの視聴者数は減り、その分一人当たりの制作費がかかってしまうため、過去のコンテンツをフル活用する


●なぜ地上波と併走すべきか?

⇒短期的視点で考えた場合、地上波放送に広告を入れるというビジネスがきわめて収益性が高いビジネスであり、中長期的に難しいことがわかっていても、すぐに棄てるのはもったいない

⇒ライフサイクルカーブで言えば、地上波は、成熟期から衰退期に向かいつつあるため、戦略の基本は、「投資を最小限にして、利益を搾り取る」こと

⇒2011年に予定されている地上波デジタル放送への移行は、成熟期から衰退期へ差し掛かっている装置産業に膨大な追加設備投資を行うという、リスクの高いもの


■ターゲットメディアとしてのラジオ

●ラジオ衰退の理由

⇒ラジオのリスナーは30代以上のシニア層に偏っている

⇒10年前の同じデータを見ると、20代以上の世代が主流だった

⇒今現在40歳前後の人が中高生だった1980年前後は、テレビというのは基本的に家に1台しかないメディアだった

⇒1980年代の半ば以降、「テレビの価格の下落による子ども部屋へのテレビ進出」「ファミコン発売」といった動きがあり、その後も「携帯電話」「インターネット」のようなアテンションを奪う競合が続々と現れた

⇒恐ろしいのは、子ども部屋におけるアテンションのシェアが奪われているということが、経営上インパクトの大きい数値としてすぐに出てこなかった、ということであり、変化が表面化したときには、すでに致命的な構造的問題になっていた


●FM局

⇒コンテンツの主流が音楽で、これを屋内で消費するという特性をもっており、ネット、特にネットラジオとの代替性がきわめて高い

⇒電波によるラジオ放送を基幹事業として続けながら、ジャンルを絞ったサブ・ステーションをネットラジオでいくつか立ち上げる

⇒ターゲティングの例:「ラジオで●●●●●音楽を聴取している人の平均年収は1000万円を超えている」(ネタバレ自重(汗))


●AM局

⇒どんどんリスナー層がシニアに偏っていき、かつ若年層のエントリーを促すことが構造的に難しいのであれば、シニアに特化したターゲットメディアとして新たな事業ビジョンを策定しては?

⇒シニア層は可処分所得も高いし、消費性向も旺盛なので、ラジオでの通販が考えられる


■ネットに食われる雑誌

●苦戦している雑誌

「一般情報誌」「女性誌」「情報系」といった「ネットで代替取得可能な情報を扱っている雑誌」

⇒最近の検索エンジンにおける検索ワードの検索数の推移によると、事件当日から日をへるごとに等比級数的に減少していき、3日後には当日の100分の1程度になってしまう


●堅調な雑誌

「ビジネス誌」「ラグジュアリー誌」といったジャンル

⇒これらは、ネットゲーム携帯電話が提供しているコンテンツと競合しない上、社会制度が崩壊しつつある中で、ビジネス関連情報の価値が高まっているため堅調


■雑誌「LEON」の分析

⇒「LEON」の雑誌ビジネスの新しさとして、ターゲットにしている層実際に読んでいる層が全然違っており、しかもそれを「確信犯」としてズラしている

⇒ターゲット設定は「年収2000万円以上で、月に30〜50万円程度の自由になる小遣いのある30〜40代男性」

⇒実際の読者は「年収2000万円以上の人のライフスタイルに憧れている、年収数百万〜1200万円くらいの一般層」

⇒ただし、実際に描かれているのは、「年収5000万円クラスのライフスタイル」


■インターネット情報の信頼の高まり

⇒2007年の「発掘あるある大辞典II」のデータ捏造に端を発し、テレビというメディアが従来もっていた信頼感の終焉が始まったのでは?

⇒メディアが持つ説得力は、そのまま広告の効果にも反映されるので、この流れは中長期的に広告ビジネスに大きなインパクトを与えると考える

⇒購入プロセスの6つの情報「マスメディア広告」「店頭販促物」「商品への知覚」「店員による説明」「エキスパートの評価」「口コミ」)のうち、インターネットが普及するまでは、「エキスパートの評価」「口コミ」の2つを参照することは、多くの商品で非常に難しかったが、今は違う


【感想】

◆本書が扱っているのは、かなり壮大なテーマだと思うのですが、最後まで貪るように(笑)読んでいました。

表面的に「理解したツモリ」でいたことが、パラダイムシフトが起きたかのように腑に落ちる様は、なかなかに快感。

「なるほど、そういうことだったのか」と今さら思ったことが多々ありました(ポイントで挙げた最初の2項目とか)。


◆最近巷で話題の(?)「地デジ」についても、ある意味バッサリ(笑)。

この辺は、本質論というか、「ビジネスとしての正答」とはまた違った制度上、枠組み上の問題等があるようなんですが・・・。

そちらの話題に興味のある方は、この本辺りが面白いカモ。

お払い箱のビジネスモデル (Yosensha Paperbacks)
洋泉社
小屋 知幸(著)
発売日:2006-04
おすすめ度:5.0

(参考記事:「お払い箱のビジネスモデル」小屋知幸 (著)


◆同じく、「オンデマンドポイントキャスト」に関しては、こちらでも言及されてましたね。

ネットがテレビを飲み込む日―Sinking of TV (洋泉社ペーパーバックス)
洋泉社
池田 信夫(著)林 紘一郎(著)山田 肇(著)西 和彦(著)原 淳二郎(著)
発売日:2006-06
おすすめ度:4.0

(参考記事:「ネットがテレビを飲み込む日」池田信夫、西和彦、他著

うーん、この本出てから、もう2年近く経つんですか。

当時とあまり状況が変わってないような(汗)?


◆また、本書では当然「新聞」も取り上げてらっしゃいましたが、文字数の関係で割愛(涙)。

新聞関係でこのブログでご紹介した中では、個人的にはこの本が面白かったです。

新聞がなくなる日
草思社
歌川 令三(著)
発売日:2005-09-06
おすすめ度:4.0

(参考記事:「新聞がなくなる日」歌川令三(著)


◆そして一番、目からウロコだったのが、雑誌「LEON」「確信犯的ライフスタイル設定」

そっかー、自分が年収2000万円ないもんだから、実際に2000万あってもあの生活ができないとは気づきませんでしたよ(涙)。

  (´・ω・`)ショボーン


◆以前、この本を読んで「スゴ本だ!」と騒ぎまくったのですが、さすがに元編集長である岸田さんとしては、そんな舞台裏書けませんワナ(汗)!

LEONの秘密と舞台裏 カリスマ編集長が明かす「成功する雑誌の作り方」
ソフトバンククリエイティブ
岸田 一郎(著)
発売日:2005-08-31
おすすめ度:4.5

(参考記事:『LEONの秘密と舞台裏』 岸田一郎 (著)


◆さらに雑誌全般に関しては、タイトルからしてモロの本もご紹介済み・・・。

ターゲット・メディア主義―雑誌礼讃
宣伝会議
吉良 俊彦(著)
発売日:2006-04
おすすめ度:4.5

(参考記事:「ターゲット・メディア主義―雑誌礼讃」 吉良俊彦


◆最後に、本書に内容的に一番近いのはこの辺りかと。

テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0
翔泳社
Joseph Jaffe(著)織田 浩一(翻訳)
発売日:2006-07-22
おすすめ度:3.5

(参考記事:「テレビCM崩壊」Joseph Jaffe(著)


◆何やら「書籍紹介」になってしまいましたが(笑)、そのくらい、本書は俯瞰的にメディア、そして広告について考えさせてくれました。

本の帯にある「広告・マスコミ関係者必読!」という言葉にハゲシク納得

この「感想」部分ではなく、上記の「ポイント」を読んで「ヤバい!」「ピン!」と来たアナタにはアマゾンアタック推奨(笑)。

と言うか、「誰」とは、ここでは具体名を出せませんが、「ぜひ読んでおいて下さい!」とメールを出したい人の顔がチラホラしております(汗)。

マジで今読んでおきたい1冊!


グーグルに勝つ広告モデル (光文社新書 349)
光文社
岡本一郎(著)
発売日:2008-05-16
おすすめ度:5.0


080519追記

この記事は今回の内容と結構関連していて面白かったです。

「マスメディア広告万能の時代は終わった」・休刊する「広告批評」の天野祐吉氏:インターネット-最新ニュース:IT-PLUS


【関連記事】

【ネオ茶の間?】「明日の広告」佐藤尚之(2008年01月22日)

「クチコミの技術」コグレマサト,いしたにまさき(2007年03月28日)

「新聞がなくなる日」歌川令三(著)(2006年08月24日)

「テレビCM崩壊」Joseph Jaffe(著)(2006年08月05日)

「ネットがテレビを飲み込む日」池田信夫、西和彦、他著(2006年07月23日)

「お払い箱のビジネスモデル」小屋知幸 (著)(2006年05月03日)

「ターゲット・メディア主義―雑誌礼讃」 吉良俊彦(2006年04月10日)

『LEONの秘密と舞台裏』 岸田一郎 (著)(2005年09月12日)



【編集後記】

◆テレビ関係の話題が出たところで、こんなネタを。

「ほぼ日刊イトイ新聞」で、「ウゴウゴルーガ」の話題が出ているのを発見しました。

ほぼ日刊イトイ新聞 - みんな大好き、ウゴウゴルーガ!


◆ここで話題になっているDVDは、私も予約してゲット済み。

ウゴウゴルーガおきらくごくらく15年!不完全復刻DVD-BOX(完全予約限定生産)
メディアファクトリー
TVバラエティ(俳優)
発売日:2007-10-05
おすすめ度:4.5

なんか、記事だともう買えないように読めますが、アマゾンではまだ在庫アリ。

当時ファンだった方なら是非(笑)!


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Posted by smoothfoxxx at 09:45
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グーグルに勝つ広告モデル (光文社新書 349)(2008/05/16)岡本一郎商品詳細を見る トラックバックURL : http://app.blog.livedoor.jp/smoothfoxxx/tb.cgi/5141699...
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著者:岡本一郎 出版社:光文社(2008/5) オススメ度:★★ Web2.0時代のマスメディア広告の方向性を考察する本。 従来マーケティングではAIDMAの法則という形で購買が決定されると考えられてきた。マスメディアの広告モデルは、その”マス”性をもって大勢のA = Attentionを...
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この記事へのコメント
smoothさんこんにちは。ごぶさたしてしまっております。(汗
虫の知らせがあったのでやってまいりました(笑
ということでマーケヲタな私向きと推察し、早速ゲットさせていただきます。楽しみです!
Posted by 週サラ at 2008年05月19日 20:35
>hikaruさん

こちらこそご無沙汰です。
さすがハナがききますね(笑)。
アタックありがとうございます。
当然、hikaruさんはこの本必読でございます。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年05月20日 08:12
こんばんは!smoothさん

本文でプッシュされているとおり、
非常に面白かったです。

「案本」といい、本書といいチョイスが絶好調ですね。
「最強の集中術」もランキングがドーンとアップしてましたし …

簡単な感想ですが、トラックバックさせていただきました。
良書を有難うございます。
Posted by ケイエム at 2008年05月21日 22:01
>ケイエムさん

楽しんで頂けてよかったです(笑)。
関連記事を見て気がついたんですが、2年前のある時期にドドドっとメディア関係の記事書いてたんですよ。
丁度その頃、メディア系で色々本が出てたのかもしれませんが、かなり偏ってますよね(汗)。
この本は、メディア全体を俯瞰するのになかなか良い一冊だと思いました。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年05月22日 01:59
smoothさんこんばんわ

昨日金曜日に、とある大手サイトの広告部長さんにお話を伺う機会があり、「これ読まれました?」と、この本をお見せしたら「いや〜、ちょうど今鞄の中に入ってますよ〜」と出してこられました。

メディア業界では、やはり超話題の書なのかもしれませんね〜♪

 きく@割愛されちゃった(笑)業界勤務

Posted by きく at 2008年05月23日 23:58
>きくさん

おぉ!メディア業界では既に話題ですか(汗)!
ウチの職場の近所のリアル書店も、この辺が元々「電通村」だっただけのこともあり、この本が他の新書とは別に、店の入り口付近にどーんと山積みされてます。
そして新聞業界に関しては、個人的に、「新聞社が顧客(購読者)のリストを持っていない」という点に言及されてなかったのがちょっと残念だったかな、と。
まぁ、他のマスメディアも、視聴者や購買者のリストは持ってませんけど(笑)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年05月24日 02:16